第163回国会 本会議 第4号 (平成17年9月28日(水曜日))抜粋

案件:
国務大臣の演説に対する質疑

議事録全文(衆議院のサイト)


副議長(横路孝弘君) 阿部知子さん。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、小泉首相に対しての質問を行います。(拍手)

 まず、政治姿勢についてお伺いさせていただきますが、自民党の大勝を受けて開催された第百六十三特別国会は、とてつもない大きな勢力が、小さき者、弱い者、そして心優しき者すべての嘆きやためらいやあるいは抵抗すらをも踏みつぶして、えたいの知れない怪物が政界を覆い尽くそうとするような危機感すら抱かせます。

 しかし、この選挙で果たして小泉改革は本当に信任されたのでしょうか。郵政民営化法案に関しても、賛成とする者、反対とする者の票を全国集計いたしますと、賛成とする者三千三百五十万票、反対とする者三千四百五十万票と、明らかに反対とする者の方が多くなっております。総理が訴えたように、もしもこれが国民投票だったら、当然否決されたわけであります。(拍手)

 自民が得票率全体で四七・八%で全議席の七三・〇%を確保したというのは、小選挙区制のマジックにすぎません。したがって、郵政民営化が信任されたわけでも、まして、内政、外交上の重要課題が小泉内閣と与党に丸投げされたわけでも決してありません。

 従わなければ切って捨てるのが小泉流だそうですが、国家権力を傍若無人に振り回すことがいかに過去、歴史的に見て我が国を不幸にしたかは、後藤田正晴氏も指摘するごとく、しっかりと自民党の皆さんにこそ今学んでいただきたいと思いますが、まずこの段にあって、総理の今後の政権運営の基本方針、基本姿勢についてお尋ねをいたします。

 次に、郵政民営化に関しましてですが、お伺いいたします。

 選挙中、郵政民営化は、公務員を減らして小さな政府にするとか、あるいは官から民へ資金の流れを変えるなどと言われました。

 そもそも経営形態を論ずるのであれば、官と民とを問わず、少子高齢社会に欠くことのできない生活を支える良質な公共サービスを、どういう仕組みで提供するのかがまず問われなくてはなりません。この間の道路公団の民営化にしても、数多くの天下り構造と橋梁談合などの利権構造には一切メスを入れることなく、また、国民に対し事実を明らかにする努力はさらさら行われる気配がございません。一方の民間企業でも、三菱自動車あるいはカネボウなどの不祥事が絶えないところは、皆さんのよく御存じなところと思います。官と民とを問わず、企業経営の透明性や情報公開こそが、まず問われているのだと考えます。

 私ども社会民主党は、まず何よりも、国民への情報開示と第三者機関によるチェック機能の強化を郵政公社改革の第一とすべきと考えております。

 そもそも三十一の特別会計、そこに群がる特殊法人、そして国会に会計報告すらされない独立行政法人の実態など、すべてが余りにやぶの中です。

 出口改革を行うと声高に叫ぶのであれば、特別会計及び特殊法人、独立行政法人、さらには役人の天下り、取引実態などのすべてについて、国民につまびらかに情報公開することまで踏み込んで総理は行うお考えがおありかどうか、まずこの点を一点明確にしていただきたいと思います。

 また、総理は、官から民へ、官から民へを殊さら強調されます。しかし、三百四十兆円に上る郵貯・簡保資金を市場に丸投げすることは余りに無謀と考えます。住民参加の真の公共利用のもとにおき、地域開発、環境、医療、介護、教育など、低成長経済時代あるいは少子高齢社会にふさわしい、また、必ずしも市場競争では実現できない社会基盤の整備にこそ使うべきと考えますが、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

 私ども社会民主党は、この選挙で「もう一つの日本」という社会像を提案してまいりました。それは、この間の小泉改革の五年間が、私たちの暮らす日本社会を、とても住みづらく息苦しいものにしていると実感するからです。

 九割中流と言われた日本で、九〇年代後半からの雇用の流動化のかけ声のもとに、所得、身分、教育の格差は拡大し続け、働く者の三分の一はパート、アルバイト、派遣などの非正規雇用となり、その賃金は正社員の二分の一以下という状態が恒常化しております。年金、健保などの社会保険を持たない人々はふえる一方で、それが若年層を直撃し、非婚化、少子化、そして社会の不穏化がひそやかに進行しております。希望格差社会とは、そのような時代を呼ぶ象徴的なネーミングであると思います。もちろん、自殺者の数も連続七年間三万人を超えております。

 そうした国民の状況を見ずして、このたびの選挙で小泉首相の打ち出したものは、さらに勝ち組のための改革を進めるものでありました。強きを助け弱きをくじくにも等しい、冷たい改革だと思います。これに対置して、私どもは温かい改革を主張し、とりわけ働き方における差別をなくしていくべく、同一労働同一賃金並びに社会保障などの均等待遇を要求いたしました。

