第162回国会 本会議 (平成17年3月22日(火曜日)) 代表質問 介護保険法等の一部を改正する法律案に対する代表質問
社会民主党・市民連合 阿部知子
私は社会民主党・市民連合を代表して、介護保険法等の一部を改正する法律案について、総理並びに厚生労働大臣に質問を行います。
2000年4月にスタートした介護保険制度が、5年目の見直しを迎えました。
2025年、3人に1人が65歳以上という未曾有の超高齢社会を迎えるにあたって、年金、医療、雇用、労働災害に次ぐ5番目の社会保険として「介護」を社会的に支えるしくみが発足したわけですが、一方で私どもの国の社会保障は深刻な危機に瀕しています。
まず、生活の基盤そのものを支える現金収入となる年金制度は、昨年の百年安心といわれた年金改革にもかかわらず、国民年金・厚生年金の空洞化はとどまるところを知らず、他方、世界に誇る国民皆保険制度として敷かれた国民健康保険制度も、460万人以上の未納者を抱えてしまっています。
また、社会の大切な支え手である働く世代も、非正規雇用の増大とも相まって社会保障すらなく、年々下がる一方の賃金の下で日々の労働に追い立てられており、自殺者5年連続3万人以上という社会を生み出しています。
しかし、現状がどうあれ私たちはその社会に絶望することなく未来を語り、未来を創ることができる存在であることも、また真実です。
明日の天気は変えられないけれど、明日の社会と政治は国民1人1人の思いによって変えることができる。日本国憲法にうたう国民主権とは、そのような主体としての国民に最大の期待を寄せているはずです。
その意味ではこの介護保険を見直す視点も、単に利用者が5年前の150万人から400万人に増加し、介護給付総額が6兆円に達した云々という論理からではなく、介護保険制度に国民が何を求め、この5年間が何をもたらし、また今後どうあってほしいと考えているのかを原点においた見直しこそ、重要となるはずです。
〈予防給付の導入〉
そもそも介護保険に求められたものは、「介護が必要となってもその人らしく尊厳を持って生きられる」ための制度でした。そこには老いを受容し、「介護の社会化」を図ろうという強い意志がありましたし、1人1人が孤立して老いや障害を抱えるのではない社会像が生まれました。
しかし、今回の見直しにかかわる政府提案ではこのような老いの受容をめぐる哲学がいつの間にかするりとすり替えられて、とにかく要介護状態にならないための手段として介護保険が新予防給付として、更に切り分けられようとしています。
曰く、介護保険導入後、要支援、要介護1の人たちが著しく増加し、軽症者にホームヘルプサービスなどを提供することが、本人が何もせず動かなくなることで「廃用症候群」を作ってしまう等々、在宅の重要な要である居宅介護を切りつめて行こうとする方向です。
それに替わる筋力トレーニングなどのメニューのために新段階を設定し、新たな認定作業と利用者の選別が行われますが、栃木県大田原市を例にとれば、要支援、要介護1、443人のうち、この新たなメニューの可能な人は63人、わずか14%しかいないなど、都市部でさえ利用者は極めて限定され、まして町村部では新たな支援対象を切り分けることすら難しく、結局はこれまでのサービスも利用できずに負担あって給付なしの高齢者が生まれます。
こうした実態を果たして厚労省はつまびらかに把握しているのか否か、厚生労働大臣に伺います。
そもそも発生したリスクに対して事後的に支払うことを基本とする保険にあって「予防」を保険給付対象にすることの適否や、それによる費用膨張をどう判断するのか。むしろ介護予防は地域ぐるみの保健活動の中で乳幼児期から高齢期までの一貫したプログラムに組み込んでいく地域保健行政の充実をこそ図るべきと考えますが、小泉総理はいかがお考えでしょうか。
〈徹底した利用者側の視点の確立を〉
まず、国民、利用者の視点に立ったとき、この介護保険の見直しは、この保険がいかに広く国民に知られ十分利用されているのか、また利用勝手はどうかから始まるはずですが、利用者の声をどう聞かれたのか、厚生労働大臣に伺います。
