第154回国会 厚生労働委員会 第16号(2002/05/31) 抜粋

議事録全文(衆議院のサイト)

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 きょうは、大臣初め皆さん、長時間の審議でお疲れかと思いますが、いましばらくお願いいたします。

 そして、今回の健康保険、特に医療保険上の改正を初めとする諸問題、論ずれば論ずるほど問題が多岐にわたるということが浮かび上がってまいってきておるかと思います。さきに私どもの中川智子が質問いたしましたが、今回特にサラリーマンの自己負担三割ということは、いわゆるサラリーマン家庭での家計の中における支出として約一一・一%以上の窓口負担やお薬に対しての負担がかかりまして、非常に家計負担が重いということ。これは実は国民皆保険のないアメリカに次ぐ高さでございまして、ヨーロッパ諸国の家計負担の中と比べますと三倍から四倍高うございます。

 医療財政のみならず国の財政が逼迫しておる、そのゆえに我慢してくれよというのが小泉首相のお話ですが、やはり国民の基礎体力を落としてしまっては元も子もないという点で、四野党共闘いたしまして、この三割負担という問題も反対をいたしております。

 そして、あわせて、今回保険料の値上げと同時に御高齢な方々も一割負担ないし二割負担とどんどん窓口負担が上がってまいります。一方、では一九八〇年代と比べて、国は医療費に対していかほどの国庫負担をしてきたかと申しますと、一九八〇年代が三〇%内外といたしますと、今ではいわゆる国庫負担分は二四%と非常に減じております。

 この点をもちましても、やはり医療というものは国民の基本的な生存権にかかわる部分で、国の経済に連動して削減されていったのでは逆さのことが起こるだろうということを中間討論地点でまず御指摘申し上げて、本日は、いわゆる診療報酬のことについて少しお伺いをいたしたいかと思います。

 今回は、初の診療報酬のマイナス改定ということをもちまして、薬剤費が一・八%、そして診療報酬上の計を合わせますと二・七%削減ということになっておりますが、実はこのように試算されました以上のある意味での実害を各診療機関はこうむっているかと存じます。

 そこで第一問目でございますが、実はさきの五月二十二日に五島委員に対しましての大塚保険局長の御答弁の中で、今回のマイナス改定のことに関しまして、医療機関の経営に想定をした状況を超えるような事態が生じるとは正直言って現時点では考えておらないわけであります、フォローしていかなければわかりませんけれども、現時点においてはということで、予測を上回る弊害はないというふうな御答弁があったことを覚えておいでの委員もおいででしょうし、もちろん大塚保険局長は覚えておいでだと思いますが。

 私の手元に寄せられました六十七医療機関からのアンケート調査、一カ月を経たところでとりまして、対前月比三月との比較、それから対前年比といたしまして上がってきたデータがございます。全医療機関平均ですと約マイナス七・六%の対前月比減収、前年比ですとマイナス九・〇%、多く見積もれば全医療機関平均でも一〇%内外、特にこの中でも内科以外の医療機関、これは実は整形外科等々の減収が大きいわけですが、これが前月比でマイナス一五・九、前年比でマイナス一〇・〇となっております。

 さきの御答弁で大塚局長がおっしゃいました、どのようなフォローをしておられるのか、そして現状で、一カ月たったところで、どんなデータをお持ちなのか。診療報酬マイナス二・七になさったことの結果、影響をどのように入手しておられるのかについてお伺いいたします。

    〔福島委員長代理退席、委員長着席〕

大塚政府参考人 私どもは、医療費につきましては、俗称あるいはニックネームでございますが、メディアスというようなシステムで、各医療機関から審査支払い機関に請求されました額、これをベースにまずは一番早いデータをとるわけでございますけれども、御案内のように、診療月の翌月に請求をいただきます。そして、お支払いがいわば診療月の翌月末ということになりますので、私どもが診療月のデータを大体入手できますのはおおむね実は三カ月後になります。そういうことでございますので、四月分につきましては、全国的なデータというのはまだ入手できるに至っておりません。

