第162回国会 厚生労働委員会 第30号(平成17年6月29日(水曜日))抜粋

案件:
 政府参考人出頭要求に関する件
 建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

議事録全文(衆議院のサイト)

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宮澤委員長代理 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日の冒頭は、まず遺骨収集問題で一問お願いいたします。

 たしか六月の二十七日の東京新聞でございましたでしょうか、一面に、今度厚生労働省の中に遺骨収集にかかわる専門班が設置されるということが報じられておりました。もちろん、他の新聞報道がございませんでしたし、また内容にわたっては詳しくはまだ書かれておりませんでしたけれども、私といたしましては、これまでこの委員会や予算委員会で、尾辻大臣や小泉首相に対してもお尋ね申し上げ、そして、戦後六十年を期して、ぜひとも今までと違う、破格に充実した体制で遺骨の収集を行っていただきたいという旨を申し上げ、また尾辻大臣にも極めて前向きな御答弁をいただいてまいりました。

 私は、この記事を拝見したとき、ああ、尾辻大臣が、今度はそういう、今までのように、例えばもと戦友とかあるいはその関連の縁者の皆さんや御遺族の皆さんが、わざわざ自分でお越しになって、いろいろな少ない情報も集めながら、御苦労に御苦労を重ねて、それを厚生労働省が受け身で聞いていくという体制から、より積極的に、もっと調査に至るまで厚生労働省がやってくれるんだなということで、大変にうれしくこの記事を拝見いたしました。

 余談になりますが、ついせんだって大臣とも硫黄島に慰霊に行かせていただきましたが、あそこも二万一千人余りがお亡くなりで、まだ遺骨収集は四割の八千ということで、東京都小笠原村という、東京にある、にもかかわらずやはりなかなか難渋しておるという地でもありましたことを考えますと、いろいろなところでその各地各地の難しさがあるということは承知していながら、でもやはり、これまでの手法を改めて、前向きに、より一歩こちらから出ていくということは極めて重要に思われました。

 きょうは大臣に、まだまだこういう案が腹案としてあるんだぞということくらいなのかもしれませんが、御決意のほどというか、ここをお聞かせいただいて、冒頭一問とさせていただきます。

尾辻国務大臣 戦没者の御遺骨につきまして、かねてからいろいろ御支援いただいておりますことに改めて御礼申し上げたいと存じます。

 そして、この収骨につきましては、国の責務でございますから、可能な限り早期に収集できるように努めてまいっておるところでございますが、お話しいただきましたように、今日に至りましてもまだまだ数多くの御遺骨がいろいろな地域に残されておる現状にございます。

 昨日も、参議院の委員会で私申し上げたんですが、最近南方の方の、私どもが言います南方でございますけれども、御遺骨の収骨に参りますと、御遺骨だと思って、収骨しよう、手にとろうとすると、もうぽろっとこぼれる、まさに土に返ってしまう、もうそういう御遺骨の状況でもございますし、さらにまたことしが戦後六十年ということを考えますと、早期の遺骨収集をしなきゃいかぬ、これを私も強く思っておるところでございまして、どういうふうにできるか、事務方にもいろいろなことを考えてみろというふうに指示をいたしております。

 その考えておりますことの一端といいますか、あれがすべてでもありませんし、あのとおりというわけではありませんが、いろいろなことを考えておることが新聞報道されたのかなというふうには思っておるところでございますが、いずれにいたしましても、私ども、早期に集中的な情報収集をしないともう本当に遅くなりますので、何かそういう方策を考えてみたい、全力を挙げて取り組みたいと存じております。

阿部委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 ちなみに、この遺骨収集については、特段の立法はなく、大臣がおっしゃったように決議ということで経過しておりまして、その決議をどういう手法と手段で実際に持っていくかというところに、さまざまな、政策的に、あるいは内閣を挙げての取り組みも必要と思います。私は前から立法化していただきたいという思いは持ってございますが、その点についても大臣はよく御理解していただいていると思いますので、多面にわたってぜひよろしくお願い申し上げます。

