第155回国会 特殊法人等改革に関する特別委員会 第4号(2002/11/12) 抜粋 ○阿部委員 引き続きまして、社会民主党・市民連合の阿部知子ですが、私は、今回の特殊法人の見直しの中で、とりわけ、労働福祉事業団と言われておりますが、今般の機構改正で独立行政法人労働者健康福祉機構に変わることに関しましての御質問をさせていただきます。
皆さんも御承知おきのように、労働福祉事業団と申しますものの業務のかなり国民に身近な部分として、いわゆる労災病院というものがございます。私自身も、実は関東労災病院というところで専門外来をやっていたこともあって、その内情等々も多少は存じておりますが、今般のこの独立行政法人の見直しに当たっての閣議決定の、十三年十二月十九日に出されました文章を見て、もしかして、これは医療分野のことを余り考慮されていない、病院という業務を、実際を御存じない方が書かれた文章ではないかなと思って、非常に問題が多いと思いますので、きょうはぜひ鴨下副大臣に、今後のこの見直しに当たっての力量を発揮していただきたく、御質問をさせていただきます。
この閣議決定のまず文章ですが、「労災疾病について研究機能を有する中核病院を中心に再編し、業務の効率化を図る。」ここで言われているものは、労災の中で、例えば頸椎損傷とか脳挫傷とか、転落によるものなどで起こった重篤なものについてさらに研究を高めていく機構にするということで、「この再編の対象外となる労災病院については廃止することとし、」となっているんですね。
そうすると、ある程度高度なもの、専門的なもの、労災にぴったり当てはまるもの以外の機能については廃止し、「地域医療機関として必要なものは民営化又は民間・地方に移管する。」という一文でございます。
しかしながら、実は、昭和二十四年に恐らく九州地方の炭鉱におけるさまざまな労働災害に端を発してつくられました労災病院も、その後、日本の高度経済成長期を支える勤労者のための病院として日本全国に三十七カ所できておりまして、中には、ここで一言で簡単に廃止すると言われておりますような病院も多々ございます。その地域の中核病院として機能しているところもたくさんある。
そうした場合に、これを民間に移行するないし地方自治体にお願いするということは、文章上では可能であっても、現実に患者さんがおられて、その地域を支えて、そして必ずしも地方や民間にそれを受け入れる余力があるかどうかもまだ検証もされておらぬ、その段階での閣議決定というこの文章は、もしやして、私は、医療ということの特殊性、人の命を支えている、必ずしも採算効率にも合わない、そういうことも含めての閣議決定としてはちょっと承服しかねると思うのですが、この点について、基本方針、基本姿勢について、特に労災病院見直しの基本姿勢について、まず鴨下副大臣にお伺い申し上げます。
○鴨下副大臣 副大臣を使っていただきまして、ありがとうございます。
ほとんどの労災病院そのものが、都道府県知事から救急告示病院として指定を受けているとか、それから地域医師会が取り組んでいる救急の輪番制の機能を担っている、さらに、先生おっしゃっているように、災害の拠点病院として指定されている病院もあるなど、言ってみれば、地域の救急医療を含めて一般の医療の中で非常に重大な役割を担っている、こういうような公的医療機関であるというような認識は私たちも持っているところであります。
ただ、他方、当委員会でも議論になっておりますけれども、例えば、労災病院の中で実際に労災にかかわる疾病、それから障害等をどれほど担っているのか、こういうような御批判もあるわけでありまして、そういう中で労災病院が医療を提供することが本来的な業務であることをかんがみて、さらに、閣議決定にあるような、言ってみれば中核病院を中心として労災病院を再編していく、こういうようなことも考えなければいけないな、こういうふうな両面の話がございます。
ただ、そういうような話の中でも、再編に当たっては、地域そのものの御意向とか、それから地域の関係者の御意見というのがさまざまあると思いますので、そういうことを十分に配慮してまいりたい、こういうようなところでございます。
