第159回国会 本会議 第19号(平成16年4月1日(木曜日)) 抜粋

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副議長(中野寛成君) 阿部知子さん。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党の阿部知子です。

 ただいま議題となりました年金制度改正関連の法案に対しまして、社会民主党・市民連合を代表して、小泉内閣総理大臣並びに坂口厚生労働大臣に質疑をいたします。(拍手)

 年金問題が今ほど国民的な関心事となった時期はなかったと思います。しかし、複雑な制度の乱立ということもあって、必ずしも十分な情報が行き渡っているとは言いがたいのもまた事実です。

 例えば、若い皆さんに「あなたの年金は」と尋ねてみても、自分が果たして年金に加入しているのか、どの年金に入っているのか、将来幾らもらえるかなど、知らない方たちの方が圧倒的多数です。また、政府もこの間知らせる努力を怠ってきたというのもまたこれありと思います。今回の江角マキコさん問題はその象徴的な出来事であり、彼女のみをバッシングして事足れりとしているこの政府の姿勢こそ、大きな問題であると思います。

 ちなみに、我が国では、五十五歳以上の人は、社会保険事務所に行けば自分の予想年金受給額を知ることができますし、また、五十八歳以上の方にはそれが通知されますが、これとてやっと始まったところです。他方、スウェーデンでは、年金の仕組みは異なるものの、十八歳以上の被保険者全員にオレンジの手紙が届けられます。

 我が国も、まず国民一人一人に年金に関する基礎的知識、情報をきっちり伝え、各地で公聴会を開くなど、国民的議論の場をつくることから始めるべきで、現在のタウンミーティングの中でちょこちょことやるようなこそくなことでは、国民的論議とは決してなっていないと思います。

 そして、この間のさまざまな不手際、積立年金問題、失った年金への信頼等を取り戻すためにも、新たな国民負担は求めない、そして、きちんとした年金制度の確立に向けた国民論議をまず第一とするくらいの見識を小泉大臣には持っていただきたいと思いますが、まず御所見を伺います。

 そもそも、現在の年金制度は大きな構造的矛盾を抱えています。その一つが、先ほど来指摘されている国民年金の空洞化です。

 国民年金制度は、八五年の改正で、自営業者だけでなく、無業の者も含めてすべての国民が基礎年金給付を受ける年金権の確立と、国民全体で保険料を負担するという仕組みができました。

 にもかかわらず、現在、国民年金加入者の四割の方たちが保険料を未納、滞納しておられ、また、二十代前半の若者に至っては、完納者は三分の一に満たない状況となりました。年金への信頼の低下だけでなく、若年者の高い失業率、フリーターと言われている人たちが二十代を中心に増加し、十分な所得を得られていない実態が広範に広がっています。さらに、こうした若者たちは、いずれ無年金あるいは低年金者になるということでもあり、国民年金制度そのものが崩壊の危機にあると言わざるを得ません。

 加えて、現在の国民年金は、納付期間が二十五年以下では給付がなく、四十年満期で六万六千円、平均で五万二千円と試算されますが、実際には五万円以下の方が六割を超しており、保険料の支払い期間が短いこともその理由となっています。

 こうした問題について、厚生労働省は、掛金を支払わない人が受給できないことは当然と居直っておりますが、先ほど来御指摘の憲法第二十五条、さらには年金こそが老後の生活保障という視点からすれば、まずは国民が人間的な生活を保障される年金構造をつくることこそ抜本改革にふさわしいと思います。その意味からも、基礎年金部分を全額税方式とする、また、新たに社会保障税の検討なども含めた税制のあり方をきっちり考えていくことについて、総理大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

 また、三月二十四日の東京地裁判決、いわゆる学生無年金問題で、先ほどの御答弁はいわば控訴と救済策を分けて処するというものであって、実は、この問題に対して余りにも政治の見識、意思、責任、リーダーシップがないと言わざるを得ません。一日の食費わずか三百円で、キャベツ一個、お豆腐一丁を食べつないでいるような無年金障害者を生んでしまっている、そして小泉総理大臣はかつて二度厚生大臣を経験された、その責任においてきちんとした対処をなさるべきだと思いますが、総理大臣としてのお考えを再度きっちりとお述べいただきたいと思います。