 引き続いて、本日話題になっております建設業にかかわります建設労働者の雇用の改善にかかわる法律の審議に移らせていただきます。

 これもまた冒頭の質問で少し全般にかかわることを伺いたいのですが、いわゆる建設業は、日本の戦後の高度経済成長期を支えて、そして国民のためのインフラ整備ということも含めて今日までやってきた分野で、少なくなったとはいえ、六百万人以上の方の雇用がそこに現実にある分野でございます。

 政府においても、「建設業の新分野進出支援策について」というのを平成十六年の十二月、五省庁にわたって、各省庁、横断的なお話があるということをこの内閣の調査室の資料からも拝読いたしましたが、私はこの資料を拝読して、なおかつ、尾辻大臣も厚生労働省を代表して何らかの御意見を述べておられるだろうということを踏まえて、なお、この全体の文面の中には特に災害とのかかわりということが強くコメントされておらないようで、ちょっと私は懸念をいたしました。

 ここには、例えば、環境分野とか、それから、これから重要になります地域での福祉分野に新たな地域再生プロジェクトをつくってやっていこうというふうなことは書かれておって、これは私も極めて重要で賛成であります。

 もう一度今、公共事業のあり方を根本的に見直してみる。それは、大型のもので国土を壊していくような公共事業から、少子高齢化時代を担う生活に密着した公共事業のあり方と、もう一つ、日本は地震列島ですし、津波の問題もございますし、先ほど五島委員の質問にもございましたが、これから災害対策ということが極めて重要な分野で、内閣の中でもその認識は強くおありなんだと思いますが、去年の十二月に出されたこの中には余り際立ってそのことは触れておられないのですが、その辺はどのように考えられてこの各省庁間の取り組みがございますものか。

 そして、もともとこの業界というかこの世界を、もちろんその中で労働者の円滑な雇用の継続や移動ということを考えるのが大事と同時に、一体今必要な公共事業とは何なんだろうということを国民合意しておくことも、この方たちに働いていただく上でとても大事と私は思いますので、その一点、お願いいたします。

尾辻国務大臣 公共事業が今日まで、特に戦後の日本といいますか、大きく経済発展を支えてきた分野であるということは、だれしも否定しないだろうと思います。

 そうした大きな役割を果たしてきた建設業が大きく変わろうとしておる、そういうときに、今後どういうふうに公共事業を考えていくのがいいのかということで、これは政府全体の責任で考えるべきであろう、そうした考え方のもとでチームができたといいますか、そうした検討をしたということでございます。

 そうした立場で検討した中で、今先生のお話は、災害についてどういうふうにこのことをとらえたのだという御質問だろうと思います。私どもも、当然災害というのは公共事業とまた切っても切り離せない関係にあるわけでありますから、そのことを全く念頭に置かなかった、あるいは無視したということではございませんけれども、確かに、出てきたものの中にそうした面がなかったことも、大きくそれを取り上げていないことも事実でございますから、また今後の検討の中でこれは十分に私ども念頭に置くべきことだと今の御指摘をいただきながら感じたところでございますので、そのようにもさせていただきます。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

阿部委員 さきの新潟の震災の折にも質疑させていただきましたが、病院の耐震構造もまだ半数近く整っておらず、小学校も同じように半数以上まだまだ問題があります。

 それから、最近見ておりますと御高齢者をだますような建築業者がいて、そのことの大きな理由も、耐震、地震が心配だからということで逆に悪徳業者が伸びるというような格好になっておりまして、でも逆に、それだけ国民にとっては身近で切実で、この地震列島日本、災害が今多発する日本の安全性ということを求めておるということで、ぜひ私は、建設分野の皆さんのお仕事においてももっともっとやりがいと門戸を広げられる分野と思いますので、大臣には、きょうの質疑の場をいただきましたので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 引き続いて、青木局長にちょっとお伺いいたしますが、私はきょうの審議を聞いていてちょっとますますわからなくなったので一、二点確認をさせていただきます。まず、この法案をなぜつくらなくちゃいけないかという立法趣旨にかかわる部分で恐縮なのですが、お願いいたします。

