第154回国会 法務委員会厚生労働委員会連合審査会 第3号(2002/07/12) 抜粋

議事録全文(衆議院のサイト)

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 前回に引き続きまして、本日が第二回目の厚生労働省と法務省の合同審査という形で持たれておりますが、先立って、昨日、この両委員会で松沢病院並びに成増厚生病院の視察を入れていただきました。議員各位も御承知と思いますが、松沢病院は日本の精神医療の中で一番、人的な、スタッフ面でも敷地面でも恵まれた病院でございます。そして成増厚生病院も、いわゆる民間病院の中では充実したスタッフと、それからいろいろな地域医療への試みがなされている、ある意味では点数の高い病院でございます。

 この二つを視察して、でも、なおかつ、私は思いますが、一般の入院の病棟と、そして松沢病院並びに成増病院の、まずアメニティー、広さ、古さ、そしてやはり隔絶された感覚、これは果たして何であろうか、我が国がまだまだ、一般医療と精神医療ということにおいて、まあ六割、精神医療はまだ一般医療の六割にも及ばないところでの実践をしておられるなと、私は改めて昨日の視察で思った次第であります。

 実は、私は、学生時代、精神科医になりたいと思いまして、松沢病院には約三年以上ボランティアとして通ったことがございます。そして、昨日、松沢病院の院長がおっしゃいました、早くにこの法案を成立させてほしいと。しかし、その背後にある真意は、やはり正直申しまして、医療者として、人手がかかる、やはり綿密な治療を必要とする方を何とか区分けして、今ほかの患者さんに手の回らない分回したいというお考えでした。これを医療者側から見れば、ある種納得する考えもありましょうが、私は、本委員会の審議も含めて、これまでの審議に大きく欠けているものがあると思います。

 これまでの参考人の中でも、なぜ精神病を病む御当人、当事者、御本人たちがこの場に呼ばれなかったのでしょうか。私は、精神医療にかかわる医師すら患者を差別する、これは人間がある種本当に業として持つような、やはり何か自分とは違うんじゃないか、危険なんじゃないか、そういう感覚を持ちやすい、私すら持っているであろうという現実を踏まえたときに、この法案の対象となります精神障害の方、そのまた一部が触法、法を犯されるようなところに追い込まれるわけですが、この方たちを呼ばずしてこの審議がこれ以上進んでいっても、先ほど言いました処遇やいろいろなことに手のかかる、医師たちから追い出される形で、犯罪を犯した患者さんたちという形で区分けされていくことになりはしまいか、極めて不安でございます。

 そこで、委員長にお願いがございます。この合同審査の委員会において、ぜひとも患者さんの声並びに患者さんの人権に深くかかわってこられた方の声を委員会として聴取していただく場を御検討いただきたい。まず一問目、お願いいたします。

園田委員長 これからの審議をこれからいずれにしろ検討することにしておりますので、そういう御意見も参考にさせていただきたいと思います。

阿部委員 この点はぜひとも、例えばハンセン病問題でも、その施設に隔離されて長い年月を過ごされた方の声、これは当事者の声を聞かずしてやはり私ども、そうでない者はわからないというこの大前提から出発しますので、重ねてお願い申し上げます。

 そこで、森山法務大臣に通告外のことで御質問がございます。

 森山法務大臣は、この法案の御提出に当たって、精神を病む方たちの当事者の方たちにお目にかかられたことがありましょうか。まず一点お願いします。

森山国務大臣 この法案提案に関してということはございませんでした。それ以外のことでは何度かあるものでございます。

阿部委員 では二点目、お願いいたします。

 特に、法務大臣御管轄の刑務所内の精神障害をお持ちの方、そして医療刑務所内で精神障害ゆえに療養している方、この方たちにはお会いになったことがございますでしょうか。

森山国務大臣 残念ながら、医療刑務所を訪問することが今までできませんでしたので、そういうことはございませんでした。

阿部委員 私は、かかる法案を提案するに際して、このテーマは触法精神障害者でございます、片や医療刑務所で、あるいは刑務所の中にも約千人精神障害ということをあわせ持った方が受刑しておられます。そして、医療刑務所には五百数十人だと思います。こうした方たちの治療の実態、処遇の実態、受けておられるいろいろな心の問題、ぜひとも大臣の責任においてお訪ねいただきたいと思います。