 それから、これは今御議論というか、詳しいことを申し上げる必要はないのかもしれませんけれども、診療報酬改定、特に多岐にわたりますと、四月の時点というのは大変いろいろ不確定要素がございます。

 例えば、医療機関におきましても、これは私ども引き続き努力をしなければなりませんが、どうしても新しい診療報酬改定で項目が多い場合には、多少の事務的な処理が時間がかかるというようなこともありまして、四月のデータだけで議論するというのはなかなかこれはまた非常に危険な数字になる、危険な数字といいましょうか、見通しをややもすると結果においては誤るということもございます。もう少し期間をとった形での把握というのが必要だろうと思います。

 今現時点におきましては、そういう事情で具体的な数字は持ち合わせておりません。

阿部委員 そうであるならば、この五月二十二日の御答弁は、私は不適切だと思います。やはり状況を超えるような事態が生じるとは正直言って現時点で考えておらないというのは想像にしかすぎなくて、今おっしゃったような答弁をなさるべきです。三カ月か四カ月たたないと診療報酬改定上の余波の予測はつかないのであると。今おっしゃったことを端的に申しませば、一言で言えば私の申したようになると思うのです。

 私が特にこの診療報酬改定で案じておりますことは、実は、医療というのは、いつも申しますが、いわゆる労働集約型、かなりを人件費に割かなければならない分野でございます。診療報酬の改定が結果的に人員削減、リストラクチャーをしていかなければならないようなことに結びついた場合に、ただでも少ない現在の日本の医療の従事者は、あっぷあっぷでやっているわけでございます。そこに及ぼす悪影響を非常に案じております。

 ですから、ぜひとも担当部署におかれましては、実際の診療報酬減の影響、それからそれがどのような病院の診療従事者の数にはね返っていくかというようなこともあわせて指標としてお持ちいただければと思います。そして、そちら側のデータが出た時点でまた改めて私どものとりましたデータとあわせて検討させていただきますので、それまでは、例えば十月からかてて加えて御高齢者の二割負担とかいろいろなことを行われませんように、きちんとデータがそろってから次のステップ、特にこの場では、小泉首相はもう来年三月からサラリーマン本人は三割負担にするんだ、するんだと言われておりますが、今回の診療報酬改定の結果が出て、きちんと物事を見きわめて、医療全般の姿を見てからでもちっとも遅くはないのだと思います。初めてのマイナス改定でございます。このことは、実は診療機関だけが負担を負うのではなくて、患者さんたちにも必ずはね返る問題であろうと思います。その視点をよくよくお持ちの上でお願いしたいと思います。

 この点について、坂口厚生労働大臣の御意見、お考えを伺いたく思います。

坂口国務大臣 この診療報酬の問題は、先ほど局長からも答弁がありましたが、四月から六月ぐらい、三カ月間ぐらいの一応状況を見て、そうしますと大体九月にはそれは出てまいりますので、その実態を一遍踏まえたいというふうに思っております。二・七%というふうに言っておりますが、特定の科に特別な負担がかかり過ぎているというようなことになれば、私はある程度の軌道修正はやむを得ないのではないかというふうに思っている次第でございます。

 この医療におきます診療報酬の問題と、そして医療の質の問題というのは、今までややもいたしますとイタチごっこのような感じで、一方が何か変化をしますと、また他の方にも変化を与えていくということになっている。それが悪い方向にいきますと、だんだんとスパイラルを描いて悪くなっていくということもあり得るというふうに率直に私はそう思っております。

 したがいまして、この診療報酬のあり方というのは、そうそういつもいつも変えるというのではなくて、やはりそれ相応の評価というものがなされるようにここはしていないと、医療そのものが落ちつかないという気がいたしております。