とりわけ介護保険が発足して以降、全ての社会福祉サービスの窓口が介護保険に切りつめられている現状や、医療保険と違いミーンズテストがあって利用者のアクセスが複雑で、どうすれば必要な介護保険が受けられるか十分理解されていないという初歩的問題、更には自己負担額の心配からサービス利用に抑制がかかり、利用率が伸び悩んでいる反面、要介護度4.5の方々はサービス上限まで利用しても週二回の訪問看護、一日3回のホームヘルプでは在宅を担いきれず施設入所が増えている実態等々、十分把握されるべきと考えますが、厚生労働大臣に伺います。
〈いわゆるホテルコストについて〉
こうした現状が十分に検討されずに、まず財政面から利用者の自己負担増が図られたのが今回のホテルコスト論です。冒頭申し上げたように年金支給への不安が払拭されないまま、本来現物給付として提供されるべき医療や介護の自己負担増があれば、当然負担に耐えられない層の発生と、いつまで続くかわからない介護への不安は増大します。
この間、医療の分野でも食費の負担を特定療養費として医療保険からはずし、加えて介護の分野でも介護保険給付の枠外におくやり方は現実には弱者に著しい負担増を強いています。
低所得者への配慮は語られますが、利用者本人の収入ではなく、世帯収入という考え方がとられるため、実際の減免を受ける人は極めて限られ、むしろ家族への負い目を感じざるを得ないケースや生活が分断されたための負担増はきちんと勘案されていません。介護の社会化というからには今後はきっちりと個人単位の所得に基づく徴収も考えるべきではありませんか。厚生労働大臣に伺います。
併せて、居住費については老いの住まいの問題全体を十分国政の中で検討すべきであり、利用者がどこに住まうかを選択できる状態を作った上で検討されるべきです。我が国の現状では、同居の家族に遠慮せず夜間の訪問看護を受けられるほどの居住空間を持つ人は決して多くはなく、かつ単身となれば、重度ではとても介護保険で在宅をまかないきれないのは先に述べたとおりです。こうした「住まい」の問題の深刻さを総理はどう認識しておられるのでしょうか。
〈介護労働者の待遇、身分保障について〉
この間、グループホームが数を伸ばし、介護保険導入前の266カ所から現在6千カ所にまでなっています。しかし先日の石川県のグループホーム入所者の虐待死に例をとるまでもなく、介護現場は手薄な人手、不安定雇用、低賃金の三重苦の下で、そこで働く人たちの誇りや生活や研修を十分保障する職場とはなかなかなり得ていません。この事件は現在150万人にも及ぶ介護労働者の実状を放置してきたことの当然の帰結ともいえます。
厚生労働省として、こうした介護現場の改革のためにその労働実態の把握、さらに改善にどう取り組むのか厚生労働大臣にお伺いいたします。
〈介護保険の今後〉
政府案の附則は「被保険者・受給者の見直し」についての2009年度を目途に所要の措置を講ずるとされていますが、現在40歳から64歳の第2号被保険者の保険給付は15疾患に限定されているため、要介護認定0.3%、サービスの利用は0.2%にすぎず、保険料負担と給付のバランスを著しく欠いたものとなっています。
介護の社会化をさらに広範な支え手の意識、とりわけ若い人たちの理解と共感の上に実行、維持していくことが、社会の価値のあり方として重要と考えますが、その前提には現状の介護保険制度をきちんと保険制度として充実させることが不可欠で、まずこの第2号被保険者の給付制限を取り払うことから始めるべきと考えますが、厚生労働大臣いかがお考えですか。
また、中期的には保険料の設定を個人賦課方式に徹底し、さらにきちんとした累進方式へと転換し、国庫負担割合を増やして安定を図るべきです。この点について総理はいかがお考えですか。
国民の十分な理解と納得なくして、社会保険制度の維持がなしえないことは年金問題の教えるところです。迂遠に見えても真にこの介護保険を定着させるための道を国民の皆さんと共に求め歩むことを決意して私の代表質問といたします。
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