第154回国会 厚生労働委員会 第6号(2002/04/05) 抜粋

議事録全文(衆議院のサイト)

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 冒頭、提案者のお一人の中川智子さんにまず伺いたいと思います。

 実は、ことしに入りましてからの国会情勢は、日めくりカレンダーのように、毎日、疑惑追及とか偽証とか、国民の政治不信を買うことばかりで、国会議員としてこの中におりましても、何か人間が寂しくなるような思いをいたす昨今の政治かなと私は思います。

 その中にあって、こうした議員立法という形で出されたこの法案、私は、逆に心が和むし、一人でも多くの方が、また犬と人間の出会いが、人間らしい社会をさらに広めてくれると信じておりますが、そもそも中川さんにあっては、この法律、どうしたきっかけで、どうした出会いでつくりたいなと思ったか、そのあたりを、まず冒頭、お願いします。

中川(智)議員 私も阿部議員と同じ思いで、きょう、このような形で、議員立法提出者の一人として参加できたことをとてもうれしく思っております。

 実は、一九九八年のちょうど十二月ですが、たまたまある会合で、介助犬使用者の木村佳友さんと、そして介助犬のシンシアと出会いました。そのシンシアの存在、私の横に、たまたま足元にシンシアが一時間ほどもう既にいたらしいのですが、上でみんながしゃべっていても、食事をしていても、微動だにしないでいて、私も、一時間後ぐらいにシンシアの存在に気がついて、えっ、何でこんなところに犬がいるのと言ったところが、横に木村さんがいらっしゃいました。

 木村さんの人生にシンシアがはかり知れない希望を与えて、そして日常生活に非常に有効な形でパートナーとして生きているということを伺いまして、また、その仕事を目の当たりに見ました。そのときに、たまたまシンシアに、国会見学においでよ、国会に遊びにおいでと言ったら、シンシアがにっこりしたような気がいたしまして、ではというので、早速、国会見学の実現に向けて、皆様に本当にお力をかりて、その翌年の二月一日に、それが実現いたしました。たまたまアメリカからも介助犬のリンカーンがスーザンさんと一緒にお見えになっていましたので、アメリカと日本の介助犬が、一九九九年の二月一日に初めて国会を訪れた。

 そのときに、シンシアやリンカーンと接してくださった議員の皆様が、やはり本当の意味のバリアフリーの日本をつくるために自分たちも何かしていこうということで、議員の会、それをつくっていこうという御提案がたくさんの議員の方々から提案されまして、そしてその年の七月に、早速議員連盟ができました。超党派で皆さん集まってくださいまして、そして、現在では百二名の議員の会のメンバーの方々がいらっしゃいまして、会長は橋本龍太郎先生でございます。

 この議員立法をつくろうというのは、おのずと関心を持たれた議員さんから出されたことで、ワーキングチームができまして、この議員立法にこぎつけたわけでございます。多くの困難がありましたけれども、ワーキングチームの先生方を中心に、常に使用者、障害を持った方々の立場に立って、私自身は、とても楽しく作業ができました。

 きょうのこの審議の日を一日千秋の思いで待ちました。関係してくださった先生方、またNGOの皆様にも、そして使用者の、当事者の方々の頑張りにもとても感謝しております。きょうはとてもうれしい日です。ありがとうございました。

阿部委員 もう終わってしまいそうな御答弁でしたけれども、これから本論に入らせていただきます。

 実は私も、この議員連盟の中で、橋本龍太郎先生が会長で、御自身のお父様が障害がおありで、そこにいつも犬が同席しておられたと、もちろんこんな制度のない時代ですけれども、人と犬の社会での一つのありようをずっとお小さいころから体にしみ込ませておられたというお話を龍太郎先生がしておられたのが、すごく印象に残っています。この法案の核心となる部分が、本当に一つ一つの、きょう論議したことから、さらに具体的に実現されるとよいなと思っています。

 さはさりながら、また現実の社会というのは、いろいろな問題を持っていると思います。実は、私が、今度盲導犬が、介助犬も含めて、法案化されて、さらにこの社会に広がっていくという話を、私の地元で盲導犬をお使いの方にお話しいたしましたら、いや、実は今、日本盲導犬協会でもいろいろなごたごたがあって、うちの犬を再訓練できない状態なんだ、この子には帰る場所がないんだということを話されました。

