第162回国会 厚生労働委員会 第19号 (平成17年4月27日(水曜日))抜粋 案件:
政府参考人出頭要求に関する件
介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)
障害者自立支援法案(内閣提出第三五号)
障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)
○鴨下委員長 次に、阿部知子君。
○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
本日、私に与えられた時間が十五分でございます。ただいまの山口委員と中村局長並びに大臣の御答弁を私は聞きながら、本当に実は憤りを禁じ得ないものがあります。この介護保険という法案は、成立した当初、一つは介護の社会化、二つ目は御本人の選択、いわば人間がどう生きるかの選択ということを掲げて発足した制度であります。しかし、今の、例えば要介護一の方の入所問題に関しましても、先ほどの中村局長の答弁にございましたように、出ていっていただくということを前提にした道しかないのです。その中で幾ら美辞麗句で選択という言葉を使おうと、最後は、重い方への配慮で出ていっていただくというのが局長の締めくくりの言葉でした。
果たして私たちの社会は、そんなふうに強制的に、一つの、社会的なさまざまな施策の中で、個人の生き方を強制していく社会になっていいのかどうか。このことは私は、何度この審議を重ねてきても、どうしても、言葉の美辞麗句と実際に行われる政策のこの貧しさというものが、いかようにも納得しかねます。しかし、きょうは十五分ですので、その憤りを腹におさめ込んで、骨格的な論議を、これは私は、きょう、大臣といたしたいと思います。
一点目は、予防給付問題でございます。これはこの委員会の審議の中で最も時間をとりましたが、せんだっての大島委員との質疑の中でも明確にされましたように、果たしてこの介護保険という仕組みを予防の方に膨らませていくべきなのかどうか、ましてその予防の給付の仕組みは極めて使いづらい、本人の選択の幅が少ない、自治体の主体としての幅が少ないものでございます。
大臣に伺います。
イギリスにエージコンサーンという御高齢者のためのNPO団体がございます。大臣はいろいろなところにお若いころ行かれたこともあるということですが、このエージコンサーンというグループ、御老人たちの団体です、御存じでしょうか。
○尾辻国務大臣 存じません。
○阿部委員 先般来、老人クラブ連合会の御参考人が地方公聴会でもここの公聴会でもおいででございました。私は、この国会の論議の中で、今後私どもが目指すべき少子高齢社会の中で、いわゆる公でもない、民でもない、共の部分、お互いの助け合いの部分、ここを国としてどのように支援し、育成し、来るべき少子高齢化に備えるかという、今そのかじを切るべき重要なこの国会であったと思います。エージコンサーンという全英にネットワークを持つ団体は、例えば地域での御高齢者の給食サービスや、あるいは移動サービスや、あるいはおうちのカーテンのつけかえまで、それは、政府がある程度NPO団体の支援の仕組みをつくり、御高齢者たちがみずからもサービス提供側になり、助け合いながら稼働している団体でございます。
私は、今、この新予防給付の問題で、事細かに、あれだめ、これだめ、リハしなさい。ちなみに、私はパワーリハビリにプラスの評価を持っております。しかし、このようにきちきちと本当に利用者が選べない形にするよりは、予防という幅広い部分は、公、共の、共の団体にもっともっとゆだねて、選択の幅を広くして、高齢社会を支える仕組みをつくるべきだと思います。
大臣が、今、とても正直な方ですので、御存じないと言ってくださいましたので、ぜひ、厚生労働省としても参考にしていただきたい。
実は三年ほど前のこの委員会、厚生労働委員会の視察で、鈴木俊一委員長でございましたが、私どもは、ドイツ、イギリス等々ヨーロッパに行かせていただいて、そのイギリスで拝見してきた団体でございます。きっと大臣のお考えの中にも参考になろうと思いますし、このような形で、悲しい追い出しや、あるいは、本当に、やはり人間意欲あってこそトレーニングの意味も出ますが、一々例えば認定を受け、スクリーニングを受けというような生き方が御高齢者に合うのか合わないのか。大臣御自身はそういうふうに生きたいのか、スクリーニングにかけられて、あなたはこれこれこれこれのリハコースをやりなさい、そういうふうに生きたいのか。私は、決してそうではないと思います。
