第155回国会 法務委員会厚生労働委員会連合審査会 第1号(2002/11/29) 抜粋 ○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
冒頭、委員長にお願いがございます。
ただいまの状態は、明らかに法務委員会メンバーの定員割れと拝察いたします。今の木島委員の御質問を初めとして、法体系としても極めてあいまいで、拡大解釈すら可能となるようなこの法案の審議に、法務の担当委員が過半数おられるや否や。お願いいたします。とめていただきます、ここで。確認をお願いいたします。
○坂井委員長 ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕
○坂井委員長 速記を続けてください。
再開いたします。阿部君。
○阿部委員 今の、お尋ねの件の出席定数だけ教えてください。
○坂井委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕
○坂井委員長 速記を始めてください。
再開します。阿部君。
○阿部委員 では、審議に入らせていただきます。
先ほどの木島委員の御質問は、極めて法体系にかかわる重要な御指摘だったと思います。私は、そのことを医療という分野に引きかえて、少し例示をしながら、この法案の骨格をまずお尋ね申し上げたいと思います。
先ほどの木島委員の御質問の骨子は、この法律はそもそも、精神障害の改善、あるいは同様の行為を行うことなく社会復帰を促進、いずれも今後のことが現在行政処分を行うことの条件になっておる、今後のことを条件にされたらそのときの処分が行えないではないかという御質疑だったと思います。
明確な御答弁はなかったですが、これをこれまでの医療の中における精神医療の分野のことに多少引き比べますと、例えば措置入院の場合は、自傷他害、そのときに自分を傷つけたり、あるいは精神の混乱ゆえに相手を傷害してしまう、これを要件としてございます。
こういう説明をお聞きになった上で、このこれまでの措置入院と違う法体系を、あえて将来のことまで含めて広くおとりになった根拠をまずお教えください。そして、場合によっては、これは非常に、精神障害を病む方たちの人権の侵害、生存権を脅かすことになってまいります。自傷他害という一方の措置入院、これは現在のことでございます。このことが要件になって、医療的なある意味の行政処分が措置入院でございます。そうではなくて、これからのことを要件とされた場合に起こり得る人権の侵害、私は多大にあると思いますが、その点に関して、塩崎先生の御答弁をまず伺います。
○塩崎委員 先ほど来繰り返し、政府提案では「再び対象行為を行うおそれ」、この有無のみが要件であったということでありますけれども、今回は、医療の必要性の有無ということを明確にすることによって、現在この医療が必要なのかということを判断するということの重要性を強調しているということでございます。
○阿部委員 医療は、基本的な生存権、憲法二十五条で保障されただれもが持っている医療を受ける権利でございます。あえてここで精神障害の改善を、何度も申しますが、行政処分の要件とされている。将来のこと、全部将来です。「改善」は、今じゃなくて将来です。再犯も、再犯という言葉を使ってなくても、「同様の行為を行うことなく、」も未来であります。そして社会復帰は、先ほどの坂口厚生労働大臣の御答弁では、この国の精神医療を底上げするために十年かかるかもしれないという遠い将来であります。それらをなぜ今の時点で構成要件にするのか。もう一度お願いいたします。そして、構成要件でないとおっしゃるなら、この法律の構成要件は何ですか。
○塩崎委員 繰り返し漆原先生からもお話ありましたが、構成要件というのは、やはりこの新しい文章そのものでございます。
それで、もう一回同じようなことを繰り返すことになるわけでありますけれども、今回の修正は、そのときの精神障害を改善する、そして「この法律による医療を受けさせる必要があると認める」ということにすることによってこの法律による手厚い専門的な医療を行う必要がある、これを認められたときが中心的な要件であるということを言っているわけでございますから、要件は、この新しく加わった文章全部というふうに申し上げた方がいいと思います。
○阿部委員 では、もう大変に単純で恐縮ですが、それらはすべて将来のことですよね。この一点だけお願いします。改善は将来ですよね、社会復帰も将来ですよね、再び同様行為を行うことがないのも将来ですよね。では、将来を要件になさっているのですね。もう一言でお願いします。
○塩崎委員 医療は現在のことであります。
○阿部委員 では、医療以外は将来というふうに伺っていいのでしょうか。今の御答弁は「医療は」とおっしゃいましたから、「は」は他と区別しておるんですから、医療以外は将来でしょうか。
