第154回国会 厚生労働委員会 第2号(2002/02/27) 抜粋

議事録全文(衆議院のサイト)

阿部委員 同じく社会民主党の阿部知子です。

 私、午前中、財務金融委員会におりましたために、重複した質問があるかもしれませんので、もし既に出た質問でしたらお許しください。

 関西医科大学における研修医の過労死認定について伺います。

 さきに、昨年八月、大阪地裁の堺支部が、いわゆる研修医の労働に対して労働者性を認定するという形で、御遺族に対して遺族共済年金や未払い賃金を支払うことを命じました。実は、この亡くなられた森さんという研修医の場合に、時給百五十円換算で働いておりまして、未払い賃金も合わせて八千万円近くだったと思いますが、そのような裁定がおりました。それに引き続いて今回は、この研修医の過労死を認定し、約一億三千五百万円の損害賠償の支払いを命ずる大阪地裁の判決でございました。

 まず冒頭坂口厚生労働大臣に、この判決についての御感想を伺いたいと存じます。

坂口国務大臣 今回の判決は、今御指摘になりましたとおり、関西医大で研修をされておりました研修医の死亡につきまして、過重な長時間労働による過労死を認定したものと承知をいたしております。亡くなられた研修医の方に改めて哀悼の意をささげたいと思います。

 厚生労働省におきましては、平成十六年の四月から、インターン制度を廃止以降三十五年ぶりでございますけれども、大きな改革をして、卒後の臨床研修の必修化を行うこととしておりまして、現在、研修医の処遇をどうするかといったことにつきまして検討を進めているところでございます。

阿部委員 この地裁判決に関しまして関西医大の方の見解、新聞紙上等の報道によるものですが、例えば、研修医の身分は大学院生に近く、給与というよりも奨学金を支給しておるんだというふうな認識に立っておるわけです。

 ちなみに、先ほど中川委員が取り上げました東京女子医大、ここで研修中の研修医は医療練師と呼ばれておりますが、月の医療練師としての給与はお幾らか、坂口厚生労働大臣御存じでしょうか。ごめんなさい、急で。予告ありません。

坂口国務大臣 申しわけありませんが、存じません。

阿部委員 二万五千円でございます、月に。

 そして労働、まあ拘束時間あるいは研修時間と申してもよろしゅうございますが、例えばこの森大仁君の場合には月に二百六十時間から三百時間、これは、普通、実労働で百六十時間というのを二倍に上回る拘束並びに実労働時間をしておりました。こうした一番若くて体力もある方たちが、逆にこのような長時間労働の中、低賃金の中働きながら、この方は過労死なさいました。

 そこで、坂口厚生労働大臣並びに担当部署にお伺いいたしますが、今、平成十六年度の研修医の義務化ということを控えて、こうした研修医の労働研修実態、賃金あるいは大学当局とのいろいろな師弟関係、指示命令関係についての実態について、厚生労働省としてはどのように把握しておられるか、お答えをお願いします。

篠崎政府参考人 研修医の労働実態等の把握についてでございますが、私ども、臨床研修病院及び大学附属病院における処遇の実態ということに関しまして、昨年八月に、文部科学省とともに、臨床研修病院四百七十六病院、大学附属病院百三十一病院を対象として調査を実施したところでございます。

 調査結果につきましては、現在取りまとめ中のところもございますので、一部でございますが御披露いたしますと、例えば臨床研修病院での一月当たりの研修医の日直及び当直の回数でいいますと、日直は一・一回、当直は二・六回となっております。また、一週間当たりの平均勤務日数で申しますと、これは臨床研修病院と大学附属病院がありますが、臨床研修病院の方は約五・二日、大学附属病院の方はこれも同じ約五・二日でございます。

 また、給与につきましては、臨床研修病院の場合には、平均でございますが月額約二十八万七千円、大学附属病院の場合は月額約十五万五千円等となっておりまして、まだ取りまとめ中でございますので、最終結果、まとまりましたら御報告をさせていただきたいと思っております。

阿部委員 調査方法について、一つお願いがございます。

 実は私も臨床研修指定病院の院長をやっておりましたが、今御報告のように、軒並み、臨床研修指定病院の方が研修医への手当はきちんとしております。そして、特に劣悪であるのは、私学の大学病院でございます。これを例えば大学関連とならしますと、国立病院と私学の差が消えてしまいます。先ほど申しました一番安いところ、東京女子医大二万五千円から、私学の場合は平均十万から十五万にわたらない額で長時間労働をしております。

 そして、並びにでございますが、大学は当然師弟関係、上下の関係の中でとり行われているところで、大学当局に労働実態を聞いてもなかなか実像は出てまいりません。ここで研修医そのものにアプローチして労働実態を把握していただかないと、なかなか本来の姿が浮かんできません。実は、私は大学で十年以上研修医の指導にもかかわってまいりましたが、例えば私が聞いても言わないことすらあると思います。