 次に、提案されました政府の厚生年金にかかわる部分では、いわゆる保険料を段階的に引き上げ、二〇一七年度に一八・三〇、また、給付については、現役世代の手取り年収に対する割合を、現行の五九・三から二〇二三年度には五〇・二%まで引き下げるとしておりますが、まさしくこれは、政府によるこれまでの年金政策の制度的失敗、すなわち、既に四百五十兆円の給付過剰を後世代の若者に押しつける、極めて無責任かつ無展望な方針と思います。

 そればかりか、この提案は、これからの社会の一人一人の働き方をさらに不安定なものとしていくという意味で、まさに抜本改悪と言えます。保険料は労使折半ですから、勤労者への負担は言うまでもなく、当然、企業にもその影響は及びます。この間、中小企業では、既に、そうした社会保険料負担の増加に耐えられず、業を畳まざるを得ないところが多発し、大企業は、今まで以上に、保険料負担を避けるべく、派遣、パート、臨時といった非正規雇用をふやしております。

 その矛盾は、とりわけ若者と女性に重くのしかかっております。子供を持つことも含め、自分たちの将来設計を不可能にするばかりか、生活し得る賃金すら保障されないということも起こりかねません。当然、厚生年金の掛金を支払う人も減少し、年金財政は厳しくなる一方となります。

 社会保険料の負担増は、結局は年金財政を苦しくすることに結びつく、こうした点について、厚生労働大臣の御見識を伺います。

 さらに、政府案では、将来的な見直しについて、「長期的にその均衡が保たれたものでなければならず、著しくその均衡を失すると見込まれる場合には、速やかに所要の措置が講ぜられなければならない。」としています。そのための見通しの作成も、少なくとも五年ごととなりますが、例えば、政府案の出生率の見通しについて、二〇五〇年には一・三九としています。

 しかし、これまでに、こうした数値は常に常に常に裏切られ続け、どんどんどんどん出生率は下がっております。それは、女性が安心して産み、働くことができる環境整備をこの間一貫して怠ってきた。そればかりか、一九九〇年代後半からの雇用の流動化の名において、女性たちは子供を産むことを選び取りがたい状況が、ここに厳然と存在するのだと思います。このことについて、小泉総理大臣の御所見を伺います。

 では、年金制度の抜本改革とはいかなるものなのか。社会民主党は、まず、基礎年金部分の全額税方式、そして、その上に報酬比例部分を上乗せする制度を提案しております。また、現在の働く夫に専業主婦という世帯単位のあり方から、個人単位の制度に変えていくことを提案しています。

 既に働く女性の数が専業主婦を上回り、さらに増加するということが将来の見通しとしてもはっきりしているわけですから、個人単位の年金制度に変えていくことに向けて道筋をつけてこそ、抜本改革にふさわしいのではないでしょうか。

 政府案では、相変わらず、男性が四十年間同じ会社で働き、女性は専業主婦というモデルとなっています。しかしながら、まずは、現在、夫婦共働きという家庭の方が多いという実態を踏まえて、この夫婦共働きモデルをつくって、そのことを国民に示すことこそ坂口厚生労働大臣の役割と思いますが、お考えを伺います。

 この間、小泉総理大臣は、年金制度の一元化を考えるべきと発言されました。この発言は、先ほど来御指摘のごとく、今回の改正は一時しのぎ、そして、実は抜本改悪にもなりかねないことをみずから表明したものであると思います。

 ならば、小泉総理にお聞きしたい。年金制度の一元化の中で、個人単位の年金制度はどのように位置づけられているのか、御答弁をお願いします。

 国民からの年金制度の信頼回復のために、国会の内外での、皆さんの党派を超えた徹底した討議を期待して、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 阿部議員にお答えいたします。

 年金に関する情報提供についてですが、保険料の納付実績等の年金個人情報をお知らせすることは、現役世代、特に若い世代の方々に年金制度への理解を深めていただく上で重要であると考えます。このため、本法案において初めて、年金個人情報をわかりやすい形で通知することに関する規定を盛り込んだところであり、その具体化を着実に進めてまいります。

