第154回国会 厚生労働委員会
第12号(2002/05/08) 抜粋○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
本日は、午前十時から、金田委員を初めとして坂口厚生労働大臣ともどもに、二十一世紀、どのような医療保険体制であれば国民的な幸福につながるかというかなり本筋の論議がずっと行われてきたかと思います。私も、持ち時間が長ければそのような骨格的な質問をさせていただきたいのですが、限られた時間ということもあり、また他の委員の御発言も踏まえた上で、実務的なことにつき御質問をいたします。
実は、各種健康保険組合、国民健保、政管健保おのおのに財政的な危機が言われておりますが、果たして、その財政的な危機ゆえに、すぐに国民負担あるいは患者負担を求めてよいものか否かということが私は論議の一番中心であろうと思います。高齢化社会ということもだれしも共通認識でございますし、だれがどのように負担していくかということにおける公平感、公正感がなければ社会保障はもたないというのも事実でございます。
しかしながら、私がこの間拝見しておりますと、組合健保、政府管掌健保、そして国保おのおのに財政状況の報告がございますが、いわゆる単式簿記、単年度で幾ら保険料収入があり、幾ら支出が出たかという単式簿記という形での記載でございまして、例えば幾ら資産、財産をお持ちか、そしてその資産、財産の運用によってどのような利益や赤字が生じているか等々についての標準的な統一した報告がございません。
いわゆる世の中の企業一般ですと、損益計算書及び貸借対照表というのを用いて資金調達の内容や資産の保有その他、公表がされておりますが、この健康保険組合、政府管掌健保並びに国保についての財務状況の公表状況について、まず関係部署にお伺い申し上げます。
〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
○大塚政府参考人 医療保険制度は公的な制度でございますから、その運営主体はさまざまでございますけれども、それぞれがその財政状況をきちんと公開するということは御指摘のように極めて重要なことだと考えております。
医療保険は、当然、企業あるいは収益を目的とした事業ということではございませんから、保険料で収入の大半を賄い、支出は医療費として支払うということでございますから、いわゆる経常的なキャッシュフローのバランスがとれているかどうかというのがやはり基本にならざるを得ないわけでございますけれども、お話しのように、そのほかに保有資産もございます。そうした状況は、キャッシュフローバランスの状況に加えてそれぞれの制度で公表しているわけでございます。
ただ今日、御案内のように、企業会計の方式による貸借対照表なり損益計算書という形で会計処理をすることが、企業の場合でございますけれども、一般的でございますから、国民の方もそういう形になれておられるわけでございます。したがって、健保組合などにつきましてはそうした方法がとれないかということで、昨年、関係者、健保組合の主要団体でございます健康保険組合連合会で研究会を設置していただきまして、健保組合の会計基準、会計報告のあり方についての中間報告を取りまとめていただいています。
現在、さらに検討、詰めを行っていただいておりますけれども、基本は、経常収支ベースの重要性は変わらぬけれども、企業会計の貸借対照表なり損益計算書に相当する会計情報を開示していく、そういう方向で検討を進めていただいているところでございます。
政管健保あるいは国保、これは国の機関あるいは地方自治体でございまして、財政法あるいは地方自治法、地方財政法といった会計法関連の会計法規がございます。それに沿った処理を行うということが必要でございますが、先ほど冒頭に申し上げましたように、それに加えまして、保有資産の状況などできるだけ明らかにしてまいりたいと考えております。
○阿部委員 国民にやはりわかりやすく示していただく。それが今までは、保険料収入がこれだけで支出がこれだけというところにとどまっていて、真実が伝えられていないと私は思います。
