第162回国会 厚生労働委員会 第35号(平成17年7月20日(水曜日))抜粋 案件:
政府参考人出頭要求に関する件
母体保護法の一部を改正する法律案(参議院提出、参法第三号)
厚生労働関係の基本施策に関する件(アスベスト問題)
○鴨下委員長 次に、阿部知子君。
○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
本日は、与野党の理事の御発案、そして委員長の御決断によって、この厚生労働委員会、アスベスト問題での集中審議というのが持たれておりまして、国民の関心事でもあり、また、午前中から今に至るまで熱心な御論議が続けられております。
ただしかし、非常に残念でありますのは、どなたも御指摘されましたように、尾辻厚生労働大臣が郵政民営化関連法案の審議にお出ましで、ここにはおられないこと。そして、それ以上にと申しますと大臣には失礼ですが、残念なのは、実はこの問題に対しての危機意識の共有が、これまでの御答弁の数々からはちょっと私はうかがえない。せっかくこの委員会がこれをわざわざ設置いたしましたにもかかわらず、厚生労働省を初めとしたきょう御答弁くださった方の認識が、私は非常に危機感に薄いものだと思います。
尾辻大臣のかわりにというか、全権委任で責任者として西副大臣がおいでくださいまして、御答弁の数々はあったのですけれども、果たして、私は、西副大臣のお人柄とか、お勉強の熱心なことはよく存じておりますから、ここでやはりもっときっちりお願いをしなければならない。
このアスベスト問題は、私も含めて認識が甘かったんだと思いますけれども、アメリカを初め欧米先進国の取り組みは、いわゆる危機管理に等しい対策をある時期きちっと打って、その後の発生ということに災いを残さないようにやっております。先ほどの吉井委員とのやりとりの中で、例えば住民の健診をどうするか等々については、アメリカでは一九八五年に、例えば州の病院とかを九時から四時開放いたしまして、無料で健康診断を行うという政策、施策をいたしました。多分一九八四年とか五年のことだと思います。
私は、きょう、押しつけがましいですが、西副大臣なら読んでくださると思って、その間のアメリカでの取り組みを日本に引き比べて書いた「静かな時限爆弾」という、有名な本ですので、広瀬弘忠さんの御本です、ぜひお読みいただきたいと思います。やはりそれくらいの危機意識と、それから政治の優位性、きっちりとした政治責任をとる姿勢がないとこれは解決いたしません。
例えばここには、先ほど紹介しました、「明日、午前九時から午後四時までの間、コロンバス市内の某病院で、アスベスト関連の病気の無料健康診断を行う。」これはさっき吉井委員が求められたことと同じでございます。必要な人は受診するように、そして、また合衆国の環境保護庁は、アスベストと健康障害についての小冊子を、無料で、電話で御依頼の方には配付していると。環境省の取り組み、それから医療サイドの取り組み。
そして、実は、根本は、もとを絶たなきゃだめ、発生源はアスベストにあるわけです。きょうの審議を承りますと、その発生源の対策について、二〇〇八年に全面禁止だということですが、既に他国では全面禁止できているわけです。そうすると、技術的に不可能ではない。そして、にもかかわらず、先ほど来の西副大臣の御答弁であると、何度も何度も二〇〇八年とおっしゃいますが、もしかして、私と一緒で、現状を余り御存じではないのではないかと思います。
私はきのう、建設現場の方からもお話を聞いて、例えばですが、現在でも左官用モルタル混和材というのがあって、これがアスベストを含んでおりまして禁止されておりません。この左官用モルタル混和材については、その中には、アスベストという表示がなくても、産業医学総合研究所で調べるとアスベストが入っておって、これをぬらしてモルタルに塗るまでの間にも暴露してしまうということが現在進行形で、オンゴーイングであります。
こうした実態をほっておいて二〇〇八年までというのは、やはり知ったからには、知らない昔じゃない、知ったからには今とめなきゃならないのではないかという点で、西副大臣がまだ十分御承知おきでなければ早急に検討していただきたいのが一点。
それからもう一点は、私は、全面禁止まで二〇〇八年と期限を置くことによって、あの非加熱製剤の駆け込みの使用と同じような、エイズ禍で起きたと同じような、現在あるものを禁止されるまでに使っちゃおうという形の問題が必ず発生すると思います。エイズの場合でも、加熱製剤が出てくることが予測され、非加熱製剤はそれまでの間に全部使い切ろうと思ったために非常に使用量がふえました。同じ構造が産業の売らんかなの構造の中では必ず起こってまいります。だからこそ、今即断即決しなきゃいけない問題なのだと思います。