 したがいまして、きょうは午前中にも御答弁を申し上げましたけれども、この診療報酬の評価の基準というものを明確にして、そしてここをさわることによって医療全体をいろいろと動かす、診療報酬をてこにして動かすということは余り好ましいことではないというふうに考えておりますので、そうしたことはできるだけやらないというふうにしていくためにも、この基準というものを明確にしていかないといけないというふうに思っている次第でございます。

阿部委員 大変に先見性のある御答弁と拝聴いたします。

 私は、今回の医療法改正、とにかくやみくもだと思います。一つは御高齢者の窓口負担増、そしてサラリーマンの三割負担増、それに先立つ診療報酬の改定、ここまでプログラムして、あたかも予定調和的にやることの国民への負担、このことをきちんと見きわめておらないと思うわけです。それがこの間の審議で私どもを初めとして野党側が強く反対しております理由でもあろうかと思いますから、拙速に帰すことのないようによろしくお願い申し上げたい。

 そして、先ほども申しましたが、医療機関の人件費比率、日本の場合は大体五割でございます。公的な病院では六割が人件費比率でございます。診療報酬をさわるということは必ずその分野に及ぼす影響がございますので、医療の質とも相まって、よい指標をお持ちになってフォローしていただきますよう大塚局長にはお願いいたします。

 それとあわせて、私はいわゆる労災保険のことでお伺いいたしたいと思います。

 今回の診療報酬改定に伴って、健康保険準拠という形で、実は労災保険においてもさまざまな診療報酬上の切り下げが行われております。私は、いわゆる労災保険というものの考え方は、勤労者がその働くことの中から病を得て、でもどうにかして職場復帰したい、あるいは生活を再建させていくために日本が取り入れた極めていい制度と思いますが、あたかも、健康保険の財政が逼迫しているゆえに労災保険も準拠してカットしていくというふうな手法がとられているようで、大変に案じられております。

 例を挙げさせていただきますと、いわゆる慢性疾患ということにおいて、例えば発病後三カ月を経た患者さんの再診料がその月の六回目以降は半額となる、あるいは、理学療法、特に集団リハビリにおいて九回目以降は算定しないというようなことがございます。

 例えば振動病、よく木をブルブルブルッと切る、あるいはトンネルを掘るときのガガガガッという、こういうことで神経障害を起こしました振動病の患者さんの場合、八回までの集団のリハビリで症状が取れればよろしゅうございますが、取れなくてもリハビリを受けながら、治療を継続しながら働いておられる方がおられるわけです。このような方に対しても、なぜか三カ月という時限を区切って、それ以降のリハビリは算定されませんというようなやり方は、労災保険の本来の趣旨に大きく反する方向だと私は思いますが、この点に関しまして関係部局の御意見を承りたいと思います。

日比政府参考人 労災保険の診療報酬の問題でございますが、労災保険、これも公的な医療保険の一つでございまして、この診療報酬につきましてどう考えるか。

 これにつきましては、やはり公的な保険の一つということで、基本的には健康保険の診療報酬体系をベースにする、その上で業務上の疾病なり負傷ということに特有の事情というものもあるわけでございますので、そういう場合であるとか、また、労災保険の場合、早期の職場復帰、これを図ることが一つの大きな目標、目的でございますので、そのような点を加味した上で、健康保険の診療報酬体系の中で特別に手当てをすべき点があればこれを特例として実施しているということでございます。

 今般、労災保険につきましても、診療報酬体系を見直しまして、今申し上げたような形で改定をいたしたところでございます。

 なお、委員御指摘の三カ月経過の問題でございますが、労災の場合には、やはり最初の三カ月の早い段階におきましては、これは現実にも集中的にいろいろな形で行われることが必要ということで、最初三カ月につきましてはいわゆる上限が云々というふうなことはないのが労災保険としては適当であろう。