 なぜ私がこうしたことを申し上げるかといいますと、実は、私はきょう、これもぜひとも森山大臣にお願いしたいのですが、私の古い友人で、もう昭和四十八年に亡くなられた小林美代子さんという作家がおられます。この方は、三十八歳から精神病院に五年間入院歴をお持ちで、五十四歳、ちょうど今の私の年ですが、そのときに群像の新人賞を受けられ、その受賞理由は、精神病院の御自身の入院経験を書かれた「髪の花」という御本が受賞の対象でございました。精神を病みながら、自分の顔も忘れてしまったお母さんに対してつづられたこの本は、以降、長く精神病院で入院しておられる他の患者さんたちに読み継がれて、今も隠れたベストセラーでございます。

 その彼女の言葉から、私は、あえてきょう、ここで本来は精神を病む方たちの御本人が御発言いただければいいのですが、私が代読する形で彼女の言葉の幾つかを引かせていただきます。「看護者は正常な人間の代弁者として、私達に人間に価しない屑、動物にも劣る自分を認識せよと、ことあるごとに明らかにその証を指摘する」。「正常な人間が書けば、何事も、それが真実の重みを持って、誰からも信じられる。」しかし、この裏は、患者であれば、精神障害であれば、例えば文学作品を書いたとて、それは一つの本当の作品としての評価を得ることがない。

 実は、私は彼女が自殺する二日前に井の頭公園で彼女と散歩をした後、吉祥寺駅で別れました。八月のお盆のことでした。昭和四十八年でございます。その十日後、彼女が自殺されて腐乱死体でお部屋で発見されたという記事が載りました。彼女は井の頭公園を歩きながら何度も私に、私が精神病院で経験したことを幾ら書いても、それは精神障害のことを書いて、精神障害者の声としてしか受け入れられない。私は文学者、文学をきわめたい、そう思いながら、決して、この一たび張られた精神障害というレッテルゆえに、私自身の作品は本当の意味では認めてもらえないということを繰り返し言っておられました。私はその言葉を聞きながら、そして彼女の自殺の報に接しながら、なぜ私がそのとき彼女が発していたそのメッセージを、恐らく私が彼女に会った最後の人間だと思うのです、そう思ったときに、自殺も予測できなかった自分、自傷他害の自傷です、私はそのことをもって実は精神科医になることをあきらめましたが、今でも忘れられない。そして、私は三十年ぶりの松沢病院で、私がまだ学生のころ診た患者さんが今もってそこにおられるのもお目にかかりました、向こうが認識してくださっていたかどうかわからないので、お目にかかったとは言えませんが。

 せめてこの法案の審議に先立って、森山大臣には、彼女が群像の新人賞を受けた「髪の花」という本です、今の精神医療の現状をただ声高に指弾するだけでなく、彼女は、どのようにその精神障害の方たちの心が入り組み、悲しみにとらわれ、縛られているかということを綿密に述べておられますので、お読みくださいますようにお願いします。

 そして、その彼女が言っていたことです。「一人の異常者の為に、私達全員の精神病患者が裁かれる。患者以外の人間が千人に一人罪を犯しても、九百九十九人は罪に問われないが、私達は全員直ちに裁かれる」。しかしながら、彼女は同時に言っていました。そのことをもって、自分だけが例えば受賞したからといって、精神病という集団を抜け出して違う評価を受けたいのではない、精神病という病を病む人たち全体のことを理解してほしいと。

 私は、今つくられている法案が、本当にこの一部の手のかかる人を取り分けることによって、逆にさらにこの世に存在する精神障害への差別を助長する、危険な病棟に入り、殺人まで犯したあの病棟に入った人よと社会は見ます。そのことの方が恐ろしくて、多少の改善面はこの法案にもあると思いますが、大きく見れば患者さんのこの社会に受け入れられる枠を否定することになると思って反対の立場をとっています。

 そして、きょうの審議の中で、森山法務大臣が、たとえ数は少なくてもこの法律は必要なんだとおっしゃったときに、きょう金田委員はなぜこの質問をされたか。二千三十七名の他害のうち約一一%再犯があると。であれば、坂口厚生労働大臣が言われる三百人から四百人のこの病棟の患者さんのうち、本当に他害、簡単に率で算出しませば三十人から四十人の方の再犯行為に対して、残る三百数十名は強制的にその治療を受けさせられていくわけです。

 もしもこの比率をきちんとせずしてこの法案を進めた場合、私はしても問題はあると思いますが、ここに生じてくる大きな人権侵害、強制治療による人権侵害に、法務省として認識が余りにもない御発言ではないか。

