第154回国会 予算委員会 第17号(2002/02/25) 抜粋 ○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
冒頭、坂口厚生労働大臣に、本日の午後の質問の最初にお立ちになった赤松委員からも御指摘のございましたヤコブ病問題、和解勧告が出ておりまして、あとは国の判断でございます。八七年以前の患者さんについても広く救済の手が差し伸べられますように私からもお願い申し上げて、本日の質問に入らせていただきます。
私は、議員になって一年半が過ぎましたが、きょうが小泉首相に質問させていただく初めての日ですので、よろしくお願いします。骨太路線でまいりますので、よろしくお願いします。
まず、冒頭、女性に甘いと言われながら、せっかく行政改革に頑張っていた田中眞紀子前外相、志半ばにして、この外務省問題もいまだ解決せずということで、もともと小泉首相の第一の旗であった行政改革、なかなか実は進んでおらぬ。そして、二番目の財政改革に至っては、デフレスパイラルに陥るか、はたまた金融システム不安かと、右を向いても左を見てもいいことが全くないというのは、もうきょうのこの審議の中でも皆さんに御指摘されたことですので、私は、三番目の医療制度改革に集中して質問させていただきます。
そして、先ほど何人かの委員への小泉首相の御答弁を聞きながら、国民は、痛くても、今がよくても、次を考えたら何とかこの痛みに耐えてもらわなくちゃならないからだ、三割負担は仕方がない、最初に決めても改革を頑張るぞとおっしゃいましたが、私の認識からいたしますれば、国民は、現在の医療の状態においても非常に痛みを感じておる。その痛みとは、もちろん経済的な負担問題もさりながら、最も大きな痛みは、毎日のように新聞報道されます、そして私もいつものように取り上げざるを得ない医療ミスの問題でございます。
東大病院で、本来は胃に入れる管が肺に入っておったり、あごの手術をした十八歳の少年が横浜市の港湾病院でその後亡くなる。たかだかあごの手術をして、なぜ十八のあたら若い命が失われていくか。日本の医療ミス、多発する医療ミスは、国民に痛み以上の、涙、そして本当につらい思いを多々させております。であるならば、医療の改革とは、まずこうした真に国民が痛いと感じていることに政治がどのような手を差し伸べられるかにあると思っております。
そこで、冒頭、小泉首相にお願いいたします。
小泉首相は、国を支えるものとは何であるとお考えでしょう、ずばり一言でお願いいたします。国を支えるものとは何か。
○小泉内閣総理大臣 国民だと思います。
○阿部委員 さすが小泉首相でいらっしゃいます。
その国民、そして、国を長年支えてくれて、今御高齢期を迎える方、いわゆる御高齢者、間違いなく戦後の復興あるいは苦しい戦争を切り抜けて今日本で老いを迎えている御高齢者に対して、もしも小泉首相に、ある六十歳代後半から七十歳代の御夫婦が質問したといたします。私たちは一体老後のために幾ら持っておればこの国で安心して死んでいくことができるでしょうか、首相、と尋ねられたとき、これも一言でお願いいたします。
○小泉内閣総理大臣 人によって違うでしょう。
○阿部委員 それではなかなか答えになりません。人によって違っても、国としてこうした体制を整えておるから、国民よ、大体これくらいあなたたちが持っていれば幸せに暮らせるよということを明示するのが政治でございます。ピンからキリまであるから、人によって違うからという形で言うことが、そして果てしない患者負担を強いていくことが、今日、国民の消費デフレ、本当にこの国で老いを迎えて大丈夫だろうかという気持ちを来しておると思います。
この点については、人により違いますというお答えは、絶対私は、たとえ社会主義を信奉する首相でなくても、誤っておると思います。というのは、人間、見通しを持って生きていくものです。この人間が見通しが立たない社会をつくったことが、いかに多くの少年たちに不安と閉塞感をもたらしているか。これは、ぜひとも政治家小泉首相のお考えの中に聞き入れていただきたい点でございます。
そして、次の質問に移らせていただきます。
私のもとに、今一通の手紙がございます。先ほど、幾らかかるかは人によるというところの一ケース、相談させていただきます。このケースはいかがでしょうか。
先ほど私が例示した六十歳代から七十歳代、奥様が六十歳代後半、お連れ合いが七十歳代のケースで、お連れ合いが脳梗塞で倒れられて、その後要介護度五度の患者さんでございます。