○塩崎委員 いや、そういうことではなくて、繰り返しまどろっこしいようで大変恐縮でありますけれども、ここに書いてあるとおり、「精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を」というのは、その過去にあった行為を行わないで社会に復帰をするということを促進するために医療が要るか要らないかということを今判断するということでございます。
○阿部委員 将来に起こることに対して医療が要るか要らないかを判断するような法体系というのは、これまでないわけであります。本当にここを真剣に考えていただきたい。
そして、もし医療が要るか要らないかの判断であれば、医師だけで十分ではないですか。これは、わざわざこの法体系に裁判官が関与しているところの大きな枠組みの理由ですので、今塩崎先生が御答弁なさったように、医療の必要性ということをなぜ裁判官が判断なさいますか。
○塩崎委員 先ほど来、山井先生や水島先生のときにもお答えをしたと思いますけれども、この新しい高度の医療、精神医療を受けるというのは、強制的に受けていただくということになるわけであります。その心は先ほどお話があったとおりでありますけれども、その際に裁判官が判断するのは、人身のやはり自由を奪うということになってその病院に入っていただくわけですから、それを判断するのに医療だけで判断をすることができない要素というものが多々あるわけであります。そういうことを判断するのが裁判官の役割だということでございます。
○阿部委員 塩崎先生もちょっと整理をしていただきたいのですけれども、それは従来の措置入院でもやっておるわけです。裁判官は何を判断するのですか。裁判官が合議で求められる内容は、何に関して求められているのですか。お願いします。これは明確にしていただければ審議は進むと思いますので。しかし、されない限りこうやって――本当にこれ、非常に人権侵害の網をばっと広げたような法案になっておりますから。裁判官は何をここで判断されますか。医療的判断ではないですよね、どうでしょうか。
○塩崎委員 今回、裁判官とそれから審判員の役割というのを書き分けたわけであります。したがって、それぞれの知見に基づいて判断をするということになって、今おっしゃるとおり、医療の判断をするというわけではもちろんないわけでありまして、今回、この四十二条の、今申し上げ、先ほど来議論の対象になっているところについて判断をするわけであって、それぞれの立場で判断をし、そしてその合議で結論を出すということになっているわけであります。だから、二人が違うことを言った場合には軽い方をとるというのは、先生も御存じのとおりだと思います。
○阿部委員 恐縮ですが、「それぞれ」の「それ」の方は医療で出たんです。「ぞれ」の方をお願いします。「ぞれ」が、裁判官が何を判断なさるのか。「それぞれ」はいいです。「それ」は医者が判断。私はこのことも次質問いたしますが、「ぞれ」の方なら「ぞれ」、裁判官が何を判断なさるのでしょう。
○塩崎委員 これも先ほど来もう既に答弁をしたことなので、つい丁寧には言っていなかったんですが、例えば、この対象者がどういう生活環境のもとで暮らしているのか、あるいはその医療を続けていかれる状況にあるのかどうか等々を考えるとともに、法律の専門家たる裁判官が、人権にもかかわる医療に強制的に当たってもらう、入院をしていただくということを判断するというのがその「ぞれ」の役割ではないかと思います。
○阿部委員 では、今の御答弁で、例えば、その患者さんというか病む人の生活環境とか治療を続けられるかどうかは、措置入院でも判断しているわけです。だから措置の解除が起こるわけです。それで、今先生の御答弁で、これまでの医療の枠内でやっていないことであるというのでおっしゃったのは、強制的な入院だとおっしゃいました。この件は逆に、措置入院も医療の名による強制的な入院なわけです。
では、司法の名による強制的な入院を論議なさる、そのことを決める中身は何でしょうか。これが、今までですと、再犯のおそれということを司法は判断するんだとおっしゃっていました。しかし、この法律では全く影が見えません。何を司法がお決めになるのか、司法が強制的にこの方に強いるものは何であるのか、それをお願いいたします。
○塩崎委員 繰り返して申し上げて恐縮でありますけれども、判断するのは、この新しい四十二条第一項第一号のところの文章そのものを判断すると言うしかないと思います。
政府案のときの、いわゆる「再び対象行為を行うおそれ」というこの文言があったがゆえに、例えば、先ほど来お話があったように、将来の時期とか、あるいはどういう犯罪をするのかとか、そういうようなとても予期できないようなものを予期しろというのかというような誤解を招いたり、先ほども申し上げましたけれども、漠たる危険性があるがゆえに全部それを社会から隔離するために入れてしまうという誤解もあったわけでありますし、レッテルを張られて危険人物だというようなことにもつながりかねないということで、先ほど来申し上げているように、限定的に医療の必要性というものを書き込んでいるというのがこの三行の心であります。