 私はそこで、本当に思い自体はよいものであっても、どういう場所で、どういう訓練をしていくか。特に、盲導犬も、先ほど来お話ございますが、五十年近い年月を経ても、盲導犬の訓練にかかわる方の資格認定一つないような現状、ある意味では身分保障もない。訓練する方の身分のありようが、逆に犬の不幸、利用者の不幸を生んでいるというのも現状であります。

 一つは、提案者に、その資格という問題について。そして、坂口厚生労働大臣にもう一点お願いしたいのが、坂口厚生労働大臣は人間の方のリハビリにもかかわってこられた御経歴がございますので、やはり身体介助ということにかかわって、例えば人間のリハビリのための訓練士、作業療法、言語療法、さまざまな訓練を施す訓練士を訓練する教育のあり方も、資格認定のあり方も非常に重要なものであるという御認識があると思います。私は、この介助犬についても、同じように、それを訓練する人の教育、資格認定、この法案ではあえて踏み込んで触れられておりませんので、ぜひとも、そのあたりをお二方にお願いいたします。

中川(智)議員 お答えいたします。

 良質な介助犬、身体障害者補助犬は、やはり今おっしゃいましたように、良質な訓練者から生み出されるものということは本当に確かでございます。

 本法案では、訓練事業者の責務を定めておりますが、盲導犬育成の実態や訓練者の方々の実態、そしてまた、本法案施行後の聴導犬、介助犬の今後の育成状況の実態を踏まえまして、明確な資格要件を提示して教育についてもしっかりと取り組んでいくべきだと考えております。

坂口国務大臣 まことに的確な御質問だというふうに思いますが、私も、この法案を前にいたしまして、やはり一番大事なのは、犬を訓練する訓練士をだれが訓練するのかということではないか。ここがやはりしっかりしていないと、どれほど立派な犬でありましても十分に役立つ補助犬になることができない、そこを一体だれが責任を持ってどうするのかということが非常に私もポイントになるというふうに思っております。しかし、そこが今、正直申しまして明確でございません。その道のそれぞれの技術を持った皆さん方にお任せをしているというのが現状でございます。

 ここのところを、例えば資格をつけるとか何かするというようなことが大事なのか、それとも、そういうことではなくて、もう少し、皆さん方に訓練をしていただくことについてはどういうことが大事なのかというふうなお互いに研究をしていただく、そうしたことをつくり上げているのが大事なのか、早急にちょっと検討しなければならないというふうに思っております。

 お聞きをするところによりますと、いろいろなやはり流派があって、それぞれおやりだそうでございます。何流、何流というのはあるんだろうと思うんですが、それはそれで、今までの長い歴史の中でいろいろな流儀に従っておやりになっているんだろうというふうに思います。

 しかし、共通してこれだけは守ってもらいたい、あるいはこういうことをお願いしたいというようなこともあるんだろうというふうに思いますから、ここは官の方がその中に入り込んでいくというのではなくて、今までそれぞれの中で育ってまいりましたものをどのようにまとめていくか、どのようにそれをまた補助していくかといったことに主眼を置いてこれはやっていかなければならないというふうに思っている次第でございます。

阿部委員 いつもながらの前向きな御答弁で、大変ありがとうございます。

 頸椎損傷の方をとりましても、この介助犬を使い得る可能性のある方、一万七千とも九千とも言われている方がおられますので、やはり良質な介助犬を訓練していくための良質な訓練士の方のあり方ということをぜひとも引き続きよろしく御検討をお願い申し上げます。

 もう一つ、今度はこの介助犬を使う側の方の、いわゆる障害のある方のことについて伺います。

 この法案上ですと、第三章の第六条で、「使用する身体障害者は、自ら身体障害者補助犬の行動を適切に管理することができる者でなければならない。」となっております。例えば、私ども、日常生活で犬を散歩に連れてまいりますときに、シャベルとビニール袋を持って、犬が排せつしたらそれをちゃんと取ってくるというのも犬を飼う者の一つの要件になっていると思いますが、では、この介助犬を考えた場合、例えば肢体不自由、上肢の機能がきちんとできない方がワンちゃんのおしっこ、うんちの世話ができるかしらんとか、そういう素朴な質問、疑問も生まれてくるかと思います。このみずから介助犬の行動を適切に管理することができる者でなければならないというところの真意を中川議員にお願いします。