 これも、いただきました資料を拝読いたしまして、先ほどの建設業界の労働者の状況ということを分析した部分がございまして、労働政策審議会の御意見なども収録されているのを読ませていただきましたが、ここには、朝方局長も御答弁でしたが、主に建設業界で人余りの部分は事務とか幾つか書いてございましたけれども、近年、管理、事務、単純工が一貫して人余りであるし、それに比べて技能労働者については過不足がある程度でこぼこしておる状態だという分析を労政審もしておられます。

 そこで伺いますが、今回出てきた法案、すなわち有料の職業あっせんと、それからもう一つの送出、受け入れという二つの企業の形態は、主には前者対策なのか、当然後者対策なのか、まずその点お願いします。

青木(功)政府参考人 今回御提案を申し上げました有料職業紹介事業の点、それから就業機会確保事業、いずれもトータルに申し上げれば、ただいま委員お触れになりましたけれども、例えば有料職業紹介の分野では、建設業界の中でいわば余剰になった方が建設業界以外の産業に出ていくのに資するという点が多いのではないか。現在の環境からしますと、たくさん建設業界に入ってくるというよりは、建設業界から出ていくチャンスをふやしていくという意味になるのではないだろうかというふうに思います。

 それから、就業機会確保事業につきましては、事業者がフルタイムとして、常用労働者として抱えている方々、これが仕事なしに長期間抱えていることになりますと、これは事業者も持ちこたえられなくなります。そのためにその方が常用労働者として雇われなくなるというのはやはりよくないことであるということで、他の事業主のもとで働いていただくことによって、その方との常用労働者という関係が継続するという意味で、いわば雇用が継続される、そしてまた仕事があれば自分のところに戻ってきていただけるという意味で、これはむしろ建設労働者の方々の雇用の安定につながる、こういうふうなことではないかと考えております。

阿部委員 それであるならば、先ほどの山口委員とのやりとりもちょっといかがかなと思う点が幾つかありますので、内容については後に展開させていただきますが、もしそういうことであれば、私は説明資料というもののつくり方も丁寧さが欠けておると思うのですね。

 例えば、これは色刷りでなくて恐縮ですが、厚生労働省の方がお部屋においでのときに、常用雇用労働者の数を書いたグラフを持ってこられて、このグラフで御説明をされるわけです。この常用雇用労働者と一口に言われます中にも、技術工、技能部分と、それからもう一方の事務、管理などにおられる方々、実は二層あるんだと思うのです。おのおのにその実態を踏まえて適切な処置、処理、方策を考えるという点においては、私は、これを一緒くたにして、そして、実はこのグラフを見ると、常用雇用とは何なんだろうと改めて考えるわけです。

 これは、幾人もの例えば建設業にかかわる方、あるいは現場の労働者にも言われましたが、実際これだけ本当に常用と言われるような形で働いている方がいるんだろうか、実感とそぐわないとおっしゃるんですね。そぐわなくなっちゃった理由は、事務とか管理部分も一緒くたに表にしているわけです。でも、おのおの主な対策は、やはりさっきおっしゃったように、もしおっしゃったとおりであっても、ある程度分けての対策を、ベストな対策をお考えなんだと思うんです。

 そうであれば、まず厚生労働省としておやりになるべきは、この常用労働者と一緒くたにこの図に、これは総務省の報告ですから、厚生省がつくったんじゃないとおっしゃると思いますが、しかし、この法改正に当たって、一体、常用の中身とは何なんだ。

 青木さんにお伺いします。おのおの、例えば建設の技能労働者の常用の中身、常用とはどういった実態をいうのですか。

青木(功)政府参考人 常用労働者の定義でありますけれども、まず初めに労働力調査のことを申し上げますと、例えば平成十六年でありますけれども、建設就業者全部で五百八十四万人、そのうち常用労働者が四百三十二万人。通常の産業の例からしますと、常用労働者の四百三十二万人のうちのいわゆる技能労働者と言われる方々が二百九十万人、単純労働者と言われる方が五万人というのが労働力調査の分析でございます。

 そこで、常用労働者という概念は何かということになりますけれども、これは、いわゆる期間の定めがある雇用あるいは日々雇用という形態でない雇用形態、あるいは期限つきでも何回か更新することによって事実上常用として取り扱われるケース、こういった二つの種類の働き方をしている方をいうというふうに考えております。

