第154回国会 法務委員会厚生労働委員会連合審査会 第1号(2002/07/05) 抜粋

議事録全文(衆議院のサイト)

阿部委員 ただいま社会民主党・市民連合の中川智子の方から、本法案に対しての基本的な問題点についての指摘をさせていただきました。引き続いて、私、阿部知子ですが、特に、この法律、このスキーム自身が精神科医療の本来の姿をゆがめ、患者と医師との治療関係にも非常な不信の種をまくということにおいて、質問を続けさせていただきます。

 今、中川智子の方から申し入れをいたしました資料については御提示いただけるか否か、まず冒頭、担当部署からお伺いいたします。

 簡易鑑定について、日本全国かなり地域差があり、特定の医師がそれにかかわっているような実態もございますが、毎日新聞が新聞社の調査として一年をせんだって報道で出しておりましたが、これは当然所轄官庁としての厚生省から出されるべきと思いますが、担当部署の明確なお返事をまず伺います。

古田政府参考人 検察庁におきます簡易鑑定の話でございますので、私の方からお答えいたしますが、先ほども申し上げましたとおり、逐年にわたってのそういう資料は網羅的にはございません。

 また、そういう資料につきましては、先ほどの、ある特定の年度についてだけの全般的なものはございますが、これの提出方については、委員会の方からのまた御指示等もありますれば検討させていただきたいと存じます。

阿部委員 では、網羅せずしてかかる審議にかかること自身、非常に問題と思いますから、これは、この合同の委員会の方の資料として、本日の委員長から提出を求めていただきたいと思います。

 現状にあっても、簡易鑑定が非常に問題で、精神障害のある方たちへの冤罪、そこにだれも立ち会えませんから、クローズドな中で、混乱の中に、その精神障害のある方が犯罪を犯して立たされております。

 ここの出発点があいまいでは論議ができませんので、これはこの合同委員会として資料の請求を検討していただきたいと思います。

園田委員長 理事会で諮って検討させていただきます。

阿部委員 では、引き続いて質問に入らせていただきます。

 私は、先週の法務委員会のこの問題にかかわる審議の議事録と、きょう朝から現在までの皆様方の御審議をお聞きしながら、やはりこの法案、非常にねじれが生じている。

 そのねじれとは何かというと、本来法務省として、先ほど申しました解決すべき現在の精神障害のある方の触法、法を犯したような行為にかかわるいろいろな検察としての審議のあり方の不備、それから、そのことゆえにまた再犯も起こり得るやもしれない現状に対して、法務省自身がきちんとした点検をせずして、それを厚生省にボールを投げ渡した。厚生省としましては、極めて危なっかしい形のままにこのボールを受け取られようとしている。

 何が危なっかしいかと申しますと、一番大きな危惧、危うさの点は、坂口厚生労働大臣の御答弁にございましたが、再犯を予防するということが大前提である、この法案審議で再犯を予防するということが大前提であるという御答弁がございました。しかしながら、私が思います精神医療とは、それは結果であって大前提ではございません。精神医療に課せられた役割は、その患者さんが病から復帰し、それは、できれば通常の生活が送れるような支援をすることであって、再犯を予防することが大前提であるというような役割を精神医療が背負い込むことの中に実は今回の一番の大きな問題があると私は思っております。

 そして、坂口厚生労働大臣が、ふだんは大変に、人権的にも、ハンセン病問題でもそうです、私どもが敬服する坂口厚生労働大臣が、なぜあえてこの問題を背負い込もうとなさるのか、その背景をるる考えてみました。やはりこれも大臣のお言葉の中ですが、いわゆる再犯の危険性については予測し得るということを本会議でもこれまでの御答弁でも何カ所か引いておられますが、きょう御党の福島委員からも御指摘がありましたように、これは現在の精神医療現場でも結論の定まらぬ、あえて言えば、再犯の予測については精神医療はなし得ないという論の方が過半を占めている現状でございます。

 私は、このことを、きょうの討議で坂口厚生労働大臣がさらにどのように御認識あそばされたか、まず一点、お伺いいたします。

坂口国務大臣 けさからの議論の中でも、さまざまな問題が提起されたところでございますが、やはり現在の精神科医療の中で再犯を予測することができ得るかどうかというのは、それはいろいろの御議論のあるところだというふうに私も思っております。しかし、そこのことについて、諸外国でかなりそこが研究を重ねられて、そして、再び犯罪を起こさないようにしていくという、そこはかなり進んできているわけでありまして、日本にもそこはでき得るというふうに思うわけでございます。

 したがいまして、この人が起こすか起こさないかの予測というのは、確かにそれは難しいところがあるだろう。他の疾病の予測の難しいのも当然でございますが、ここもまた難しい予測ではありますけれども、けさから何度か申し上げておりますように、さまざまな条件を考えましたときに、そうしたことが起こり得る可能性というものを予測することというのは、これはでき得るというふうに思うわけでありまして、そのことをどのように理解をし、そして、その人たちが実際、現実問題として起こさないで、そして社会復帰をしていただくようにしなければならないというふうに私は思っているわけでございます。