○阿部委員 私がここで指摘したい点で、ぜひともこれも鴨下副大臣の現状認識を伺いたいと思いますが、三十七病院のうち、例えば小児医療を担っている病院、産婦人科医療を担っている病院、精神科医療を担っている病院、これがおのおの幾つぐらいおありか御存じでありましょうか。
○鴨下副大臣 実際には、例えば小児科医療につきましては二十三施設、それから産婦人科につきましては二十四施設というようなことになっておりまして、そういう意味では、総合的な地域の医療を担っているというようなことの認識は持っております。
○阿部委員 あと精神科が二十施設ございまして、実は、労災病院における精神科というのは、地域の患者さんたちにとっても非常に精神科の単科病院でないゆえに利用しやすく、ある意味で、労災としてノイローゼとかなる場合もありますが、そのほかに、今非常にストレスフルな時代に、実際には、地域でバリアが低くかかりやすい精神科として機能しておる。あるいはまた、後方ベッドを持っているので、精神科の入院ということも精神病院という特殊なイメージじゃなくても行えるということで、これもかなりの役割をしてございます。
鴨下大臣に御答弁いただきました小児科、産婦人科については、逆に、これがなくなったらその地域にお産ができる病院がなくなる、あるいは小児の二次輪番、私がせんだって質問いたしましたが、二次医療圏で確かな受け皿になっているというところもございまして、非常に現実には労災の専門性以外のものをたくさん担ってございます。
私は、そこで、ぜひともこれは、医療というものが、現実にそこにかかる患者さんがそこにいるというところから出発していただいて、かくあるべしという一つの方向と、しかし、現実にさまざまな歴史と流れと現状の中でそこに一つの医療圏を築いておるということも、今後深く検討していただきたいと存じます。
そして、これは実務サイドに御質問ですが、実はすべての労災病院が黒字でございます、この時局下。ここは極めて皆さんも不思議と思われますでしょうが、例えば大半の市立病院、公的な病院ですら赤字で、市の財政から補てんしているという中で、労災病院は黒字でございます。なぜか。このことを保障している財政機構、労災病院における会計の特殊性についてお話を実務サイドからいただきたいと思います。
○松崎政府参考人 御質問は、労働保険特別会計の労災勘定から労災病院につきまして予算措置されております出資金のことかと思うわけでございますけれども、この出資金の対象としましては、労災病院の増改築でございますとか医療機器の整備、こういったものに要する経費として措置しているというものでございます。
○阿部委員 恐らく、土地、建物、医療機器については、これは労災保険の特別会計から補てんしていただいている。残る運営部分を、経営部分と言いかえてもいいですが、これまでは労災病院側で行ってきた。私もある民間病院を運営しておりましたが、ここの土地、建物、機器というものの経済的な補てんがしっかりしておれば、逆に、不採算部門の小児科やリスクの高い産婦人科を抱えても病院としては運営していける。私は、その当たり前だということが今壊されようとしていることが、極めて日本の医療の提供体制の危機に瀕していると思います。
医療というのは社会的公共資本というふうに位置づけてもいいような、そこに命があるからです、理由は。そのことを保障していくために実際に労災保険の特別会計が果たしてくれた現実の役割というのは大きいと思いますし、また、先ほどの地方公共団体あるいは民間にこれから経営をお渡しするといっても、果たしてこの部分、いわゆる私が一番案じておりますのは小児科です。普通の病院でも、非常に利益率が悪い、あるいは診療報酬点数も少ないという中で、小児科の病棟閉鎖が続々と続いております。
私は、よくて民間化された場合でも、よくてです、これは民間受け皿があるかどうかもわかりません。地域受け皿は、各市町村財政を見ればほとんど絶望的です。これから新たに病院を地域で請け負ってやっていこうと思うほどに、市町村財政で余力のあるところはございませんので、となると、希望をつないでいる民間という部分であってすら、産婦人科、小児科、先ほど申しました精神科などが、かえって今回の方針によって現実には地域からなくなっていくのではないかということを案じておりますが、そのあたりについて鴨下副大臣のお考えを伺いたいと思います。
