自見 庄三郎さんと語る
 

~ 連立政権の実現を視野に入れ医は仁術の精神を政治に ~

 
自見 庄三郎(じみ・しょうざぶろう)さん
じみ・しょうざぶろう 1945年、福岡県北九州市生まれ。参議院議員。国民新党副代表・政審会長。医師。1983年、衆議院議員選挙に立候補し、初当選。97年、郵政大臣に就任。2001年、自由民主党組織本部長。2005年の衆議院議員選挙で8選ならず。2007年の参議院議員選挙で国民新党比例代表で当選し、国政復帰を果たす。医療法人社団恵友会霧ヶ丘津田病院副院長。

 

 【対 談】連立政権の実現を視野に入れ医は仁術の精神を政治に
 
阿部
 今日は、自見先生と対談できることを光栄に思います。まず、連立政権の可能性についてどんなご意見をお持ちですか。
 ■同じ医者として関心をもって観察していました■
 
自見
 私も阿部知子先生と対談の機会をいただいて大変光栄に思います。現在、参議院では民主党が第一党ですが、民主党だけでは過半数に達しません。国民新党の5議席を足しても1議席足りません。ですから、社民と国民新党の結びつきというのは、日本の政治を動かす大きな力だと思います。
 私も38年間、医者をしています。同じ医者ということもあって、阿部先生のことは非常に関心を持って観察しておりました(笑)。印象的なエピソードをひとつ。2003年に予算委員会で、名古屋刑務所での刑務官による暴行死事件について、法務大臣の森山眞弓さんをを追及していらっしゃいましたね。巌流島の宮本武蔵と佐々木小次郎の対決のようで印象に残っています。あの時は、完全に阿部先生が勝っていました。私は当時、衆議院の自民党の筆頭理事で、このままでは森山大臣の首を取られそうだということで、3時間の集中審議を申し入れました。

阿部
 そのとき問題になった刑務所での待遇ですが、刑務所に入れられたとたん健康保険から排除されてしまうという問題もあります。限られた予算の中で対処することになり、本当に必要な医療を受けられないのです。国民皆保険からはずすことは、人権の剥奪だと思いました。これに似た怒りを持ったのが、後期高齢者医療制度を導入する法律を見たときでした。

自見
 年齢による差別ですね。最初に医療費削減ありきですから。

阿部
 後期高齢者医療制度を野党共闘で廃止にもっていこうと、この2年あまり民主党にも声をかけていました。廃止法案を出すとき、最も明確に反対してくださったのは国民新党、すなわち自見先生でした。

自見
 戦後63年、75歳以上の方というのは、戦時中に生まれて、まさに国に敗れて山河ありというなかで、一番苦労をした方たちです。その方たちを踏みにじる法律でした。
 
 ■新自由主義には反対本家アメリカでの失敗は明らか■
 
阿部
 社会崩壊の始まり、人間を大切にする価値観の崩壊に見えました。

自見
 2005年の郵政選挙と呼ばれる衆議院選挙で、郵政民営化に反対して私は落選しました。私は、反ネオコン(新自由主義)の思いをはっきり持っています。今となっては本家のアメリカでも経済政策は崩壊し、小泉・竹中路線は失敗だったという歴史上の回答が出ています。小泉・竹中路線の象徴が郵政民営化で、後を追ったのが後期高齢者医療制度。非人間的な法律だと思います。

阿部
 後期高齢者医療制度の廃止を4野党で出せたのは、先生のお力が大きかったと思います。民主党は当初、既存の法案の枠組みを維持した案を持ってきていました。

自見
 民主党は「混ぜご飯」のような政党ですから、いろいろな人がいます。それが多様性につながるといういい面もありますが。

阿部
 だから野党共闘で、私たちがそれなりの主張を投げれば、それが緩衝波を起こして一歩進むわけですね。

自見
 社民党と国民新党が物申すというのは、非常に大切だと思いますよ。
 
 ■「かんぽの宿」問題で見直される郵政民営化という失策■
 
阿部
 郵政民営化があって、後期高齢者医療制度が続いたわけです。今、「かんぽの宿」問題がクローズアップされていますが、郵政選挙のとき、多くの有権者は郵政民営化といわれて、雰囲気に流されてしまったのかもしれません。

自見
 小泉劇場のなかでも、郵政選挙は刺客選挙でしたからね。国家の方向を決めるまじめな選挙なのに、半分娯楽のようになってしまって訴えが通じなかったことは涙するくらい悔しかったです。それから3年半、「かんぽの宿」問題が浮上して、「自見さんのいったとおりになったね」という方が多いですよ。

阿部
 郵政民営化は、貯蓄から投資へと誘導する流れのなかのことでもありますね。

自見
 田舎の郵便局では、貯蓄から投資へと煽って投資信託を進めています。投資が多様化しても、元本保証でローリスクローリターンの郵便貯金という制度は必要です。郵政民営化で、地方の郵便局で集めたお金が中央に集まって、ばくちのような投資にまわってしまい、地方にお金が還元されていません。

阿部
 医療以外にも一緒にやれてよかったと思ったのは、登録型派遣の禁止に向けた取り組みです。亀井亜紀子議員にもがんばってもらいましたが、共産党も入れた野党3党で派遣法をまずは1999年段階まで戻すように求めています。

自見
 登録型派遣は、人をモノや部品扱いしていますね。派遣切りの影響もあってか今、生活保護の申請が増加していて、4人に1人は預貯金がゼロともいわれています。

阿部
 派遣法については、民主党も政府案とさほど代わらない改正案を出そうとしていましたが、野党共闘に参加してほしいですね。

自見
 阿部先生は、野党共闘に大変な努力をしておられますね。理想に向けて半歩でも前進する政治家でありたいと思います。
 
 ■ゲバラも孫文も医者でした医者は社会の矛盾に気づきやすい■
 
阿部
 阿部医者もそうですね。完治できないから治療しないのではなく、苦痛をとったり、病気の進行を遅らせたりします。麻生総理は「医者はへんなやつが多い」と言っていましたね。

自見
 麻生さんは、よく病院を「経営」するといいますが、病院は「経営」ではなく「運営」するものなんです。医者というのは、新入社員も社長も、子どもお年よりも金持ちも貧乏な人もみんな診るんです。だから医者は、社会の矛盾をキャッチしやすいものです。チェ・ゲバラも孫文も医者でした。

阿部
 医師が、金がほしい、楽をしたい、治る患者だけ診ればいいなどといいだすと、腐りますね。キューバは国際医療支援で、医師がボリビアの山中やベネズエラの貧しい村に行きます。日本は対GDP費でも医療費は8%でイギリスよりも低く、医療が崩壊するのは当たり前です。次の政権では先生と力を合わせて日本の医療を変えていきたいです。

自見
 私もそう思って政治家になりました。障害のある人も病気の人も一緒に生きていける社会を作ることが政治の永遠の課題だと思います。最澄の「一隅を照らす」政治の実現のため、医者同士がんばっていきましょう。





(「阿部とも子News ともことかえる通信No.34」に掲載)