 もう一度伺います。この法案の提案者お二人に、果たしてこの法律によって対象となる方の数、これはどの委員もきょう聞かれました。どなたも聞かれたのに、お二人とも明確ではございません。まず森山大臣から、もう一度御答弁をお願いいたします。

森山国務大臣 今までたびたび申し上げましたように、今ここで大体何人ぐらいであろうということを申し上げることは正直難しいわけでございまして、しかも、大変数が多いからというのではなく、現にそのような状況に置かれた方がいらっしゃるということがこの法案の立案の理由でございますので、そのために必要な手続を決めておくというのがこの目的でございますから、数の問題ではないと私は思います。

阿部委員 やはり法律を提出するときには、それの立法根拠となる大まかな指標は必要と思います。それは大まかなものでも構わないと思います。でも、私は、この法律の切り口が誤っていると一つ申し上げなければなりません。

 昨日、やはり夜、テレビで池田小学校事件の公判の様子が報道されておりました。森山大臣に伺いますが、この池田小学校事件、司法当局として今お考えになって、何か努力すべきことがあるでしょうか。お願いします。

森山国務大臣 池田小学校事件そのものにつきましては、今公判中でございますので、私からコメントをすることは差し控えたいと存じます。

阿部委員 そういう御答弁と思いました。

 しかしながら、それでは、想定されるこの対象の方たちの数もまだわからない、国民が一番案じている池田小学校事件についても公判任せ。では、一体、この触法精神障害者問題を法務省として考えていく場合の切り口はどこにあるのか。そのことが一向明確でないままに法案だけの形ができ、想定でアバウトに人が囲い込まれて、強制治療による人権侵害が行われていきます。

 こうした法体系は、先ほど西村委員もおっしゃいましたが、普通の司法の場ではすべてオープンで本来行われるべきです。この指定入院に至る過程は全く密室の中で行われる。そのこと一つとっても、いかに人権感覚に逆行するシステムかということが明らかかと思いますが、法務大臣がきちんとおっしゃらない点、いわゆる池田小学校事件は、本委員会でも再三再四問題になっておりました。また、きょうの朝日新聞にも出ておりました簡易鑑定のあり方の問題が明確にここに指摘されていると思います。

 そして、この委員会で、先回の私の質問で資料提供をお願いいたしまして、そのことにより明らかになったことは、やはり簡易鑑定による地域差、起訴率の地域差も著しい。そして、このことを、なぜという踏み込みをせずして法務省として前に進むのであれば、やはり私は同じような事件は同じように起こるであろうと思います。

 この地域差、それから今後の取り組みについて、担当部局からお考えを伺います。

横内副大臣 私から御答弁を申し上げます。

 委員、簡易精神診断に付した割合とか、あるいは精神障害を認定した者の不起訴率といいましょうか、それが非常に地方検察庁によってばらつきがあるという御指摘、その理由は何かということだと思います。

 確かに地検によって差異があるわけでございますけれども、簡易診断に付した数、それから不起訴となった人の数というのは、各地検が受理した人員全体からすれば大変数が少ない、絶対数として少ないものでございまして、したがいまして、その調査対象年度、委員にお示ししましたのは十二年度でございますが、どのような事件が発生をしたのか、また、個々の犯人の状況がどうであったかというような個別具体的な事情が相当程度影響して、こういったばらつきが生じているというふうに考えております。

 いずれにしましても、検察当局におきましては、精神障害の疑いのある被疑者の事件の処理に当たっては、犯行に至る経緯とか犯行態様、犯行後の状況等について十分に捜査をした上で適切な処分をしているというふうに考えております。

阿部委員 もしも一年間の統計で個別のばらつきが消えないのであれば、統計学的には年数をふやせばよいわけです。五年見ていただきたく思います。

 それからまた、私どものいろいろな分析においては、やはり鑑定医の数が限られているところはその鑑定医の認識によりやすい、偏りやすい。そこで、先回の委員会でも申し上げましたが、鑑定医を千葉県のようにプール制にする、そうしたことも具体的にできる対処の指導だと思います。

 こういう法案をお出しになるに当たって、現在、本当に、この立法根拠となった国民の持っている不安は何であるのか。これはいたずらな差別感の助長による場合もありますが、例えば、宅間容疑者は、人格障害と言われ、公判中ですが、彼が何回かの刑務所の刑に服し、あるときは分裂病と呼ばれ、また今では人格障害と診断名が変わっていく。このことの中に非常に問題が浮き彫りにされていると私は思います。

