第154回国会 本会議 第26号(2002/04/19) 抜粋 ○副議長(渡部恒三君) 阿部知子君。
〔阿部知子君登壇〕
○阿部知子君 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
今回提出されております健康保険法等の一部を改正する法律案並びに健康増進法案に対しまして、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、質問をさせていただきます。(拍手)
小泉内閣が発足してから一年がたちましたが、今、我が国の政治は大きな不信に揺らいでおります。国民の政治に寄せる目は、不安と、本当にこの国の将来が大丈夫であるのかという疑いの眼で私たちを見詰めております。
私は、今回、この国民の命にかかわる法案が論じられるこの場において、冒頭、まず、小泉総理大臣の国民への責任ということについてお伺い申し上げたいと思います。
去る一月二十五日でしたか、予算委員会の場で、私は、小泉総理に、政治にとって一番大切なものは何であるとお考えですかとお尋ねいたしました。総理は、国民であるとお答えになりましたが、果たして、昨日国会に提出されました有事法制関連三法案を見ましても、あるいはまた、本日、この場で、本会議提出されております健康保険法等の改正を見ましても、この国民という視点、一番大切なものが国民であるという視点がどこにあるのか、大いに疑問に感じております。
とりわけ、有事法制関連三法案にあっては、国民の保護義務は二年先送りされた中で、有事法制化のみが先んじて論じられております。果たして、このような形で本当に大切な民を守れるのか。実は、小泉総理のおじい様でいらっしゃった小泉又次郎氏が、自由民権運動の中で最も大切に思われた民、民の権利ということを、小泉首相もまた、今、新たに思い起こしていただきたいと思います。
そして、この場で、小泉総理の国民に対する過去、現在、未来の責任についてお尋ねさせていただきます。
国民の過去、この問題において、私は、有事法制化との関連あるいは命との関連で、ぜひとも、この場で一点、明らかにお答えいただきたいことがございます。かつての第二次大戦における戦死者、戦没者の問題でございます。
ことしもまた、八月十五日がめぐってまいります。その中で、小泉首相、果たして靖国参拝ということが、本当のこの亡くなられていった方々への鎮魂になるのか。
私は、終戦、敗戦直後、五十万、六十万と報告されていた戦死者の数が、その後、改めて海外での戦没者二百四十万という数が明らかになる中で、今まだ、この国を出ていったままこの国に帰れぬ遺骨が百十六万柱あるというこのことを、極めて重く受けとめていただきたいと思います。
異国の地で眠るこの方々の骨を一刻も早く収集し、そして国立の墓苑にきちんと鎮魂すること、このことを抜いて、あらゆる、今行われている法制化問題は語れないと思います。
そして、第二でございます。これは、現在の政治への首相の責任でございます。
鈴木宗男氏問題。この間、疑惑の総合商社等々の指摘がございましたが、私は、それ以上に、実は、北海道の釧路の地で、矢臼別の米軍の実弾演習をめぐって、その周辺の町長が人間扱いされなかった悔しい思いを伝えている事実を小泉首相がどう受けとめておられるか、ぜひとも伺いたいと思います。
厚岸町長は、四千名の住民署名とともに、この米軍の実弾演習場の誘致に本当に心から反対して、鈴木宗男氏のもとに参りました。しかしながら、結論は、恫喝に等しく、そして四千名の署名を圧殺する形で、地方自治をじゅうりんする形で、現在ちょうど有事法制化で行われようとすることと同じ事態が既に進行しておりました。それらを放置したまま、あえて住民自治を制限する法制化を担おうとする小泉内閣は、果たして鈴木宗男氏問題にどんな決着をつけるのか、この場できちんとお聞かせいただきたいと思います。
第三は、国民の未来への責任でございます。
今回、小泉首相を初めとする内閣提案が、ひたすらに国民の負担増を求めるものであるということをいかがお考えでしょうか。
「聖域なき構造改革」という名において、一兆円の高齢者医療費の自然増すら七千億円に圧縮されました。しかしながら、防衛費総額四兆九千五百五十三億円は全く手つかずのまま、アメリカに次ぐ高い、世界第二位の軍事予算として計上されております。
果たして、我が国の医療費は、これらの防衛費に比して高いものであるのか。およそ七・六%対GDP比の我が国は、先進国においては、イギリスに次いで、対GDP比の低い医療費をなし遂げております。そして、そのイギリスにおいては、サッチャー政権において本当に荒廃してしまった国民の医療の再建のために、ブレア首相は、対GDP比一〇%を公約に掲げました。
小泉首相にあっては、先人に学び、この一連の経過をどうごらんになり、我が国としてどのような指標を立てるのか。まず、その大きな大きな指標を明らかにしていただきたいと思います。