阿部委員 それだけの定義では、実は実態をすごく見誤ると思うんですね。

 やはり今、建設現場の、特に技能労働者の皆さんも含めて建設を実際に担う方たちにとって極めて重要なことは、今、年金の合同会議も一方で開かれておりますが、年金の加入状況、社会保障がどうなっておるか。あるいは、これがなかなか、実際に事業所によって本当に加入しておるのかどうかが怪しいと言うと失礼ですが、これは労働基準監督局も同じ管轄内だからおわかりと思いますが、まず厚生労働省としては、ここで働いている皆さんの現実の保障された条件がどんな条件であるかということを私ども審議する委員にもお示しくださらないと、私はかなり実態とずれた論議をしかねないと思うんです。そのことが逆に、今回の法改正が、現実の勤労者、労働者の実態、実際を後退させてしまうものにつながっていくのではないか。

 では、一つだけ、おっしゃった技能労働者二百九十万のうち、その方たちの年金加入状況というようなものは分析されたでありましょうか。

青木(功)政府参考人 技能労働者の方、常用の方でございます。大変恐縮でございますが、年金保険の被保険者の方々というのは建設業という形で決まっているのではなくて、五人以上であるとかそういう形で決まっておりますので、実は特段把握してはおりません。

 ただ、申し上げたいことは、建設労働者の雇用改善の大きな目的というのは、もともと例えば日雇いの労働者の方が多かったとか、退職金制度がなかったとか、だれに雇用されるのかわからなかったとか、社会保険や労働保険にも入っていなかった、それをきっちりしていこうというのがスタートで来ておりますので、実際の現場では、そこのところはかなりきっちりとやっております。

阿部委員 実態を把握していなくて、どうしてきっちりしてきたとわかるんですか。だって、年金の加入状況は実際にはわからないと言ったじゃないですか。

 年金があるかないか、どういうふうに実際にその方の、もう四十、五十、六十ですよ、すぐ。保障されるかというのは極めて重要ですよ。それくらいの調査能力を持たずして、厚生労働行政はやってもらっちゃ困るわけです。年金の合同会議ということを私たちは一方で超党派でやっているわけです。年金は国民的課題ですよ、郵政民営化などと違って。

 であれば、青木さん、最初、前半で、調べておりません、データは持っておりません、しかし、そういうものは充実させてきましたと言えないじゃないですか。現実にいろいろな偽装解散があったり何だりして問題が生じているのもあるし、もともと、今こういう景気が悪い中で社会保障というのは後退しているんですよ。そこで、私が後ほど質問しますが、元請責任をほうり出すようなこの改正がどこへ向かおうとするのかという、極めて重大な事態にも結びつくわけです。

 私は、いつも、よりよい厚生労働行政を本当に心から求めていますよ。その第一は、実態を知ることです。調査能力を持たなければ、現状をどう解決していくか、その処方せんが出ないわけです。本当に今のような、間抜けと言うとちょっと失礼ですけれども、見当違いの答弁をなさらないでいただきたいと私は強く思うものです。

 引き続いて、次の質問に移らせていただきます。

 今のことをより具体的に問わせていただきますが、今回のこの、へんてこりんなでき上がった法案、一方での有料での職業紹介。これは先ほど山口委員もお尋ねでしたが、今までは建設業においては無料だったわけですよ。これが有料化されていくことの問題というのは、私は局長が考えている以上に深刻だと思います。でも、その点、山口委員がきっちり御質疑いただきましたので、よく議事録を読み返していただいて、対策を考えていただきたいと思います。

 私は、もう一つ、このもう一つの事業にかかわります、派遣と言えないから、へんてこりんな、送出と受け入れという変な言葉を使った法律。ここでは、大臣初め皆さん、いや、これは派遣に道を開くものではない、ない、ないとおっしゃいます。しかし、実態において派遣と同じようなことになってしまったのでは、これは解釈改憲と一緒で、どんどん実態が悪化していく、劣化していく、働く者の条件が悪化していくということになりますから、私は、現実には悪くなるんじゃないのという点で、どうしてもきょうはお伺いしたいと思うものであります。