以上二点にわたって、西副大臣に重ねての御答弁。私が御紹介した左官用モルタル混和材、私も、現在どこに使われているのと現場の方に聞きました。そして、それがどのように危険なのかも聞きました。その結果、やはり即断しなきゃだめなんだと一つ思ったんです。それから、その間を設けたら、絶対駆け込みで使われます。売ってしまわねば元が取れません。これが当たり前の構造です。だからこそ、政治が決断していただきたい。この二点について、きょうは全権委任大使でありますから、明確な御答弁をお願いしたいと思います。
○西副大臣 お答え申し上げます。
今まで、アスベストの危険性については、私も知らないことはありませんでした。ただし、このような大規模な、労働災害以外の部分まで広がって大きな問題になるということについては、正直想定をしておりませんでした。
私も、化学をやっていることもありまして、石綿の保温材なんというのは毎日のように使っておりまして、これが危ないものであるということは知りつつも、それ以外代替のものがなかったものですからやむを得ず使っていたというような身近な問題意識もございまして、この事態に対して、事の深刻さについては、この短い期間ですが、自分なりに認識はしてきたつもりでございます。
ただ、その詳細につきまして十分な知識を必ずしも持ち合わせているわけではございません。そんな意味で、また先生に御紹介いただいた書物等も勉強しながら、一生懸命に取り組んでいきたいというふうに思います。
今、それぞれの企業が持っている在庫品、これが、二〇〇八年までの期限ということになると駆け込みで使われてしまうのではないか、処分するためにかえってたくさんのものができてしまうのではないかというお話でございましたが、現在製造が禁止されている建材等の石綿の製品のうちで、禁止規定の施行日前に製造されて、または輸入された製品については、経過措置によって禁止措置が除外されているというふうな事情が実はございます。しかし、本年六月には、まだ在庫品を有している業界団体に対して、譲渡、提供を自粛してほしいという要請を行ったところでございます。さらに、今後の制度の見直しの中でこの例外の規定も見直させていただこうということで、検討を開始しているところでございます。
二〇〇八年という期限も、先ほど当局から答弁がありましたけれども、最低限やらなければならないプロセスは当然あるわけで、今すぐにやめるというわけにはいかないという前提のもとで、できるだけ早い機会に、やはり二〇〇八年を待たずにできるという努力はさせていただきたいというふうに思っているところでございます。
○阿部委員 やはり被害は刻一刻問題なのだと思います。そして、どのような段取りで、どこでお時間がかかっているのか。何度も言いますが、他国では全面禁止できているわけです。代替のものがないわけでもございません。そして、先ほどおっしゃいましたが、例外的な使用という形でお持ちのものもまだあるわけです。だからこそ、何度も申しますが、わかったからには政治が優先して決断しないと、必ず禍根を広げます。
その意味で、私は今の答弁、納得したわけではありませんが、西副大臣に問題の所在をさらに御理解いただいたというふうに考えて、次に進めさせていただきます。
私は、この問題、特に最近メディア等々でも大きく話題になりますところの大きな理由が、労働災害であるだけでなく、地域住民の被災、あるいは労働者の御家族の、例えば奥様がお洗濯をなさった、その洗濯をした奥様がかかられるというような家族の被災ということが大きく現状として報道されるようになって、その汚染の広がり、被害の実態の大きさ、そして、これまで対策してきたにもかかわらず全く不十分だったのではないかという指摘があるんだと思います。
そこで、厚生労働省にお伺いしたいのは、アスベストの労災の認定ということはずっとやってこられましたが、それに基づいて、あるいはそういう労災認定の過程で、住民についての被災、被害、あるいは中皮症の発症などについて、厚生労働省はこれまで何かデータをお持ちでありましょうか。
○青木政府参考人 労災の認定状況というものは、労災認定基準の見直しとか、労働者の健康確保の施策の推進のための分析などに用いてまいりました。関係省庁等への情報提供を通じたりしまして、周辺地域住民に対する調査とか、そういったことに結びついた事例として承知しているものはございません。
今回、石綿による健康被害の問題が大きな問題となりまして、環境省等に対しましては、環境省等の施策の推進に役立ててもらうために、事業場ごとの労災認定件数等の情報も提供しているところでございます。それで連携を図っております。今後とも関係機関との連携を図っていきたいというふうに思っております。
○阿部委員 今の御答弁の確認ですが、これまでも労災発生について環境省に御報告されてきたという意味ですか、これからするという意味ですか。短くお願いします。
○青木政府参考人 これまでそういうことをしてきた事例というものはないというふうに承知をいたしております。