引き続いて、坂口厚生労働大臣にお伺い申し上げます。
私は、坂口厚生大臣は、厚生労働大臣になられましたが、我が国の厚生行政の中に人権という太い柱を打ち立てられた、歴史に名を残す厚生大臣だと思っております。九十年余に及ぶハンセン病の患者さんたちの奪われた人権、失われた名前の回復、そしてクロイツフェルト・ヤコブ病の早期の和解、このことは、実は、坂口厚生労働大臣の御尽力なくしては実現し得なかったとも思っております。
そうした坂口厚生労働大臣が今回の健康保険法等の改正を担うに当たって、私は、単に金銭の出入りだけ、支払い方法だけではない、医療の根幹問題をぜひとも論議の俎上に上げていただきたいと思います。
医療の根幹問題とは何か。まず第一は、医療提供体制でございます。
先ほど私が例に挙げました厚岸町、人口が一万三千、釧路の郊外にございます。そこにある九十床の町立病院では、わずか五名の医者で周辺の地域住民の健康を担い、日夜の当直を行っておりますが、少ない医師、過労、そして赤字の中で、今、その経営が続けられるかどうか、本当に一日一日薄氷を踏む思いだといいます。
一方、都市においても、私が長年実践しておりました小児医療は、余りにも採算性を重視する我が国の医療のそのしわ寄せを一身に受けて、小児科病床の閉鎖が相次ぎ、加えて、国公立病院の統廃合の中で、例えば人口八十万の世田谷区において、夜間小児医療の無医村と化すような現実が起こっております。
このこと一つとっても、我が国は、まず、だれにどのような医療を、たとえその人がどこに住もうと、どこに生まれようと、どこで亡くなろうとも提供していけるか、そのことを本当に原点に立ち返って論ずるべきでございます。そして、その時期は今しかございません。二十年、三十年後の本格的な高齢社会に備えて、今からきちんとした医療提供体制を論ずること、それが今国会の役割でもございます。
第二に、医療の質をめぐる問題でございます。
きょう、民主党の皆さんからも、カルテ開示等々にかかわり、医療ミスを軽減させ、そして、よりよい患者中心の医療を実現するための法案が提出されておりますが、実は、この医療の質に関しましては、果たして、欧米に比して二分の一から四分の一という少ない医療従事者数で担えるものなのか否か、この点もきちんと論議していただきたいと思います。
現在、医療従事者数二百六十九万、介護従事者数百二十六万、総労働力人口の五・八%という数字は、アメリカであれば一一%、北欧諸国であれば、もっともっと多くの人たちが医療や介護や福祉に携わっております。せめて、坂口厚生労働大臣の手で、医療従事者、介護従事者数の全労働人口に占める比率目標を一〇%までお置きいただきたい。それが、一つでも悲しいミスをなくし、本当に国民が安心と納得できる医療提供体制の質の保証のまずスタートであると思います。
三点目は、いわゆる医療を担うマンパワーの質の問題、医師の初期研修の問題であります。
平成十六年度に義務化されます医師の研修問題では、ついせんだっても、関西医大で、わずか二十六歳の若者が、月に三百時間以上の労働をして、わずか六万の賃金の中、過労死してしまいました。果たして、研修医をこのような状態に置いて、そしてアルバイトなくしてはやっていけない状況に置いて、国民に必要な医療を担う人材を育成できるのか。
このことに関して、今、例えば日本大学では、最低給与を十二万に上げましょうという、労働者に準ずる改定を行いましたが、しかしながら、これでもまだまだ不十分でございます。真にアルバイト診療をなくし、そして十分に教育にあるいは研修に専念していただける体制のために、実はアメリカでは、研修医一人当たり十万ドルの予算を立てて、うち四万ドルが給与、六万ドルが教育にかかわる人材に払われる仕組みになっております。
教育にきちんとした金とスタッフを配置せずして、国民の未来は守れません。この件に関しましても、この間の医道審議会での論議の内容、そして坂口厚生労働大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
ちなみに、医道審議会は二十名の委員から成り立ちますが、うち十五名が医師、そして十二名が大病院の院長か大学病院の教授でございます。このような中では、真に必要な、私が冒頭申し上げました、地域一般医療を担う人材は育て切れません。そのことともあわせて、本当の国民の未来のために、坂口厚生労働大臣の御英断を仰ぐものです。
そして、本法案に関しまして、四つの質問をいたします。
一点目は、まず、患者自己負担問題でございます。
この点については、先ほど来、他の議員の方々も御質問でございますので、あえて私は、自己負担増の前にやるべきことがある、そのことを指摘させていただきます。