健康保険組合については、今の大塚局長のお話にあった資産状況とか保養所の運営状況、そこで出てきている赤字が負担になること、それから政府管掌保険では累積債務の、いわゆる国から借り入れたお金の利子を支払っていることが政府管掌保険に重くなっていること、あるいは国保についても未納金の状態等々、いろいろな要素が絡まっておのおのの健康保険組合が、政管健保、国保、組合健保と苦しくなっているやさきですから、一部だけを取り上げて、足りない足りない、だから国民負担だと言う前に、ぜひともおのおのの財務状況で改善していただきたいと思います。
あわせて、坂口厚生労働大臣に今との関連事項でお伺いいたします。
私は、坂口厚生労働大臣が中長期的な展望の中でお考えの、今の国保は市町村を保険者とするよりももう一歩安定した県単位に、あるいは組合健保は乱立して一千七百ですか、以上もある組合健保を、もう少し保険者機能を強めるために大ぐくりにしていこうというお考えは非常に評価しております。そして、そのためには逆に、先ほど申しましたが、組合健保のおのおのの中での事情はあるけれども、財政調整、ある程度調整して、さっき、二十六組合ですか、健康保険組合が解散したと言われましたが、なるべく解散を少なくできるように、各保険者の、強弱を取り合わせてでも健康保険組合としてのきちんとした財政基盤をむしろ行政サイドがリードしながら行っていくべきと考えておりますが、そのあたりのお考えをお願いします。
○坂口国務大臣 保険者が五千を超えておりますことは今さら申し上げるまでもありませんが、その中で、国保、これは市町村、もうどんな小さな村におきましてもこれは一つあるわけでありますから、余り小さな村で一つの保険をやっていくということはこれは大変だろうというふうに思います。
また、そういう村に限りまして高齢者がふえてきているものですから、高額の医療費の必要な人がまた多くあるといったことで、町村はそれでは難しくなりますから、単位としては県単位で統合するのがいいのか、あるいは東京などのように大きいところはもう少し分割するのがいいのか、その辺のところは考えなければならないというふうに思いますけれども、ここは、県単位かあるいはもう少し小さなブロックか、そのぐらいなところに統合化をしていかないと、これはやっていけないだろうというふうに思っております。
そして、もう一方におきまして、組合健保の場合におきましても、子会社でありますとか孫会社がございますが、今、子会社まではいいというふうに思いますけれども、孫会社のときになりますと一緒にできないとか、あるいは県をまたぎまして他の県にありますときにはこれができないとかいったような規制がありますから、そうしたことをなくしていって、そして一つのグループならグループとしてやはりやっていけるようにするということになれば、そこは自然に財政調整もできるのではないかというふうに思っております。
そうしたことを行いながら、きょう午前中にも御議論がございましたけれども、金田議員からもお話がございましたが、財政調整というものを、幾つかの指標をひとつつくりながら、そこでやっていくということは大変大事なことだというふうに思っている次第でございます。
これからそうした議論を、皆さん方にも御意見をいただきながら、どういう大きさにまとめていったら、いわゆる保険者機能も十分に発揮ができるし、そしてまた余り小さくし過ぎるということによる弊害もなくなるし、その妥協点というのはどこかということを見つけ出していかなければならないというふうに思っている次第でございます。
○阿部委員 午前中の御答弁でもございましたことですので、私として本当に、まず国民負担ありきあるいは患者負担ありきというような、今の窓口負担増を先に行いますことは、やはり患者さんの医療へのアクセス制限につながってまいると思いますので、むしろ、国民皆保険制度の堅持に向けて保険者機能を十分に見直していくという点に今回の改革の重点を置いていただきたいと思います。
そして、特に国民健康保険について午前中あるいは午後にもいろいろな論議がございましたが、これは民主党が提案されております、リストラ等々によって離職された場合に一年間の猶予を限って保険料の徴収をそれまでの保険料の六割となさるという案は、私はかなり現実的に受けとめられていいものではないかと思います。