しかし、今、現状で、例えば私が預かる施設でもパワーリハビリをやってございます。現状の介護給付の中で十分にできます。わざわざ新たに一区切りこっちに持ってきて、そして使えない人ばっかりをふやしていくということの愚を、私は重ねてここで指摘したいと思います。
そして、大臣に一つ伺います。
例えばこの新予防給付コースができたとして、地方自治体の皆さんがおまとめになったこの介護予防市町村モデル事業のおまとめの中でも、全サービスについてそうです、口腔内清拭、フットケア、あるいは筋力トレーニングなどでも、どれも送迎が問題だという言葉が繰り返し出てまいります。これは、せんだって西副大臣が送迎の問題も指摘されているということを言ってくださいましたが、送迎が問題とは何かというと、二つあります。
そのエリアでどのくらいの実際の人を集められるか。そして、その送迎にも当然人手が要ります。大臣がこれからこれを新予防給付で始められるといったときに、果たしてどれくらいの地域でその送迎が可能であるか。この点についてはきっちりと御認識いただいて、なぜなら、北海道のように本当にぽつぽつぽつとお人が住むようなところではなかなか、送迎で、まして要支援の一とか二とか、人を拾い集めて事業の実施ができようはずもありません。遠くて、集めるだけで大変でございます。分ければ分けるほどコストも高くなり、サービスを受けられない市町村が出てまいります。
この送迎ということの意味するものを大臣としてどのように受けとめておられるか、きょうはその一点だけで結構です。よろしくお願いします。
○尾辻国務大臣 先日も申し上げましたけれども、まず、東京の現場を見せていただきましたときに、お話を伺うと、そこでは隣にコンビニがあるというお話でありました。しかし、全国そういう場所ばかりではないから、ヘルパーさんに買い物を手伝っていただくということ一つとっても、地域の実情に応じてそれぞれ考えなきゃいかぬなということは感じておるところでございます。
そして、今の、今度は送迎という話でございますが、一度広島県のかなりへんぴなところをこれまた見せていただいたことがあるんですが、非常に坂の多いところでありまして、皆さんが集まってこられるのに、その坂をどうするかというようなことだけでも大変苦労しておられるという話を聞きました。
したがって、全国いろいろなところがありますから、あらゆるサービスでその地域差ということを考えなきゃいけないというふうに思っておるところでありますけれども、特に送迎ということは、その地域差ということが大きなところだ、分野だと思いますので、このことについて配慮しながら、また今後、私どもの課題としてよく検討してまいらなきゃいけないことだというふうに認識をいたしております。
○阿部委員 実際に、そのような過疎と言われる地域で、果たしてこの新予防給付ができるのか。できなかったら、保険料は納めても実際にサービスはないわけでございます。このことの深刻さが今回の論議の中で十分尽くされず、実際に枠がつくられていくということは、重ねて私としては異議を申し立てたいと思います。
引き続いて、先回の私の質問で最後にお尋ね申しました、今後、この十月からも開始される、いわゆるホテルコスト、居住費や光熱費やあるいは食費負担の問題で、これが在宅との見合い、在宅との公平性ということでずっと語られておりましたが、実は、居住費についてはその施設の減価償却費を利用者さんに払っていただく、食費については材料費プラス調理員の調理コストを払っていただく。私は、これは在宅との見合いとは言わないんだと思います。
例えば、在宅の方は、おうちで生活支援のホームヘルプを受けたとして、お食事をつくっていただき、それを召し上がることも含めて介護保険給付でございます。しかし、一たん施設に入れば、調理員さんの給与も全部御自分でお支払いしなさいというのがこの食費負担でございます。この考え方自身がおかしい、ごまかしであると私は思います。
在宅との見合いということでいうのであれば、何度も例示させていただきましたが、きょうは特に居住費のことで資料を、一枚目、提示させていただいていますが、居住費の家計調査に見る実態というところで、ここには、せんだっても御紹介しました、全世帯、持ち家、民営の借家、公営住宅あるいは公団住宅などのもの別に分けてございますが、大体住居費は、高くても、借家であっても五万四千八百三十九円でございますが、この安い方と高い方の平均をとれば二万といかない、居住費は一万八千百円と平均値が出てまいります。