十五カ所くらい夫の入院先を探しましたが、特別室以外はなく、最終的には、あるO病院に二月八日にお願いすることになりました。初めは差額ベッド代八千五百円の個室でしたが、十三日から二人部屋で五千円くらいの部屋になり、寝巻き、バスタオル、おむつ代等が一日千四百円、あとは食費、医療費で、月二十六万円でございます。自己負担二十六万円でございます。
私が医療現場におりまして、一体、大体皆さん自己負担どれくらいお払いか、調べたこともございます。十五万から四十万ほどの幅でございます。そして、これがいつまで続くかわからないということにおいて、本当に御高齢期の皆さんは、この国で老いて大丈夫だろうかと涙で日々をお暮らしです。
あと何年もつか、二年くらいか、このペースでもつかと思いましたが、心配なので、私の選挙区です、藤沢市に聞きに行きました。いわゆるリバースモーゲージ、五千万円で、住宅を担保にお金をお借りする、その際に、医療費が十万円、生活費十万円、そして利息が〇・六から〇・七五という貸し出しですよ、こう言われても、この方は、今住んでいらっしゃるおうちを担保に入れて、はたまた何年今の療養が続けられるか先が見えない。御夫婦でまじめに働き、この国を支え、この国で老いて、先が見えないというのが現状でございます。
そうした現実を、やはり私は、小泉首相こそ、タウンミーティングのお好きな小泉首相こそ、人それぞれに違うんだとおっしゃる小泉首相こそ、日本全国津々浦々、ぜひとも公聴会をお開きになるべきだと思いますが、お考えはいかがでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 それぞれタウンミーティングを計画しておりますし、厚生労働大臣も去年のタウンミーティングにも参加していただきました。ことしも、テーマ別に各地区でいろいろなタウンミーティングを開催していきたいと思っております。
○坂口国務大臣 厚生労働省としましても、昨年の五月から六回にわたりまして、全国各地域で、この医療問題を中心にいたしましてのフォーラムを実施してまいりました。これからまた、必要であればやらせていただきたいと思いますし、多くの国民の皆さん方の御意見も聞かせていただきたいと思っております。
○阿部委員 そうしたさまざまの意見が現実に政治の場に届く前に負担額が決められていく。そして首相は、ケース・バイ・ケースだから先行きはわからぬ、個々の負担額、個人の負担額はわからぬというふうにしてこの改革を進めようとするから、やはり日本は、本当に今経済的にも苦しい状況にある中で、消費デフレが私はますます拍車がかかっていくものと思います。
そして、特に御高齢者、確かに経済状況は一様ではなくなりました。豊かな御高齢者もおられます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、今あるお住まいの家を抵当に入れてでも、担保にしてでもお金を借りて、あとどれぐらいかという方もおられます。そうした中で、先ほど大塚局長からの御答弁でございましたが、簡単に言わせていただいて恐縮ですが、御高齢者で特に長期入院の方は保険医療から外していこうという形で、診療報酬という形の制度の中で、本来は入院体制として解決されるべき長期入院の問題が論じられております。
これを北風政策と言わずして、要は、長い入院になったから、診療報酬制度を外して、医療保険を外してほかに行きなさい、あるいは家に帰りなさいという形で言われておりますが、これは、小泉首相は、実は一九九七年当時も厚生大臣でいらしたので御見識がたくさんおありと思いますので伺わせていただきますが、日本の中で長期入院ということを語る場合に、どのような特徴がございますでしょうか。首相はどう御理解なさっているでしょうか。お願いします。
○小泉内閣総理大臣 それはいろいろ理由があると思います。介護保険制度がなかった場合に、在宅の介護あるいは医療の制度なり実情が整備されていなかった点もあると思います。また、病院に入院していた方がいろいろな治療もしてくれる。世話もしてくれる。家族も、うちにいるよりも安心だという点もあったと思います。また、福祉施設に入るよりも費用の点でも負担が軽くて済むという点もあったと思います。いろいろな理由があったと思います。