と申しますのは、それまでの前年度の収入に保険料がかかりますから、リストラされて、次の収入は少ない、ないしは失業保険で賄う中で、保険料の負担分はそれまでよりも倍になるという事態が来た場合に、失業された方の負担感が非常に重いと思います。
この御発議というか提案に至った民主党の方からの御意見、五島先生にお願いいたします。
○五島議員 私どもの提案しております健康保険法の改正案に対して御質問、ありがとうございます。
今先生御指摘のように、失業状況は非常に深刻化している中において、非自発的に退職に追い込まれた労働者、この方々の医療保険の加入は、離職前の健康保険に継続加入するか、居住地の国民健康保険に加入するか、いずれかの選択を迫られるわけでございます。
もし継続加入を選択した場合は、従前の事業主負担分も負担するため、おおむね二倍の保険料を払うことになります。
また、国民健康保険に加入するということは、結果的にはやむなく多くなるわけで、四年間連続して増加しているわけでございますが、この場合ですと、例えば前年度、離職前一年間の年間所得が五百万円相当であった場合、その失業者は四人家族で、政管健保では十五万七千円を払っていた保険料が、国保に入ったことによりまして三十万円から五十万円ぐらいの国保料を払わなければならないというふうになってまいりまして、そうなりますと、先生御指摘のように、失業者の中には国民健康保険料が高い、払えないということで無保険者になられる方が相当いるものと考えています。
私どもは、この方々の人数、効果の問題でございますが、一年間に退職する労働者の推計でございますが、一年間に二百四十二万人の労働者が新たに失業している。そういう中で、非自発的退職者の数を七十七万四千人というふうに推定いたしております。その中で、さらに丸一年間以上にわたって就職ができないという人の数が約二〇%、それ以外の人々は大体一年以内に再度就労ができているというのがこれまでの例でございました。こういうふうなものを計算いたしまして、現在、この制度ができることによって、丸々一年分の保険料として計算した場合、そのことによってその恩恵が受けられる労働者の数は約三十二万六千人というふうに考えております。
したがって、この方々にとって恩恵があるというふうに考えておりまして、この軽減措置によって、現在の無保険者がふえていくということに対して一定大きな歯どめがかけられるものと期待しております。
以上です。
○阿部委員 私も五島先生の御提案のように理解しておりますが、この件に関して厚生労働省にも昨日お問い合わせをいたしましたところが、ある方が失業された後国保をお持ちになるかどうかについて、実は現状把握がなかなかできないというお答えでありました。
そこで、私は厚生労働省に提案がございますが、失業なさいますと、失業保険の給付にかかわって一カ月に一回社会保険庁ですかにいらして就労状態のチェックをなさいますね。そのときに、その方が健康保険、国保にお入りになったかどうか、そういうことを、相手のお答えに、任意的にはなるわけですけれども、チェックしていただいてはどうかと思うのです。私は、これは非常に前向きないい提案だと思います。一体どれくらいの方が失業後国保にすらお入りにならないで無保険者になるかという実数をだれもが把握していない状況というのは、国民的不幸と思うのです。
そこで、今私は具体的な提案をいたしましたが、失業保険を受給中で就労状況を確認する一カ月ごとの際に、その方の保険状況についてお問い合わせいただくないし御助言をいただく等々について、関係省庁の御意見を伺います。
○大塚政府参考人 被用者保険から国保に移ります場合に、速やかな手続をとっていただくことが御本人の医療保険の加入権を確保するためにも重要なことでございますので、私どもとしては、一つには、事業主の御協力をできるだけいただきまして、いろいろなケースで退職される場合、その中にはいわゆるリストラも含まれますけれども、その後の助言指導、あるいは社会保障関係の手続などについても助言あるいは御指示をしていただけるような、そういうお願いもしておるところでございます。