しかし、今回の石綿による健康被害の問題に当たりまして、今般、環境省等に対しまして情報提供をいたしたところでございます。
○阿部委員 今やったということですね。
では、家族についてはどうですか。これは、ある勤労者について労災認定された、その御家族について掌握している、把握している事例がありますか。イエスかノーでお願いします。
○青木政府参考人 労災の認定ということでございますので、あくまでも事業場に雇用されている労働者を保護する制度として私ども行政を展開しております。家族の方は労働者でございませんので、特段把握をいたしておりません。
○阿部委員 今回、クボタでも一名、あるいは、横須賀共済でとったデータですが、横須賀の造船所関係では六十四人の勤労者の御家族に三人、あるいは、兵庫県の建設労働組合連合会では、百十四人のうち御本人が九十六人、御家族が十八人という形で、あるいは厚生労働省の研究班でも、女性の六十五人のうち約八割は職歴でのアスベスト被曝がないということで、やはりこれが非常に国民的にも心配を広げておるし、むしろ逆に、厚生労働省のこれまでの労災行政の中で、先ほど、環境省にも言っていなかった、そして家族については眼中になかったというお話であったかと思います。しかし、本当に眼中になかったのか、これまで知り得たことはないのか。
例えば、外国などの事例でそうした指摘はないのか。先ほど御紹介したこの一九八五年の出版の本には、アメリカにおける、家族、奥さんと娘さんが中皮症になったという報告が八五年にございます。さて、厚労省は、これまで一貫して住民についても家族についてもこうしたことを聞いたことがなかったのかどうか、どうでしょう。
○青木政府参考人 かつて、海外の調査結果に、中皮腫の患者中に家族あるいは事業場周辺住民が含まれているということを示したものがございまして、それをかつて地方に対しまして局長通達の附属資料の中で示したことがございます。それは、石綿の危険性、重大性についてよく周知をするための一つの資料として使えるのではないかということで示したというふうに承知をしております。
○阿部委員 今の局長の御答弁は年度をおっしゃいませんでしたが、これは昭和五十一年の通達でございます。五十一年五月の二十二日、一九七六年の段階で、特定化学物質等障害予防規則の改正に際する通達の中に、住民や御家族の被害例が挙げられております。
これは、もとになった文献は一九六五年のロンドンの病院での事例で、全体で八十三例の中皮症という診断の方のうち、石綿関連の疾患の方のうち、九人が身内、親族、十一人が工場近くに居住だという事案でございます。この中で被曝歴なし、ありでまた分けてありますが、ありが五十一人で、その中で九人は身内、十一人は工場近く。すなわち、五十一人被曝歴がありとされる中で、半数くらいは勤労者だったけれども、あと半々は住民と家族であったというデータでございます。
そして、これを、今青木局長がおっしゃったように、地方に通達では出しているわけです。でも、厚生労働省本体の施策の中には取り上げられなかったわけです。地方に通達を出し、知らしめなきゃいけないと言っている本人が、そうした視点を持たないで、三十年間行政をやってこられたわけです。
西副大臣に伺います。この中には、例えば、家族にまで災害が及ぶおそれがあることが指摘されているので、石綿の業務に従事する労働者のみならず、当該労働者が着用する作業衣を家庭に持ち込むことはいけないという指導をしたとされています。しかし、それが指導どおりに実施されないから、奥さんは洗濯して洗い、アスベストを吸い込み、家族じゅうでアスベストの被害を受けるという実態が生じております。
私は、本当に知らなかったのかと何度も厚労省に聞きました。何か通知はないのかとも聞きました。それで、きのうの遅い段階でやっと出していただいた資料です。出していただいたことには感謝しますが、しかし、こうした通達がありながら、三十年間放置されたがゆえに御家族の悲劇も住民の悲劇も起こったということに、私は、一つの本当に厚生労働省がみずから反省すべき行政の不作為があるように思います。
副大臣は、これを今初めてお聞きになったかもしれません。しかし、私は、先ほどのエイズも水俣もそうです、こうしたことが続く限り、厚生労働行政が国民の命を守ることができないことになってまいります。そのことを深く憂えますし、今私と青木局長との答弁の中でお聞きになったこの現実に対してどのようにお考えか。
もちろん、過去のことは戻るわけではございません。しかし、行政のあり方として、真剣に反省し、そして、今後真剣に、さらに、本当に、先ほどの住民健診もそうです、取り組む姿勢がこの場で確認されないと、きょう一日を費やした意味がございません。これだけの時間、皆さんお残りになって、空席もちらちらとある中ででも、本当に熱心な方が残って、何とかしなきゃ、国民の中で何とかこの発生を予防しなきゃという強い思いです。その思いを実行できるのは、実は、行政の長たる大臣や副大臣であります。