阿部委員 ただいまの坂口厚生労働大臣の御答弁ですが、先日の御答弁の中に、オックスフォード精神医学教科書のページを引きましての御答弁がございます。二千六十六ページと二千六十七ページに、近年、今おっしゃったような再犯の可能性の予測について、再犯の予測の可能性についてでもいいですが、諸外国においてはある程度の知見が得られておるというお話でした。しかしながら、私は、この引用された文献についても、もう一ページ先の二千六十八ページ、ぜひとも坂口厚生労働大臣にお目通しいただきたいと思います。

 二千六十八ページには、逆に、そうした「精神保健の専門家によるリスク・アセスメントにおける債務の限界」、限界ということが繰り返し述べられております。「十分な量の経験的な事実が存在し、臨床的な意思決定を導くこと。」が、その一でございます。残念ながら、我が国における法を犯した方々、精神障害がなおかつおありな方々について、どのような援助がその方にとって一番望ましいかを十分な経験を積んでおるとは言いがたいその事象に、予測、予見性を立てるわけです。そして、「予測は潜在的に変動しやすいことを明白に述べること。」が四でございます。あわせて、最も強調しておきたいのは、五番目に述べられておりますが、「極めて例外的な状況を除き、彼らの刑期を引き伸ばしたりする立場にはない。」

 精神医療というものは、その患者さんとみずからの治療の関係において成り立つものでございます。極めて現在的な関係でございます。将来を予見、予測するということは、今回この法律の枠組みがそのようなものであるがゆえに、精神医療の現状を逸脱していると言わざるを得ない、これが繰り返し指摘されたところでございます。

 大臣が本会議で答弁なさいましたので、原文を厚生省から送っていただき、私も読んだばかりのところではございます。しかしながら、やはり医療にかかわる者はおのれの限界を知るべきです。おのれが医療の中に治療という名で取り込んだことの結果が、かえって患者さんの全人間的な発達を保証しない、あるいはその方の全人間的な人権を損なうことすらあるということが、医療者が知らねばならない出発点だと思います。

 私は、この点についてきょう坂口厚生労働大臣にお伝え申し上げましたので、物の読み方ではございますが、精神医療に、特に司法精神医療にかかわる方たちが何を限界と感じておられるかという点について、重ねて御検討をいただきたいと一点お願い申し上げます。

 引き続いて、森山法務大臣にお願いいたします。

 私はこの法案審議にあって、先ほど申しましたが、従来法務省の中で、例えば精神障害があり法を犯した方たちの処遇をいかにすべきか、七四年の、いわゆる世で言われておりますところの保安処分問題、八一年も同じような形の中で論じられておりますが、それが法制審議会等々にもかけられて、一連の法務省内での論議の過程があろうかと思います。

 先回の法務委員会においても、民主党の平岡委員が平成十二年の法務省の刑事局のメモを御参考に述べられましたが、このメモの中では、いわゆる再犯の予測ということについては極めて多々困難があり、これがまだ解決されておらないというメモがございました。そのことについて森山法務大臣は、先回の委員会では、基本認識は変わっておらないという御答弁でございましたが、再度確認をさせていただきます。

森山国務大臣 御指摘のメモにつきましては、「試案・手持メモ」と書かれておりますように、法務省刑事局の確定的な見解を記載した文書ではなくて、これに関する記録がないため確定的なことはお答えできませんが、平成十一年十一月ごろ、この問題について関心を有する方々による議論、検討の場に参加した際の手持ちのメモとして非公式に作成されたものではないかというふうに思われますが、御指摘の部分は、危険性の予測につきまして、主に医療関係者から、そこに記載されているような問題が指摘されているところに困難な課題がある旨を記載したものと思われます。

 しかしながら、現代の精神医学によりますと、本法律案におきます再び対象行為を行うおそれにつきまして、精神科医が本法律案の第三十七条第二項に規定する事項を考慮して慎重に鑑定を行うことにより、その有無を判断することは可能であると考えており、精神保健福祉法による措置入院に際しても、精神保健指定医がその者の自傷他害のおそれの有無を診断しておりますし、諸外国におきましても、医師により、その精神障害に基づき再び他人に危険を及ぼす行為を行うおそれの有無が判断されているというふうに承知しております。

阿部委員 今の御答弁、順次私の方からも論じさせていただきますが、一つは、精神医学界においてそのことが可能になったというふうに申されましたが、それは私が坂口厚生労働大臣にお尋ね申し上げました一点目ですので、あえて繰り返しません。

 精神医学の中に多々論議があり、むしろ我が国の精神医学においては、現時点ではない将来予測は不可能である、これは、触法精神障害者と括弧して呼ばれる方々の問題に一番深く携わってきた西山先生たちのコメントでもあり、これは森山法務大臣もお読みいただきたいと思います。

 そして、前回の審議の中では、そのような御答弁ではございませんでした。前回の審議の中では、これは高原政府参考人、あるいは古田政府参考人、御両者の意見を合わせた上で、医師のみでは再犯のおそれについては十分に予見、予測し得ないので裁判官を合わせて合議体で行うというのが、前回の法務委員会での御答弁を要約したものでございます。

