第159回国会 厚生労働委員会 第6号(平成16年3月19日(金曜日)) 抜粋 案件: 政府参考人出頭要求に関する件 平成十六年度における国民年金法による年金の額等の改定の特例に関する法律案(内閣提出第二八号) 平成十六年度における国民年金法による年金の額等の改定の特例等に関する法律案(城島正光君外四名提出、衆法第一〇号)
○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
毎年、この季節はいわゆる年金の物価スライド問題が論じられ、ああ、ことしまた一年がたったなと思いながら、きょうの質問に立たせていただきます。
しかしながら、去年の春とことしの春とはやはりちょっと違うかなと思うことがございます。デフレという状態は依然として続いておりますし、特に、インフレ時代に物価スライドさせて取り分を多くしようと思った年金の問題が、デフレになって、果たしてそれと連動してどんどこどんどこ下げていったら何が起こるのかなということが最も明確になったのが、ことしの年金論議のように思います。
そうした中で、民主党が対案をお出しいただきまして、最低保障年金という、これくらいなくちゃもうどうしたって暮らせないんだから下げるに下げられないんだと。
そして、このことは同時に、国の政治が国民に何を約束するか。この国に生まれて、生きてよかった。老いもある、病気もある、いろんな失敗もある。だけれども、この国の大事な一員なのだと思って暮らせる国であるかどうかの、いわば哲学を問うた論議に、午前中、私は、ばたばたしながら、しかし部屋でしっかりと金田委員と坂口厚生労働大臣のやりとりを伺いながら、ああ、なかなかいい論議をしておると、失礼な言い方ですが。
このことは、やはり国民から見て、私たちの国というのは、国民である一人一人に、どんなふうに考えてこの国に生きてくださいと言っているのかなということを論議できるという意味において、デフレという状況は大変によろしくありませんが、しかし、パイが大きいときはみんな真剣に考えなくてもまあまあでやっていけるところが、事ここに至れば、人を切り捨てていかない、そのための社会づくりにみんなが論議を重ねているという意味において、きょう御出席の各委員も含めて大変に御苦労さまと思いますし、また、いい論議がきっとされていると思います。
私がきょう伺いたいのは、いわゆる医療の自己負担問題。これは、実はどんどんどんどんふえております、この間一貫してふえております。そして、逆に年金受給の額はデフレにスライドされてどんどんどんどん減っております。医療という問題は、それじゃ、かからなきゃいいかと言われますと、やはり命がかかっておりますので、いやが応にもかからなくてはいけないという意味において、このデフレ下の物価スライド問題と人の命ということを象徴的にあらわしているマターですので、このことを取り上げて質疑させていただきます。
昨年の、平成十五年度における国民年金法による年金の額等の改定の審議の際に、衆議院でも附帯決議がございました。「高齢者の生活は、消費者物価のみではなく、医療や介護など福祉のあり方に大きく左右されるということに鑑み、」今後ともと続きまして、「高齢者が生活上の安心を得られるよう必要な措置を講ずること。」これが昨年の申し合わせでございます。
そこで、まず、手元の資料、坂口大臣に特にしっかりとごらんいただきたいのでございます。と申しますのも、大臣、先ほどの御答弁の中で、来年度は介護、再来年度は医療、年金問題は医療も介護も一体化した中で考えていくんだと。これはもう大臣の常日ごろの御見識ですから、大変期待もしておりますが、そのことが実際に政策にあらわれるように、私は、きょう大臣に御質疑したいと思います。
お手元の資料一枚目は、上の表が、平成十五年の全世帯及び高齢夫婦一世帯当たりの平均一カ月の消費支出。下が、参考として平成十年が出てございます。
ここのうち、どこに着目していただきたいかですが、保健医療費という上から六つ目の項目をちょっと見ていただきとうございます。この、全世帯平均では一万二千三百三十九円の保健医療費が、隣の高齢夫婦世帯では一万五千三百九十三円。そして、もう一つ囲まれました無職の世帯、これはいわゆる年金のみでお暮らしの世帯では一万五千四百十一円となっております。