 例えば、送出事業主と受け入れ事業主との契約関係、これは今回は就業機会確保契約であるという特別な名前がついています。派遣ではないとするためにこういう名前がつくわけですね。この中で、いわゆる送り出される方の労働者の賃金については、送り出す方が最初にその方と契約したものをびた一文欠けるものではないのですね。まず、その答弁をお願いいたします。

青木(功)政府参考人 そのとおりでございます。

阿部委員 では、実際の建設業界において、いわゆる就業規則というようなものはどの程度各事業所はお持ちであるか、現状。そして、送り出しと受け入れにかかわるこの作業を通じて、必ず就業規則はおつくりいただくものであるのかどうか、この点についてはどうでしょう。現状はどうかというところをまずお願いします。

青木(功)政府参考人 就業規則は、労働基準法に基づいて一定の事業所はつくらなければならないことになっておりまして、手元に、どれだけそれがあるか、私ども職業安定局にはございません。

 ただ、今回の就業機会確保事業を初め、こういった事業に参画するに当たりまして、こういった労働関係その他の部分がきちんとなっていないようなところがこういった事業に参加するというのは不適切だというふうに考えます。もしそういうところがあったとすれば、そういったところはこういった事業に参画できないことになろうかと存じます。

阿部委員 まず、建設業界自体、全体に弱小、中小と言われておりますし、就業規則も、あって当然というふうに局長はおっしゃいますが、現実にはなかなか準備されておりません。細かに、例えば休日をどうするか、有給休暇をどうするか、そういうことも最初に契約されておらない場合も非常に多いわけです。

 その点、この仕組みの中に入る方については、そこはきっちりされるし、給与はびた一文欠けないしというお話ですので、では、現実にそれに違反するような事態が起きたら、例えば受け入れ業者と送出業者とその中間に入った団体と、今おっしゃったような、賃金が下がっちゃったとか、そういうことが起きたときはどうするのでしょう。

青木(功)政府参考人 先ほども御説明申し上げましたけれども、まずしっかりとした計画をつくっていただいて、そしてそれに対して、きっちり行政側も監視をするということを申し上げました。その過程で、まず、今申し上げたような事態が出るのを最小限に防がなければならないと思っています。

 そして、具体的にそういったことが出た場合には、当然ながら、是正の指導をやってまいります。また、そういった是正の指導に従っていただけないということになりますと、もともとの認可等の取り消しも含めた対処をせざるを得ないことになります。

阿部委員 では、例えばですが、ここの送り出しの方の事業所に勤める労働者が、今、事業主団体が、こっちが過剰労働だ、こっちが足りないという認定をいたしました。しかし、こちらの、例えば送り出される方に働く人が、いや、とても過剰労働とは言えない、おれらはもうこんなに残業もしているし、この中でこの仕事をこなしている、自分たちが送り出されるのは不適切だ、不当だ、おかしいんじゃないかというようなことを思ったら、どこに言っていけばいいんですか。

青木(功)政府参考人 こういった事業はもとよりでございますけれども、当該企業の事業主と労働者の間に、かなりの信頼関係がきっちりなければならないだろうと思います。したがって、通常の場合には、自分のところがいわゆる人手不足なのか、あるいは人余りなのかというのを、労使できっちりとお互いの了解事項として持っているのが大事だろうと思います。

 そこで見解が分かれた、そういうときに、この計画に基づいて、うちは過剰だからあなたは行ってくださいというので、労働者の方にとっては不満がある、おかしい、これは事実じゃない、そんな場合には、労働局がございますし、やはり私ども、そういったのを直接相談に乗って問題解決をしなければならないと思っています。

阿部委員 では、同様に、送り出す事業主が、君行ってくれと言いました。でも、僕は行きたくないと思った人がいたとします。そのことをもって解雇の理由にならないのが当然なのですが、もし、そのことをもって解雇になった、ならないのような労働争議が起きた場合の処置、あるいは起きないための対策はどうするのですか。

