露木順一さん(前神奈川県開成町長)と語る
 

~地域からのニッポン再生

 
露木順一(つゆき・じゅんいち)さん
神奈川県開成町出身。東京大学教育学部を卒業後、NHKに入社し報道局政治部記者として国会、自民党などを担当した。1993年にNHKを退社し、梶山静六事務所で政策顧問を務め、96年に総選挙に出馬し次点。98年に故郷の開成町長に初当選し、以後4期連続で無投票当選。在職中、内閣府「地方分権改革推進委員会」委員などを歴任する。4期目の任期中に県知事選に立候補し次点。2012年12月の総選挙に日本未来の党公認で神奈川17区から出馬し惜敗。 「露木順一オフィシャルサイト」
 

 

 【対 談】 "ふるさと主義"を復活させ まちを興し、国を創る
 
7月21日の参議院選挙まであと1ヵ月。神奈川選挙区で、みどりの風の公認を受けて露木順一さんが出馬することになりました。露木さんは、開成町という神奈川でもっとも面積の小さな町で4期13年にわたって町長をつとめ、地域に根を張ってふるさと再生に力を注いできた地方自治のエキスパート。10人以上が立候補を表明している全国屈指の激戦区で、一石を投じるべく小さな政党から出馬する小さな町の前町長は、どんな決意で闘いに挑もうとしていらっしゃるのか。いまの心境をお聞きしました。(6月12日対談)
 
 ■混迷を切りひらく指標を神奈川から打ち立てる■
 
阿部
 安倍政権が誕生して半年。経済政策の柱であるアベノミクスにかげりが見え、消費増税も現実味を帯びてきました。外交面では、最大の貿易相手国である中国と対立が深まる一方、アメリカには基地提供やTPPで都合のいいように使われている。さらに原発を再稼働させるだけでなく、輸出するなんて話も。一部の国民は「なんか変だな」と思っていますが、政治不信からあきらめに近い雰囲気が広がっています。こうした中、あえて参院選に立候補した真意をお聞かせください。

露木
 端的に言えば、直感です。いまが全人生をかける勝負どきだと思いました。阿部さんや谷岡郁子代表をはじめとしたみどりの風の皆さん、そして尊敬する野中広務さん、亀井静香さんから勧められたのも大きなきっかけですが、決断に至ったのは、私の直感力です。
 知事選と衆院選で落選し2連敗中で、時間はわずか。私自身の知名度が高いわけでもない。その上、与党優勢の逆風。有利な条件はほとんどありません。しかし、結果がどうなろうと、いまやるべきことは、政治の混迷を切りひらく指標を阿部さんとともに、この神奈川から打ち立てることだと思ったのです。

阿部
 露木さんは、いまの日本を「地震が起きてから津波が来るまでの空白」と話していましたよね。大混乱が起きる直前の異様な静けさだと。問題が起きているのは分かっているけれど、選挙の争点が曖昧で、国民には選択肢がない。このままでは、大津波にのまれてしまう。それを食い止めるべく立ち上がったのは、大変勇気のある決断だと思います。
 
 ■実績ある女性リーダーとそれを受け止め支える男性を■
 
阿部
 いまの政治を「変だ」と思い始めているのは、女性が多いと思います。事実、安倍政権の支持率は男女でかなり違う。露木さんは、日頃から女性の力を評価していますよね。

露木
 女性は「おかしいものはおかしい」とはっきり判断します。しかもそこには覚悟を持った強さがある。それも決して肩肘張ったような強さではなく、しなやかで優しい強さ。私の妻がまさにその見本です(笑)。

阿部
 昨日、奥様にお会いしたとき、大変な時期の立候補なのに、「県知事選のときより時間があるわね」とさらりと言っておられましたよね。さすがだと思いました。

露木
 男は自分の考えより、しがらみや損得勘定で行動する。政治の世界でも、タテマエや権力奪取が優先され、原発や平和など肝心な問題が置き去りになって袋小路に迷い込んでいる。その一方で、権力を維持するために女性を持ち上げるようなフリをして、男のマイナス面が見えないようごまかしたりする。それでは女性を都合良く利用しているだけ。
 そうではなく、医師や大学経営者として現場でやり遂げてきた阿部さんや谷岡さんのような、実績ある女性をいまこそリーダーとして立てるべきです。そしてその実力を受け止め、サポートする男性が求められている。