ここで本当に大きなこととして二つありますが、一般世帯より御高齢者の医療費支出は多い。わけても、年金だけでお暮らしの御高齢者の医療費支出の方がさらに多い。
そして、上を見ていただきますと、世帯の平均支出が、全世帯が三十万ちょっと、高齢夫婦世帯が二十五万、そして無職の世帯が二十三万九千と、支出全体は年金のみでお暮らしの方の方が少なくても、うち医療費のかかる分は年金のみでお暮らしの方の方が高いという事実でございます。どうやっても、そこは物価にスライドできない、命は物価にスライドできないということです。医療は、かからなければならなければ、当然ながら支出されます。
そして、下の表、平成十年と比べますと、実は平成十年段階でも既に今の傾向はあらわれてございますが、ただしかし、消費支出の全額は現在よりも多うございます。
今は、全体の消費が減り、医療のための支出のみが御高齢者世帯の年金世帯でふえておるという実態について、これから医療、介護、保健、一体改革で年金も改革していくとおっしゃられる坂口大臣が、この逆転現象、非常に深刻と思いますが、まず、どういうふうにお考えであるかを一点目、伺います。
○坂口国務大臣 この表を拝見して思いますのは、全体の消費支出というものが減少する中で、保健医療という部分は増加をしている、特に高齢夫婦世帯において増加をしている。
ここのところがいつも指摘をされるところでございまして、全体として物価が下がっている中でなぜ医療費だけが下がらないのかという御指摘を私は常に受けるわけであります。したがって、物価が全体で下がっているんだから医療の世界ももう少しここは下がってもいいではないか、それがなぜ下がらないのだ、おかしいという主張に私はいつも立ち向かっているわけでございまして、なかなかここは率直に言って苦しいところでございます。
しかし、医療というのは常にサービスが伸びている、いつも同じではない、だんだんと、年々歳々、新しいサービスがふえてきている。介護などは今までなかったことであって、それが新しくできてきた、できることによって新しいサービスが受けられるようになった。そういう前進している部分が率直に言ってあるわけでありまして、そのことによる、そのサービスによって非常に恩恵を受けている人たちもあるという事実の中で、負担が若干ふえるということはやむを得ないのかなというふうに私は思いまして、皆さんにも、それはやむを得ません、ここはひとつ御理解をしてくださいということを私はいつも申し上げている方だものでございますから、複雑な思いであなたの御質問を聞かせていただいたということでございます。
○阿部委員 さもありなんと思います。いつも大臣が、いろいろな、この財政厳しい折、医療という点において頑張って防波堤になってくださっているという事情はよく承知した上で、さらにパワーアップしていただきたいと思いまして、私が幾つか指摘をさせていただきます。
実は、平成十四年の十月に、医療はなべて定率負担になりました。それ以前、さかのぼること、定額負担、部分的に定率負担でもありましたが、定率負担になったことが、やはりどうしてもかかった量の一定割合で支出していかなければならないということで、サービスがよくなって、買いたい医療、受けたい医療がふえたからという以上に、同じ医療を受けていても自己負担額が変わったということであろうと思います。
私は、この日本の社会が、本当に安定した高齢社会に立ち向かうためには、やはり介護や医療の定額負担という考え方をもう一度とらないと、年金額が幾らあっても、国民に安心のメッセージはできない。この意味で、平成十四年十月改正された定率負担の考え方が色濃くここに反映しており、医療負担だけがふえていくと思います。
そのことをもう一つあらわすデータが二枚目でございます。
皆さんのお手元に、平成七年、十二年、十三年と三つの同じ表がございます。ここの中で、平成七年の、例えば高齢夫婦世帯の保健医療費一万一千四百九十円、平成十二年が一万三千百十八円、そして平成十三年一万四千百一円とございますが、この時期、同じ無職の世帯は、おのおの、例えば平成十二年であれば一万二千七百六円。この時期はまだ定額負担でございまして、無職の年金だけの人の医療費が突出してその前の高齢世帯を上回ることはありませんでした。ところが、その下、一部定率負担になりました平成十三年一月以降の、十三年からの一年では、高齢者の医療支出が一万四千百一円で、うち無職の世帯が一万四千二百五十円と、ここで明らかに数値の逆転が起こってきてございます。