中川(智)議員 ただいまの御質問の部分で、みずから適切に管理できるという意味は、障害者みずからが適切な管理について十分理解をし、自分自身で手を動かして管理のための行為ができなくても、何か道具を使うなりして管理をすればいいというふうに考えておりまして、そこで重要なことは、補助犬の行動管理について責任を持ち、理解したことをみずからの意思で行うことができるということであります。

 ただし、逆に、身体的には管理に問題がなくとも、適切な管理について理解ができなければ、第六条により、補助犬を持つべきではないという要件に当たるかと思います。

阿部委員 では次に、犬の側の御質問に移ります。

 よく盲導犬等々に使用された犬は寿命が短いとか、大変に気を使うわけですよね。ここでほえてはいけないし、いるのにいないような存在にならなきゃいけない立場ですから、非常に動物にとって、本来持っている犬権といいますか、犬にも権利があると思いますが、そういうものからすると、むしろ動物がかわいそうではないか。あるいは、盲導犬の場合もいわゆる動物愛護法から外されたところにおりますので、この介助犬についても逆に、こういう制度をつくるときに動物の側に立った観点というものがいま一つ必要と思いますし、そのために獣医師さんとの連携等々もうたわれていることと思いますが、ここで言う適正に取り扱うという適正という意味についてはいかがでしょうか。

中川(智)議員 とても大切な御指摘だと思います。

 補助犬を含めた使役犬の有効性と犬に対する福祉を考える上で最も重要な点は、犬に適性がある、すなわち使役内容や訓練について過度なストレスがかからずに、楽しみながら仕事ができるということだと考えております。したがって、訓練事業者が補助犬を適正に取り扱うというのは、適性のある犬をまず選択して、体罰、びしばしという強制的な方法ではなくて、愛情を持って褒めてあげることで犬の動作を強化する方法で訓練を行って、また、継続的に過度なストレスがかかっていないかを行動学的、獣医学的に評価することだと考えています。

 また、使用者が適正に扱うというのは、同じく犬に体罰を与えるなどの方法をとらずに、愛情を持って接し、長く寿命を全うする、そのような健康管理や衛生管理を行うことだというふうに認識しております。

阿部委員 そのあたりのことを犬の訓練事業者の方にも、また世上一般にも、また議員連盟の方でも広めていただきたいと思います。愛なくばでございますので、よろしくお願いします。

 あと、今度はそういう介助犬として認定する場合、今までの盲導犬とこれからの聴導犬、介助犬では異なることもあるのではないかと思いますが、この認定ということについてお聞かせください。

中川(智)議員 認定の問題は、本法案は補助犬使用者の社会参加を保障することを目的にしておりますので、認定の最大の目的といいますのは、受け入れ社会が安全に、支障なく補助犬を受け入れられるように、補助犬の質をきっちりと確保することであります。その意味では、認定要件としては、各補助犬とも公衆衛生上の問題がないことがすべての補助犬の共通項目にまずなります。

 しかしながら、一方では、受け入れ社会では、我が国においては安全なペットは社会参加ができるという文化的背景はございませんので、やはり障害者が生活上必要としている存在であるからということが受け入れを保障する基本、根拠になります。その意味では、公衆衛生上問題がないということだけではなく、使用障害者のニーズに合わせて補助犬として訓練された犬であるということが最も重要になってくると認識しています。

 したがいまして、補助犬としての能力についても、補助犬として訓練された犬ということで、質の担保をしっかり図るということが大事だと考えております。

阿部委員 では、そういう認定を行うための指定法人の要件ということはこれから厚生労働省令で定めるというふうに先ほどの御答弁にもございましたが、この認定のための法人というところにも、身体障害者の方の障害の特性への理解ですね、例えば片麻痺の方の補助動作と頸椎損傷の方の補助動作とか、いろいろ違いもありますし、障害に応じた理解と、そのことを踏まえて育成した介助犬を認定するということですが、はたまたそうなってきますと、認定をするための法人というもののあり方が非常に困難性が高いというか難しいということにもなってきて、現実には一県に一個もないとかいう形になってくることもあるやに思うのですが、そのあたりについての工夫、要するに、この制度を広めたい、だけれども専門性も要求される、この二つのバランスをどのように具体的にとっていかれようとするのか、そのあたりもお願いします。

