第163回国会 厚生労働委員会 第2号(平成17年10月12日(水曜日))抜粋 案件:
政府参考人出頭要求に関する件
労働安全衛生法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)
厚生労働関係の基本施策に関する件
議事録全文(衆議院のサイト)
ビデオ(衆議院のサイト)
○鴨下委員長 次に、阿部知子君。
○阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
本日は、第百六十三国会冒頭の厚生労働委員会でございます。尾辻厚生労働大臣には、重ねての大任、本当に御苦労さまでございます。この委員会は審議時間も長うございますし、週に行われる回数も大変多くて、なかなか大変に気苦労も多い委員会かと思いますが、どうぞお体にお気をつけあそばして大任を果たしてくださいますように、私も一人の議員として心から期待を申し上げます。
そしてきょう、冒頭でございますので、できればなるべく尾辻大臣と骨格的な論議をさせていただこうかと思います。
この総選挙の結果は、与党の皆さんがこの選挙制度のもとで大勝なさるという紛れもない事実で、この席の配分を見ても、与党側の方に大分多くなり、野党は少ないなという状況での審議でございます。しかしながら、この与党の皆さんの大勝という現実を前にしても、残念ながら私には、この社会全体が果たしてよい方向に向かっているのかどうか、非常に危惧されるところが多うございます。
その危惧の根幹は、やはり昨今、いろいろな事件の報道を見ましても、親御さんが子供を殺す児童虐待、あるいは子供が親御さんを殺すような事件の多発、果ては子供が子供を殺すような現実。そして若い人たちが、先ほど来取り上げられたように、働くことに意欲を持てない、希望が持てないなどが繰り返されます都度、あるいは、先ほど山井委員もおっしゃいましたが、お手洗いに行くのに何でお金払って行かなきゃいけないの、こんなこと、やはりどこか変と。変と思う時代がどんどん進めばこれが当たり前になるのやもしれませんが、私はやはりそうじゃないと思うんです。
変なものをもとに戻していくために、最も根幹的なものから問いかけ、手をつけていきたいと思いまして、私はやはり、月並みな言葉ですが、命ということがどういうふうにこの社会に受けとめられているかということから、きょうは尾辻大臣に御質疑をさせていただきます。
冒頭一問目は、いわゆる我が国で命のリレーという言葉で使われておりますが、臓器移植、ある方が脳死状態になり、そこから臓器が摘出されて他の方に移植されるという臓器移植が法律としてつくられ、八年がたちました。今日まで三十八例が臓器移植に基づく脳死判定をされ、三十七例が移植が施行されました。
その一例一例について厚生労働省は検証会議をお持ちでありますが、実は、三十例目の検証会議において、この脳死となられた患者さんについては、いわゆる脳死というのは、脳の中に器質的な何か病変があって、それが死に至るような重篤な状態である、ないしはほかの状態が重くて脳が二次的に損傷されて生命の予後が悪くなるような状態をいうわけですが、この三十例目については、最も基本であり判定の前提条件とされている器質的な、すなわち脳の中に病変があるかどうかをチェックするためのCTというコンピューター断層撮影というものが全くなされなかったということが検証会議で発覚いたしました。
私は、この脳死臓器移植というものが本当に適正に実施されるために、この委員会でも都度取り上げさせていただきましたが、このような事例は初めてですし、これは、例えば見た目には生きておられるかもう脳死なのかわからないという状態の方をきっちり判定、判断するために、少なくとも前提条件であるところの器質的な脳内の疾患の状態、有無をまずチェックせよというのは、マニュアルの前提条件でございます。
前提条件すら無視する移植現場というものがあり、そして、実は、この病院は日本医大の川崎にある病院でございますが、自分の院内マニュアルというのを使ってやった、その院内マニュアルで無呼吸テストというのをやったけれども、これも厚生省のガイドライン、マニュアル違反のやり方をした、二重三重に問題が発覚しております。
