第159回国会 厚生労働委員会 第14号(平成16年4月21日(水曜日)) 抜粋

案件:  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)  年金積立金管理運用独立行政法人法案(内閣提出第三一号)  高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)  高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度の抜本的改革を推進する法律案(古川元久君外五名提出、衆法第二七号)

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阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日が年金問題に関する審議の本格的なものとして二日目に至っておりますが、私は、きょうの論議を聞きながら、やはり年金の制度改革問題の論議のされ方はその国の民度をあらわすものであるということを強く思っておりました。

 どういうことかというと、せんだって、イラクの人質問題で三人プラス二人の方の無事な解放があったのですが、この後、日本の国内では自己責任論というのがばっこいたしまして、それ一色に塗られているような状況でもあります。私は、年金というのは、一方ではおのおのの人間が生きていく上の自己責任でもありますが、いま一方は、政治の中で、特に我が国の社会に暮らす人たちに政治が何を約束できるか、実は人質問題も同じだったと思いますが、その政治と国民の約束という意味において、きょうの質疑を聞きながら、坂口大臣が一歩前向きな御答弁を下さいましたので、さらにもう一歩突っ込んでみたいと思います。

 何の御答弁であったかというと、民主党の五島委員の御質疑の中で、坂口大臣は、このたび民主党からも対案が出され、あるいは連合からも対案が出されて、やはりこれは年金について国民的論議の一歩踏み込んだものをさらに行う必要があるのではないかというふうに御指摘されたと思います。

 そこで、大臣にしかできない、大臣に今やっていただきたいことで、そうであれば、まず超党派のワーキンググループを大臣が主導してつくっていただきたい。これは今非常に重要であります。

 坂口大臣は先ほど、それはそれとしてとりあえず今回の年金問題を論じてほしいというふうな御趣旨にも受け取れましたが、もちろん今回の年金問題は、私は政府案とは違う案を持っておりますので、それはそれで論じさせていただきますが、実は、年金の改正という問題は一朝一夕に、きょう出してあした結論が出るというものでもありません。

 大臣にも私はせんだってお伝えいたしましたが、実は、一九八六年の年金の大改革に至るその前段階に、年金の審議会の方から一九七七年に建議書というものが出されております。それに基づいていろいろな意見が交わされて、八六年、一階建て部分の基礎年金という枠組みができたわけです。

 私は、この間、本当に今がチャンスだと思います。そういう骨太の論議をしていくために、大臣が政治的なリーダーシップを発揮されて、超党派の、いわば各党のいろいろな意見を持ち寄って本当に、プラス国民の声、ここもまた重要です、公聴会が行われないとすれば、それは絶望に近い政治だと私は思いますが、それはまたさておいて、特に大臣に、冒頭、やはり超党派でワーキンググループを大臣のリーダーシップのもとにつくるという御決意というか、御判断を伺いたいと思います。

坂口国務大臣 年金というのは非常に長い経過を持って今日を迎えているわけであります。長い歴史があって、今日のこの制度ができ上がっております。

 したがいまして、あすから新しい制度、また来年から新しい制度を新しくキャンバスにかくというわけではありません。長い間この現在の年金制度にかかわっておみえになりました皆さんがおみえでございます。現在、既に年金を受けておみえになる皆さんもあるわけでございます。間もなく受けようとする皆さんもおみえでございますから、現在まで続いてまいりましたこの制度を、これを持続しながら、そこで今後の新しい社会の中でどう改革をしていくのかということを、年月をかけてこれは解決をしていく以外にないというふうに私は思っております。

 したがいまして、現在ありますこの制度を最小限、一体どこまで変えたらいいのか、少子高齢社会を迎えるに当たって、現在考え得る改革というのは一体何なのかということに今は思いを一つはいたすべきことだと思っております。それはそれで、これは進めていかなければいけない。過去の問題はいろいろあるでしょう。ありますけれども、未来はさらに大きいわけでありますから、未来に向かってこれは進めなければならない。

 しかし、いろいろの点で、例えば女性と年金の問題等、これから一番大きな議論をしていただかなければならない問題でございます。女性と年金の問題を議論すれば、当然のことながら、この年金制度というものを個人単位でいくのか、それとも厚生年金のように世帯単位のままで進めていくのかといったような問題にも突き当たってくるわけでありますから、それらの問題は大きな問題で、議論をしていただかなければならないということを先ほど五島議員にも申し上げたわけでございます。