 それから、三カ月経過後につきましても、先ほど御指摘ございましたけれども、例えばリハビリテーションの場合でも、個別と集団のやり方はございますけれども、やはり個別の方は大切なことであろうということで、それについては制限を設けていないというふうなことで、先ほど申し上げました事情にかんがみて特別に手当てをいたすということで改定させていただきました。

阿部委員 いわゆる健康保険に準拠するという考え方、何かに例を引かなければ確かに運営できませんから。ただしかし、何度も申し上げますが、やはり労災保険の本来の趣旨は、その勤労者が例えば傷病を抱えながらも職場復帰したり、生活を再建していけるようにという趣旨でございます。

 先ほどおっしゃいました三カ月以降、九回目からのリハビリは診療報酬上に何ら加算されない、保険がきかないというような状態は、データとして、例えば三カ月で患者さんたちがお治りになるならそれでよろしゅうございます。振動病、白ろう病と言われる疾病一つとっても、より長期の療養が現実には必要でございます。

 何ら根拠のないことを健康保険準拠としてなされば、必ずその轍は、例えば鍼灸治療、一九八二年でございましたか、はり、きゅうは、一年以上たったらその方は慢性的な頸腕であるとか腰痛であるから、はり、きゅうは効果がないとして通達一枚で中止された折がございます。しかしながら、その後十数年たちまして、やはり鍼灸というものが慢性的な疼痛や腰痛を抱えながら働く方々の就労支援に大きく寄与しているということをもって、また新たな通達が出た事例もございます。

 私は、今回の問題が、特にリハビリの回数制限、あるいはそこからも保険は払わないという形になっていることを非常に案じます。今、個別リハはやっているとおっしゃいましたが、これも十一回目以降は七割にカットというような状態でございます。やはり、患者さんたちの現状、そしてそういう患者さんたちを診ている医療機関の声をきちんとお聞きになり、政策に反映させるが本道だと思います。

 この集団リハ、特に労災保険におけるリハビリの制限について、坂口厚生労働大臣に御所見を伺いたいと存じます。

坂口国務大臣 この労災の問題は、私は、阿部議員にひょっとしたら褒めてもらうんじゃないかと実は思っていたわけでございます。と申しますのは、これを決めますときに随分整形の先生方とも御相談をさせていただきましたし、そして、健保で決めましたものに比べますと随分延長をしたつもりでおります。

 健保でございますと、月一回目は八十一点、それが二回目、三回目とだんだんと減っていくということでございますけれども、労災の場合には、三カ月間は千三百八十円というふうにして据え置いたわけでございますから、ここは労災をかなり重視しているというふうにおとりをいただいていいんじゃないかと私は思っています。

 その後、逓減措置はとってはおりますけれども、一般の場合には三回まではよくて四回から逓減措置をとっておるわけで、今度は六回までというふうにしたわけでございまして、少なくとも週に一回ぐらいお見えいただく患者さんにとりましてはずうっとそのままいけるということでございますから、これはそれほど御迷惑をかけないのではないかというふうに私は思っておりまして、ここは随分譲ったつもりでおりまして、これだけはお褒めをいただけるのではないかというふうに御期待を申し上げておりましたけれども、今聞きますとなかなかそうはいかないようでございまして、おしかりを受けたわけでございますが、しかし、かなり現場の先生方の御意見も聞かせていただいたつもりでおります。今後、推移を少し見させていただきたいと思っております。

阿部委員 私も、坂口大臣はリハビリという部門は特に御見識もおありと思いますから、なおなお各診療機関の声、患者さんの声をお聞きいただいて、私のところに寄せられます声の少なくなりますように改善の御措置を図っていただきたいと思います。