○阿部委員 論議がずっと平行線で、なぜ裁判官が要るかについて、やはり本当に明確な御答弁をいただいていないのです。もうきょうずっと、どなたの質疑にもそうでございましたが、それがこの法案の一番の問題点ではないか。
このことのために裁判官が必要で、これこれの役割を果たし、逆に、司法の名において一人の人権を拘束する場合にどういうセーフガード、安全弁を持つべきかというように、きちんと論議をしていかなければ、いつまでたってもこの法案は、結局何をしたいための法案なのか、そして、だれの人権が侵害され、それは拡大のおそれがないのかということが、一向に明らかではございません。
そして、もうこれはこれ以上はやめますが、きょう私が何度もお尋ねした、裁判官は何を判断なさるのですか、何を役割としてなさるのですかということは、次回また継続して御答弁いただきたいと思います。
そして、引き続いて、医師の判断というところに参りますが、これは大きく医療側にほうり投げられたボールでございますが、果たしてこの中で医師に要求されるものは何であるかという項目を私なりに調べてみました。
そういたしましたところ、三十七条にございます。三十七条の3ですが、ここでは、医師が「この法律による入院による医療の必要性」を判断すると。この法律による入院の医療の必要性と、これまでの措置入院による入院の医療の必要性を医師は、申しわけございませんが、分けることができません。
何を言っているかというと、精神障害をお持ちで自傷他害という状態があれば、私どもはそのことを何としてでも軽減させようと思い、そして、現時点ですぐ自殺の危険、他害の危険があれば、措置入院で処置しております。「この法律による入院による医療の必要性」なるものは今までの論議で一切明らかでございませんが、「この法律による」というのは、社会復帰を見込んだ法律である、あるいは自傷他害をこれからしないという、これも、でも私どもは通常そのように願いながら医療をしておるわけです。
私は、この法案を一人の医師として投げかけられましたときに、この法律による入院の必要性ということを、これまでの措置入院による必要性と分けることができません。この点について、恐縮ですが、今度は、提案者にもう一度伺うと悪いので、坂口大臣にお願いします。
いいですか。済みません、では、塩崎先生に行けというので、塩崎先生お願いします。
○塩崎委員 今の先生の御質問は、医療の中身を言っておられるんですか。
○阿部委員 いいえ。法律的に三十七条の3の「この法律による入院」というのは、これを医師が判断する場合に、今までの措置入院による入院あるいは措置入院下の治療と、特にこの法律による入院の医療の必要性に関することを判断しなきゃいけないので、その具体的な中身とまでは申しませんから、その違いですね、何をおっしゃっているのか。これは言葉が羅列しているだけで、言語明瞭意味不明瞭というところですので、お願いします。
○塩崎委員 冒頭にも申し上げましたけれども、精神医療のこの日本の数十年間のおくれという御指摘がございました。今回、司法医療という言葉も使うようになっていますけれども、今回のこの医療というのは、やはり新しく医療施設や設備も十分整った病棟で高度な技術を持つ者が当たるという精神療法を実施するということが前提で、全額公費でやろうということで今準備をしているわけでありまして、この新しい高度な医療ということが今おっしゃっている三十七条の医療ということでございます。
○阿部委員 新しい高度の医療、司法医療というふうに今おっしゃられたようにもお聞きいたしますが、先ほど来申しました一人の医者としてこの文章を投げかけられたとき、何度も申しますが、措置入院と異なる医療ということを判断するに足る明確なイメージが浮かびません。司法医療なる言葉は使われましたけれども、これは先回の委員会でも随分問題になりましたが、必要の最初の段階で、これからの治療の中身のことまでにわたって、こっちはこっちコース、こっちはこっちコースとはなかなかできません。
少なくとも判断できるのは、今この人がほっておいたら自殺しちゃうか、何か加害するか、これは判断できます。ただし、治療経過の中で、これからこのようにやっていけば、逆にある意味の、おっしゃるような司法医療的なものも必要でないかもしれないし、ここが、何度も言いますが、大きく問題なのです。判断する時点でそれをこっちコース、こっちコースと分けられない。未来の予測、未来のことにまでわたって今を判断せよと言われるのは困難が過ぎるということを医療面からも申しております。これも指摘にとどめます。
