第159回国会 厚生労働委員会 第7号(平成16年3月24日(水曜日)) 抜粋

案件:  政府参考人出頭要求に関する件  厚生労働関係の基本施策に関する件  クリーニング業法の一部を改正する法律案起草の件  公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案起草の件

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阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日の三時過ぎからの皆さんの御熱心な討議を伺いながら、この公衆浴場とクリーニング業法に関しての意味深い質疑はほとんど出尽くしたかなと思いながら、私も基本的にこの二法案の成立に心から賛意を表したいという態度をまず表明いたさせていただきます。

 それともう一点、たまたま私は、非常に重い障害のある子供を診る医者をしておりまして、それも、どちらかというと東京の上野に近いところで勤めておりました経験で、ぜひとも御紹介したいお母さんの事例があります。

 難治性のてんかんを持って生まれて、生まれて一度も歩いたことがない、ずっと寝たきりのお子さんを抱えたお母さんが、その子を毎日背中におんぶして、いわゆる銭湯、公衆浴場に行っておられました。だんだんその子の丈が大きくなって、小柄なお母さんで、背負っても足を引きずるようになってもなお、お母さんはとにかく銭湯に連れていくということを日課にしておられました。理由は、そこだと、脱衣所で子供を寝かせておいて自分が大急ぎで入浴してきても、だれかが見ていてくれる、それから遊んでくれる、構ってくれる。すごくお母さんにとっては日々の張り合いになっておられました。

 その話を私はいつも外来でお母さんから聞きながら、この法案が出てきたときに、本当に、ああ、こういう形で住民相互の交流の促進等の場所になる、文化の拠点になる、昔から銭湯談義というのがございましたけれども、日本にとってはそういう場でもあったのですけれども、改めて法の中にそのように位置づけられて、これからの社会を支えていく重要なコミュニティーの中心になるということを本当に喜びたい法案と思います。

 あともう一点は、クリーニング業法に関しまして、今回、工場を持つクリーニング関係のお仕事の方が極めて少なくなって、集配のみにかかわるという形にだんだん運営形態が変わってきておりますが、私も、やはりこのクリーニング業界とか公衆浴場でみんなを楽しく、きれいにしてさしあげる仕事というのは、実は非常にしんどい職場、長時間労働だったり、あるいはクリーニング業界の場合だったら化学薬品をしょっちゅう使う職場でございまして、そこでの労働状態あるいは労働衛生管理、安全管理というものも極めて気になるところでございます。

 本当は、その件をきょうちょっと、例えばそういう揮発性のものを扱うために特殊な職業病等があるのでしょうかというような質疑をしようかと思っておったのですけれども、とりあえず、今回の法案はより前向きな方向に、衛生管理という利用者のためのさまざまな、苦情窓口の設置も含めて一歩前に出ておりますので、そのことでとどめおかせていただきまして、一般的な質疑に入らせていただきます。

 私はきょう、実は三月の二十二日に東京地裁において判決のありました女子医大の医療被害裁判のことで大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。

 これまでののどかなというか、心温まる談義と違ってちょっと恐縮なのですが、寒々しい話かもしれませんが、実はこの女子医大事件と申しますのは、人工心肺というのを用いた心臓の手術で、いわゆるミスを隠そうとした医者が看護婦さんその他に指示してカルテの改ざんを行わせた事例です。

 看護婦さんに命令して、あるいはだれかに命令してカルテの改ざんをいたしますれば、それは証拠隠滅罪というものに問われるのですが、でも、もしも医者が自分自身で証拠を隠すために自分のカルテを改ざんしても、これは現在の刑法では全く罪に問われません。例えば、犯罪を犯した方が自分の指紋を消したと同じような、自分に不利になる証拠を隠すということにおいて本人が自分のカルテを改ざんしても、実は何ら法律的にはとがにないという範疇にございます。

 しかしながら、数多い医療被害裁判で、カルテ改ざんというのはあってはならないことであっても後を絶ちません。やはり私は何らかの、例えば医師法の中に、診断書の偽造が公文書偽造に当たるというようなことで法的な罰則をかけると同じように、何らかの法的な取り締まりも含めて、カルテ改ざんということに厚生行政あるいは立法の意思として強い姿勢を示すべきではないかと考えてございますが、この件について一点、坂口大臣にお願い申し上げます。