尾辻大臣、この事態に対してどう思われ、またどう対処していかれるか。これは現場の本当にその場で助かったかもしれない患者さんでもあります。細かなことを伺う以前に、私はやはりこれは国民への信頼を裏切った行為であると思いますので、もしも大臣の御家族でそのようなことが起こったらどのようにお考えになるか、お感じになるかということを冒頭お願いいたします。
○尾辻国務大臣 まず、先生、お医者さんでもいらっしゃるものですから、私の健康についてもお気遣いをいただきましてありがとうございました。私からも先生の御当選をお祝い申し上げたいと存じます。
そこで、ただいまの御質問でございますけれども、日本医科大学附属第二病院における脳死下での臓器提供事例について、今お話しいただきましたように、臓器移植法の規定による脳死判定の際、一部、法的脳死判定マニュアルに準拠していなかったことが判明したところでございます。これはもう大変残念なことだというふうに考えております。
そこで、臓器移植法の規定による脳死判定については適正に実施する、これはもう当然なことでありますけれども、この観点から、法的脳死判定マニュアルを示しまして、これに準拠して行うように指導してきたところでございます。
やはり今回のような事例が起きますと、このことにもまたさらにかんがみまして、私どもといたしましては、当該提供病院に対して、法的脳死判定マニュアルに沿って実施するように、これはもう重ねて指導いたしますとともに、各臓器提供施設に対して改めて周知徹底をしてまいりたいと考えております。
また、今後このような事例が発生しないように、脳死判定記録書の書式を工夫いたしまして、一部変えました。そのような工夫もいたしまして、脳死判定マニュアルに準拠して行われたことの確認が、より確実にされた上で臓器の提供が行われるようにするなど、改善方法についてさらに検討もしてまいりたいと考えております。
○阿部(知)委員 大臣は御存じかどうかわかりませんが、実は一九九九年にも、第四例目、大阪の千里救命センターも院内の独自のマニュアルを使って実施されて、これが日本弁護士連合会から人権侵害であるという申し立てが起きておるわけです。その後、千里救命センターでは厚生省のガイドラインに従うということを表明されております。
私が言いたいのは、前例もあった、八年もたった、それでもまだこれということは、指導します何をしますとおっしゃっても、これはだれかが亡くならなきゃ成り立たない特殊な医療でございます、その亡くなっていく方に対しての非礼、本当にそれで治療が尽くされたかという人権の問題、幾重にも根が深いと思います。
四百七十余りある提供病院、各病院が独自のマニュアルをお持ちか否か。やはりまた起こるんです、ほっておけば。あるいは、きちんとそうした独自マニュアルでやる可能性がないということを確認していただくのが一点、私は現実的な対応だと思います。これが二回目。続いたことですので、これを先回対処してくだされば、今回はなかったのではないかと思います。大臣、いかがですか。
○尾辻国務大臣 先回のことを、これはもう正直に申し上げますが、私、承知いたしておりません。今回のことは、御質問があるということで、私なりにこのように理解をいたして御答弁申し上げているところでございますが、今、前もあったという先生の御指摘でございますから、ぜひそのことももう一回調べ直してお答え申し上げたいと存じます。
○阿部(知)委員 これは人の命にかかわる事態でございます。そしてそのことは、今、現行の法律、十五歳以上で本人の意思による臓器提供でございますが、場合によっては本人意思を外そう、あるいは十五歳以下にしようという法律を準備されている皆さんもおありでございます。現場がこれでは、私は、その先、幾ら屋上屋を重ねても命は守られないと非常に危惧しております。
そこで二問目。ここに私はパンフレットを持ってございますが、これはことしの二月段階で、各中学生に教育委員会を通じて配られたパンフレット、臓器移植を勧めるパンフレットでございます。これが百二十万人の中学生に配られました。これは理事会で許可を得たものではないので、委員長と尾辻大臣だけに渡して、後は話の中で触れさせていただきます。
例えば十五歳以下、中学生の子供が死をどのように受容しているか。まず身内で死を経験したことがあるか。死とは何か。非常にバーチャルな世界に生きております。ちょっと前でしたNHKの放送で、三十二人の小学六年生に聞きました、死んだら生き返ると思うか。二十八人が生き返ると答えました。そのくらいに、申しわけないけれども、まだバーチャルな世界に生きています。