高い医療費、医療材料費、反復する検査、不正請求などなど、坂口厚生労働大臣が、この点に対して、まずそれらのむだを省いてから国民に初めて負担を求めるべきという私の意見にどうお答えいただけるかにあります。
第二は、保険料の値上げ問題でございます。
この点も多々御指摘がございましたが、この点に関して、国民健康保険は大幅な赤字、組合健保は老人医療拠出金に悩み、そして政府管掌保険は年々その数を減じており、国民皆保険制度は空前の危機と言われております。
○副議長(渡部恒三君) 阿部知子君、申し合わせの時間を過ぎましたから、なるべく簡単にお願いします。
○阿部知子君(続) 済みません。
このことにあって、私は、ぜひとも、この各健康保険組合の財務状況の情報公開をしていただきたいと思います。
あと、二点省略させていただきまして、竹中経済財政担当大臣と石原行革担当大臣にお願いいたします。
竹中経済財政担当大臣には、果たして、経済財政諮問会議では、医療、介護、福祉という分野をどのように論じておられるのかについてお願いしたい。
そして、石原行革担当大臣にあっては、いわゆる医療の情報公開、わけても、民間病院と国立病院の財務状況についてどのような報告を義務づけているのか。カルテの情報公開とあわせて、財務状況の報告を健康保険組合と各病院に行わせることが、今、国民の論議の出発点でございます。
以上、時間を超過して大変申しわけございませんでしたが、質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 阿部議員にお答えいたします。
戦没者の遺骨収集と国立墓地に関するお尋ねであります。
さきの大戦の戦没者の御遺骨については、一日でも早く祖国にお迎えできるよう努力することが国の責任であると考えておりまして、引き続き努力をしてまいりたいと思います。
現在、内閣官房長官のもとに懇談会を開催し、おおむね一年を目途として、だれもがわだかまりなく、戦没者等に追悼の誠をささげ、平和を祈念することのできる記念碑等、国の施設のあり方について幅広く御議論いただいているところであり、この懇談会の意見を踏まえて対応を検討してまいります。
鈴木議員の問題についてであります。
疑惑については、もう何度も申し上げているとおり、議員本人がきちんと説明するべきものだと思います。私としては、今回の問題を踏まえ、政治と金の問題、政と官の問題、外務省改革の問題などについて建設的な改革につなげていきたい、そういうことによってみずからの責任を果たしていきたいと考えます。
医療費の抑制についてであります。
医療費については、制度や社会的背景の違いなどもあり、単純に国際比較することは困難ですが、我が国の医療費の対GDP比は、主要先進諸国と比べて、現時点においては必ずしも大きくはないものの、国民一人当たりの医療費は、主要先進諸国と比べても、低い水準ではありません。
医療費の規模についてどのような水準が適切かを示すことは難しい問題でありますが、いずれにせよ、世界に例のない急速な少子高齢化の進展等に伴い、医療費の増大は避けられないと思っております。
我が国の国民皆保険制度を将来にわたって守っていくためには、医療の質の確保を図りつつ、医療費の伸びを適正なものとすることにより、制度の持続可能性を確保していくことが必要であると考えております。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣坂口力君登壇〕
○国務大臣(坂口力君) 阿部議員にお答えさせていただきたいと思いますが、初めいただいておりました問題とは大分違った問題がたくさんあるものですから、うまくお答えさせていただけるかどうか、よくわかりません。
一番最初は、医療供給体制と医師の確保についてのお尋ねであったと思っております。
医療資源の効率的な活用でありますとか、医療施設間の機能連携等の確保を図りますとともに、自治医大でありますとか地元の大学の協力を得まして、医師の確保にも努めているところでございます。
確かに、御指摘になりましたように、いわゆる過疎化の問題とそして過密化の問題とがございまして、とりわけその中で、小児医療の問題等、非常に深刻な問題も起こっておりますので、これらの問題につきまして、ひとつ格差のできないように最善の努力を図っていきたいと思っております。
それから、医療の質につきましてのお尋ねがございました。
将来の需給を見通し、計画的な養成、確保を図っていくことは重要でございますが、そうした人数の問題だけではなくて、質の問題も大変大事だと思っております。
とりわけ、医療の分野の中で看護職員につきましては、平成十二年に策定いたしました看護職員需給見通しに基づきまして、養成力の確保、それから離職の防止、再就職の支援、資質の向上等の総合的な確保対策に今取り組んでいるところでございます。
いずれにいたしましても、医療従事者の需給に十分配慮いたしまして、そして、医師、歯科医師を含めました必要な医療従事者の確保と資質の向上に努めてまいりたいと考えております。
