第152回国会 財務金融委員会 第2号(2001/9/21) 抜粋

案件:  政府参考人出頭要求に関する件  財政及び金融に関する件  金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)

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阿部委員 社会民主党の阿部知子です。

 思い起こせば、およそ一年前、この場で速水日銀総裁に私がゼロ金利政策の解除のことで質問をさせていただいたのが、初めてのこの委員会での私の質問でした。それから約一年たちまして、ゼロ金利政策は解除され、そして、引き続いて三月からは、いわゆる金利による操作ではなくて量的緩和策をもって、主に物価の下落を押しとどめるため、デフレスパイラルに陥らせないための政策ということを日銀がとってこられたというふうに表明を受けておりますが、果たして、きょう私がこの委員会でずっと皆さん方の質問を拝聴し、並びにこの四月、五月、六月、七月と物価の上昇率を振り返ってみましても、いずれも、四月、五月がマイナス〇・七%、六月、七月がマイナス〇・八%、こういう数値を見ますと、この量的緩和策も含めて、事実として、今、日銀サイドで一生懸命とっておられる政策が当初の目的に達していないというふうに考えてよろしいものかどうか。そして、もしそう考えてよろしいのであれば、これは何人かの委員も聞かれましたので、再度の確認、追認になりますが、速水総裁の総括の視点をお伺いしたい。まず第一点です。

速水参考人 消費者物価がここへ来て下がり続けているといいますか、前年比マイナスが少し大きくなってきているということ、これは、需要面の要因と供給面の要因、二つ、両方が複雑に絡んでいるように思います。

 供給サイドの要因として、例えばパソコンなど多くの商品において、近年の技術革新によって品質向上という形で実質的な値下がりが実現してきていることは一つでございましょう。また、経済のグローバル化を背景にして、アジアなどから安値の輸入品が流入して、それが安く売られている。国内の競合商品も、価格を下げざるを得ないような状態になって下げていっているといったようなことが挙げられると思います。しかし、最近の物価下落につきましては、需要不足を背景とした、需要と供給のギャップの拡大という影響が大きくなってきているようにも思います。

 このように、現在の物価下落の背景にはさまざまな要因が寄与しているわけであって、それに加えて、先ほどから問題になっておりました不良債権問題など、経済が構造的な問題を抱えるもとで、金融緩和の効果が実体経済や物価になかなか及んでいかない状況が続いているというのが現状ではないでしょうか。したがいまして、現段階でCPI前年比がゼロ以上となる時期を見通すということは、極めて難しいというのが実感でございます。

 デフレを防止して物価の安定を確保していきますためには、経済の構造改革を通じて民間の需要を引き出していくことが極めて重要だと思います。構造改革に向けた具体的な取り組みが進んでいけば、これと日本銀行による思い切った金融緩和とが相まって、デフレ対策としても大きな力を発揮していくものだというふうに思っております。

阿部委員 実は、ただいまのような御見解は、既に三月の段階で速水総裁が記者会見場でおっしゃられたことですね。このときは、量的緩和を導入するに当たっての会見でございましたが、不良債権問題の解決を初め、金融システム面や産業経済面での構造改革の進展が不可欠の条件だということを、同じような論調でおっしゃられておるわけです。そして、六カ月またたちまして、そしてきょうの四時半からは、また財政諮問会議等々で政府の皆さんと意見交換をなさる。

 これの両方の意見を聞いております国民にとりましては、日銀サイドは、とにかく構造改革が先だ、あるいは需要と供給のミスマッチ、この問題を何とかせねば、幾ら金融政策で打っても何の効果もない、じゃぶじゃぶ効果はないというふうにおっしゃいますし、逆に政府筋は、特に竹中大臣等々の発言をとれば、まだまだ金融政策が足りぬ、例えば、先ほど来問題になっているインフレターゲティング論が急浮上している中でもあります。

 私も、一人の国民として、あるいは国民の声を代表する者として一番伺いたいのは、これまで同じような平行線をたどったお互いの主張、実は一年前から同じことを言い合っていて、何ら解決もせぬまま、この一年間、景気は全く浮上せず、かてて加えてこの間の世界経済の不安定さが増してくる中にございます。一体、これまでの政府との話し合い、最も論点となったところ、あるいは論点として詰めていくべきところが何であるとお考えであるのか。特に、きょうこれから会合に臨まれるに当たっての速水総裁のお考えをお教えください。