 事実にきちんと目を向けて、余分な国民の差別感をあおることなく法をつくるのが国の役割と思います。今の御答弁であれば、ぜひ五年間と、鑑定にかかわる医師の数をきちんと把握されて、次の御答弁をお願いしたいと思います。

 森山法務大臣にお願いいたします。

 前回の山上参考人の御発言の中で、受刑中に発病して、刑務所や医療刑務所では十分な治療が受けられておらずに、引き続いて重大犯罪を起こすような方が八割なのだという指摘がございました。こういう認識は大臣はお持ちでしょうか。

森山国務大臣 山上参考人の調査結果によりますと、昭和五十五年の一年間に、重大犯罪を犯しながら心神喪失者または心神耗弱者と認められた精神分裂病者のうち、四回以上の前歴を有する者が三十六人おりまして、このうち約八割の者が犯罪を繰り返した後に精神分裂病に罹患し、さらに犯罪を重ねているとの報告がなされたということを承知しております。

 受刑中に一度精神病と診断されますと、次の事件から罪を問われることなく、司法の手を離れ、一般の患者として医療の側に送られてくるとの点につきましては、不十分な鑑定に基づいて安易に不起訴処分が行われているとするものではなくて、不起訴になった者が一般の患者として精神医療を受けており、専門の処遇制度等のもとで適切な治療を受ける体制にないことを指摘したものであるというふうに思います。

 なお、検察当局は、あらかじめ、犯行に至る経緯、犯行態様や犯行後の状況などについて必要な捜査をいたしまして、事件の真相を解明した上で、犯罪の軽重や被疑者の責任能力に関する専門家の意見等の諸事情を総合的に勘案するなどして、適切な処分を行うよう努めているものと承知しております。

阿部委員 ただいまの森山大臣のお読みになっった部分は、山上参考人のおっしゃったことのごく一部を恣意的に解釈されたと私は思います。

 あのとき参考人は、むしろ、刑を犯しながら、繰り返しあるところで精神鑑定を受け、それ以降は精神病院に行って、こういうケースが多いんだとおっしゃいました。ということは、彼のおっしゃる前段、刑を犯した場合に、先ほど私も申しました、全体の、五万人余の受刑者のうち、千人は精神障害がおありであると。もしもその時点できちんとした医療やサポートがあれば、あるいは発病がない場合もありましょう、しても決定的に至らない場合もありましょう。

 私は、本当の予防とは、やはりそこに目を向けて、現在極めて劣悪な医療状況である普通の刑務所の中の精神障害をお持ちの方、そして医療刑務所の中の精神障害をお持ちの方、この方たちにぜひともまず普通の精神保健福祉法並みの待遇をしていただきたい。施錠され、そして、通常であれば受けられる作業療法等々もほとんど施行されておりません。それゆえに森山大臣にはぜひともその部分の視察をしていただきたいと私は申し上げましたが、そのことが実は本当の意味の予防に大きく貢献するであろうと私は思っています。

 今の医療刑務所の精神障害者の方たちの治療実態を皆さんにお知らせしたくて、数値でお示しできるものですが、きょう皆さんのお手元に参考資料を配付させていただきました。「行刑施設における医師の配置状況」というものでございます。このうち、例えば北九州医療刑務所では、患者さんの数は、下を見ていただきますとわかりますが、百十七名。このうち、今度上に参りまして、精神科医の数は二名でございます。百十七名の患者さんに二名の医師。岡崎医療刑務所では、百六十九名の患者さんに三名の医師でございます。

 この方たちに、果たして本当に手厚い、カウンセリングも含めた、あるいは家族関係の調整も含めた、あるいは退院後のフォローアップ体制も含めた手厚い医療を行うには、一人の医師が五十数名も六十数名も抱えたのでは現実的に不可能です。そして、そうしたことを実際医療刑務所で働くお医者様たちは多々指摘しておると思います。私は、このほかにも看護者の数その他、本来は得たかったですが、わかります資料が、明確なものはこのようなものでしたので、本日これをお示しさせていただきました。

 この件も含めて、森山大臣に再度、御意見、御決意のほど伺いたく存じます。

森山国務大臣 刑務所は、刑の執行機関であります。そのため、いろいろと制約もございますけれども、そのような制度的な枠組みの中で、精神科医による専門的治療を必要とする受刑者につきましては、精神科医を重点配置した医療刑務所等に収容いたしまして、カウンセリングなどの精神療法や、焼き物、園芸とか紙細工といったような作業療法、薬物療法等の治療を行いまして、病状の改善が認められた場合には一般の刑務所に送り返すということにしておりますほか、その釈放に当たっては医療の継続がなされるように配慮しておりますが、医療刑務所によりましては医療関係職員に欠員を生じている施設もありますので、これを速やかに補充するなどして、一層適切な医療が行えるように努力いたしたいと存じます。