 やはり、研修医という当事者たちに直に聞けるような、直に調べられるような、というのは、坂口厚生労働大臣よく御存じですが、自分の当直日でなくても、患者さんが重症化すれば当然残っていなくてはならない。また、私は、残るような医者を指導したいとも思います。

 そうした中で、実際の労働時間、実際の拘束時間がどうなっておるかということが一番大切な点でございます。恐らく、先ほどの篠崎局長のお答えの中では、大学にアンケートを投げて返ってくる形にしかなっておらないと思います。この点について、とりあえずは御報告を受けますが、真実の姿が浮かぶようにしていただかないと、先ほどの関西医大の例でも、大学院生と同じような身分と認識しておると。大学院生は学びながらですから、ある意味で自分でその時間、自由裁量がきくものでございます。しかしながら、臨床というのは、相手の状態に合わせて自分も拘束される。やはりそこの違いは非常に大きいものでございます。

 この辺があいまいにされて、研修が義務化されたときに、やはり非常にいびつな形になると思っておりますし、私自身は、後でも申しますが、大学で、特に特定機能病院等々で多発する医療ミスの一環にこうした研修医の不安定、低賃金、そして本当に上下、上意下達方式のさまざまな大学の弊害が大きく横たわっておると思いますので、試しに大学当局に聞いたアンケートと研修医に聞いたアンケートの差をお出しになるくらいの御見識を求めますが、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

篠崎政府参考人 今の調査結果がまとまったらまた御報告いたしますが、昨年の七月に、東京の私立医科大学一つ、臨床研修病院一つから、それぞれ研修生の方から御意見も伺っております。

 また、先ほど大臣から御答弁がありましたように、平成十六年、三十五年ぶりの大改革でございまして、その中で一番大きな問題は処遇の問題であろうというふうに考えておりますので、その辺もあわせて、今後しっかりと、その実態を見きわめながら、処遇も含めて立派な研修制度に仕上げていきたいと考えております。

阿部委員 そうした厚生労働省の認識は極めて大切な方向性と思いますし、ですから、せめて一つ一つとか言わないで、多くの条件の違いのある研修医の実態そのものを把握しようという意気込みでやっていただきたいですが、再度坂口厚生労働大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 十分に検討させていただきます。

阿部委員 ありがとうございます。

 次に、過労死認定について伺わせていただきます。

 昨年の十二月ですか、過労死の労災認定基準が改正されました。大変によい方向への改正ですし、厚労省の御努力を評価するものですが、改正の主な点は、いわゆる長時間の過重労働を六カ月にさかのぼって、特に脳血管系の病変について認めていこうと。森大仁さんも心臓の突然死でございましたし、それから、多く係争中のものも、特に脳血管障害あるいは心筋梗塞並びに心臓の突然死などは、これまでの一週間という期限で見たのでは必ずしも過労死という形の認定がされなくても、さかのぼること六カ月、その長時間労働あるいはストレス、さまざまな精神的な状態を考えると過労死認定されるものもあるということで、極めてよい改正と思っております。

 そして、その改正に基づいて、例えば裁判で係争中の事例についても、例えば中央労働基準監督署の方の判断で、ついせんだっても光文社の事件、二十四歳の若者の死が、裁判で係争中ながらも、労働基準局の方で取り下げて、改めて労災認定されるという事例も起きております。そのほかに、長野の伊那においても、労働基準局の見直しにおいて、やはり二十六歳の青年の突然死を労災認定なさいました。

 この前向きな改正後、労働基準局として前回の判断を見直して前向きに再認定なさったような事例はこれまで何件ございますでしょうか。

日比政府参考人 現時点で申し上げますと、八件につきまして、原処分を原処分庁でやり直ししたところでございます。

阿部委員 何度も申しますが、これは大変によい改正点でございますので、現在、去年の十二月にこの改正がなされた八件というのは前向きな数値と思いますし、さらに進めていただきたいですが、実は今、労働基準監督局というところを通り越してと申しますか、その後、労働局審査官並びに労働保険審査会にまで上っておる事例が百七十二件ございます。

 これについては、もちろん労働基準監督局が判断し、労災ではないという形で次々に送られていったもので、裁判という係争にはまだ至っていない事例が百七十二件。そして、私の申し上げました労働保険審査会というのは独立機関でございますから、厚生労働省として、労働基準監督局の処分の見直しということとはやや趣を異にいたしますが、せっかくできたこのよい改正について、現在百七十二件、ケースによっては三年、四年とこの審査会で滞っておるものもございます。

