第155回国会 法務委員会厚生労働委員会連合審査会 第3号(2002/12/04) 抜粋

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阿部委員 引き続きまして、社会民主党の阿部知子ですが、残りの二十五分をよろしくお願いいたします。

 先ほど中川智子も申しましたように、きょうも大変冷たい雨の中を、連日、精神に障害を持つという病歴をお持ちの方、あるいはその方たちと一緒にこの日本の差別多き社会を何とか変えていこうという方々が、外での行動あるいは傍聴を行っておられます。そうした方々の気持ちに本当にこたえ得る法案なのか否かということをめぐって、きょうもまた連合審査が行われましたが、私の拝聴いたしますところ、論議は大きく食い違い、また思いも食い違っているように思います。

 そこで、まず修正案の提案者である塩崎先生に伺わせていただきますが、そもそもこの法案はだれのためのものでしょうか。

塩崎委員 当然のことながら、不幸にして法に触れる行為をした精神障害者の方々の社会復帰のためでございます。

阿部委員 塩崎先生も御存じのように、措置入院においては自傷他害。一人の精神を病んだ患者さんが自分を傷つける場合と相手を傷つける場合は実は紙一重でございます。本当に紙一重です。その中にあって、この法律の枠組みは、他害ということをとりわけ際立たせた法律の内容となっておりますが、そのことはお認めになりますでしょうか。

塩崎委員 精神障害のもとでの行為についての同様の行為ということでございますから、他害行為ということが前提でございます。

阿部委員 恐縮ですが、今のは御答弁ではなくて、私の聞いたのは、精神障害ゆえに自傷他害というのは紙一重である、ここでとりわけ他害ということを取り上げられた意図、目的、これは私は明確にした方がいいと思うんです。そして、そうならばそうで、私が申し上げるようなセーフガードが必要ですから、ここを明確にしていただきたい。なぜ自傷は含まれず、他害のみこの法律の骨格であるのかという点です。

塩崎委員 重大な他害行為を行ったことが今回問題になって、社会復帰を妨げてしまうということであるわけでありますから、そこのところに焦点を当てているということでございます。

阿部委員 そうであるならば、この法案のもともとの骨格は、塩崎先生がおっしゃったような御本人のためということを超えて、他害という行為が社会に及ぼす影響をまず大きくクローズアップしているという、この基本的な構造をまず確認していただきたいと思います。いかがでしょうか。

塩崎委員 その他害行為が精神障害によって起こされ、そしてそれがゆえに社会復帰ができないということは、御本人にとっても大変不幸なことでありますから、その精神障害を治すための医療でもあり、そして、先ほど来ずっと議論をしていた、限定的な要件のもとでの高度な医療を受けて社会復帰をしていただこうということでございます。

阿部委員 そういうのを強制医療と申すわけであります。そして、木島委員の御質問もその点を極めて鮮明に投げかけられましたが、先生方には一切お答えがございませんでした。

 例えば措置入院とどこが違うのかということも、もうこの委員会、二回の連合審査も含め、あるいはさきの国会での委員会も含めて、木島委員が明確におのおのの大臣の御発言、あるいは今回の修正提案の方々の御発言をなぞられながら確認をいたしましたが、そもそも、この法案がなぜ措置入院というものと違って、何を目的としておるのかということも実は半分隠されたまま、そでの下になったまま審議が進められております。そして、このような形で本当に精神を病む方たちが隔離されていくのではないかという不安が強いからこそ、雨の中も皆さんお立ちなのだと思います。

 そして、私は、この法案を考える場合に、塩崎先生とある意味で出発点は一緒の部分があります。この方たちは、精神に病を得るという不幸と、かてて加えて、他をあやめる、あるいはこれはさっきも申しましたように自分の命をあやめるかもしれない、そうした状況に追い込まれた二つの不幸を背負っております。問題を原点に立ち返ったならば、私は、三点にわたって、このことはこの審議の前にぜひとも準備されなければならない分野のおのおのの総括があると存じます。

 一人の方が精神に障害を持ち、そのことと関連して犯罪を犯されたといたします。塩崎先生、申しわけございませんが、この方たちには一体どういうコースがこれからございますでしょうか。お願いします。

塩崎委員 現在の制度でのお話でございますね。(阿部委員「この法案が成立してからでも結構です、どちらでも」と呼ぶ)

 現在の法律でいけば、措置の手続に検察から行くということが常識的なことだと思っております。

阿部委員 実は、精神に障害をお持ちでも刑に服することができるというふうに判断されれば刑務所に、それなりの裁判の過程を経て刑に服する方もおられます。それから、先生がおっしゃるように措置入院の方もおられます。であるならば、その双方、先ほど中川智子が質問いたしましたが、刑に服しながら精神を病む方もおられます、この方たちの現状はどうであるのか。そして、もっと広げれば、刑に服する拘禁下に置かれた方たちの医療がどうであるのか。そして、もう一方で、措置入院という形で、これは治療という形の時間を精神病院で受ける方たちがおられます。また、この背景には精神病院の現状がどうであるのかがございます。