 ヨーロッパでは当たり前となったこうした取り組みから遠ざかる一方の日本の現状を、果たして総理はどのように考えておられるのか、そのお考えをお聞かせください。

 この選挙で、小泉首相は憲法改正問題をよろいの下に隠し続けました。ところが、選挙が終わるや否や、改憲のステップづくりを与党内合意すらとらず推し進めようとしています。憲法の主権者は国民であるということすらあえて無視するのが小泉流なのでしょうか。米軍基地の再編問題にしても、大事なことはすべて、国民にはよらしむべし知らしむべからずの態度を一貫してとり続けています。

 憲法九条は言うに及ばず、イラクの特措法にすら抵触するイラクへの自衛隊派遣も既成事実化され二年近くが過ぎようとしていますが、この間一度たりとも、この自衛隊の活動の実態あるいはそれに要する費用、経費がこの国会に報告されたことがあるでしょうか。ミサイル防衛網についても、米国からの高価な劣悪品の購入を決めたばかりのところに、さらに当初予定の三倍にも膨れ上がるMD開発総額が明らかになり、国民負担は天井知らずです。

 現在、日本経済にもし好転の兆しがあるとすれば、それは間違いなくアジアの経済発展に負うところのものと考えます。東アジア共同体を目指す東アジア首脳会議が十二月にマレーシアで開催されますが、日中関係が現在のように冷え込んだままで、果たして本当にこの会議が成果を上げるのか否か、危ぶまれてなりません。今こそ戦略的対話が求められていると考えます。

 靖国参拝問題を含めて、日中関係の改善を総理はどのように具体的に進めていかれるのか、お考えを伺います。

 超大型ハリケーン・カトリーナに襲われた世界の帝国アメリカは、被害の多くが貧困層に集中し、避難民の衰弱死、略奪、強盗が当たり前という惨状をあらわにし、その弱肉強食の行き着く先を我が国に明らかにしたと思います。

 総理は、政治は非情であるとおっしゃいました。果たして、総理、国民に対しても非情で臨むのでしょうか。苦しんでいる国民に対し、努力が足りないからだ、政府に甘えるなというふうに、自己責任で切り捨てるのですか。障害者の自立はおろか生存権すら奪うというあの悪法、障害者自立支援法案を憶面もなくさらにこの国会に提案しようという神経は、そうした国民切り捨てそのものであります。

 社民党は、与党のおごり、強権政治を許さず、連帯と公正を本当に重んじる温かな社会の再生に全力を挙げることをお約束して、私の代表質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 阿部議員にお答えいたします。

 政権運営の認識の基本でございますが、おかげさまで、今回の総選挙で目標としておりました、自民党、公明党合わせて過半数の議席を超える支持をいただきました。この国民の声を厳粛に受けとめまして、郵政民営化初め構造改革を引き続き進めていきたいと思っております。

 特別会計の実態などについて、情報開示に関するお尋ねですが、行政運営に関する情報の的確な開示を通じて、透明性の高い行政を実現することが重要であると認識しております。既に、特別会計、特殊法人、独立行政法人に関して、民間基準に準拠した財務諸表等の整備、公表や、独立行政法人等の役員についている退職公務員の状況の公表などを行い、透明性の確保に努めております。

 このような取り組みを引き続き着実に推進することにより、国民への情報の的確な開示を進めてまいりたいと考えております。

 郵貯・簡保資金の使途についてですが、資金の流れを官から民へ構造改革するとの一貫した考えのもとに、入り口の郵貯、簡保、出口の特殊法人、この間をつないで資金を配分している財政投融資制度、これらを全体として改革することが重要であります。

 郵貯、簡保は、民営化することにより、郵貯・簡保資金を民間資金に転化し、国民の大切な資産を民間部門で活用することが可能となり、こうした資金の流れの改革により経済の活性化につながることとなります。したがって、郵貯・簡保資金をどのような分野で活用することとするかは、あらかじめ官のコントロールによって決めるべきではなく、民間の創意工夫にゆだね、適切な競争環境の中で判断されるべきものと考えております。

 働き方の問題についてですが、いわゆる非正規労働者の増加は、経済産業構造の変化や価値観の多様化などにより、企業や労働者の多様な働き方に対する要望が高まっていることなどを背景としているものであると考えております。

 このような要望を踏まえて、正社員との均衡処遇を図るためのパートタイム労働指針の周知、公正な処遇が確保される短時間正社員の導入の促進等により、働き方にかかわらず、だれもが安心して働くことができるような労働環境の整備を進めていくことが必要だと思います。

 なお、短時間労働者への厚生年金適用の拡大等については、平成十六年年金制度改正法においても施行後五年を目途に検討すべきとされていることなどを踏まえ、早急に検討を進めてまいります。

 東アジア首脳会議及び日中関係でございますが、東アジア首脳会議においては、多様性を認めながら経済的繁栄を共有する開かれた東アジア共同体の構築に向け、積極的な役割を果たしていく考えであります。

 日中関係については、本年四月の日中首脳会談において、私と胡錦濤中国国家主席との間で、日中関係の重要性を再確認するとともに、未来志向の協力関係を発展させていくことで一致しました。引き続き、意見が異なる個別の懸案についても対話を深め、大局的な観点から、幅広い分野における協力を一層強化していく考えであります。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。本日は、これにて散会いたします。


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