今回、減価償却費というのは、例えばその建物が建てられて何十年の中で償却していくというときの計算方法でございます。税金が投入された建物は、その建物自身の建設費は税金でございます。そして、減価償却費ですから終わるわけです。終わった後は払わなくてよいのかとか、考え方自身に多くの矛盾をはらんでおります。
私は、御高齢者の乏しい年金、そしてつましい生活を考えたときに、在宅との見合いというのは、生活実態を把握して見合う、その程度の御負担は了解していただこうということであれば、国民的納得も得られると思います。施設に入った方が明らかに高い設定がされました。それでは選択できません。金がないから選べません。そして、さまざまな減免措置を行われると聞いておりますが、極めて不十分だと思います。
この算定根拠が私はおかしいと思いますが、大臣、いかがですか。
○鴨下委員長 中村老健局長。(阿部委員「ごめんなさい、きょうは局長はもう結構です。もうせんだって伺いました。ごめんなさい」と呼ぶ)
尾辻厚生労働大臣。
○尾辻国務大臣 算定根拠というお尋ねでございましたから、局長から答えさせようと思いましたけれども、考え方といいますか、私どもが思っておりますことだけを申し上げたいと思います。
私どもも、今回見直そうといたしておりますのは、あくまでも負担の公平性ということでございますから、在宅の方も施設の方も同じように負担していただこうということで算定をいたしたものでございまして、先生が言っておられますような生活実態に合わせて算定をしたつもりでございます。
○阿部委員 そうであれば、大臣がそう思っておられるのであれば、局長たちの算定方法が違うので、これはきっちり正していただきたい。減価償却費やその施設職員の給与のため、調理員さんの給与から見合って算定するのではなくて、生活実態に合わせていただきたい。ここは答弁のそごがございますので、後ほど詰めていただきたいと思います。
それから、三点目。私が一番取り上げたかった保険料のことでございます。
お開きいただきまして、三枚の資料がございます。これは武蔵野市というところがずっとこの間出されておる資料で、既に石毛委員もお尋ねでございます。これは、世帯見合いで保険料を決めていったときに、御本人の所得ないし年金の収入と世帯の所得との間で保険料の負担に著しい逆さま現象が起きてしまいます。ちなみに、世帯で五百二十万、四百六十万、三百八十万の方ですが、保険料の負担は実はこの三百八十万の方が一番多いというような逆転現象が起きるという図でございます。
そして、おまけに、二枚目を見ていただきますと、ここには、この保険料の徴収は国民健康保険なり組合健保に乗っけてございますので、例えば未納率が国保で高まってまいりますと、保険料も介護保険料も取れない。今後、年齢拡大がされていくということも考えますと、三十歳未満というところを見ていただきますと、年収二百万円以下の三十歳未満、あるいは三百万円以下をとってもよろしゅうございます、国民健康保険の保険料は七五%しか納付されておりません。年齢を拡大しても、ここの部分は国民健康保険に払っておられないゆえに介護保険も払えません。私は、現在、年金の空洞化問題を一方で年金審議で論じさせていただいておりますが、このような実態も同時に進行しております。
三枚目は、国保の最低の保険料と介護保険の最低保険料が逆転してしまっている。
いろいろな矛盾をはらんでおります。保険料のあり方について私が今指摘したことを踏まえて、ちょっと時間足らずで舌足らずですが、大臣に、さらに、公平で納得のいく保険料のあり方についてお考えいただくという御答弁をいただけたらと思いますが、いかがでしょうか。
○尾辻国務大臣 まず、保険料設定でございますけれども、六十五歳以上の被保険者の方のうちの四分の三が住民課税非課税層でございます。したがって、この四分の三の皆さんをどう分けてまた保険料を設定するかというのは大変難しい問題でございますので、今、私どもは、そういう方々を、まず世帯に全く課税者がいない方々、それから世帯に課税者がいる方、こういう分け方しか今ないものですから、その分け方で保険料を設定いたしますと、御指摘のようなところも出てくることは事実でございます。
先生繰り返し言っておられますように、公平に負担していただくものでなきゃいかぬということは当然のことでございますから、そのようにまた私どもも努力はしてまいりたいと存じます。
○阿部委員 以上で終わらせていただきます。
〔中略〕
○鴨下委員長 次に、阿部知子君。