 あわせて、私は、労災保険ということでもう一点お伺いいたします。

 これも、さきの五島委員の御質問で、実は二年ほど前の御質問から引かせていただきますが、いわゆる政府管掌保険の中に紛れ込んだ労災保険、本来は職業上受けた災害が政府管掌保険の医療保険の中に紛れ込んでおるというのが、レセプト上、毎年六万件近くございます。そして、そのときに、五島委員が担当部署に聞かれましたと思いますが、政府管掌保険にだって六万件くらいあるんだから、国保とか健康保険組合でも、本来は労災保険という仕組みの中でお支払いがなされるべきものが紛れ込んでおるものがあるのではないかと。特に国保については、一人親方とか林業で働かれる方とかは、実は政府管掌保険ではなくて国保に入っておられてそこで労災を受けることもあるかと思います。この点について、国保担当の部署からレセプト上のチェックの現状、あるいは今後の見通し等、御答弁をお願いします。

大塚政府参考人 国民健康保険の中で国民健康保険組合というものがございまして、その中に全国土木、正式に申しますと全国土木建築国民健康保険組合という組合がございます。ここは、いわゆる建築会社と言われるような方々、その職員がその家族も含めて加入者となっている国保組合でございますが、いわゆる建築関係の人たちの集まりでございます。

 代表例といたしましてここを申し上げますと、例えば平成十二年度の実績でございますけれども、レセプト点検の結果、労災に該当するということで調整を行ったものが二千六百五十九件、金額に直しまして約六千百九十二万円という実績がございます。

 また、国民健康保険一般になりますと、国民健康保険の主たるといいましょうか大宗を占める加入者は、今日におきましては無職者あるいは高齢者ということでございますので、労災保険の対象にならない被保険者が多いということもございまして、私どもで承知をしている件数といたしましては、そうしたものも含まれているとは思いますけれども、そのほかのケース、例えば他の被用者保険の方に本来請求できたものをその時点におきましては国保で支給をしておったというような調整を含めまして、ほかのケースの調整を含めまして、十二年度の実績で国民健康保険全体で十三万六千件、金額にいたしまして二十四億八千万円というような数字を承知しております。

阿部委員 実は、今の御答弁で半分は了解いたしましたが、半分了解できない点がございます。というのは、昨今、国保の加入者、特に特別加入と申しまして、介護労働に従事するような方とか、あるいは一たん普通の会社を定年後再就職されて、保険形態は国保というような形をおとりになる方もふえておるわけです。

 そして、それでは、各都道府県あるいは市町村の保険者に、どのような通達ないし国保の中に労災が紛れ込む可能性があるからきちんとチェックしていただきたいという厚生省サイドからの指導がなされているかということをチェックいたしますと、実は、三年ほど前に確かに通達のような形で、それも労災という文字を使わずに、紙は一枚出ておりますが、例えば十二政令指定都市に伺ってみますと、これが全くそのようなチェックはしておらないというのがお答えでございました。

 私は、これからの就労形態の変化、そしてその中で、本来、労働災害であればそれがそれとしてこの労災保険という仕組みがさらに充実していくように、各保険者、市町村ですね、もっと厚生労働省の側から周知徹底して、さまざまな労災の起こり得る可能性、そして労災保険で拾わなくてはいけない事例のある可能性を周知させていただきたいと思います。

 少なくとも、毎日新聞の報道によりますと、十二政令指定都市、全くそのようなチェックがなされていない。なされていたのは世田谷区で事例がございましたが、まだまだ各市町村行き渡っておりません。この点については、恐縮ですが、坂口厚生労働大臣に御答弁をお願いいたします。

大塚政府参考人 国民健康保険も大事な制度の運営者ということでございますから、それぞれの保険者の立場で他に請求すべきものあるいは他の制度の給付を受けるべきものがありますれば、当然、保険者といたしましてこれをチェックいたしまして適正な執行をするというのは基本でございます。

 そうした基本的な考え方につきましては、これまでも各市町村に繰り返しお願いをしておりますけれども、確かに、労災というような形で取り上げて個別の制度あるいは範囲について具体的に強く指導した、御連絡をしたということは必ずしも頻繁ではございませんので、適切な機会をとらまえてそういう注意を喚起いたしたいと思っております。