引き続きそうした努力をいたしますが、ただいまの御提案につきましても、これは関係部局の中で相談をできることでございますので、内部でよく相談をさせていただきたいと思います。
○阿部委員 前向きな御答弁、ありがとうございます。
次に、医師の研修の義務化についてお伺いをいたします。
厚生労働省の医道審議会が、四月二十二日に、医師研修についての検討部会の中間取りまとめを提出してございます。この中には、臨床研修医のアルバイトを禁止するということとか、身分保障をきっちりすること、あるいは単独診療を行わせないためのさまざまな御提案があったと思います。
私は、この中で特に、アルバイトをせずに研修に専念できる、いわゆる本当にこれは三十五年間の、いわば長年の夢でございますし、この機会にいい研修制度ができることを何よりも望むものですが、一点、坂口厚生労働大臣にお願いがございます。
この答申の中では、この研修医を労働者とみなすか、あるいは学修途中にあるかというような論議が抽象的にございますが、私としてはぜひとも、労働者という用語を使うか否かという抽象論議以上に、決して抽象ではないのですが、なかなかいい御答弁がこれまで関係部局でいただけなかったので、逆に、社会保障制度、健康保険とか労災保険、年金、雇用保険を必ず研修医にはつけるように研修医を雇う側に義務づけるような方向性で、実際の身分保障をしていただきたいと存じますが、お考えをお聞かせください。
○坂口国務大臣 現在の臨床研修医の実態動向を見ますと、これは一般的には、労働者というふうに言い切れるかどうかわかりませんが、労働者性が認められるということだろうというふうに思っております。したがいまして、労働者性が認められるということは、使用者には、労働基準法でありますとかあるいは労働安全衛生法、それから最低賃金法等の労働関係法令が、これは守られなければならないということになってくるというふうに思っております。
なお、臨床研修医が労働基準法上の労働者であるか否かにつきましては、これは名前をどう言うかは別にいたしまして、個別に実態によって判断されるものであるというふうに思っています。
先ほど申しましたように、一般的には労働者性が認められるというふうに思っておりますので、現状から申しまして。そういたしますと、労働時間管理の問題が一つはございます。これは労働者でありますから、原則一週四十時間、三十八時間でございますけれども、病院等は四十時間。それから、一日八時間の法定労働時間を超えて労働させてはならないということがここにかかってくる。それから、時間外ですとか休日労働を行います場合には、時間外ですとか休日労働に関する協定の締結でありますとか届け出を行うということがございます。それから、最低賃金額以上の賃金の支払いがもう一つございますが、最低賃金制もこれにかかってまいりますから、それ以下の賃金でございますとこれにかかってくるということになるわけでございます。
そうしたことがございまして、いわゆる労働基準法の第九条にございます、この法律で労働者というのは、職業の種類を問わず、事業または事業所に使用される者で、賃金が支払われる者というふうに定義されておりますから、そうした中でこれは考えていかなければならない問題だというふうに思っている次第でございます。
○阿部委員 非常に前向きな御答弁をありがとうございます。
特に、私は本会議でも坂口厚生労働大臣にお伺い申し上げましたが、この労働基準法に基づく最低賃金の保障というところで、最近、これまでとりわけ賃金の低かった私学においても、せんだって日大、日本大学で十二万円という賃金の提示がやっと可能になった。ところが、二十も過ぎ三十近くもなって十二万円で暮らせと言われても、正直言ってなかなかきつうございます。
そこで、研修期間にある医師の賃金をめぐっては、私は国としてある程度財政援助、それは教育にかかわります費用の部分もありますし、その身分保障にかかわります賃金保障の部分もございますが、何らかの手だてで研修医の賃金保障について国として積極的に関与していただくことを望んでおりますが、この点についてももう一点お願いいたします。