何度も言いますが、医療というのは、じゃ、やめておこうか、痛いけれども、苦しいけれども、死にそうだ、でもやめておこうということがいかないものでございます。定率負担の度合いが強まれば強まるほど、どうしても支出しなければいけない医療費負担の部分が、弱い、収入の少ない層に強くなるという数値の、一つの、二回重なるトレンド、傾向だと私は思います。これからますますこの傾向は強まってまいると思います。
そして、それが、御高齢者たちに送るメッセージが、この国が、御高齢者は病気になったらもう死ねと言っているのかと言われるような政治にならないように、私がきょうお示ししたデータを何度も穴のあくほど大臣にもごらんいただきまして、分析をしていただきたい。私は、やはり、このままいけば、病気になったらどうなっちゃうかわからない、介護が必要になったらどうなっちゃうかわからない時代が、もう御高齢者の心の中でそのような風景になっていると思います。
大臣は先ほど、若年者も今仕事がない、賃金が低くなっている、御高齢者にも我慢してもらわなきゃいけないんだとおっしゃいました。その部分はある程度は私はあり得ると思います。社会ですから、パイがちっちゃいから、みんなで食べて、分けていかなきゃいけない。だけれども、最低限必要な医療という部分における負担が、そこだけ御高齢者の比率として伸びていかざるを得ない、年金だけで暮らしている御高齢者にとって伸びていかざるを得ない実情をよく、私は回答を出していただきたいと思います。
重ねての御質問で恐縮ですが、大臣がもしお考えがあれば、御回答をお願いいたします。
○坂口国務大臣 特別な分析をしたわけではございませんし、今見せていただきましたこの数字を見ながら、これをどういうふうに解釈したらいいのかということを先ほどから考えていたわけでございます。
例えば平成十三年でございますと、高齢夫婦に比べまして、いわゆる無職の世帯というのは約百五十円だけ多いわけでありまして、こうしたことが何を意味するのかということをもう少し分析しなければいけないというふうに思いますが、高齢夫婦と無職の世帯を比較するというよりも、全国世帯と高齢者夫婦世帯の間の差というものをやはりよく見ていかなければいけないんだろうというふうに思っております。
高齢者は、やはり、保健医療というものに対しては、他のところを節減してでもここへお使いになっているという姿がここにあらわれているというふうに、率直に私もそう思っております。消費支出全体としては下がっていきます中で、この部分だけは特に下がらないということがあるわけでございまして、十五年と十年との比較でございますけれども、この部分はなかなか、高齢者にとっては今後も保健医療というのは厳しい問題であるという認識は持ったつもりでございます。
〔宮澤委員長代理退席、長勢委員長代理着席〕
○阿部委員 ありがとうございます。大臣のその認識に基づいて、それが政策的によいものを生み出してくれることを、私も心から望んでおります。
次に、民主党の対案についてお伺いいたします。
私ども社民党は、昨年の秋に、いわゆるマニフェストで、年額六十万円以下の低年金の受給者についてはマイナススライドは凍結しますということを書かせていただきました。そして、ちょうど今回の民主党の御提案が、そのことを極めて具体的に書いていただきましたし、またそのほかの、いわゆる母子世帯に支給される児童扶養手当や障害者の手当等、非常に低い額で、最低保障生活年金といいますか、そこに満たないところは、何としてでも国としてお約束して、そこまではベースを上げていこうとされた御提案に、非常に私は敬意を表したいと思います。
そして、朝からもうみんな聞かれてしまいましたので、急に振って恐縮ですが、私が今坂口大臣とやりとりした医療費問題で、これは予告をしていないので本当に悪いのですが、金田さんにちょっと御所見を伺いたい。医療問題もまたきっちり取り組んでいただきたいので、その意味で、ちょっとお願いします。
○金田(誠)議員 私どもの提案に深い御理解をちょうだいいたしまして、感謝を申し上げる次第でございます。