 年金制度の抜本的改革と基礎年金の全額税保障についてでございますが、現在、年金制度は、負担なくして給付なしという社会保険の仕組みに税財源を組み合わせる形で運営しております。これは、個々人では対応することが難しい老後の保障について、国民一人一人の老後に備える自助を基礎に、世代を超えて社会全体で共同し、連帯して支え合う仕組みであり、自助と自律の精神に立脚した我が国にふさわしい仕組みであると考えております。このような考え方のもと、今回の法案においては、年金制度の基本である給付と負担について抜本的な見直しを行ったものであります。

 基礎年金を全額税を財源として賄う税方式については、こうした自助自律という社会保障の長所をどう考えるのか、生活保護との関係をどう考えるか、巨額の税財源をどう賄うのかといった根源的な問題があると考えております。

 無年金障害者問題についてお尋ねですが、年金を受給していない方々への対応の問題については、障害者基本計画においても、「拠出制の年金制度をはじめとする既存制度との整合性などの問題に留意しつつ、福祉的観点からの措置で対応することも含め、幅広い観点から検討する。」とされているところであります。

 御提案のように、年金を受給していない障害者に対して障害年金を支給することは、保険料の負担を前提として給付を行うという社会保険制度の根幹にかかわる難しい問題でありますが、いずれにせよ、この問題については、従来より厚生労働省において検討してきているほか、現在、与党においても議論が行われているところであり、これらを踏まえ、問題の解決に向けて適切に対応してまいります。

 女性の仕事と子育ての両立についてでございますが、従来低かった育児期の女性の就業率は、近年、上昇の傾向が顕著であるとともに、雇用者総数に占める女性の割合も増加を続けております。

 こうした中、政府としては、待機児童ゼロ作戦を推進するとともに、育児休業の対象労働者の拡大や育児休業期間の延長等を内容とする法案を今国会に提出するなど、仕事と子育ての両立支援を総合的に推進しているところであります。

 年金制度の一元化と個人単位についてでございますが、今回の法案は、給付と負担の長期的な均衡を確保し、安定的な仕組みとすることにより、持続可能な制度の姿を示す抜本的な改正であり、今国会で法案をぜひとも成立させていただきたいと考えます。

 私は、今回の改革法案の成立を図ることとは切り離して、年金一元化についても協議することは有意義である旨を申し上げております。御指摘の個人単位化の問題についても、一元的な年金制度を考えていく場合には重要な論点となるものと考えており、こうした点も含めて、基本的問題について大いに議論していただきたいと思います。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 阿部議員にお答えを申し上げたいと存じます。

 まず、保険料の引き上げについてのお尋ねでございました。

 年金保険料につきましては、従来より、段階的に引き上げていく段階保険料方式をとっておりまして、現在も、その引き上げの途上にあると考えております。将来の年金給付を支えるために保険料を引き上げる必要性が生じているわけでございまして、したがいまして、今後もこうしたことを皆さん方にお願いをしていく以外にないと考えております。

 四百五十兆円の給付の、いわゆる積み立て不足のお話が出ましたけれども、賦課方式であります以上、一定の積み立て不足が生じることは避けられないものでございまして、後世代に押しつけるという批判は少し当たらないのではないかというふうに思っているところでございます。

 また、夫婦共働きのモデルと年金制度の個人単位化についてのお話がございました。

 確かに、現在、夫のみが被用者として働いてきた夫婦世帯のモデルを続けているわけでございますが、これは過去にもこのモデルを採用してきたこと、そしてまた、女性の就労も増加してはきておりますけれども、女性の場合には、就労する時期でありますとか期間でありますとか、それがまことに多様でありまして、男性と同じようなモデルがなかなかできにくいということもございます。

 もう一つ加えますと、これは夫婦世帯で示しますことが、一人当たりにいたしますと年金額が最も少ないということもありまして、そうした意味で、夫婦単位で示すことが一つの意味のあるものというふうに思っております。

 最後に、世帯単位で考えるか、あるいは個人単位で考えるか、これは今後の大きな課題であると私も考えておりますし、この次の問題として一番大きな課題であるというふうに思っております。

 しかし、この問題は、税制でありますとか賃金体系、それから、他の社会保障の問題とも関係した問題でございます。例えば、国民健康保険との関係をどうするかといったようなこともあるわけでございまして、これらの問題を総合的に議論をしながら決着をしなければならない問題だというふうに思っている次第でございます。(拍手)

副議長(中野寛成君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(中野寛成君) 本日は、これにて散会いたします。

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