中川(智)議員 やはり日本全国広いわけでございますので、使用者の方々がとりやすい、きっちりとした認定制度が全国でしっかりと行われるということが使用者側にとってとても大事だと考えております。

 各補助犬の認定におきましては、各補助犬を使用する障害者の方の障害について正確に把握して、障害者にきちんと対応できること、これが不可欠だと考えておりまして、犬の訓練だけできればよいということは言えないと考えております。

 そしてまた、適切な行動をとる能力を認定する際には、障害者と犬との適合性、それを考慮することも重要ではないかと考えております。特に介助犬の場合は、障害の程度や種類、使用する方の身体状況というのがさまざま異なりますので、リハビリテーションセンターのような機関がその機能を担うことも考えられると思っております。リハビリテーションセンター、全国各地にございますので、本当に、利便性からいいましても、そのことを前向きに考えていきたいと思っております。

 新しく補助犬のための事業者について指定することに、そのことに固執せずに、リハビリテーションセンターや厚生施設というのもございますので、既存の法人を含めて良質な指定法人を広く全国に配置できるようにすべきと考えております。

阿部委員 今の中川さんの御答弁にありました点、ぜひともこれは坂口厚生労働大臣にも御尽力いただいて、厚生省管轄下で多くの厚生施設やリハビリテーション施設があり、そこで、御自身の、人間の方の、障害の訓練を受けている方が今度は介助犬とペアの人生を歩みたいときに、その介助犬が認定されていくというような、いいマッチングができるような取り組みを、ぜひとも、これはお願いでございますが、申し添えます。

 最後に、表示の問題。

 表示と申しますと、今不当表示だらけで、何というか、BSE問題以降、政治も表示も当てにならぬと言われておりますが、そうあっては困りますので、第十六条一項のところで認定を受けていないものでも、平成十六年九月三十日までに限って、厚生労働省令に定めるところにより、その犬に介助犬、聴導犬と表示をすることができるという、ここの一項につきまして、先ほどの不当表示の問題もこれあり、そこでもし問題が起きたらどうなるかという問題も、この制度がスタートしたときに最初が大事だと思うのですね。

 よりよい形で、不当な表示が起こらないように、あるいは信頼できる仕組みにしていくために、そのあたりについて、最後のまとめを中川さんにお願いします。

中川(智)議員 おっしゃるとおりでございます。

 そこで、介助犬、聴導犬の訓練事業者や研究団体は残念ながらすべて零細団体であるために、法案成立後に指定法人が一つもできないとか、また全国に若干数しかできないということでは、使用者の方々にとって大変利便性が低く、法案の趣旨にも反することになってしまいます。そこで、零細な事業者でも指定法人になるための資産要件ほかの要件を備えることができる準備期間を設けておこうというのが趣旨でございます。

 しかしながら、御指摘のとおりに、経過措置中に、本来であれば補助犬としての認定を受けられないような補助犬について表示に規制がかけられず、社会で問題を起こすということになりかねませんので、その点に関しましては、表示による区別を厚生労働省令で定めることとしておりますし、その情報を社会に周知徹底させるということが重要であると考えております。

 これに対しては非常に責任が伴うものと思っておりますので、しっかり取り組んでいきたいと考えております。

阿部委員 私どもが生きる二十一世紀というか、これからの子供たちに贈る二十一世紀は、生きとし生けるものへの愛情、命への慈しみということが社会の根幹になってほしい、そうしたことを現実に見せていくための私は大変大事ないい法律だと思いますので、今回、議員の提案者の皆さんの御苦労に敬意を表しながら、また御一緒に何らかの取り組みをしたいと思います。

 それから、重ねて、坂口厚生労働大臣には、御苦労でもございますが、よろしく陣頭指揮のほどお願い申し上げて、終わりにさせていただきます。

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