 それはひとつ今後各党がお集まりをいただいて、どんな形で御議論をいただくのか。現在もう既に厚生労働省には年金審議会がございますけれども、これは各党の皆さん方に御参加をいただくという形ではありません。この年金につきましては、各党間の議員の皆さん方での一つの検討会のようなものが既にできているというふうにお聞きをいたしておりますけれども、そうしたものを中心にしてこれから議論をしていただくのか、あるいは政府全体としてそこで議論をする場をつくっていくのか、私は議論の仕方というのはいろいろあるというふうに思います。

 それは、各党で合意できることでなければこれはできないわけでございますから、そこは皆さん方のお話し合いによって、どういう話し合いがいいかということは、ひとつお決めをいただく以外にない。私がこうしろということを言うのはまことに僣越であるし、それはそうではないというふうに思っておりますが、そうした何らかの形をつくっていただいて議論を進めていただくということはまことに結構なことだということを申し上げた次第であります。

阿部委員 私が大臣にお願い申し上げたのは、その枠組みをまずつくっていただきたい。それは、現厚生労働大臣である坂口大臣ができる権限であり、またやっていただきたいことだからです。私はやはり、例えばスウェーデンでも、同じように年金の論議、十年近くを経て、その論議の過程でさまざまな価値観の共有や、自分たちの、国民一人一人の周知する年金制度ができましたから、今その判断をしていただく任をぜひとも大臣にお願いしたいという一点であります。これは引き続いて大臣もぜひお考えいただきたいと思います。

 と申しますのも、既に先ほど御紹介しました一九七七年の建議の文章を見ますと、今と全く同じ状況です。膨大な無年金がそこに発生しようとしている、そして一方で、高齢社会はもう予測されていると。一九七七年といえば、今団塊の世代である私たちがまだ二十代の若者で、既にそのころ、高齢社会の問題、あるいは女性の就労の問題、子育てとそして仕事の両立の問題、みんなテーマは上がっておりました。そして、何度も申しますが、極めて深刻であったのは、今のままの制度では膨大に無年金が発生するだろうという危機意識が共有されて、建議となったものです。

 私は、先ほどの山口委員の御質疑、あるいはせんだって私も指摘させていただきましたが、今一番問題であるのは、国民年金部分の空洞化、そして厚生年金も空洞化。国民年金に至っては納付率六二%であるという現実。それらをしっかり見ないと、幾ら今回出されたものが百年の計であると言われても、果たして正しい処方せんになっているのかどうか納得できない。まして、この間、厚生労働省の本来は一番力を発揮してほしい官僚と言われる皆さんの不祥事ばかりをこの場で論じなくてはいけないというのは余りにも悲し過ぎますし、またそうしたことが頻発しているという状況が、極めて深刻な現在の私たちの社会のありようかと思うわけです。

 そこで、この問題はぜひとも、いずれも大臣の見識とリーダーシップにかかわるものですから、厚生労働省にかかわるさまざまな職員の不祥事、きちんとした解決と同時に、何度も申し上げますが、大臣のリーダーシップで超党派の年金のワーキンググループをつくっていただきたいです。

 きょうの私の質疑ですが、皆さんのお手元に配らせていただきましたものは、「国民年金第一号被保険者数の見通しと実績」というものを書かせていただきました。私は先回の質疑で、厚生年金の加入者の見通しと実績というものを配らせていただきました。厚生年金加入者は、平成十一年時の見通しを大幅に下回って年々三百万人以上減り続ける。そしてこちらは国民年金で、平成十一年の見通しというところを見ていただくと、平成の十二、十三、十四と、おのおの一千八百万、一千八百万、一千七百九十万、しかし、実績はおのおの二千百五十万、二千二百十万、二千二百四十万、どんどんふえております。

 財政再計算のときの見通しが、五年前の見通しがこのように大きく崩れている。今回もいろいろな数値を出して財政再計算信じなさいと言われますが、加入者数でもこれくらいずれが出てしまう再計算のあり方を、どうして国民が信じられるのか。まず、この大幅なずれということをどう認識しておられるかについて、年金局長にお伺い申し上げます。

吉武政府参考人 先ほど厚生年金の被保険者について申し上げたことのまさに裏返しだろうというふうに思っております。

 二〇〇〇年度におきます国民年金の第一号被保険者数につきましては、平成十一年の財政再計算では千八百万人というふうに見込んでおりましたが、実績は二千百五十万人でございまして、実績の方が三百五十万人多くなっております。これは、先ほど申しましたとおり、経済状況が非常に厳しい中で、サラリーマンの方の中で、いわゆるサラリーマンから、例えば失業されたり、あるいは御自分で仕事を始められたりということで、一号に移ってこられているということだろうというふうに思っております。