 重ねて伺います。

 ここで合議体になさる意味は何か。前回は、再犯の予測ということについてるる、医師のみではできないと。これは議事録ですから、お読みいただければはっきりいたしますから。そこを、無理なことを強いるのではなくて、裁判官も合わせて判断のもととなさるという御見解でしたが、いかがでしょうか。

高原政府参考人 そういうふうに御理解いただいたとしましたならば、かなり私としては残念でございます。

 第一番目は、大臣から申し上げましたように、この間、例えば、委員も日常お使いだろうと思いますが、MEDLINEとかMEDLARSという医学データベースに公表されている実証的な予測研究の論文の数は、九〇年代に入って、八〇年代から数倍の勢いで上昇いたしまして、八〇年代後期から二〇〇〇年にかけて、その予測能力につきましては広く受け入れられるに至ったと考えております。

 また、裁判制度をこの決定に関与させるとしたことにつきましては、そういった医学的な判断ではなくて、一定程度の自由に対する制約を伴う医療であるため、デュープロセスと申しますか、しっかりとした、きちんとした正式なプロセスを踏んで、患者さんの人権を必要以上に抑えるということがないよう厳重な制度としたものであるということでございまして、これにつきましては、本日も、法務大臣、厚生労働大臣からお答え申し上げている点でございます。

 医師の予測が不可能であるため裁判手続によって予測を可能としたということは、全く私どもの意図しておるところとは異なりますので、賛否は別といたしまして、事実問題として訂正させていただきたいと思います。

阿部委員 では、高原政府参考人にあっては、前回の議事録をよくお読みいただきまして御答弁願いたいと思います。

 そして、私から申し述べますに、今のような御答弁であれば、むしろこれは法務省サイドとしてきちんとした枠組みを、本来法務省の中でおつくりになるべきだと思います。

 先ほど私が森山法務大臣に伺いましたが、これを法務省サイドでつくる場合は、以前に問題になた保安処分制度、その中の特に治療的、矯正的な、社会復帰ということを念頭に置いた矯正的な保安処分のあり方の一つとなると思います。あえてそこに持っていかずに、半分医療サイドに投げ込んだ中で責任の所在をあいまいにして、このような枠組みをつくるということはいかがなものかとも思います。

 そして、きょう、もう一点だけお願い申し上げます。

 皆さんのお手元に参考資料で配らせていただきましたが、これは現在、措置入院という形で扱われている患者さんの現状でございます。御答弁は坂口厚生労働大臣にお願いいたします。

 きょうの委員会でも措置入院制度と今回の新たなスキームの違いが論じられておりましたが、ここもなかなか本日の御答弁では実は明確ではございませんでした。しかしながら、その点をさておきましても、皆さんにぜひとも御認識いただきたいのは、措置入院患者さんの受け入れ状況で、大学病院、国立病院、都道府県立病院、指定病院という区分けの中で、指定病院、いわゆる民間病院を主体とした指定病院が非常に多いという事実でございます。

 二段目に移りまして、では、そのおのおのの看護スタッフはどのようであるか。いわゆる三対一基準を満たしておるものは、国立病院、都道府県立病院では八、九割でございますが、指定病院と言われる民間病院ではほとんど三対一以上、三・五以上、一対六という形の手薄な看護。

 そして、その下でございますが、医師についても非常勤が多うございます。

 そして、その次のページを見ていただきたく思いますが、その次のページの二段目、措置入院患者の状況でございます。

 措置入院患者さんの中でも、大学病院、国立病院、都道府県立病院、指定病院の中で、とりわけ指定病院は、民間病院が九割ですが、見ていただければわかりますが、現状の措置入院でさえ、十年以上二十年未満という形で指定病院に措置入院で入院されている方が二百八十三、二十年以上の方が八百十七名とおられます。

 この数、坂口厚生労働大臣にあっては、三千二百四十七名の措置入院の患者さんのうち四分の一は、二十年以上も民間の病院で、看護婦数の少ないところにおる。私は、厚生省としてまず手をつけるべきは、この当たり前の現状をどう具体的に変えていくかにあると思います。抽象論議ではなくて、このような二十年以上に及ぶ患者さんの幽閉です、これが現実にある現状に手をつけるのがこのボールを受け取る前の厚生省の役割と思いますが、一言御意見を伺って、終わらせていただきます。

坂口国務大臣 一般病院のあり方につきましても改革を加えていかなければならないというふうに思っていることは、先ほど中川議員の御質問にもお答えをしたところでございます。そして、それを行っていきますときに、まずどこをやるべきかという優先順位があるということも申し上げたとおりでございますが、御指摘をいただきましたところも十分尊重させていただきながら、我々、その改革に取り組んでいきたいと思います。

阿部委員 私がお示ししたのは措置入院のデータでございますので、極めて重く受けとめていただきまして、よろしく前進していただきたいと思います。

 ありがとうございました。

園田委員長 次回は、来る九日火曜日午前十時から連合審査会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

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