青木(功)政府参考人 起きないようにするというのは、繰り返しになりますが、きちんとした労使のコミュニケーションがあることが必要でありますけれども、当然のことですが、この事業に参画をしないからといって解雇するというのは、これはそれだけでは解雇理由にならないと私ども思っていますし、そのことは事業主にも申し上げたいと思います。

 そして、これらの紛争につきましては、それぞれ権限ある機関がございますけれども、個別労使紛争のシステム、それからADRのシステムがございますけれども、もとよりとして、この事業を認める、監督する立場として、これはその事業主に強く指導をしてまいることになろうかと思います。

阿部委員 こういう仕組みを導入することは、そういうチャンスをふやすことになっています。その自覚がないと、結果的にそういう不当な扱いをした場合には、当然ながら、その事業主団体の資格を停止する、剥奪する、それくらいの強い覚悟で臨んでいただかないと、やはりそうはいっても個別の労働者は弱いわけです。厚生労働省が労働省となったときに、雇用政策、労働政策の中で、労働者性ということをきっちりとわきまえて政策していただくということで、場合によっては、そういう不当な解雇は事業主の事業の停止、事業主団体の事業の停止につながると考えてもよいでしょうか、大臣。

尾辻国務大臣 今お話しいただいておりますようなことは、私どもとしては厳しく指導してやっていくということでございます。

阿部委員 では、引き続いて、建設現場はいわゆる孫請までも含めたピラミッド体制であるということは、冒頭のけさの小林千代美委員の御質疑でもございましたが、そういったピラミッドの一番上に立つ元請という、大体ゼネコンの方が多いわけですが、そういう方たちにも、逆に言うと、このピラミッド構造の中で労働者の権利が侵害されないような歯どめ策というのが幾つか建設業法として打たれてきたと思います。

 例えばそれは、いわゆる下請事業所で、この下請事業所が労働基準法に違反することや、労働法制に違反することや、労働安全衛生法に違反することをした場合に、元請が下請を指導しなければならないという建設業法の二十四条というのがございました。

 果たして、今回、このような横割りの、横から滑り込ませる仕組みが入れられたことで、逆に、営々として築いてきた建設業法の中での元請責任や、元請がこの業務の中で労働者の権利をきっちり守らなければそういう仕事はやってはいけないんだという、ある種の既存のルール、そういうものが脅かされかねないと思いますが、この点について、国土交通省側と厚生労働行政側と、両方お願いいたします。

中島政府参考人 お答えいたします。

 建設業法の二十四条の六でございますが、元請人である特定建設業者が、工事の施工に関しまして、下請人に法令の規定に違反しないように指導するという規定でございます。

 かくかくの法令ということが決められているわけでありますが、今回の送り出し、受け入れの場合にどうなるかということでございますが、引き続き元請が責任を持って下請を指導する法令の規定もあれば、そうならないものもある、こういうふうに考えます。

 なるものというのは、元請、下請、送り、受け入れ等の事業者が、作業といいますか使用、指揮命令権に基づくようなものについては、例えば労働安全衛生法に定めます労働者の危険、健康障害の防止に関するような規定、そういうものは引き続き二十四条の六の規定の対象になると思いますが、雇用関係を前提にするような規定、例えば賃金の支払い義務でありますとか、中間搾取、労働基準法の規定のようなものは、雇用関係、給料を払うということを前提にした規定は二十四条の六の適用はされないというふうに考えます。

青木(功)政府参考人 今回の就労確保事業につきまして、建設業における元請責任につきましては、例えば労働基準法上の災害補償責任については受け入れ事業主、労働安全衛生法については元請等々、それぞれの局面によって責任関係をはっきりとしているところでございまして、それぞれの立場における事業者としての責任をきっちり果たしていただくという点には変わりないものでございます。

阿部委員 そこがくせ者なんですよね、この法律の。

 やはり、本当に現実に、なぜ元請責任ということをかち取ってきたか、つくり上げてきたか。今そこに、この部分はお互いの横の系列、この部分は縦の系列、実は賃金の未払い問題だって、やはり本当は直の雇用関係は下請と労働者にあったんだけれども、ここで生じた未払いは元請の方が逆に立てかえ払いをしていたんですよ。こういう形で労働者を守っていたんですね。