阿部
 確かにこれまで有能な女性議員はいましたが、「対等なパートナー」として支えるような男性は少なかったかもしれません。

露木
 国会議員の男女比は8:2。それをまず五分五分にする。もちろん男には、それを当然と受け止める感覚がなくてはならない。

阿部
 ところが、実際は女性を侮辱した「ババァ発言」の石原慎太郎さんや、従軍慰安婦発言で女性を性の対象としてしか見ていないことが露呈した橋下徹さんのような政治家が多い。彼らにしてみれば、女は男にとって便利な「モノ」でしかないんですね。

露木
 2人とも攻撃的でやたら強さを誇示しますが、それは弱さの裏返し。本当の意味で強い女性が活躍するのが怖いんでしょう。
 
 ■理想としてめざすのは「あじさい」のような社会■
 
阿部
 さきほど「勇気ある決断」と言いましたが、露木さんの自信は、町長として培ってきたものがベースにあるように思いますが。

露木
 私は町長時代、自分が生まれ育った小さな町で、足下を見つめ、地べたを這いながら、同時に日本や地球全体のことも考えてきました。たとえば、開成町の田んぼのあぜ道には、この季節、たくさんのあじさいが咲いています。この農道あじさいは、名所として町の経済にも貢献しています。不要な開発をせず、地球の一部である小さな自然を守りながら、地域の活性化につなげていくというこうしたやり方を地道に進めてきた結果、人口の増加率は県内トップクラスにまでなり、2010年には新しい小学校も開校しました。
 ちなみに、一つ一つの小さな花がまとまって、全体では見事に調和がとれているあじさいは、私が理想とする社会と重なります。

阿部
 先日、開成町に行ってきたんですが、地元の人たちに会うと、それぞれがたくましく、かつ生き生きとしていました。彼ら彼女らが町全体を元気にしている印象を持ちました。まさにあじさいのような町だと思います。
 
 ■みどりの風を基軸に勇気ある人たちの結集を■
 
阿部
 ですが最近、各地域を回ると、「あじさいの町」とは対照的に、人々は暗い顔をして、われ関せずでシャットアウトするような空気を漂わせています。それは近隣国と対立し、憲法改悪で平和生存権を奪おうとする現実の異様な政治が反映しているからだと思いますが、人々はそこに気づいていない。

露木
 ギリシャの哲学者、プラトンの著作『国家』に、洞窟のたとえ話があります。囚人たちが、暗く狭い洞窟の中にいる。そこに太陽の明かりが差し込んで、幻影をつくり出すのですが、縛られて後ろを振り向くことができない彼らは、影を本物だと思いこむ。あるとき、1人が洞窟の外に出て真実に気づき、ほかの囚人にそれを伝えるのですが、みな幻影が実体だと疑わず、彼の話をウソだと言う。
 これとそっくりの現象が日本で起きています。一部の権力者が情報を操作して、虚像を実像のように見せかけ、正しいことを訴えると「ウソつき」のレッテルを貼って貶める。
 こうした動きに対抗するために、虚像を暴いて正しい道に光を当てようとする勇気ある人々は、個々で叫ぶのではなく、手を取り合いグループをつくる必要がある。みどりの風はその結集の基軸になりうると思います。
 大衆が幻影から解き放たれれば、安倍首相の言う偽りの「愛国心」ではなく、昔ながらの「愛郷心」―ふるさと主義が復活し、開成町のようなまちが日本中にできます。そして、軍事力などなくても、あるいは仮に経済が破綻しても、世界に尊敬される真の意味での「美しい国」 になれるのではないでしょうか。







(「阿部とも子News ともことかえる通信No.46」2013年7月号に掲載)