速水参考人 昨年の八月にゼロ金利を解除いたしまして、そのときは、九九年二月にゼロ金利政策をとらざるを得なかったときに比べますと、経済も企業もかなり上向いて、明るくなっておったわけでございます。なるたけ早い時期に、金融市場も、金融自体も、金利機能というものも正常化していかなければいけないということを、私はいつも頭の底に考えておるわけでございます。

 それで、ゼロ金利を解除いたしましたけれども、十二月になって、ITの供給超過、特にアメリカを中心に供給が超過して経済の減速が始まっているという事態が起こりまして、アメリカも、十一月にはFOMCという金利を決める委員会でインフレバイアスだとまだ言っていたのが、十二月を越え、年を越して、これは供給超過で大変だということで慌てて金利を下げ始めて、世界全体がそれにフォローしてここまで来たところへ、またテロ事件といったようなものが起こってきたといったようなことで、こういうことがそれこそ歴史なんであって、今後も何が起こっていくかわからないということかと思いますが、日本経済の流れについて申しますと、やはりアメリカが供給超過で経済減速が起こって、私どもの輸出が減り、生産が減り、設備投資が減り、それが家計に響いてきたというのがこの八月、九月までの推移であったかと思います。

 そういう中で、今度またああいった思わぬ予想もできない事件が起こって、それに対応すべく、緊急の措置として二兆円の手形の買いオペをやりまして、急遽資金を供出し、引き続いて、今週の決定会合におきまして、六兆円と言っていた当座預金の目標値を、六兆円を超えて、六兆円を上回る金額で資金を供給していくということに切りかえると同時に、公定歩合も〇・二五%を〇・一%まで引き下げるということをいたし、また、九月の期末を控えて、企業が資金のショートを起こし破綻に陥るようなことのないように、特別の貸付制度、取引先が担保を持ってきさえすれば公定歩合で貸しますよという特別の貸付制度を、期末を越えてやれるように期間を少し延ばしました。

 そういったことをやってここまで来たわけでございますが、日本銀行は、中央銀行として、情勢の推移を見ながら、変化を見ながら、最大限の努力を重ねてきたつもりでございます。

 政府は政府で、構造改革、これがなければ景気もよくならないし、日本経済は立っていけなくなってしまうというような危機感を持って、構造改革の具体案、特にきょうあたりから、工程表というのをつくって順番をみんなで議論して決めていこうというところまで来ておるわけでございまして、もっと早くできないのかと言われれば確かにそういう感じがしないでもございませんけれども、いろいろ政府にも事情がおありのことだと思います。

 そういうふうに、政府の動きに対して、私どもとしても、できる限り下支えを金融サイドからしていきたいというふうに考えながら、ここまで政策を運営してきたつもりでございます。むしろ、日銀の金融ベース、過去五年間で八%お金を出しております。特にことしになってから、構造改革が近く実現していきそうだ、そうすれば金融が生きていくだろうというふうに思って、むしろ先んじるような形で、三月、八月と量的緩和を強化してきた次第でございまして、そういう意味では、大体、政府とは話がそんなに、いろいろ議論はあるかもしれませんし、コンプレーンはおありかもしれませんけれども、我々としては、中央銀行として、こういう際にはここまでやるべきだ、あるいはこれ以上はやれないということを議論で決めて、決定会合で政策を打ち出してきたつもりでございます。

 少し長くなりました。

阿部委員 そうした今の速水総裁の、御尽力にもかかわらずとあえて言わせていただこうと思いますが、やはり、国民サイドから見れば一向に事態が好転しない中で、アメリカでのテロを初め世界経済が動揺をさらに深める中で、いわゆる当座預金残高も現在九兆円と、この六兆円を超すという指標を設けられた後は、超せば幾らでも青天井であるのか。それとも、例えば二〇〇〇年問題の場合はいっとき二十四兆まで上がったものと思いますが、二〇〇〇年問題というのは時期の限られた問題でありました。ところが、現在アメリカが開始しようとしている、まあ報復戦争と呼ばれるもので、もしも、先ほどどなたかの言葉でございましたが、世界経済が戦争モードに入ったとする場合、終わりが見えない、先が見えない、目安が立たない経済状況も当然予測されます。