 でも、今度は雇用関係がない。同じように雇用関係はないんですよ。だって、前の、下請と労働者の間に雇用関係はあったけれども、元請との間には直の雇用関係はないんですから。でも、未払い賃金について払ってきたんですよ。それが今度は、賃確法、へんてこりんな法律によって元請責任を廃止、なくしてしまうわけです。

 こういう、私は朝から聞いていて、これでどのくらいの労働者が、二万人ときょう局長は答えられました。その二万人をえさに、逆に、えさだってえさになっているかどうかわからない、この建設業界という、本当に極めて微妙な橋を渡らなきゃいけない場面が多い業界の元請責任があいまい化されるんではないか。

 尾辻大臣に最後にお願いいたします。

 私と先ほど山口委員がお尋ねしたことはほぼ似通ってございます。この法律全体を通じて、元請責任ということがこれまでも歴史です、歴史の中で労働者がかち取ってきた。それは、そうしないといけない現場だったから。しかし、それがばらばらに、労働安全衛生法だけとかされていくことで、逆に、労働者の立場、権利、現状が後退するかもしれない。

 私は、きょうその指摘をさせていただいて、大臣として、もちろんきょう結論がなくても結構です。改めて、この委員会でそういう指摘があったということを踏まえて、より綿密な、これは国土交通省ともどこまで話し合ったのか。先ほどそごがございませんとか言っていましたが、そこでそごがなくても、現場の労働者にとってマイナスが起きたら、これぞ一番避けねばならないことなのです。

 私は、起こり得ると思います。なぜならば、賃確法で定められるものは、実は、その送り出し事業主が倒産したということを労働者みずから証明しなきゃいけない。極めてやりづらい法律です。おまけに、労災保険から出ます。今まではゼネコンが立てかえ払いをしていた。全然構造が違ってまいります。

 幾多の問題を抱えたまま、そして、本来、このような形で派遣もどき法律ができることについてのデメリットも論じられないまま、私はこれが通過するということは非常に心外でありますし、今大臣に私が申し上げた建設業法の中で守られていた労働者の現場の権利と、今回この定められた、厚生労働省が横から口出しした法律、口出しと言うと失礼ですか、横から差し入れた法律の間でそごが起きないものかどうか。

 そごとは、労働者にとって実害が起きないものかどうかについて、もう一度大臣みずから御検討いただけまいかと思いますが、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 先ほど来御答弁申し上げておりますように、いろいろな法律、労働安全衛生法を含めてでございますけれども、そうした中で、元請事業主が果たすべき責任というのはきっちり規定がされておるところでございます。このことが変化するわけではございませんから、基本的には、労働者保護に欠けることになってはいけませんし、また、ならないものというふうに考えております。

 一番先に出てきます賃金のことにつきましても、送り出し労働者の賃金については送り出した事業主が支払いの責任があるわけでありますから、そのことによって賃金も確保されておるというふうに申し上げておるところでございます。

 ただ、具体的に山口先生だとか今先生からも御指摘いただいたことというのはございますから、これについて、私も、きょう、ああそういうこともあるのかなと、正直申し上げて聞いた部分もありますから、そこのところはまた間違いないようにしっかりと私どもも対応したいと存じます。

阿部委員 では、重ねての御検討をお願いして、終わらせていただきます。

鴨下委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党を代表して、建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部を改正する法律案について、反対の討論を行います。

 現行の建設労働雇用改善法は、建設労働者の雇用の改善、能力の開発、向上、福祉の増進を図ることにより、建設労働者の雇用の安定に資することを目的としています。

 反対する第一の理由は、この改正法案が、新たに建設業界内に有料職業紹介事業と労働者の送り出しを認めることによって、建設業に必要な労働力の確保に資するための労働力確保法へと、現行法の目的、性格を大きく変えるからです。

 建設業は、注文生産、個別生産、屋外生産、さらに有期の移動生産、総合生産であり、ゼネコンを頂点とした系列下のさまざまな専門業者による重層下請構造という、他の産業と大きく異なる特徴を持ちます。