行政の不作為。立法の不作為もあったかもしれません、禁止問題で五島委員が御質疑なされました。しかし、行政面での、通達を出しながらみずからが実行しない、このあり方についてどのようにお考えでしょう。
○西副大臣 お答え申し上げます。
この事実につきましては、今先生からの御指摘で初めて知りました。非常に、いわば、厚生と労働とは当時別々、環境という分野もその後できたというようないろいろな事情がございますが、労働災害の一種という、そういう狭い限定のもとに今までこの事態を引きずってきたということが、今に至って、家族それから近隣の皆さんの被害というものに気がつかなかった。
よく言う縦割りという言葉であわらしますけれども、労働行政の中では労働者以外は眼中にない、しかも、環境という側面からは、これは今まで確たる事象としてとらえられなかった、健康という厚生行政の中でもそういうものが拾えなかった、いわば三者の谷間のような、狭い意味でもそういう状況にあったのではないかというふうに思います。
いずれにしましても、この事実をわかりながら、そのことについての後々のフォローができていなかったということは、これは今では取り返しのつかない問題ですけれども、これは、決定的な私どもの省庁の失敗だったのではないかなというふうに私自身は個人的には考えております。
○阿部委員 真摯な御答弁でありがとうございます。もしもこの作業衣が御家庭に持って帰られなければ亡くなることはなかった御家族であります。幾重にも悔やまれますし、逆に、本当にこういう通達が紙一片で、そして、実際はどこまで実行されたかがチェックされない行政であれば、いわばなくてもいいと言われてしまうと思います。
そして、逆に、私は、このことを忠実に実行した例が一九七七年の埼玉県羽生市の大手ブレーキメーカーの曙ブレーキ工業の例だと思います。これは、七七年に実際に起きた労災、労働者災害と同時に周辺住民にも、十一人が死亡しているという事例を埼玉の羽生市で労基署の署長が上の労働基準局に上げております。
となると、通達は出した、通達を実行した、そして報告が上がった、しかしその後の処置がとられていないということにもなって、二重、三重の不作為問題になってくると思います。このことは、今事実を確認中だという御答弁でありましたので、もうこれ以上伺いません。
もう一つ、それと同じ事案で、昭和五十年、一九七五年にこの法の改正、いわゆるこの年は、石綿が発がん物質だとわかったということで行政が変わった年ですが、特別管理物質として規制が強化され、使用や業務の実態や労働者の健康調査について事業者に三十年間のデータ保存を義務づけた年であります。それが現状どうなっておるのか、そろそろ、申しわけないが発症の時期であります。これについても、私がきのう省庁に伺ったら、それは企業に任せてあるという答弁でした。五十年につくった改正法にのっとってやった規制の問題です。各企業任せにしないで、通達を出しっ放しにしないで、きちんと企業から三十年の報告を上げてもらう。この件についても西副大臣に明確な御答弁をいただきたい。
失敗を二度と繰り返さないために、今からでもやれることを全力を挙げてやるしか私たちには手だてがないんだと思います。今の点、いかがでしょう。
○青木政府参考人 これもきょう、毎々申し上げておりますけれども、過去に労災事例の発生した事業場に対しまして、労働者の作業環境管理あるいは健康管理をどのように行っていたかということについて調査を実施することとしているところでございます。それらの結果を整理して、従事労働者の適切な健康管理等のために活用してまいりたいというふうに思っております。
今御指摘になりました、そのほかの、事業者に対する記録保存を義務づけたことによるその記録の活用ということでございます。これはお話の中でもお触れになりましたけれども、これは、もともとは事業者の責任において厳格な管理をしてもらうということのために設けられているものであります。しかし、これらの情報を収集するということも参考になるかと思いますので、今申し上げました過去の労災発生事例の事業場調査、これの結果も踏まえながら検討していきたいというふうに思っております。
○阿部委員 労災の発生事例だけでなく、事業所全体に規制をかけたわけですから、それもお願いしたいし、また、時間の関係で最後に申し添えますが、ぜひ中皮症の登録制度をつくっていただきたい。これは、諸外国では既にあるものですし、実態を把握していくために非常に重要なことだと思いますので、重ねて西副大臣にお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございます。
○鴨下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
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