 基本的には、各制度それぞれの目的、趣旨に沿って適切な運営が行われるように、今後とも指導あるいは御協力を仰いでまいりたいと思っております。

坂口国務大臣 私も、いろいろなことを少しずつはわかっているつもりでおりますが、この問題はきょう初めてお聞きをいたしました。こういう状況で、これほど多くの数字があるということも存じませんでした。一度ちょっと調査をさせていただきたいと思います。

阿部委員 いつも誠実な御答弁で大変ありがたいと思います。

 厚生省から出ております通達ですと、第三者行為求償事務ということで書かれておりまして、これでは各市町村は、第三者行為求償事務と言われても労災とぴんとこないのではないかと思います。

 そして、先ほども申しました、これから介護労働につかれる方とか、一たんリタイアされてから再就職される方、皆さん国保をお使いでございます。そうすると、そこで当然、例えば肝炎にうつる、腰痛を持つ、いろいろな労働災害があると思います。新たな就労状況に合わせて国保をきちんとチェックしていく。そして、特に国保、赤字、赤字と言われておりますから、肩身も狭うございますから、これは行政指導上きちんとなさって、本来、労災保険ということを活用されるような向きによろしく御検討をお願いいたします。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 きょう、各般、皆さんの御質疑の中にもありましたが、いわゆる医療過誤の問題についてお伺いいたします。

 私は、きょうの各質問者、件数が何件であるかということを中心に、それをどうやって調べるかというお話も幾つかございましたけれども、ここで、四月十七日に厚生省から出されました検討委員会の御報告の中で、二次医療圏に一つ相談窓口を設ける、そして県単位でもさらに充実したものを設けるという趣旨を高く評価いたします。

 そして、二次医療圏ということで、公的な窓口として保健所ということをお考えになってはどうか。これは、自分の受けた医療が果たしてこれでよかったかどうか、どこかに相談に行きたいと思う患者さんはいっぱいおられます。そして、自分のかかった病院にはなかなか行けません。そこで、第三者的な、そして現実に二次医療圏にある公的な機関として、保健所というのはかなりの可能性のある相談窓口と思われますが、この点について担当部局から御答弁をお願いいたします。

篠崎政府参考人 二次医療圏ごとの相談窓口につきましては、今後、関係省庁やあるいは地方自治体と協議をしながら検討することとなりますけれども、ただいま委員御指摘の保健所は有力な選択肢の一つと私どもも考えております。

阿部委員 そして、今朝の質疑でもございましたが、患者さんというか、相談をしただけでは解決しない問題も多々あると思います。一つは、救済をどうするか、あるいは裁判に持っていくかどうか。

 そして、実は、欧米諸国におきましては、ヨーロッパにおきましても、アメリカはちょっと違ってございますが、北欧諸国やドイツにおきましても、既に一九七〇年代から、いわゆる医療過誤ということに対しまして、きちんとした、そのことを検査し、あるいはそこに実地に立入調査をいたしまして、患者さん側の言い分、そして現実に行われた医療行為の妥当性等々をチェックしたり審査したりする機関が、既に一九七〇年代、ヨーロッパでは整ってございます。

 我が国がここまで医療過誤に対する対応がおくれましたのも、一つには、何か事が起こった場合に裁判という形式をとるしかないか、あるいは、もう一方の医療監視と言われますようなものは、これは、川崎の協同病院でもわかりましたことですが、部屋の広さはどうかとか、看護婦さんの数はどうか、医薬品はきちんと管理されておるか、こういうことをチェックする機能しか持たないわけです。そこで行われた医療行為そのものが患者さんにとってどのような影響を及ぼしたか、あるいはミスであったか、過誤であったか、不測の事態であったか、こういうことをきちんと立入調査し、救済の仕組みにまで結びつけるために逐一裁判をしていたのでは、これはやはり社会のロスだと思います。裁判をする方も、すごく大変、悲しい。