 バブル崩壊後、公共、民間とも建設投資が大きく減少し、その結果、建設業界は過剰人員を抱え、また、単価引き下げや工期短縮など、すさまじいコスト削減競争のもとに置かれています。

 このような状況の中で、今最も必要なことは、下請いじめをなくし、過剰と言われる労働者の技能の向上を援助するなど、雇用の改善、雇用の安定を図ることであります。

 第二の反対理由は、新たに設けられる建設業界内「有料職業紹介事業」が、今でさえ労働者が過剰と言われる建設業界へ外部の労働者を引き込むことによって、労働力の流動化を加速し、雇用の安定に逆行するからです。

 第三に、新たに制度化される業界内「派遣」制度で、悪質なブローカーなどが参入し、労働者の権利や生活が脅かされる危険があります。

 また、派遣によって労働現場が複雑化し、労働者の安全や権利の低下につながりかねません。

 また、派遣した小零細建設業者や労働者には、受け入れ業者が倒産しても、現行の建設業法に基づく元請企業の立てかえ払い制度や賃金確保法での立てかえ払い制度さえ適用されなくなります。

 今回の法改正は、雇用の安定を掲げながら、実際には小零細企業の淘汰をねらいとする建設業界の再編成と、技能労働者を中心とした流動化と再配置を推進しようとするものであります。

 以上の諸点を指摘し、私の反対討論といたします。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部を改正する法律案に反対する立場から討論を行います。

 建設業界は、元請業者をピラミッドの頂点にした構造ができ上がっており、曲がりなりにもこの構造の中で建設労働者の雇用、労働条件が守られてきたという側面があります。今回の建設労働者雇用改善法改正案は、こうしたこれまでの業界秩序を壊すだけでなく、労働者の雇用や労働条件を脅かす可能性が強く、立法趣旨である雇用の改善にはほど遠いものと言わざるを得ません。

 その最たるものが、元請責任の放棄です。新たな労働力需給システムによって送り出された労働者に対する元請責任は労働災害のみであり、建設業法第二十四条などで規定されている労働基準法など労働法令遵守などの下請に対する指導責任、あるいは四十一条の未払い賃金に対する立てかえ払いなどは、あえて適用除外としています。元請業者を頂点としたシステムは、元請責任を明確化しているからこそ維持できるものであり、このシステムに穴をあけることになれば、建設労働者全体の雇用不安につながることは明白です。

 そもそも本法案は、審議の中で明らかになったとおり、対象となる常用労働者の定義があいまいで、採用した労働者をいきなり送り出すことも可能となっています。本当にそれまでの賃金など労働条件は保障されるのでしょうか。また、送り出しを拒否した場合の不利益取り扱いの禁止や解雇規制も、具体的で有効な歯どめ策はないに等しいものです。送り出しの対象になることで、だめ労働者とレッテルを張られ、不利益取り扱いを受けたり、最終的に退職に追い込まれたりする可能性は否定できないものがあります。労働者保護の観点から見て、極めてずさんな制度と言わざるを得ません。

 さらに、緊急避難的かつ限定的といいながら、三年という長期の労働者の送り出しが可能で、しかも三年ごとの更新も認めるなど、事実上の恒久的制度として実施されるもので、緊急避難的かつ限定的という建前さえも放棄するに等しいものと言えます。

 建設業務は、ブローカーなどによる中間搾取をさせないために、労働者派遣の除外規定を設けています。尾辻厚生労働大臣もこれを守ると答弁されていますが、いずれ建設業界においても労働者派遣を認めさせたいという経済団体の意図が見え隠れしているように思えてなりません。

 最後に、現在の建設業界は、公共事業の縮小などで厳しさが押し寄せていることは事実です。今必要なことは、むだな大型公共事業はやめるのは当然として、福祉施設、病院、学校などの耐震構造化など、小さくとも住民に必要不可欠な公共事業は確実に行うことであります。そして、きちんとした景気対策を行い、仕事量が確保されるようにすること、さらに、建設労働者保護を一層強めることであることを申し添え、反対討論といたします。

鴨下委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

[後略]


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