 私は、以下、この二つを分けて、そして今度の法案は新たな第三のグループをつくる法案ですが、第三をつくる前に一と二の現状の問題点がきっちり認識されなければ、第三は割れなべにとじぶたになってしまいます。一と二のおのおのに重大な問題があり、おのおのが解決していくべき、物事には手順というものがございますので、そのことからなすべきだと私は思います。

 そこで、森山法務大臣に伺います。

 私は、精神を病む方も含めて何らかの御病気をお持ちで刑に服している方、あるいは刑に服しておって精神の病を含めて御病気になられた方たちの取り扱いについて、せんだってもお伺いいたしましたが、どうしてもかかる人権侵害は座視し得ないと思う事態が次々と生じております。

 せんだっての質疑の継続をやらせていただきたいと思いますが、実は、九九年から二〇〇二年九月までの三年間で、刑務所の中で保護房に収容中の五人の受刑者の死亡がございました。この五名の死亡に至る過程で、いつ医師の診察を受け、死因についてはどのように分析、判断されておるか。これは恐縮ですが、実務者サイドでも結構です。お願いいたします。

中井政府参考人 最初に、矯正当局からお答えできる範囲で申し上げたいと思います。

 今お尋ねの五件のうち、実はこれは司法解剖が行われておりますので、死因の点はそちらの方を御確認いただきたいと思いますけれども、司法解剖が行われていなかった事件について申しますと、二件ございます。この二件につきましてはいずれも、医師によりまして急性心不全であるという診断がなされたとの報告を受けているところでございます。

 内容についても申し上げましょうか。よろしいですか。

阿部委員 いつ医師の診察を受けたかということを教えてくださいというのが一点です。

 そして、内容については福島瑞穂の方にお答えいただきましたので、私から読みますので結構です。

 おのおの亡くなられた五名は、いつの時点で医師の診察を受けておられますか。

中井政府参考人 それでは、順次お答えいたします。

 平成十一年の府中刑務所の案件でございますけれども、十一年の八月十日、これは九日に保護房に収容されたわけでありますけれども、十一年の八月十日の時点で、本人の様子がおかしいということから医師が急行いたしまして診察を実施しておりまして、直ちに病舎の集中治療室へ搬送し、所要の治療をしたものの、同日中に死亡した、こういう流れでございます。

 続きまして、第二件目の横須賀刑務所の平成十二年の案件でございますけれども、平成十二年十二月三日に保護房に収容いたしましたところ、翌四日に、動きが少なく、呼びかけたが反応がないというようなことがございましたので、外部の病院へ救急車で搬送いたしまして、当該病院で診察、検査等を受け、所要の治療をしたわけでありますが、同日、死亡が確認されたという案件でございます。

 続きまして、三件目の平成十三年の名古屋刑務所の案件でございますけれども、これは平成十三年十二月八日に舎房で大声を発するというようなことがございまして、保護房に収容いたしました。その後、暴行等のおそれがございましたので革手錠も使用いたしましたけれども、十三日に革手錠の使用を解除しております。しかし、その後におきましても、やはり大声を発するなど一般房に収容できなかったことから、保護房への収容自体は継続しておったわけでございますが、同月の十四日でございますけれども、着衣の一部に血の跡がちょっと認められましたので、直ちに保護房収容を解除いたしまして、医師が診察いたしまして、当該部分の縫合手術等を行いましたけれども、よく十五日に容体が変わりまして死亡したという案件でございます。

 平成十四年の府中刑務所の案件でございますが、平成十四年の三月十四日、やはり大声を出したりあるいは騒音を立てるといったようなことから保護房に収容されたわけでございますけれども、四月の二日に保護房の収容は一たん解除されまして、さらに同じ日にまた大声を出したり騒音を出すということでもう一度保護房に収容されております。

 そのような経緯を経まして、四月十三日に至りました段階で、本人に声をかけても反応がないというようなことで、保護房をあけまして様子を見たところから医師が関与いたしまして、同日、府中刑務所の医務部でございますけれども、そこに搬送されまして医師が診察しておる。そのほか救命措置等を講じたけれども同日中に死亡が確認された、こういう時系列でございます。

 最後が、平成十四年の名古屋刑務所の案件でございますが、十四年五月二十七日に暴行のおそれがあるということで保護房に収容し、あわせて革手錠を使用したわけでありますが、その後、急に静かになり応答がなくなったということで、同日中に医師により診察がされ、さらに救急措置を講じたけれども同日中に死亡した、こういう時系列になっております。