それから、医師の臨床研修についてのお尋ねがございました。
平成十六年四月の医師の臨床研修の必修化に当たりましては、研修医が、アルバイトをせずにプライマリーケアの診療能力の修得に専念いたしまして、医師としての人格の涵養に努められる環境を整備することが重要であると考えております。
現在、医道審議会の医師臨床研修検討部会におきまして、研修内容に加えて、勤務条件等の処遇の問題につきましても検討を進めているところでございます。
この医道審議会の内容につきましてのお話もございましたけれども、確かに医道審議会は、医療従事者、とりわけ大学の先生等が多いわけでございますが、しかし、地域医療に携わる方々を初め、さまざまな関係者からヒアリングも行っているところでございまして、地域医療に携わる方々の多数の御意見を伺っていきたいというふうに思っておるところでございます。
それから、研修医が研修に専念できる環境の整備が重要であると考えております。そのための必要な財源の確保、そして、研修医に対してどれぐらいの給料をお出ししたらいいのかといった問題につきましても、現在詰めを行っているところでございます。
それから、最後の二問は、三割以前に抜本改正が必要ではないかというお話でございました。
これはもう御指摘のとおりでございまして、私もそう思っております。したがって、どういたしましても、この抜本改革の筋道というもの、基本的な方向性というものは早く出さなければならないというふうに思っております。
この御審議をいただきます間にも、そうしたものをできる限り次々と出していきたいというふうに思っているところでございます。
最後に、情報公開のお話がございました。
これも現在進めているところでございまして、病院あるいは診療所の情報公開も進めておりますが、そうした問題とあわせまして、患者の側から見まして、患者の側が医療に参加できるような体制につきましても、現在、進めているところでございます。
これらの問題にひとつおこたえができるように、十分にやっていきたいと思っているところでございます。(拍手)
〔国務大臣石原伸晃君登壇〕
○国務大臣(石原伸晃君) 阿部議員にお答え申し上げます。
一点、御質問がございました。国公立等の医療機関の財政状況の公開についてであったと存じます。
経営情報の開示の促進につきましては、医療機関の経営の透明化を図る上で、私どもも重要であると認識しております。
国公立の病院等については、国立病院特別会計法等に基づく損益計算書、貸借対照表等の作成等を通じて、その財政状況が明らかにされております。
また、医療法人が開設している病院につきましても、先般、特定医療法人等に対して決算の公開に関する指導がなされているなど、財政状況の自主的開示が促進されるための環境整備が図られているものと承知しております。
なお、この三月に閣議決定いたしました規制改革推進三カ年改定計画において、各医療機関はできる限り日本医療機能評価機構の審査を受け、審査を受けた医療機関も評価内容を公開するよう指摘させていただいているところでございます。
具体的に申しますと、審査項目の中で、病院会計準則に基づく会計処理がなされているかどうか、第三者による外部監査が行われているかどうかなどの財務、経営管理面のほか、保健医療や健康にかかわる地域のニーズに対応しているかどうか、患者に対して診療に関する説明と同意を行う体制が確立しているかどうかなど、医療機関が必要とする公共性についての評価も対象となっております。
こうした機構の審査と医療機関の評価公開を通じて、各種情報の開示が今後とも促進されていくものと理解しているところでございます。(拍手)
〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
○国務大臣(竹中平蔵君) 阿部議員から、経済財政諮問会議における医療、介護、福祉分野の位置づけについてのお尋ねがございました。
医療、介護、福祉等の社会保障制度については、昨年六月のいわゆる骨太の方針におきましても、本年一月のいわゆる「改革と展望」におきましても、次の二点を指摘しております。
第一は、国民の生涯設計における重要なセーフティーネットであり、これに対する信頼なしには国民の安心と生活の安定はあり得ないということであります。
第二は、経済と調和し、将来にわたり持続可能で安心できるものとなるようにこれを再構築しなければならないということであります。
極めて大変重要な問題である、改革の中核にあるという位置づけをしておりますので、引き続き、諮問会議におきましても、さまざまな角度から議論を深めたいというふうに考えております。
以上、お答え申し上げます。(拍手)
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