○阿部委員 さすが、前厚生労働大臣でいらっしゃいますから、三つの点は御指摘のごとくでございますが、あと二つ、私に言わせていただければ重要な点が抜けておると思います。
日本で今、六カ月を超す長期入院患者さん、全体で三十万人でございますが、このうち七十歳以上という御高齢ということを、七十に線を引きますと二十万人。あと十万人は、決して御高齢者ではございません。それから逆に、御高齢者で集計をとりました場合に、六割が女性で、そしてお連れ合いを亡くされ、あるいは女性の方が幸か不幸か長い人生を生きますから、自分の孤独な人生の終末が長期入院という形になっている方が非常に多うございます。
そして、これは先ほど申しました、日本が御高齢者をどう遇していくかというとき、男性のみならず女性も頑張りましたが、戦後の復興を一生懸命頑張られた男性方、そして、本当の意味で長い人生を女性が生きるようになって、その終末が、こうしたいわゆる行き場がそこしかない形で老いを迎える御高齢な女性たち。小泉首相にもお母様があり、お父様があり、ついせんだってのことも存じておりますが、やはり、親であればどのように自分が子として接していきたいか、その思いをもってしか、医療制度の改革は私はなしていけないことと思っております。
そして、あわせてもう一つ、実は長期入院といえば、間違いなく精神科の患者さんたちでございます。三十三万人、日本でなぜこれだけの長期入院患者がいるのか。これをこそ社会的入院と言うのだと思います。地域医療の充実は遠く、本当に何十年と帰れない患者さん。精神病院にも十万人の御高齢者がおられます。
今回の長期入院の問題で一切手がつけられることなく、そのまま痴呆と精神障害を抱えて閉塞した空間の中で亡くなっていかれる方たちにこそ、まず光が冒頭与えられるべきと思いますが、小泉首相のお考えをお聞かせください。
○小泉内閣総理大臣 今お話しのような方々に対して、適切な介護なり治療、どうあるべきかという点は、大変重要な点だと私も思います。
○阿部委員 坂口厚生労働大臣にも重ねてお伺いいたします。
いわゆる触法精神障害者の問題で、法的整備の方は先に進んでおりますが、長期の精神障害の患者さんたちの長期入院の問題、精神科の療養問題は、一向はかばかしくなっておりません。私は、何度も申し上げますが、長期入院がまず社会的入院として解決されるべきであるならば、二十万、そして御高齢者全体を含めれば三十三万の精神障害の方たちの施策、入院を解放し地域へ帰すことを第一に改革のプログラムの中に入れ込んでいただきたい。
質問の予告もせずに恐縮ですが、総理から前向きな御答弁をいただきましたので、あわせて坂口厚生労働大臣にもお願いいたします。
○坂口国務大臣 精神病患者の場合には、非常に経過が長いわけでございますから、当然のことながら、半年以上に及ぶ方も多いというふうに思います。精神病患者の皆さん方のときに、その主治医の皆さんがこれはやはりもう少し入院をさせるべきだという判断をされます場合には、それは当然のことながら病院に六カ月が過ぎようと七カ月が過ぎようとおみえになって、そして、自己負担ということにならないで済むのだというふうに私は思います。
主治医の先生が、もうこの方は医療の場でよりも福祉の場で見ていただいた方がいいという判断が出ましたときには、それはやはり福祉の方でそうした場所を探すということ、そしてまた、できれば御家庭に帰っていただくということも念頭に置かなければならないというふうに思います。
なかなか、家庭の皆さん方というのもお受けいただけない。私も経験がございますが、それは六人も七人もお子さんがあってもだれもお受けにならないというのがあるわけでありまして、そのところは御家族の方も、やはり御両親あるいは家族の場合には何とか受けて、病院ではなくて、そして家庭の中でできるだけ見てあげようという気持ちになっていただかなければならないことも事実でございます。
○阿部委員 もちろん、人間の生き死にですから、その人の暮らす最小単位の家庭ということもございますでしょう。ただし、我が国に、何度も申しますが、三十三万人精神障害の患者さんがいまだに入院状況にあるということは、我が国の精神医療制度の問題でもございますので、政治とはそうした仕組み、制度について、人間がよりよく生きられる方向に導くことであるかと存じますので、重ねてお願い申し上げます。
そして、そうした全体の文脈の中で私は、今、小泉構造改革が進められる中で、特にこの医療費の問題が、まず先に削減ありき、これは国民負担に返す分も含めてですが、そのような形で行われることが、国民の体力、特に勤労者の体力を大きく損なっていくのではないかという点について、極めて不安を持っております。