 そこで、速水総裁に改めてお伺いいたしますが、この六兆円超の、超という、込められた超すということの意味と、逆に、青天井ないしは指標を定めて量的緩和を行われるお考えなのか。これは実は国民にとっては大変に不安なことでもあります。先ほど来、政府と日銀は、お互いにちゃんと論議を闘わせてきたけれどもよくなってはいない。お父さんとお母さんがけんかをして、その結果、子供が一番先行きの見えない状態に置かれているようにも、あえて卑近に例えれば言えるような状態かと思います。

 今、国民の安定という意味では、個人消費の問題もございますでしょうし、先ほど来の実体経済もございますでしょうが、やはり一番、先行きが見えない、指標の見えないものについて、お金の流れが自分たちの知らないところでどんどんどんどん起こるのではないかということも、極めて国民にとって財布のひもをかたくする要因に、これを簡単に心理要因というふうに総称してございますが、単に心理要因と軽々に言われるようなことではなくて、やはり世界経済もあるいは平和も脅かされている中での国民の不安だと思います。

 そこで、再度繰り返しですが、この六兆円を超すという当座預金の残高目標、これには、ある程度の青天井並びに指標、何を指標としてこの残高を決めていかれるのか、その点についてお考えを総裁からお願いいたします。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

速水参考人 六兆円は、八月に一応六兆円というのを決めたわけでございますが、その後、米国のテロ事件発生に伴う流動性需要の高まりという緊急事態に対応して、今週の決定会合では、当面、市場が必要とする資金を機動的かつ潤沢に供給していこうということで、六兆円以上ということを決めたわけでございます。その際、内外の不安定な金融経済情勢にかんがみまして、あらかじめ具体的な目標金額を特定しないことが適当だという判断をいたしました。

 六兆円を上回ることを目標とするといった表現にしたわけでございますが、先行きの当座預金残高を正確に見通すということは非常に難しいことでございまして、現在のように不安定な情勢を背景にして高い流動性需要が出てくる場合には、八兆円あるいは九兆円といったような金額が当座預金に積まれることが出てくる可能性は十分ありますし、既にもう出ております。そういった不安定な情勢が緩和して流動性の需要が減少していくことになりますれば、ごく最近のような高水準の当座預金残高を維持できるかどうか、むしろ逆に、そのことは先行きの一つの懸念になっていくというふうに思います。

 そういう情勢で、今週、そういった、今青天井とおっしゃいましたけれども、当面、青天井という形で今後の情勢の推移を見ていきたいと思っております。

阿部委員 青天井で推移を見るという言葉は、国民から聞きますと、私がそういう言葉を使いましたから総裁が繰り返されたこととは思いますが、やはりかなり不安感の大きなものだと思います。

 もちろん、第二次大戦後、世界戦争という形では何もそうした動きはなかったわけですから、今新たに起ころうとしている米国による報復、これを正義の戦いと米国は呼んで突入しようとしておられますが、そうした中で起こってくる経済の動向も、実は、我が国も含めて世界じゅうが経験したことのない、この五十数年間にない新たな事態だと思います。

 そうした中で金融の安定、経済の安定をしっかりさせておくということが、実は、武力にまさる、そして本当の意味の平和の下支えで、非常に大事な方策と思いますが、では、日本がとる金融政策が国民に知らされるまでの期間、日銀はいわゆる新日銀法の二十条の一項で、速やかに政策の決定を国民に公表するという方針をとられて、現在のところ、いろいろな政策決定後、次回の会合を待って公表されますので、約一カ月半の間を置いて国民には政策決定、論議の内容が知らされております。

 私は、たまたまこの夏、厚生労働委員会の視察でイギリスに参りましたときに、駐英大使から、イギリスでの中央銀行の政策決定が二週間で国民に明らかにされているということを伺いました。