阿部委員 今いただきましたお話は、ごくまれに、刑務所の看守の皆さんが自発的に、この受刑者に対して、かぎを持っておりますから、彼らしかかぎをあけられませんから、そのかぎをあけて、ほんの少しだけ、例えば作業療法的なものをやっているところがごくまれにあることを、あたかも全般がそのようになっているかにおっしゃられるのであれば、それはもともと、この法案の触法精神障害者という方の置かれた実態を余りにも御存じない。先ほどどなたかが官僚答弁とやじがありましたが、私は、官僚というものがそんなにも一面的なものとは思っていません。現実をきちんと把握してこそ、立法根拠も、そして現状の改善もできるのですから、通り一遍をなでるのではない対応をお願いいたします。

 引き続いて坂口厚生労働大臣にお願いいたします。

 きょう、各委員からるる御質問があり、特にハンセン病で頑張ってくださった坂口厚生労働大臣に、こうした精神障害の方たちを一部隔離していくような向きの法案をつくっていただきたくはないと、皆さん必死におっしゃっていたわけです。私も思いは同じですが、坂口厚生労働大臣に一つ世間的なことを伺います。「砂の器」という松本清張の映画をごらんになったことがありますでしょうか。

坂口国務大臣 遠い過去の話でございますが、見た記憶がございます。

阿部委員 私も遠い過去に見て、そして、最近というか、このハンセン病問題で改めて見てみました。

 あの「砂の器」とは、治療という名において、善意で、とても優しいお巡りさんがハンセン病にかかったお父さんを隔離、収容していく、そして、その子供さんが何十年を経てこのお巡りさんを殺してしまう話でした。隔離され、その間際まで子供はお父さんを追いかけて、ずっと放浪の旅を続けます。私は、ハンセン病問題も、いたずらに差別しようと思った結果ではなくて、治療で、離して、専念してもらうのがよかれかしと思った結果であると思っています。

 坂口厚生労働大臣に、この今回の法案に関して考えられている施設の数、十カ所と御答弁いただきました。果たして、これが地域に帰れるような場所になるのか。センター病院から自分の暮らす場所に帰ることは、通常の医療でも大変です。私は、小児の専門の日本で初めてできた国立小児病院に勤めて、例えば障害児の就学とか、長く抱えなければいけない御病気の方たちが、そこの病院にわずか三カ月、六カ月入院しただけで生活基盤から引きはがされる。本当につらい思いを医者としてしてきました。

 ですから、最後に一言お伺いいたします。全国十カ所のセンターが地域精神医療というものと本当に連携していけるとお考えか。あるいは、まかり間違えば隔離になって、その方の一生を地域から引きはがしてしまうのではないか、このことについての御答弁をお願いします。

坂口国務大臣 それは、指定病院と地域病院、あるいはまた、その人たちが地域に帰りましたときのその人たちを支える態度をどうつくり上げていくかということが一番大事でありまして、そこができれば可能になるというふうに私は思っております。

 ただ、御指摘のように、精神障害者に対します差別、偏見というのがあることも事実でございますし、こうしたことをなくしていくという幅広い努力がやはり必要だというふうに思っておりますが、いろいろのお話を聞いて、なるほどというふうに思うところもございますけれども、ただ一つ阿部先生と私と違いますのは、罪を犯した人たちに再びそこを犯させるようなことがあってはならない、それがまた再び多くの皆さん方に、精神障害者の皆さん方に差別、偏見を生むことになってしまう、そこを確保していくと申しますか、そこをどうこの悪循環を断ち切っていくかということから考えれば、この法律というのは大事になってくるというふうに私は思っている次第でございます。

阿部委員 私は、実は大臣と思いは同じでございます。でも、そのための手段は、例えば宅間容疑者の事件であれば思春期の精神医療だと私は思います。

 十七歳の発病。この間、非常に社会を騒がすさまざまな人格障害や精神病との境界領域が多く思春期に発症しております。日本の中で全く手をつけられておらないこの分野に、大臣としてぜひとも御見識を振るっていただきたいとお願いして、質問を終わります。

園田委員長 本日は、これにて散会いたします。

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