手当についても最低保障ということでお触れになりましたけれども、実は、私どもそこまではまだ打ち出し得ないでおりました。どうしたらいいかと実は本当に頭を絞ったわけでございますが、手当はまちまちでございます、金額も目的もまちまち。そういう中で、どういう形で最低保障を打ち出せるか、これからも十分検討してまいりたいと思いますし、ぜひお知恵もおかしいただければありがたい、こう思う次第でございます。
ただいまの家計調査についての見解ということでございますが、まずこれを見て思っておりましたのは、消費支出の総額でございます。無職の世帯でも、二十三万九千円とか二十四万五千円とか、かなり高い総額になっているなという思いをいたしました。
今議論しているのは、国民年金、満額六万六千円とか六万七千円、御夫婦でその二倍、これをどうするかという話をしているときに、その二十何万という数字を見せられて、しかし、このぐらいは実際問題なければ深刻だということは痛感をいたしますが、ましてや国民年金の満額、これの御夫婦の分、それよりも下回るところ、これは、下げるなんというのは一体どういう論理によって出てくるんだろうという思いを深くいたしたところでございます。
医療費につきましては、私ども、定率負担はやむを得ないかなと思っております。
しかし、日本の医療費の自己負担比率は高過ぎます。お年寄りでトータル一五%ぐらいだと思いますし、若年世代では総額医療費の二五%ぐらいが自己負担ということでございます。これに対して諸外国、ドイツはたしか六%、これが恐らく標準で、イギリスなどは二%程度、フランスが高い高いといって一〇%いくかどうかということですから、日本の自己負担比率は非常に高い。これは、自己負担という形よりも、保険という制度のもとでリスクをシェアする、これが筋道だろう、こう思っております。
しかし、定額にしてしまいますと、お医者さんの方にも、もしかすると、どうせ定額負担なんだからということで、ある意味で、少しこの検査を、あるいはこの薬をという感じになりませんでしょうか。定率であれば、お医者さんの方にも経費節減、御本人の負担は極力低くという形が出てくると思います。低く抑えるのは私は賛成ですが、定額よりはやはり定率の方がベターではないか、こう思います。
○阿部委員 御答弁ありがとうございます。
そして、私の勘違いで、民主党が手当まで、ほかのもいっているかなと思いましたが、また次年度はそのように期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。
【中略】○阿部委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、政府が提案している平成十六年度における国民年金法による年金の額等の改定の特例に関する法律案及び日本共産党提出の修正案に反対し、民主党提出の対案に賛成の立場から討論を行います。
政府が提出した法律案は、マイナスの物価スライドにより受給額を一律に減額しようというものです。現下の年金財政を考慮するならば、物価が下がっている以上、確かに、減額をある程度は享受せざるを得ないことは理解できないわけではありません。しかし、低額の年金受給者に対しては、一定程度の配慮があってしかるべきだと考えます。
御高齢者の場合、医療費や介護費用の支出は、現役世代に比べて重い負担となっています。その医療費を政府は、医療制度改革と称して自己負担額をふやし続けてきました。こうしたことが高齢者の家計を確実に脅かしており、特に低額の年金受給者には、そうでなくてもぎりぎりの生活を強いる結果になっております。
また、児童扶養手当、障害児福祉手当、特別障害者手当、原爆手当など、月々わずかな手当しか受けていない人たちの苦労を考えれば、年金受給者同様、低額所得者に対する配慮をすべきと考えています。
こうした点から、私は、政府提案に反対し、民主党の提案を一部前向きに評価いたしまして、賛成いたします。
なお、共産党提案の物価スライドを凍結させるという修正案は、現下の年金財政を考慮するならば、残念ながら反対せざるを得ません。
今通常国会は、年金国会と言われています。御高齢者、それも厳しい生活をせざるを得ない方たち、そして次代を担う若者が、少しでも希望を持てる年金改革の方向性を立法府の名において打ち出すことを期待して、私の討論といたします。(拍手)
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