○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となっております介護保険法等の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から討論を行います。
本法案は、ただただ介護保険費用の縮減のみを目的として、利用者の負担をふやし、サービスの削減を押しつけるものにほかなりません。直面する超高齢社会に向かって、制度の充実、発展を図る改正点はごくわずかであり、逆に、介護保険制度制定以前の介護不安に国民を再び突き落とす内容を多く含んでおります。
まず第一に、新予防給付並びに介護保険に財源と責任を押しつけた地域支援事業の創設は行うべきではありません。
要介護認定という行政処分によって、介護給付とサービスの異なる新予防給付に軽度要介護者を振り分けることは、必要なサービスを自分で選び、自分らしい暮らし方を自分で決めるという介護保険制度の理念を根本から覆すことになります。
審議の中で、政府は、法改正によって、どのケースが適当な家事援助とみなされ、軽度要介護者が従来のサービスを利用することができるのか、一切明らかにしませんでした。
法案は、抽象的な枠のみを示し、利用者の生活と直結する肝心なことはすべて政省令にゆだねるという姿勢で、余りにも無責任であります。
政府は、データをねじ曲げることなく、家事援助による生活負担の軽減が、要介護度の悪化を予防し、自立を守る有効な手段の一つであることをしっかりと認識すべきです。本人の事情を軽視して利用を制限すれば、かえって重度化を招き、財政的な悪化にも結びつくことになります。
また、対象を自立の高齢者に広げて行われる地域支援事業には、事故、リスクに基づいて給付をする保険の原理を踏み外した点があります。健康寿命を延ばすための老人保健・福祉の政策は、小児期から高齢期に至るまでの一貫した地域健康政策として税を財源として行うべきです。これを安易に介護保険に流し込むことは、介護保険費用の膨張、老人保健・福祉の後退につながりかねません。
四月十五日、審議も後半になって、政府は、やっと今回の介護予防給付の目玉である筋トレ等を含めたサービスの市町村モデル事業の結果を公表しました。しかし、その分析はおろか、市町村から指摘された問題点にも真摯な対応を一切とることがありませんでした。まして、こうしたサービスが可能な地域についての検証もなく、過疎地での実施は恐らく極めて困難と思われ、都市中心型の発想に基づくものと言わざるを得ません。
そもそも、介護保険法には、「要介護状態の軽減」「悪化の防止」という用語は出てきますが、改善はもともと出てまいりません。国が筋力向上トレーニング等の統一的なメニューで介護予防を行うことは、結果的に改善を強調し、要介護状態になること、老いて心身が衰えていくことが社会悪であるかのような誤った印象を国民に植えつけます。高齢者の尊厳を脅かすものであり、介護を社会連帯で支えようとする法の理念に反しています。
第二に、介護保険施設の居住費、食費を保険外に出すべきではないと考えます。
現金給付である年金が先細っていく中、現物給付である介護保険の自己負担分をふやすことは、国民に過度な負担を強いることになります。施設と居住の違い、施設が食事の提供に責任を持つことの意義、施設建設における公費補助の大きさなどを考慮し、居住費、食費は引き続き保険給付内にとどめるべきです。
本法案は、高齢者の所得の状況、そして個々人の税、医療保険、介護保険など社会保障の自己負担を総合的に勘案した上での制度設計とはなされていません。
来年六月から実施される住民税の大幅改正による住民税非課税世帯の変化、保険料と利用者負担額の変化もあえて無視しています。
施設利用者に新たな負担を課すにもかかわらず、施行予定は本年十月からで、余りにも周知期間の短い乱暴な法案です。
在宅と施設の利用者負担の公平性が目的であるのなら、まず、重度要介護者を在宅で支えられるような介護保険を充実することが先決であります。
最後に、本法案は、介護棄民、介護地獄を誘発しかねない内容であることを申し添えて、本法案に反対いたします。
なお、修正案につきましては、本来、御高齢者の後見人制度等、権利擁護は極めて重要な施策であると思いますが、まず、国の責任が明示されて、しかる後に、市町村の取り組みの中に明文化されるべきと考える点を申し添えて、反対を表明して、終わらせていただきます。(拍手)
○鴨下委員長 以上で討論は終局いたしました。
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