逆に言えば、小泉氏の唱えるさまざまな今後の日本の経済の改革プログラム、例えばバイオ産業にしても、情報産業にしても、IT産業にしても、医療という分野はその骨格にもなり得る、コンテンツにもなり得る極めて重要な、そしてある意味では、我が国が健康立国という形で世界にもう一度我が国のあり方を示せる大切な分野です。
しかしながら、残念なことに、小泉構造改革ではまず削減ありき。これは三十兆枠の問題と同じですが、経済というものを考えるときに、絞ってその中で改革していけることと、逆に言えば、発展を見越しながら緩やかにいろいろな可能性を育てていく場面があると思います。
財政諮問会議の中で、塩川大臣がおられますので、本当は竹中大臣への御質問ですが――竹中大臣にお願いいたします。ごめんなさい、先に塩川大臣のお顔がぱっと見えたので、失礼しました。
財政諮問会議の中には、例えば坂口厚生大臣でもよろしゅうございますが、いわゆる医療分野の方々がお入りでない中で、総枠規制というお話もございました。医療の経済面的な削減のことが話されていることは、私は、日本にとって不幸な会議のあり方だと思われますが、竹中大臣の御所見をお願いいたします。
○竹中国務大臣 委員御指摘のように、医療の分野が経済政策の中でも極めて重要な位置づけを占めているということは、十分に認識をしております。
しかし、経済財政諮問会議は非常に幅広い議論をします。総理プラス十一人の委員ですべての分野をカバーするということは現実問題としてはできませんので、一つのシステムを経済財政諮問会議は持っております。それは臨時議員という制度でありまして、現実問題として、医療の問題等々を話し合うときは必ずと言っていいほど坂口厚生労働大臣に実は臨時議員として参加をしていただいておりまして、十分な議論ができるような体制をとっております。
また、民間議員のお一人でいらっしゃる大阪大学の本間正明先生、御自身は財政の専門家であると同時に社会保障の専門家でもいらっしゃいまして、委員のお考えのような御懸念のないように十分な体制をとって議論をしているつもりであります。
○阿部委員 医療という分野は、人間の生命、そして、それは必ずしも市場原理からいえば効率よくもなく、一番効率よいことはすぐ亡くなることですから、そうではない形で支えられなければいけない医療。しかしながらこのことも、医療分野は大きな雇用創出効果、そして投資効果のある分野でもあるという、非常に極めて微妙なところにある分野です。それであるからこそ、医療関係者は臨時ではなくて常時そこにメンバーとして入れていただき、なおかつ、本間先生のお考えについては折があれば他で批判させていただきますので、もう少し長く医療分野で命を守ることに専念してきた方の、私は坂口厚生労働大臣を御推挙しますが、御意見を深く組み入れて、日本の将来を過つことのないような財政改革をしていただきたいと思います。
最後に、小泉首相に一つだけ。今回の痛みはどれくらい痛いのでしょうか。お願いします。
○小泉内閣総理大臣 これは量的に表現できないのであって、抽象的に言っているんですから。その点は、どの程度かと聞かれても難しい質問で、答えに窮しますね。
○阿部委員 しかしながら、やはり痛みは、これくらいか、これくらいか、これくらいか、量的にできるのでございます。
これを厚生省に量で試算していただきました。患者さんたち、サラリーマン本人三割負担になることによって四千三百億の重荷、どかん、自己負担増。そして逆に、四千億の受診抑制。
勤労者が会社を休んで病院に行くときは、本当にぎりぎりのときでございます。私は、四千億の受診抑制があるような三割負担をまずしくということは、国民を大事にするとおっしゃった、人から大事にするこの国の姿勢とは相反すると思いますし、小泉首相に、深くお考えの上、痛みを十分に軽量化していただきまして、思いとどまり、先に必要な改革をなさるようお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。
○津島委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。
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