○鴨下副大臣 今委員が御心配になっているところは、要するに非採算の例えば小児科や産婦人科が切り離されて民営化されるんではないか、こういうようなことでありますけれども、実際には、再編は中核病院を中心として行っていくわけでありますから、中には労災病院として廃止せざるを得ないというようなところも今後の流れとして出てくる可能性がございます。
そういうような場合には、可能な限り小児科や産婦人科を含む総合的な医療機関として、ある意味で一固まりの機関として移譲を進めるように、地元の調整を十分にしてまいりたい、こういうようなことを配慮していきたいというふうに思っております。
○阿部委員 ぜひともそのようにお願いしたいと思います。
それと同時に、私が先ほど申しました、医療が公共資本である、公共的な財産であるという観点を医療再編全般の中で厚生労働省としても強くお持ちいただいて、医療提供体制がきちんと患者さんの命を、あるいは住民の命を保障するような方向にお願いいたします。
そこで、住民の命ということに関して、ここの再編の中では、地域住民の声を聞く、あるいは地域に必要な判断という言葉が使われておりますが、その場合に、地域住民の声というのはどのような形でこの施策の中に反映されますでしょうか。この点も副大臣にお願いします。
○鴨下副大臣 実際には、その地域の中で医療を担っている医師の方々もしくは引き受けてくださるような民間の医療機関あるいは自治体、そういうところを含めてさまざまな御意見を伺っていきたい、こういうようなことでございます。
○阿部委員 よく経験しますのは、地域の方々がたくさん、何万という署名を集めても結果的に閉鎖されておるようなところもありまして、ここでは、もちろん医療提供サイドの意見を聞くということも重要ですが、受け手側、これからは医療というのも一つのサービスであると言われている折から、住民の声を聞くということは本当に、その地域で例えば住民の公聴会と言われるようなものを開くなりあるいは署名の扱いを十分配慮するなりという方向でやっていただきたいと思います。
最後の一問でお願いいたします。
この間、平成十六年の四月までの中期目標をつくるということでありますが、その際の見直し、見直しと申しますか、再編基準をどのように、どのような軸を設けていかれるかということについて副大臣の御答弁をいただいて、終わりにしたいと思います。
○鴨下副大臣 これは多分、委員もいろいろな深いお考えがあってのことだろうというふうに思いますけれども、この再編整備の基準をつくるに当たりまして最も重要なことは、今後労災病院がどういう機能を果たしていくかという観点に立ちまして、従来はそれこそ、じん肺、産業中毒、それから振動障害等の肉体的な労働に伴ういろいろな災害について重点的に診てきたわけでありますけれども、これから産業構造も変わってきて、むしろ、例えばメンタルヘルスだとか、それから過労死にも至りかねないような脳・心臓疾患などの労災疾病について積極的に高度な、専門的な医療を実施していきたい、こういうようなことを中心に考えていく。
そして、これらの研究機能を担う中核病院を中心として再編して、中核病院とその他の労災病院との間での、言ってみれば症例の集積だとか治療方法や予防策の研究開発、さまざまな情報の共有を含めてネットワークを構築していく。
こういうような方向で基準をつくってまいりたい、こういうようなことでございます。
○阿部委員 その際に、一つ要望でございますが、今、少子化、少子化と盛んに国の対策上は問題にされますが、実は、働く女性がこれからもますますこの社会を支えていくという一点において、働く女性が子供を産み、育て、そのためのトータルな支えがいかに日本が不足しているかということでもあります。
今、鴨下副大臣の御指摘いただいたメンタルヘルスケア、あわせて、女性たちの就労、特に働く婦人のお産、妊娠時の管理等々も極めて重要でございますから、広く見識を持たれて、そしてなお地域住民の声を聞いて、再編の見通しをよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
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