 こうしたものについて、厚生労働大臣の御配慮において、新たな認定基準というものが活用されるようにぜひとも御配慮をいただきたいと思いますが、御見解をよろしくお願いいたします。

坂口国務大臣 今お話しいただきましたように、百七十二件という、現在、労働保険審査会で進行中のものがございます。

 この百七十二件につきましては、先ほどからお話がございますとおり、新しい基準をつくったわけでございますので、新基準に従いましての見直しを今速やかにお願いをしているところでございまして、現在まだ全部出そろっておりません。したがいまして、もう少し時間がかかるというふうに思いますが、現在、新しい認定基準を踏まえましての処理が進められているものというふうに思っております。

阿部委員 いつも誠意のある御答弁をありがとうございます。

 最後に、先ほど水島委員のお尋ねの小児医療について。

 実は、私も坂口厚生労働大臣も小児科医の出身でございます。私は、議員になる直前まで小児科の臨床医として働いておりました。その臨床医の私から見まして、現在小児科医が足りない、特に小児の入院できる病棟が、この十年、特にとりわけこの五年、急速な勢いで非常に減少しておるという実感を持っておりますが、小児の入院病棟の推移について厚生労働省は何か数値をお持ちか否か、お教えください。

篠崎政府参考人 済みません。今ちょっと手元に持ち合わせておりません。

阿部委員 申しわけございませんが、これはお手元にないばかりでなく、調査がないのでございます。

 と申しますのは、今回、私は、小児医療について、特に救急医療について幾ばくかのお金がついたことは前向きに評価したいのですが、果たしてこの受け皿になれるようなハードとソフトがあるか、極めて不安でございます。

 ハードとは何か、小児科病棟でございます。ソフトとは何か、小児科医でございます。それも、とりわけ常勤の、常時そこに勤務している小児科医、夜間の診療、病棟診療も担える小児科医がどれくらいおるか。これは先ほどの御答弁でもございましたが、小児科医の数は減っておらないが、ビル診や高齢化が進んで、私も高齢化のうちかもしれませんが、夜間は確かになかなかきつうございます。

 そこに幾らお金をつけられても、結局のところ、大変恐縮ですが、ありていに言えば、アルバイトの小児科医師に頼むしかない事態がここに発生いたします。そして、このアルバイトの当直医師とは、先ほどの東京女子医大、二万五千円で研修しておる医師である場合が多々現実にございます。

 私は、今回のこの予算措置、二次医療圏で特定の病院を定めて、二つの二次医療圏を合わせて小児科後方ベッドに予算をつけよう、小児科ベッドに予算をつけようということですが、そうされるのであれば、二次医療圏に現実にどれくらいベッドがあるか、まずお調べがあって当然と思いますが、いかがでしょうか。

篠崎政府参考人 その点につきましては、厚生科学研究で研究者の方もお願いしておりますが、早急に、二次医療圏ごとの小児救急医療の実態あるいは医療資源のことにつきまして、調査を今現在継続中でございます。

阿部委員 先ほどの水島委員の御意見では、例えば小児病院的なセンター病院をつくって、そこに小児科医を配置したらどうか。実は、これは三次医療圏でございます。一番、初診して、どこか入院に送りたいなというのが二次でございます。今ないのは二次でございます。三次はまだよろしゅうございます。

 そして、三次では十人から二十人の小児科医を抱えているところもございますが、一番身近な二次医療圏の問題が危機に瀕しておるということを重く受けとめていただきまして、そして、あわせてでございますが、これは研修教育のあり方ともかかわってまいりますが、私が小児科医として思いましたのは、夜間を小児科医だけで毎日救急を診ると、死んでしまいます、本当に。やはり内科のお医者様も、もっと言えば、医療にかかわるすべての研修の初期段階で、小児科医師としての、もちろん専門ではございません、研修内容をそこに組み込んでいただくようなやり方をしないと、少子化時代には、専門の小児科医だけでは一次診療を担えない事態がやってきております。

 そこで、重ねて申し上げますが、きちんとした研修医の身分保障をして、そして、研修内容の中に小児医療を組み込み、産科医療を組み込み、当たり前に専門分化してしまった今の医療体系を見直していただけますようにお願い申し上げまして、一言、坂口厚生労働大臣の御意見を伺いまして、終わらせていただきます。

坂口国務大臣 研修医の中で、すべての人が小児科をある程度マスターしてくれれば一番いいわけでございますが、なかなか現実問題としてそうもいかないだろうというふうには思いますが、せめて内科系の先生方だけでも、小児科というものについてのある程度の知識をお持ちいただくということが大変大事ではないかというふうに思います。その皆さん方に、そうしたことが実現できますように、研修医制度というものを考えていきたいというふうに思っております。そうしたことから、できるだけ子供たちを守るということをやっていきたいというふうに思います。

阿部委員 どうもありがとうございました。

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