○坂口国務大臣 アルバイトをしなくてもいい額というのが大体どれぐらいの額か、これは考え方によっても人によっても大分違うというふうに思いますけれども、アルバイトをしなくても研修医として生活ができる額というものは定めまして、そしてお示しをしたいというふうに思っております。
○阿部委員 ありがとう存じました。
次に、先般私が厚生省にお願いしました質問主意書、とりわけ、八十二特定機能病院における医療ミス実態でいただきました回答書に基づいて質問をさせていただきます。
八十二の特定機能病院でこの約二年間で起こりました重篤事例あるいは新聞報道事例、アクシデント、インシデント等々の件数の総数をお伺いいたしましたところ、インシデントと言われるものが十八万六千件、アクシデントが一万五千件、二年間で八十二病院で一万五千件という数値はかなり膨大な数でございますし、そのうち重篤な事例が三百八十七件というふうに報道されております。
特定機能病院といいますと、私どもの一般社会ではそれなりのスタッフをそろえ、それなりの診療レベルを持ったところで、なおかつ二年間で一万五千件という件数は、国民が見た、見せられたものとしては、かなり衝撃が大きかったと思いますが、坂口厚生労働大臣はこの報告についてどのようにお受けとめでいらっしゃいましょうか。
○坂口国務大臣 先生から質問主意書をいただきまして、そして整理をしたものを私も拝見したわけでありますが、一万五千件というこの数字に衝撃を受けたわけでございます。八十二の特定機能病院におきます平成十二年四月から二年間のアクシデント事件という、二年間ではございますけれども、非常に大きな数字であるというふうに思っています。
アクシデント事件として取り上げるか否かにつきましては、それぞれの病院によりまして、これを取り上げるかどうかということはかなり基準が違うんだろうというふうに思っておりますが、しかし、細かく取り上げられている病院は、それだけ起こしてはならないという体制が整っているところというふうにも受け取れるわけでありまして、少ないのが必ずしもいいとは言い切れない。むしろ、小さなものも拾い上げていただいているところの方が、これはいいのではないかという気もするわけでございます。院内の報告制度を充実していただいて、これからもひとつその対策を講じてもらいたいというふうに思っています。
何が一番多いのかと聞きましたら、やはり一番多いのは薬の間違い。二番目には転倒というのですから、御本人が転倒されるのかというふうに思いましたら、車に乗せて運ぶ間に転倒させるというのがその次に多いということだそうでございまして、これらのことは気をつければかなりこれはできることでありますから、ひとつ十分に気をつけていかなければならないというふうに思っている次第でございます。
○阿部委員 いい御答弁をありがとうございます。
特に、私も大臣と思いを一にいたしますのは、例えば、この中で順天堂大学とか北里大学は重篤事例の報告件数も多うございます。一番多いのが順天堂で百二例だったかと思いますし、北里も八十数例。私は、逆に、こういうふうにきちんと報告が上げられる体制にある病院ほど、そのアクシデント、インシデント、重篤事例、患者さん側がどう受け取ったかということについて感度が高い病院だと思うのです。どことは申しませんが、ゼロ件というのも幾つか見受けられまして、私は、それはむしろ隠す体制にある傾向が強いということで、なお厚生労働省として安全対策の中では、やはりミスを隠さずに報告して過ちを繰り返さない体制を御指導いただくことをお願いしたいと思います。
そして、それに先立って、やはり同じ事例を、ある病院はインシデントととり、ある病院はアクシデントととりと、やはりちょっと受けとめ方がさまざまでございますので、これからこういうことの報告に当たって、厚生労働省として、アクシデント、インシデント、重篤の、おのおのの事例なり、おのおのの区分け、定義づけをもう一度、さらに明確にしていただいて、集積をしていただきたいと思います。これはお願いですので、関係部署によろしくお願いいたします。