 そこで、私は、先ほどの労働基準監督局に倣って、医療基準監督局、立入調査権を持ち、過誤を争うのではなくて救済をまず第一にするような国の仕組みを我が国もきちんとこれから検討していくべき時期に至っている。既に三十年おくれでございますが、このことは高度化した医療の中でぜひとも検討されてしかるべきと思いますが、大変突然で恐縮ですが、これは時間の関係で、ちょっと大臣に先に御答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 私、地方を回っていきますと、役所の中で一番怖いのは税務署よりも監督署だ、こう言われるわけでございます。私はそれを聞くごとにびくっとするわけでございますが、それほどやはり監督署というのは皆から恐れられているのか、こう思っておりまして、そうしたものをもう一つまたつくるのがいいのかなという気がして、今実は聞かせていただいたわけであります。

 私は、それよりも、先ほどの相談所、相談所という名前がいいか悪いかは考えなきゃいけませんし、行います内容ももう少しぴりっとしたものにした方がいいというふうには思いますけれども、それを余り徹底的に、縛り上げるぞというようなものでない方がこの性質上いいのでないかというふうに私は思います。

 もしもそういう今御指摘をいただきましたようなことをするのならば、都道府県のそれぞれの監督部署もあるわけでございますから、そうしたところに少し機能を持たせて、そこにやっていただくということはあってもいいというふうに思いますが、また改めてもう一つこれをつくるということは、せっかくの御提案でございますけれども、ちょっとどうかなというふうに私は思っております。

阿部委員 これはやはり、実際の調査能力を持ち、なおかつ患者さんには救済ということをもたらさないと、先ほど申しましたように、医療被害裁判が多発すれば、必ず社会には負担になります。

 実は、アメリカで医療保険に関する医賠責の保険会社がたくさん倒産いたしました。理由は、医者は保険金を掛けます、ただし、支払いが多過ぎると保険料が高騰し、医者も払えなくなる。これがアメリカの実態です。

 今、坂口厚生労働大臣にあっては、私がきょう突然申しましたから、今のような御答弁であることも了解いたしました上で、ぜひとも、例えば、一九七五年、スウェーデンでできました社会庁傘下の医療責任委員会とか、フィンランドで一九九四年からつくられております医と法に関する国家委員会とか、こういうのはみんな、患者さんの実際に起きた医療上の過誤を含めたさまざまな問題を、過失責任を問うだけではなくて、いわゆる裁判のように過失責任を問うのではなくて、事実の調査と救済に入るための機関でございます。イギリスでも地域公衆保健検査官もございますし、ドイツでも一九七〇年代から鑑定委員会あるいは調停所というのがございます。

 私は、医療被害は、今の高度化し専門化する医療機関の中で、ある意味で、大変に多発するはもう本当に必定のように思います。もちろん、人手不足が根本にございますから、その点の充足はお願いしたいのですが、とにかく、今のような医療監視のあり方か裁判かしかないあり方の中をとる道、そしてそれは、私は医療基準監督局と申しましたが、今の労働基準監督局あるいは監督署がよくやっておられますという評価の上に立つものですので、私が今お伝え申し上げましたような事例にのっとって、ぜひぜひぜひ、これは坂口厚生労働大臣のときがよろしゅうございますので、私としては前向きに再度しつこく伺いますので。

 そして、一点申し添えますれば、いわゆる医師会の中に設けられました医療事故の紛争処理委員会は、これも患者のためには、恐縮ですが、医師会というギルドでございますから、患者の立場にはなかなか立ち切れません。第三者機関で、調停能力を持ち、調査能力を持ち、救済能力を持つという機構をぜひともお考えくださいまして、それが、裁判が多発する社会よりも、より社会的なコストが必ず低くつくし、悲しみも少なく、納得も高まろうと思います。

 一人で勝手にべらべらしゃべって恐縮ですが、力を入れた点ですので、よろしく御検討のほどお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

森委員長 次回は、来る六月五日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

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