山尾志桜里さん(民進党国民運動局長)と語る

 

 

 

山尾志桜里(やまお・しおり)さん
1974年、宮城県出身。東京大学法学部卒業。司法試験に6回失敗するも2002年に合格し、検察官となる。東京地検、千葉地検、名古屋地検に勤務し、07年に退官。09年の衆院議員選挙で愛知7区から出馬し初当選。現在2期目。民進党国民運動局長、前民進党政務調査会長。小学生時代にミュージカル『アニー』で初代アニー役を務めたことでも知られる。著書に『アニーの100日受験物語』(ごま書房)。
 
 
 

 

 

 待機児童問題・共謀罪
 
 今6月18日、通常国会が閉会しました。今国会では犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が大きな議論になりました。その審議の中で、安倍晋三首相や金田勝年法務大臣に鋭い質問をぶつけていたのが民進党の山尾志桜里さんです。山尾さんは1年前、「保育園落ちた日本死ね!!!」と書いた女性のブログを取り上げ、待機児童対策を大きく前進させました。私が座長を務める民進党の待機児童問題対策プロジェクトチーム(PT)でともに活動する山尾さんに、今回お話を伺いました。

保育・教育の完全保障!監視社会NO!
人々の望みを実現する政治を

 

 

 ■政府を動かした母親たち■
 
阿部
「保育園落ちた」のブログは昨年、話題となりましたが、そもそもなぜ待機児童問題を国会でやろうと思ったのですか?

山尾
きっかけは、議員インターンで来ていた女子大生たちが、そのブログを国会で取り上げて欲しいと訴えてきたことです。将来、社会に出て結婚し、子育てしながら仕事をする時、何がハードルとなるかを彼女たちはブログで気づいたんですね。つまり「日本死ね」は、1人のお母さんの嘆きではなく、多くの母親の苦悩や若者の未来への不安も込められた言葉だったんです。

阿部
私が子育てしていた頃も待機児童問題はあったけど、当時は自分で解決するしかないとがんばりました。それが「日本死ね」と表現するまでになったのは驚きでした。

山尾
今は地域内のつながりが激減し、頼るところもない。それなのに安倍政権は「社会保障にかける金はない。女性は働け」という。そうした政治に対する苛立ちが「死ね」という言葉になったんでしょうね。

阿部
ブログが注目されて以降、当事者のお母さんが声を上げるようになって。

山尾
与党は当初「誰が書いたか分からない。いいがかりだ」といった態度でした。けれど、全国で「保育園落ちたの私だ」という声が上がり、保育制度の充実を求める署名がわずか6日間で2万7682人分集まった。そして、厚生労働大臣が緊急対策を発表しました。お母さんたちの仲間への優しさが政府の姿勢を転換させたのです。
 

 

 ■保育士が充実して働ける施策を■
 
阿部
民進党では、今春からPTで待機児童に関する政策の検討作業に入り、6月に提言をまとめて政府に提出したばかり。

山尾
政策作りにあたって、まずお母さんらに直接話を聞きました。そこで感じたのは、彼女たちが保育園に託しているのは子守りではなく、子どもの命と成育だということです。生きること、育つことは誰もが持つ当然の権利。よって親が働いているか否かに関係なく、すべての子に保育を無償で保障する必要があると思ったのです。

阿部
そこで提言で前面に打ち出したのは「就学前の保育と教育の完全保障」。
働く女性と専業主婦――女性たちはそうした図式で対立させられがちだけど、さきほどの「優しさ」の話のように、対立ではなくつなげるのが政治の役割だと。一緒に暮らしやすい社会をつくる。「完全保障」にはそうした思いが込められているのですが。
そして具体的にこれを実現するには、保育士さんの不足を解消しないといけない。

山尾
保育士の仕事は、労働環境が非常に厳しいため、資格をとっても現場で続けていく人が少ない。いわゆる潜在保育士が、70万人いるといいます。この人たちを保育園に戻し、充実した働き方ができるようにすれば解決することがたくさんあります。
しかし政府が出した政策には、この潜在保育士さんたちを活かす方向性が見られない。本当に疑問です。結局、「待機児童ゼロ」の目標達成も3年先送りとなりました。
 

 

 ■“男のロマン”政治はいらない■
 
阿部
ところで、山尾さんは、なぜ政治家になろうと思ったのでしょうか?

山尾
実は政治を意識したのは30代からです。それまでは集会へ行ったこともなく、チラシを受け取るのも恥ずかしくて…。
検事をやっていた頃に担当した事件が転機となりました。60代のホームレスの女性が、中学生3人と30代の男に殺されるという痛ましい事件でした。ケアが受けられず、居場所を失った子どもたち。また、30代男性は無職でしたが、より弱い立場の人間にその不満の矛先が向けられたんです。

阿部
まさに今の日本社会の縮図よね。さまざまな貧困のしわ寄せが、最終的に行政の支援からもれた女性に向かった、と。

山尾
その現実を目の当たりにしたとき、この国の政治っておかしいと思えてきたんです。政治の世界では、自己責任や自助という言葉がまかり通る風潮さえあります。それにすごく違和感を覚えたんですね。

阿部
一番必要なところに政治の手が届いていない。私は山尾さんと、女性の視点でそれを変えていきたいと思います。

山尾
“男のロマン”で政治をやる議員って多いですよね。「名前を年表に刻む」とか「功績を教科書に載せる」みたいな。安倍首相なんて最たるもの。「自分がやりたいから」と押し通す。政治ってそうじゃないと思うんです。私は、人々が求めていることをやりたい。それが根っこにあります。
 

 

 ■希望を見た「コッカイオンドク」■
 
阿部
共謀罪についても聞かなくちゃね。国会の審議でこの法案の矛盾点やおかしな部分をあぶり出したのが山尾さんでした。

山尾
首相や大臣の答弁を聞けば、法律の目的が「テロ対策のため」なんてウソであるのは明らかです。処罰対象の犯罪の中には、誰が見てもテロにつながらないものも含まれている。金田法務大臣が発言したように「テロの資金源になる」という理由で、キノコ採りやタケノコ掘りも対象になる。マンション建設反対で座り込みをやるための話し合いもそう。つまり捜査したい人間を監視するためのカギをたくさん持っておきたいわけです。それが本当の目的。

阿部
山尾さんと安倍首相・金田大臣とのやりとりを文字に書き起こし、市民がそれぞれの役を演じながら読み上げる「コッカイオンドク」の運動が起きています。

山尾
強行で法案が通ったのは残念ですが、市民の活動には希望を感じます。「オンドク」をやった人に聞くと、「読んだら、珍回答がおかしくて笑い、恥ずかしくなり、そして恐ろしくなった」と言うんですね。

阿部
そのゾッとする肌感覚がもっと広がっていけばよいと。

山尾
今後、法律を使って逮捕・起訴となれば、あちこちで疑問の声が上がるでしょう。憲法訴訟もありうる。そこでしっかり批判的吟味を加えていく必要があります。

阿部
法律を廃止するためにも、まず私たちが政権をとらなくちゃいけないわね。








(「阿部とも子News ともことかえる通信No.54」2017年7月号に掲載)