そして、私は、先ほど大臣がおっしゃいました、転倒事故等々とか投薬ミスが多いということをお話しでございましたが、特に新聞に出ました六十七件を分析してみますと、これは二度に数えたものもございますが、人工呼吸器を中心とした医療機器事故、臨床工学的な問題をはらんだものが十一例、投薬ミスないしは看護婦さんの仕事範囲で起こったミスが十六例、医師の手術ミスが十六件、患者さんの取り違えは十一件、AとBを取り違えるあるいはお薬を間違って投薬する、それから、同じ医師のミスの中でも、ガーゼやピンセットや何かを置いてきてしまったもの十件となっております。
これだけ聞くと背筋が寒くなって、どこの病院にも行けないかなと思う国民の皆さんも多いかと思いますが、私の目から見ますと、例えば医師の手術ミス十六件などは医師の研修指導体制も大きく関与しますでしょうし、患者さんの取り違えは、ダブルチェック、二人の方がその行為をチェックすればうんと減るのじゃないかと思うわけです。
私は、きょうこの中で、これらを問題にするほかに、特に人工呼吸器に関連したミスを問題にしたいと思います。
新聞の事例の中でも、チューブの接続ミスや、あるいは医療機器が、人工呼吸器が古くなっていて発火してしまったとか、いろいろな事例がございますが、特に医療現場におりますと、人工呼吸器の管理を実は大半の場合、看護婦さんないし医師がやっております。看護婦さんは、実は患者さんの方を見たいのだけれども、それ以前に、機械がちゃんと接続されているか、あるいは蒸留水というのを入れるところに入れる薬剤が間違っていないかとかさまざまな注意をこちら側にとられていて、患者さんの側がどうであるか、状態チェックが抜けるようなことも私の経験では多々ございます。
そして、人工呼吸器管理につきましては、実は臨床工学士という専門の職種がございますが、日本ではこの方たちの配置が患者さん千人に対して五人、二百人に対して一人、非常に数が少のうございます。
そして、御記憶にございますでしょうか、二カ月ほど前、我が党の中川智子が質問いたしましたが、女子医大で人工心肺というのを回して患者さんを手術しておりますときに、人工心肺というのは患者さんの心臓や肺の機能をいっときとめて人工的な機械にゆだねるわけですが、この人工心肺を管理する技士がおりませんで、十五分間機械がとまりました。すなわち患者さんは、心臓と肺が十五分間機能しない状態になり、亡くなられました。
私は、この事例というのは非常に象徴的、今の我が国の医療の中で、医師、看護婦、そしてそれと一緒に仕事をしていただくコメディカルの方たちの数が極めて少ない実態が反映されたものと思いますが、いわゆる臨床工学士の配置について、国としての見解をまず一点、お伺いいたします。
○宮島政府参考人 先生御指摘のとおり、今回の報告におきまして、特定機能病院での医療事故報道件数六十七件のうちに、御指摘の人工呼吸器に関する事故がありまして、ただ、その原因が臨床工学技士の配置数とどの程度かかわっているかということは明らかではございませんけれども、現在、医療法におきましては、臨床工学技士の配置基準は、診療放射線技師と同様に「病院の実状に応じた適当数」というふうに決まっておりまして、具体的な配置数は現在のところ決められておりません。したがいまして、個々の病院における配置数につきましては、基本的には各病院の判断に一応ゆだねられているというところが現在の状況でございます。
しかしながら、先生御指摘のように、やはり人工呼吸器を初め医療機器における安全を確保するというのは重要な問題でございますので、私どもは、医療監視というものを通じまして、医療機器等が適切に管理運用されるというものについて、各病院において適切な体制が確保されているかどうかということについて今後とも指導してまいりたいというふうに考えております。
○阿部委員 ぜひともそのようにお願いしたいのです。
例えば、年間に百二十例の心臓の手術を行うところで、たった一人しか臨床工学士が配置されていないような病院もございます。そして、今おっしゃったように、医療監視の中では、臨床工学士の配置数というのは、これまでは、例えば患者さん一人当たりのベッドの広さとか看護婦さんの人員とか医師の配置数は決まっておりますが、これだけ呼吸器管理が普及し、特別な人工心肺を使ったりする高度な手術が日常化した中では、医療監視の項目に入れていただくべき重要な、患者の安全のための一つのメルクマール、指標だと私は思っております。
