鈴木恒夫さん(藤沢市長)と語る
 

~自治体行政と地域活性化

 
鈴木恒夫(すずき・つねお)さん
 1950年、神奈川県藤沢市生まれ。79年より藤沢市議会議員を4期務める。95年、神奈川県議会議員に初当選。以後、5期県議を務め、この間、総務企画常任委員会、議会運営委員会、震災対策調査特別委員会の委員長を歴任。12年2月に藤沢市長選へ立候補し当選。座右の銘は、「苟日新日日新又日新」(まことに日に新たに、日々新たに、また日に新たなり=日々新たに気持ちを引き締め、意欲的に事にあたり、進歩、向上する人生でありたい)。
 

 

 【対 談】 「郷土愛あふれる藤沢」をめざして市民と創る“選ばれるまち”
 
 私の地元、神奈川県藤沢市は昨年、人口で横須賀を抜き、横浜・川崎・相模原(いずれも政令指定都市)に続く県内4位となりました。「住みたいまち」として注目されるその藤沢で、昨年2月、初当選を果たしたのが鈴木恒夫市長です。鈴木市長は、「郷土愛あふれる藤沢」を目標に掲げ、高齢者福祉や子育て支援、コミュニティ再生などで具体的施策を打ち出しています。このような市政が誕生したことは、一市民としても、また一人の政治家としても嬉しく思います。鈴木市長に今後のビジョンをうかがいました。
 
 ■NPO活動を活発化させ市民参加の間口を広げる
 
阿部
 新しい年を迎えましたが、今年はどういった市政運営を考えていらっしゃるかお教えいただけますか?

鈴木
 昨年は、これまで山積していた課題に対処してきた1年でしたが、2年目の今年は、この間、スローガンとして標榜してきた「郷土愛あふれる藤沢」をさらに現実的なものにしていきたいと思っています。これは要するに、市民一人ひとりが、本当に好きになってくれるような藤沢にする、ということです。
 その一つの方向性として、より多くの人が市の活動に参画できるようにするため、県が持っている特定非営利法人(NPO法人)の設立認証等に係わる権限の移譲を実現させました。4月から市がその役割を担います。これは県内では藤沢が初めて。藤沢には166ものNPOがありますが、そのパートナーシップが広がる土壌をつくろうと考えています。
阿部 もともと藤沢は市民活動が盛んなところですが、日本一NPOがあるまちになって、その活動で地域が活性化すれば素晴らしいですね。藤沢には「湘南」というブランド力もあるので、その上に“人とのつながり”の強さが加われば、「住みたいまちナンバーワン」になるのも夢ではないように思います。
 「市民活動を行政が支援する」ってよく言いますが、具体的に実践している例って実は少ない。国のやり方でもそうですが、結局、お金を出す出さないといった話になりがちです。NPOなどの市民活動が停滞する原因はさまざまあって、助成金をつければなんとかなるということではないんですよね。
 それは社会保障も同じで、高齢化や少子化の対策として、税の分配をどうするかといったことが先行している気がします。
 
 ■コミュニティの再生は子育て世代の救いとなる
 
鈴木
 藤沢では、いま高齢化率(65歳以上が占める割合)が21%で、これはほかの市町村とそんなに変わりません。ですがお金をかけなくても、高齢者の皆さんの力を地域の力に変えることだってできるはずです。
 藤沢の場合、団塊世代の高齢者が増えています。阿部さんもそうですよね。この世代はエネルギーがあり、知識も持っていて、しかもそれを地域に還元したい人がけっこういる。これをうまく活かせればいいと思うんです。

阿部
 私たちの世代って、言うなれば「子育て支援世代」だと思うんです。子育て世代を口出しせずに見守り、でも必要なときは少し手を貸すような役割よね。いま、子育てに関して、貧困や施設不足がネックになっているけど、それとは別に、孤立したり、不安にかられているのに、それを助けるものがないっていうのが大きな問題だと感じるんです。

鈴木
 昔のように地域内にたくさんコミュニティがあれば、悩みも相談できるんですが…。

阿部
 そういえば、先日、江ノ島駅の前にある片瀬ボランティアセンターを見学させてもらったのですが、あそこではお母さんたちが小さな子どもを脇に置いて、おしゃべりしていて、その横に高齢者の方が座って、子どもらを見守っていました。いまのお母さんたちにとって、子どもを置いて安心しておしゃべりできる場ってなかなかないですからこれはすごくいいところだなぁ、と思いました。

鈴木
 さまざまな世代の人たちがフラッと立ち寄れるコミュニティが発展すれば、自然と人材が集まり、その人材が育ってまた新しいコミュニティをつくる。そしていろいろなコミュニティのある環境ができると、そこで育った子どもたちは、きっと「この先もここで暮らしていきたい」と心から思うようになるはずです。長い目で見れば、そうしたことが「郷土愛」をつくりあげることになると私は考えています。
 もちろん、子育て支援でいますぐにやらねばならない課題もあります。たとえば待機児童の解消のために、藤沢では賃借型の保育所を整備する予算を組みました。その一方で、入所を待っている方、家庭で育てている方にも、きめ細やかな支援をしていくつもりです。
 
 ■空いている農地と農業希望者をマッチングさせる就労支援
 
阿部
 「この先も藤沢で暮らしていきたい」と思ってもらうには、自分に合う仕事を地域内で見つけられることも大事だと思うのですが、藤沢の若者の就労を見るとミスマッチ状態にあるというか……。こうした若者への就労対策についてはどうお考えですか?

鈴木
 たとえば、若いうちから自分の特性を見つめる機会を持ってもらおうと、藤沢では中学生の職業体験を積極的にやっています。より多く体験の場を提供できるよう、地域の企業や団体にも協力を仰いでいます。
 また実際の就労支援という点でいえば、藤沢だけでは限界があるので、茅ヶ崎市と寒川町を含めた2市1町で連携した取り組みを進めています。いま、力を入れているのは、農業就労者へのバックアップ。空いている遊休農地と農業をやりたい若者をマッチングして、就農者を育てる施策をおこなっています。
 
 ■日中で「意見の違い」はあっても民間・自治体の交流は進めるべき
 
阿部
 ところで、いま、領土問題などで、中国との関係が冷え切った状態にあります。市長は湘南日中友好協会の活動を通して、長年、中国の方々とお付き合いをされてきたと思いますが、今後、どうすべきだとお考えですか?

鈴木
 となりの家同士だって境界線でもめるのはよくあることですから、ましてや隣国ともなれば、領土をめぐって意見の対立が出てくることもあるでしょう。もちろん私は、尖閣諸島は日本のものだと思っていますし、それは、きちんと主張するつもりです。ただ、それによっていままでの関係が損なわれたり、不幸な結果を招くようではまずい。だから、そうならないよう、民間や自治体同士で、交流を深めていく必要があると思います。  私はどんな国のどんな相手であってもお互いの立場を分かり合うことがまず大切だと考えます。それは同時に、「違うところは違う」と理解することでもあります。その上で、その「違い」はたくさんある中の一つであり、ほかのことは一緒にやりましょう、というのが私のスタンスです。

阿部
 これまで湘南日中友好協会では、とくに文化交流を積極的にやってきた歴史があります。藤沢は、そうしたソフト面での友好をはかるのに最適な都市ではないでしょうか。  この先、日中関係がすぐに好転するのは難しいかもしれませんが、藤沢ではこれまでのつながりが絶えることないよう、市長にも是非がんばってもらいたいと思っています。







(「阿部とも子News ともことかえる通信No.45」に掲載)