もう一点予告がしてございまして、森山大臣が御臨席でいらっしゃいますので、質問をさせていただきます。
私は、前回この法案が継続審議になります直前に、森山法務大臣に、刑務所内の医療あるいは拘置所内の医療、そしてあるいはまた医療刑務所内の医療、特に精神医療の現状について、例えば視察に行っていただけたか、そしてどの程度御認識がおありかということを伺いました。
もちろん、その後お時間もあったし、大臣は行ってくださったことと思いますが、私があのときこの疑問を投げかけました大きな懸案の事項が、実は名古屋の刑務所で発生いたしました。革ベルトによって刑務所に服役中の方を拉致したんですね、取り押さえた。実は、特に名古屋刑務所では、わずかこの二年間で二名の死亡者と一名の重篤な腹膜炎が生じております。
二名の死亡者のうち、昨年の十二月の方は、刑務所内で革ベルトをはめられたまま、腹膜炎だということで死亡されています。普通の年齢で考えて、そしてわずか二日間の独房状態でした、今どき腹膜炎で亡くなるということは、よほどの治療のおくれか症状の見落としか、あるいはその前に本当の何らかの原因があるのかもしれません。
私は、恐らく収監時には御病気、基礎疾患のない方がなぜ二日で腹膜炎で亡くなられたかということが一点、そしてそのような医療状態に人々が刑務所内で置かれているということについての森山大臣の御認識を伺いたいと思います。
○森山国務大臣 御指摘のように、前回の国会の審議の中で医療刑務所を見たかというお話がございました。
そのときはまだその機会を得ておりませんでしたけれども、国会が終わりましてすぐに、ことし八月九日でございましたか、大阪府方面に視察に参りました際に、大阪医療刑務所についても視察を行いました。その目的は、精神障害を有し専門的な治療を必要とする受刑者が医療刑務所においてどのような治療を受けているか、実地に確認するということでございました。
そのような観点から視察いたしましたところ、同所の医師が個々の患者に合わせて、じっくりと受刑者の考えを聞いたり気持ちをほぐしたりしているのを目の当たりに見まして、きめ細かく治療されているのだなということを感じたわけでございます。もちろん、私は医療の専門家ではございませんので、それ以上のことはわからなかったわけでございますが。
さらに、今御指摘になりました名古屋刑務所の件は最近表に出てきたことでございまして、私どもも非常に驚き、かつ申しわけないことだったと思っております。
今、この件については、検察において、また矯正局の内部において、また人権擁護局においてそれぞれにきっちりと捜査をしている最中でございまして、その全容がわかりました上でまた御報告もし、処分もしたいと考えております。
○阿部委員 私は、森山大臣が大阪の医療刑務所に行っていただいたこと、ありがたいと思います。そして、もう一歩足を延ばして名古屋の刑務所にも行っていただきたかった。
私はあのとき、医療刑務所だけでなく、刑務所、拘置所、御存じですかとお尋ねしました。そして、もしもっとそのときに行っていただけていればこのようなことがなかったと思いたいです。少なくとも九月の、腹膜炎で四十日の入院をされたような事例はなかったかもしれません。
しかし、その前に、既にことしの五月と去年の十二月、死亡例が相次いでおります。保護房におって革手錠下で、実は五人の死亡例がほかの刑務所内でもございます。おのおのが脱水、水がない、干からびる、あるいは熱中症、暑くて温度調節ができない。子供や赤ちゃんでもあるまいし、大の大人が熱中症や脱水で亡くなるとはよほど医療ケアが悪い場合以外には考えられません。
こうした医療実態を放置しておいたままこういう法案が出されるということは、司法当局において、司法の名において強制的に収容している方たちに、もう一方で人権の視点に立った十分なセーフガードをお持ちでないんだと私は思います。そういう手法のない、発想のない、具体的なシステムのないところに今回のような法案を提案される理由と見識を私は疑います。まずは名古屋での事例をはっきりさせて、なぜ腹膜炎くらいで死んだのか、私は問いたいです。そんなこと、今のこの世の中の医療技術と医療レベルと医療知識で起こり得ないです、普通に考えて。普通でない状態に刑務所の中の受刑者が置かれているとしたら、そのことをまず、司法に携わる最高トップの森山大臣は全力を挙げて改善していただくべきです。
私は、細かに残余の質問ございますし、来週また法務委員会で名古屋刑務所の視察がある由ですから参加もさせていただきまして、引き続く審議をお願いしたいと思います。
ありがとうございました。
○坂井委員長 次回は、来る十二月三日火曜日午後一時から連合審査会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
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