坂口国務大臣 カルテの改ざんの問題は、これは医師の職業倫理に著しく反するわけでございますから、法律以前の問題としてこれは考えなければならない問題だというふうに思っておりますが、現在、保険医療機関及び保険医療養担当規則というのがございまして、その中の二十二条に「診療録の記載」というのが実はつくってございます。その中には、「保険医は、患者の診療を行つた場合には、遅滞なく、様式第一号又はこれに準ずる様式の診療録に、当該診療に関し必要な事項を記載しなければならない。」こういうふうになっておりまして、「必要な事項を記載しなければならない。」というのは、これはもう正しく記載しなければならないという意味に読めるんだというふうに私は思っております。したがいまして、そうした中で、カルテというのは正しく記載をしていただかなければならないということに今のところなっているというふうに理解をいたしております。

 したがいまして、これからのこうした問題、またいろいろ出てくるというふうに思いますけれども、この条項の中で処理ができればしていきたい、足らなければさらにまた検討したい、そういうふうに思っております。

阿部委員 正しい情報が記載されねばいけないということと、その記載を消して、ある何らかの目的のために書き加えたり書きかえてしまっているのが、このカルテの改ざん問題です。一方で、この間、個人情報の保護法というものの中で、カルテに記載されたこと、患者さんの診療に関することはその患者さん自身のいわば個人情報である、カルテ記載のその事実は。そうすると、逆に、患者さん自身の個人情報を医者が消しゴムで消して書きかえて、何らかの操作をしてしまうということで、私は、情報公開法もでき、患者の情報は個人情報として保護されるべきものであるという現在の認識からすれば、カルテの改ざん問題は、やはり検討会を設置して、しかるべく法整備を行っていただきたいと思います。

 大臣には引き続いて次の質問があって、混乱をさせるといけませんので、今のは私の要望で、ぜひとも、これは患者、被害者からも強い要望ですので、カルテ改ざんというのは行われてならないけれども、行われているという実態を踏まえて、厚生省としても強い態度で臨んでいただきたいです。

 そして、カルテ改ざんに基づいてもう一つ、実は保険の不正請求が起こります。カルテを書きかえて、その書きかえたカルテで医療保険を請求します。いわゆる不正請求に当たります。

 この不正請求という事案について、平柳さんという女子医大の被害者になられたお父様から厚生労働省にも、こうしたカルテ改ざんに伴う不正請求が行われているのじゃないか、いるとしたらちゃんと調べてほしい、あるいは対策はどうするんだという質問が出ていると思うのですが、この件について事務方からお願いいたします。

辻政府参考人 ただいま御指摘の点についての具体的な対応状況を申し上げます。

 この問題となっております医師、保険医でございますが、に対しまして、事情聴取を既に去年の八月に行っております。そして私ども、その内容で特にポイントになりますのは、診療録等の記載関係、記載内容でございますけれども、そして改ざん前のカルテの有無、それから改ざん箇所の具体的な場所、それはカルテ、レセプト双方について確認したい、こういったようなことを答えてほしいということを強くお願いいたしております。

 これまで、公判中のために、公判との関係があるということで回答を保留したいということでございましたが、判決が出ましたので、私ども、今月じゅう、三月じゅうにこれについて回答いただきたいということを再度お願いをいたしております。そして、そのような回答を待ちまして、健康保険法の適正な執行について検討させていただきたいと思います。

阿部委員 もしもカルテ改ざんに伴う不正請求の実態が明らかになった場合は、例えば保険医の取り消しや保険医療機関の取り消しということも実際には俎上に上ってくると思うのです。私は、そうしたきちんとした適正な処置をとることによっても、カルテの改ざんというあってはならないことを未然に防いでいく一つの方向になると思います。

 大臣に、重ねて恐縮ですが、この改ざん問題と、並びに不正請求に対しての大臣の今後の御決意のほどをお願い申し上げます。

坂口国務大臣 不正請求につきましても、これはあってはならないことでございますから、私たちも、そこのところは厳しく見ていかなければいけないというふうに思っております。

 この診療報酬にかかわります部分は、大体、改ざんすることによって点数をふやそうとするのが普通でございますけれども、中には、それを少なくするのもある。それもやっぱりぐあい悪いんだろうと思うんです、減らすのも。

 この東京女子医大の場合などは、やったことをやらなかったことにして減らしているわけでありますから、今までのふやすという意味からすれば問題はないわけでございますけれども、カルテの改ざんと絡めて、減らすということについては、それはそれでやはり問題があるんだというふうに認識をいたしております。

阿部委員 カルテは大事な個人情報、患者情報でございますから、改ざん等の、本当にあってはならない事態が起きないための厚生行政のかじ取りをよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

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