 この事態、ある意味で非常に日本では余り経験したことがないような事態でございまして、国民年金の歴史で申し上げますと、基本的には自営業の方を中心にして形成された保険集団でございますので、平均年齢が逐次上がってくる状態でございましたけれども、この事態を受けまして、国民年金の被保険者の年齢は若干下がってきております。

 それは、先生がおっしゃるようなフリーターの影響などもあるというふうに思っておりますが、そういう非常に大きな経済変動があったということが、先ほど申しましたけれども、ただ、雇用の問題あるいは賃金の問題は少し遅行指標でございますので、経済が非常に厳しくなった後でその影響が出てくるというところがございまして、それが出てきている状態だろうというふうに私どもは認識しております。

阿部委員 今の年金局長の御答弁にもあったように、経験したことのない事態が起きているわけです。だからこそ、本質的、根本的な論議が必要で、これは次の見通しを見ていただきますと、今度の平成十六年度の見通しでは、二〇一〇年、平成二十二年からは減り出す形になっておりますが、果たして、これとて何の保証もございません。保証がない大きな理由は、先ほど山口委員が資料でお示しになったように、常用雇用をどんどん非正規に振り分けている企業の現実があるからです。

 そういたしますと、こういう数値に基づいて、プラス出生率、賃金上昇率あるいは物価上昇率などの数値を幾らぐちゃぐちゃやっても、この加入者数というところに大きく影響する労働の実態、労働のこれからのありよう、さっき坂口大臣は企業にも努力して常用雇用をふやしてほしいと言いましたが、一方で、この間の小泉政権のもとでとられた政策は、よく言えば働き方の多様性という言い方で、しかし、現実にふやしたものはパートや非正規の職員でありました。

 大臣は、本当にこの働き方が今後五年以内に改善されて、この今の厚生年金の減少、国民年金の増加という現実が改善されるとお思いか否か、御所見を伺います。

坂口国務大臣 私は、今後の問題につきましては、いろいろ難しい局面もございますけれども、しかし、これから五年というのはいよいよ労働力人口が減り始めるときでございます。もう来年、再来年ぐらいからぼつぼつ減るのではないかというふうに思っておりますが。二〇〇〇年に比べて二〇一五年ということになりますと、約四百万ぐらい労働力人口が減るわけであります。

 したがいまして、それだけ減りますと、現在、失業者は三百三十万ぐらいでございますから、私はこれから先、中高年、六十歳代の方あるいは女性の労働力というものにかなり頼らざるを得ない時期にこれからだんだん突入をしていくというふうに思っております。それがすべてパート、アルバイトでは私はないと思います。

 国の方も、そこは女性の皆さん方にも高齢者の皆さん方にも働いていただける体制をバックアップしていかなければなりません。総合力でこれは支援をしなければならないというふうに思っておりますけれども、私は、必ずしも悲観材料ばかりではないというふうに思っておりまして、そうしたこれからの状況を踏まえて、国としてはどういう政策展開をするかということを考えるべきときに来ているというふうに思っております。

阿部委員 例えば出生率に関しては、数値が改善した場合、現状維持の場合、低下の場合、おのおの予測を立てられております。しかし、この雇用労働形態の変化ということに関しては、実は財政再計算も全く触れておりません。そして、いい方だけを信じて論議することはとてもできません。私たちは、現実にみんながどんな働き方をしているか、この間、本当に厳しい状態を見ているからです。そして、もしかして、アメリカのようにジョブレスリカバリー、仕事がない、失業者はそのまま、失業率は高どまり、あるいは非正規雇用が高どまりしたまま次の五年を迎えるかもしれません。

 そこで、大臣に、恐縮ですが私の資料の四枚目をお開きいただけますでしょうか。私がここにお示ししたのは、資料五としてございますが、「企業の社会保険料負担と法人税推移」というものをとらせていただきました。社会保険料負担の方は御本人負担がありますので、全体の社会保険料負担として集計されているものを半分に割りました。

 多少正確さは欠きますが、例えば、ここでわかりますことは、二〇〇〇年まで企業の社会保険料負担が大体十兆、二〇〇一年九兆、二〇〇二年十兆。それに比して、法人税の方を見ていただきますと、十一兆、十兆、九兆五千二百億。すなわち二〇〇二年という年は、企業にとりまして、法人税負担よりも社会保障負担が高くなった逆転の年であります。ここに私は、大きな、その後に発生するさまざまな事態が潜んでいるように思います。