 ここで、私はまず速水総裁に、もしも、これからもしかして青天井でやらざるを得ないかもしれない、その場その場で臨機応変の処置をとらざるを得ないとすれば、そのことを、そのことに至る経緯を国民がより早く知るべきではないか、知る権利があるとも思いますので、現在、お考えとして、日銀の政策決定並びに論議の公表期間をさらにスピードアップすることについての御見解をお教えくださいませ。

速水参考人 日本銀行としましても、議事要旨をできるだけ早期に公表するよう努めております。現在おおむね一カ月後をめどにして公表しておるわけでございます。

 ただ、そもそも中央銀行の説明責任の一環としまして議事要旨の公表が求められているという点を踏まえますれば、その内容に正確を期し、政策決定に至る経緯やその過程で出された意見を公正に記述することが何よりも重要であります。そのためには現在程度の作成期間をいただく必要があるというふうに考えております。

 現在議事要旨を公表しております中央銀行は、主要国では米国、英国、日本ぐらいでございますが、私どもの議事要旨は、その分量や内容をごらんいただければおわかりいただけると思いますが、これら中央銀行に比べまして全く遜色のない、むしろ相当に充実したものになっていると自負しております。

 また、公表までの時間の長さを見ますと、米国FRBは約一カ月半をかけております。バンク・オブ・イングランドは約二週間後の公表となっております。私どもの公表スケジュールが格別遅いというわけではないのではないか。この点もあわせて御理解賜りたいと思います。

阿部委員 私のただいまの御質問の趣旨は、世界経済の動きが非常に急である、風雲急を告げていると言っても過言ではないと思います。その認識をやはり日銀も持っていただきたい。

 そして、私がせんだって事務サイドにお伺いいたしましたところ、日本文と英文の両方を作成する、そしてその内容に誤りなきを期すために現在一カ月半を要しておられるとのお返事でございました。

 私ども、まず国民といたしましては、せめて自分たちの国のことを日本語文で先に公表し、しかるべく後に翻訳等々の作業が伴って、それに、現在日銀の職員の方たちが日夜を問わず御苦労されていることはよく存じております。ただし、何度も申し上げますが、本当に未曾有の事態に立ち至っている世界の経済の中で、やはり国民の合意、同意、不安を取り去ることが一番、経済の安定にとっても、そして金融のシステムのこれからの国民的な合意のためにも必要と思いますので、再度その点につきまして、例えば事務方として、どれくらいの期限、期間であれば現実に私の今申しました日本語部分だけでも可能であるのか、前向きな御答弁をお願いします。

 そうでないと、日本銀行というのは、ただでも行動が遅いと言われ、批判されかねない存在に今マスメディア市場ではなっております。私は必ずしもそうは思いませんが、やはりやれるところは前向きに努力するという姿勢を見せていただかないと、国民に対しての日銀の存在というのはやはり極めて影の薄いものとなりますので、事務サイドから最後に一点だけ、日本語文だけの場合どのくらい期間短縮が可能かについてお伺い申し上げて、終わらせていただきます。

速水参考人 決定会合で決定をいたしましたときには、特に政策の変更をいたしましたときには、その後直ちに私が記者会見で詳しい説明をいたしております。十八日も、七時ごろ会議が終わりまして、七時四十五分から記者会見をして、約一時間近く詳しく説明をさせていただきましたし、ステートメントも出させていただきました。決定内容そのものにつきましては、当日中にこうして詳しく公表しております。

 ただ、九人の委員の方々が御議論され、おっしゃったことをやはり一人がまとめて出すという場合に、これは、御本人のおっしゃったこと、あるいは議論が間違っていないかどうかというのはやはり確認をしてもらう必要がございますし、そういう手間を考えますと、それぐらいの時間を置いて出すのが、後々まで残る記録でありますだけに、必要であると思っております。

 記者会見で当日のことは説明をしまして、それが翌朝の新聞に、ごらんになったように大きく出ておるわけでございます。その辺の状況はお考えいただきたいと思います。何も英訳に時間がかかっているわけではございません。英訳もほとんど同日に出ております。

阿部委員 日銀法の二十条の中に、次回の会合での承認を得てという一項があるのは存じておりますので、であれば、そこの部分をもう少し迅速化できまいかというのが私の質問の趣旨ではございました。次回、また継続してお尋ね申し上げます。

 ありがとうございました。

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