阿部委員 五例を全部言っていただきましたのでお聞きの委員には印象が薄れたかもしれませんが、私が指摘したい点は、ほぼ、医師の診察は呼吸がもうほとんど停止状態ないし心不全といって心臓がとまったような状態、心停止に近い状態、あるいは十時に容体が急変、十一時に死亡と言われるような府中刑務所の事例。そして、本当に、おっしゃいませんでしたが、横須賀の事例は、診察したところもう冷たい状態、急変で診察して脳腫瘍であったことがわかった。私は、医師としてこれを読みますと、この方たちは日ごろどんな治療を受けていたんだろうか、どんなふうに医療にアクセスしていたんだろうかと本当に身も震える寒い、怖い思いがいたします。

 そして、このおっしゃいました名古屋での事例は、七日間保護房に収容されて、診察があったのが七日目で、直その日に亡くなっておられます。死因が腹膜炎ということです。もし数日早ければ、もちろん革手錠もしました、腹部を締め上げたでしょう、それゆえに腹膜炎はひどくなったものと思われますが、剖検書を見せてくれと言っても出していただけません。だれも本当のこの人の死を解明できない中で、実はもう一例ありますが、六名が亡くなっておられます。

 そこで、森山大臣に伺いたいと思います。

 大臣には、今名古屋刑務所の受刑者で大臣に情願、直接に自分の受けている暴行について法務大臣に対して自分の現状を訴えた受刑者があり、現在彼は裁判を起こしておる途上でありますが、この情願について、受刑者たちの辛うじて開かれた窓口ですが、実は却下というか、取り上げられずに終わっておりますが、こうした事態をどのようにお考えでありましょうか。

森山国務大臣 名古屋刑務所におきまして発生いたしました一連の問題につきましては、まことにとんでもないことと私も考えておりまして、何とも御説明の申し上げようがない、甚だ遺憾だ、申しわけなかったと申し上げるほかございません。

 今、その真相は検察、また矯正局自身の、また人権擁護局等の手によってそれぞれの立場で調査をいたしておりますので、それらが明らかになったところでしかるべき処置、処分もしなければならないと考えております。

 矯正施設の被収容者の人権保障とか被収容者に医療を受けさせるための権利保障に関しまして、名古屋のあの一連の事件とはまた別に一般的にいろいろな御意見や御指摘があるということもよく承知しております。また、これらを真摯に受けとめなければいけないというふうに考えております。被収容者の人権保障という視点が大変大事だということも肝に銘じているところでございます。

 被収容者の健康管理や病気になった場合の医療措置につきましては、矯正施設が一方において刑や拘留等の執行機関であるという大きな枠組みはございますが、被収容者の申し出に対してより一層適切に対応すること等を含めまして、矯正医療がさらに充実し、人権を損なうというようなことが決してないように鋭意努めてまいりたいと考えております。

阿部委員 私が伺いたいのはもっと具体的な二点で、例えば、この方たちの本当の死亡原因。普通は病院で病死されたら解剖いたします。そして、そこから、よく最近のはやりですが、遺体は語るとか死体は語るとか言われて、そこから真実がわかる場合もございます。だがしかし、この方たちの解剖の所見は、私どもが幾ら要求しても今の仕組みの中では検察庁の情報公開という形での提示はいただけません。この方たちの死に至る本当の原因をどういう形で検証し得るのか、その点についてもう少し明確に、一点。

 それから、私があえて、法務大臣に情願、要するに、自分に起きた人権侵害について何とか対処してほしいという申し出をした方が却下されておる。この事態を踏まえて、具体的にどう改善していかれるのか。今回の法の枠組みが、司法と医療とのかかわり、その両方のよいところを寄せてのように言われますが、おのおのの問題点を解決しておかなければ合わさったものは絶対よくなりません。

 責任のなすりつけ合い、キャッチボールのようにきょうも本当にむなしい論議が行われました。一つ一つ、一点一点改善しないと、人の生命と本当に一生がかかった問題は安易に私たちが法律化したときに大きな被害を生みますので、恐縮ですが、私の時間はもうほとんど、残余の質問は申しわけなかったですが、今の、大臣の二点の御答弁をお願いしたいと思います。

 剖検書は見せていただけますか、一点。それからもう一つ、情願、大臣に対して直接なされた、受刑者の自分の権利保護を願うものはなぜ棄却されたか。二点、お願いします。

森山国務大臣 個別の具体的なことについてはお答えいたしかねますけれども、今大変厳しく御指摘いただいたさまざまな問題点につきましてしっかりと受けとめて、改善に努力したいと思います。

阿部委員 私は見せていただけなければ納得できませんし、人が死ぬとはそれだけ重いことです。自由を奪われた中で起こるさまざまな事態に、本当に日本の法務省はみずからの存在をかけて立ち向かってほしいと思います。

 また次の連合審査で厚生省サイドの問題は指摘させていただきたいと思います。ありがとうございました。

坂井委員長 本日は、これにて散会いたします。

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