ちなみに、読売新聞の調査等々でも、臨床工学士の配置がないために業者任せにしている病院が約一割ある。これはもちろん一つの新聞社の調査ではありますが、先ほど申しました女子医大での悲しい事例、あるいは私が日常経験します、看護婦さんたちにその負荷がしわ寄せされている実態、呼吸器がこれだけ普及するという状態は、実は三十年前にはほとんど考慮されなかった事態ではございますが、私は、医療監視というのも日進月歩でございますので、ぜひともこれらの教訓に学んで、臨床工学士の方たちの配置を医療監視に入れていただきたいとお願い申し上げます。
それから、そのことと関連して、もう一つお願いがございます。
実は、臨床工学士は、配置されても診療報酬の加算がございません。ということは、病院はその方を雇っても雇わなくても同じという体制の中で、診療報酬加算がないものはどうしても十分な配置がなされないという点もあります。この点についても、関係部局から御答弁をいただきたいと思います。
○大塚政府参考人 現在の診療報酬におきまして、さまざまな基準に該当するものがございまして、その基準の定め方はそれぞれでございますけれども、現状におきまして、臨床工学士の配置を診療報酬支払い上の基準に設定をするというところまでは、医療の現場の状況、あるいは全体の医療保険の、診療報酬の置かれた現状からいっておりませんが、今後の関係審議会の議論なども勘案いたしますけれども、当面、慎重に研究をするという段階にとどまらざるを得ないというふうに考えております。
○阿部委員 厚生労働省がそのような認識にある限り、広く人工呼吸器が使われている現状と、そのことに関連して、医療現場が重労働化し、そして看護婦さんたちの重労働化がミスにつながるという構造が断ち切れませんので、むしろ逆にどのぐらいの数の人工呼吸器が使われているかということも含めて検討いただきたいと思います。
最後に一点だけお願い申し上げます。
先般の福島委員並びに松島委員からの御質問のありました川崎協同病院の事例でございますが、この件では、実は患者さん自身は御自分で呼吸をしていた。そして、空気の道を確保するための気道のカニューレというものが入っていた。この状態で、家族は主治医から、患者さんは九分九厘脳死であると伝えられておると。私は、脳死臓器移植という法律が成立して以降、逆に患者さん家族をあきらめの心模様にさせるための一つの表現として脳死という言葉が乱用されているのではないかと非常に危惧を覚える次第ですが、坂口厚生労働大臣に、この点、一点、お願いいたします。
○下田政府参考人 法令上、脳死という概念を規定しておりますのは、委員御指摘のように臓器移植法のみでございまして、法律で定めております脳死とは、必要な知識、経験を有する二名以上の医師によりまして、深昏睡あるいは瞳孔散大、脳幹反射の消失、平たん脳波、自発呼吸の消失の五点が確認され、かつ六時間後に再度同じ状況が確認されることにより判定されるということは御承知のとおりでございます。こうしたことにつきましては、具体的な判断についてはガイドラインでお示しをし、周知徹底を図っているところでございます。
こうした臓器移植法で定めております脳死判定及びその基準は、あくまでも臓器移植を前提としておるわけでありまして、医療現場におきます一般的な治療方針、例えば積極的な治療をそのまま続けるかどうかといったような判断をするために行われておりますいわゆる一般的な脳死判定というものがございますけれども、この一般的な脳死判定につきましては、医療現場におきまして個々の医師の判断で行われている実態であるというふうに承知をいたしているところでございます。
○阿部委員 もう時間がございませんので、概念のひとり歩きということと、この患者さんは実際には息をしておったと。その呼吸を確保するための本当の短い管を抜いたら、当然舌が落ちて窒息して亡くなられたという事件ですので、医療現場のこのようなあり方についても厚生労働省としては意識をきちんと持っていただきたいとお願い申し上げて、本日の質問を終わらせていただきます。
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