 せんだっても、厚生年金の新たに業を起こされた方が、その企業体として二割、厚生年金を持たない、抜け駆けしているという数値が出ましたが、現在、企業にとって、企業はその運営をなるべく軽減するためには、税負担は少ない方がいいでしょう、そして、プラス、社会保険料負担の方が多くなったら、そこをどうやって削減するかというドライブがかかります。ここで生じていることが、厚生年金に加入しないいわゆる脱法行為か、あるいは厚生年金の要らない非正規雇用をふやしていくという、そうしたドライブがこの推移からも私は見てとれると思います。

 もちろん、願わくば景気が回復し、法人税収が上がり、そして社会保険料負担を決してこれ以下にしたいとは思っているわけではありません。もちろん、企業がありとあらゆる勤労者に社会保険料負担をしていくべきと私は思っています。そこで、今回の年金改正案の何が一番問題かというと、社会保険料の負担を増し続けることによってさらに非正規雇用がふえてくるという実態を、この現下に、このような状態であるときに行えば、保険料率アップは必ず、企業とて生き物ですからどこかで自分たちの負担を軽減したくなります、それを歯どめする策が全くないということです。

 私は、社民党の対案として出させていただくものの中に、先ほど五島委員が御指摘でした、ちょうど労災の保険のように総人件費に社会保険料を掛ける、すなわち、使っている人がパートでも正規でも、総賃金に掛けていくという方式を一つは考えております。それからもう一つは、今、とりわけ中小企業にとって負担が強いのであります。そこを考えると、総人件費に掛けた場合には、企業の規模に応じて保険料を変動させることができます。

 この二点について、もともとこの数値をどうごらんになるか。労災保険のように総人件費に社会保障負担を掛ける案はどうか。私はこれを非正規雇用が増加することを歯どめするための策と思っております。そして、今、厳しい中小企業に対して、保険料率を資本金に合わせて調整していく。実はフィンランド方式と申します。この三点について、大臣の御所見を伺います。

坂口国務大臣 具体的な問題は局長から答弁させますが、この資料五を拝見させていただいて、一九九〇年代から法人税がずっと、三七・五〇%から三四%になり三〇%になりと、だんだんと下がってまいりました。下がってきたものですから、法人税の額もしたがいまして下がってきている。一方の保険料は下がらずに、これは持続しているということでございましょう。

 私は、企業もいろいろの負担をしていただかなければならないわけでございますが、それは法人税プラス保険料、全体としてどれだけ御負担をいただくか。その場合には、年金だけではなくて、医療保険もございますし、介護もございますし、雇用保険もございます。そうした保険料と税とでどう御負担をいただくかという総合的なお話になってくるんだろうというふうに思っております。

 その中で、法人税は低い方がいい、そして、ある程度保険料はやむを得ないという行き方も私はあるというふうに思います。また逆に、法人税は出すけれども保険料はある程度で抑えてほしいという行き方もあるだろう。あるいはまた、民主党さんがおっしゃっているように、法人税だとかそういうことではなくて消費税でいこうという御提案も、それはあるだろうというふうに思います。

 私はこの年金制度でいろいろと経済界の皆さん方ともお話をいたしましたが、経済界の皆さんとしては、保険料や法人税はできるだけ低い方がいい、そして消費税で集めてもらうのがいいと。それは御意見は私はそのとおりだというふうに思いますけれども、しかし、その皆さん方の御意見、それから働く皆さん方の御意見も聞かなければいけませんし、そして高齢者の皆さん方の御意見というのも聞いていかなければならない。

 この表から、私は、法人税が下がってきている、しかし、保険料はこれからお願いを申し上げなければならない。今後の問題といたしましても、全体としての整合性をどうするかということだろうというふうに思っております。

阿部委員 私がこの表から指摘したいのは、社会保険料負担のあり方が雇用の形態まで変えてしまうということです。そして、もし大臣がこれから正規雇用をふやした方がいいと思うのであれば、雇用中立的な保険料のあり方、むしろ正規雇用がそのことによって拡充されていくような向きを、ぜひとも御検討いただきたいと思います。

 なお、私はきょう、質問予告のうち、いわゆる国民健康保険の納付状況の悪化を食いとめるための政府案についていろいろ御質疑を予定しておりましたが、時間が切れましたので次回に回させていただきます。

 ありがとうございます。

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