人間が生きるということ、その先にある死ということ、これを子供たちに伝えるには、先ほど尾辻大臣がニートの皆さんに、一人一人丹念に働くことの意味を伝えないともうどうしようもないんだとおっしゃったと同じように、私は、命の教育はこんなもの一枚で、あなたあげますかと中学生に問われるべきではないと思っています。
今、中学生たちあるいは小学校の高学年の子供たちがさまざまな事件を起こします。その根幹にあるものは、やはり自分の命の大切さにもまだ気づかず、また相手をあやめてその結果がどうなるかにも気づかない子供たちが、残念ながら大変に多くなりました。私たち大人も死を見なくなったからだと思います。
そう思って、この件で厚生労働省の臓器対策室をお呼びしました。そしてお呼びして、私はきょうこれで聞こうかと思ったけれども、もっとびっくりした資料が配られていたので、より衝撃の大きいそっちを使わせていただこうと思って、皆さんのお手元にカラフルな、こうした一枚の紙が資料で配られております。
これは組み立てればこういう絵本風になるものでございます。真ん中を切って組み立てていくと、絵本のようになります。そして、例えば皆さんはどう思われますでしょうか、二という大きな数字が書いてある横には、色を塗ってと書いてあって、眼球、心臓、膵臓、小腸、腎臓、肝臓などに色をつけるような、これは仕様になってございます。
もしも皆さんのお子さんがおうちでこれを色鉛筆で塗る。心臓、肝臓、腎臓。お孫さんでもいいです。子供たちに、臓器が部品であるかのような、物であるかのような、そして、これを全体だれに配るのと聞いたら、小学校低学年だと言われました。果たして死が実感できるでしょうか。犬や猫の死だってまだ見たことがないかもしれません。私は、一番大事なものは命であり、命を子供にどう伝えるかだと思います。
尾辻大臣、これは厚生労働省が無関係なところでやっているものではございません。これは厚生労働省が臓器移植ネットワークと御一緒に、希望のある小学校には配っておるものでございます。
余りに安易に過ぎると思いませんか。そして命の教育があってしかるべきです。でもこんな塗り絵で、おまけにこんなパンフで、こんなふうにして、あげちゃうわというものではないと思います。こういうことを繰り返していけば、日本がどんな国になるか、私は本当にこの文化的退廃を案じています。
これは、臓器はあげたりもらったりという単純なものではありません。臓器移植という治療法があることは存じています。しかし、こんな幼子にこんなもので宣伝されるものでもございません。大臣は、これはどうお受け取りになるでしょうか。
○尾辻国務大臣 臓器移植法を審議して採決いたしますときに、私どもの党でも党議拘束を外しておりました。そのことに象徴されますように、この問題については非常にさまざまな御意見があるということだと思います。そしてまた同時に、極めて慎重に考えなきゃいけないものだというふうにも思うわけでございます。
そうしたことに対するPRでございますから、学校現場などにおけるこうしたものも極めて慎重にやらなきゃならない、この扱いというのは極めてそういう性格を持ったものだというふうに考えます。
○阿部(知)委員 私のところにも、二週間ほど前、中学生が自分の中学を終わるときのテーマにこの臓器移植を取り上げたいと言ってやってきました。私は、私がきちんと責任を持って話せる距離で、あなたは死を見たことがあるか、あるいはあなたが亡くなったら親御さんはどう思うかとか、いろいろな話をしました。それほどに重いし、こんなふうに命の贈り物もらいますか、あげますかと、こんなものではないということをぜひ今の大臣の言葉に添えて、行政上の行き過ぎを私は正していただきたい。
これは本当に子供たちのためにもならない、日本の国のためにもならないと思います。丁寧に生き死にを語ることが今大人に課せられた任務であると私は思っていますので、重ねてお願い申し上げます。
引き続いて、もう一つの、先ほど仙谷委員がお取り上げになりましたが、我が国で貧困が進んでいるのではないかという御指摘に関係して、生活保護のことについてお伺いをさせていただきます。
冒頭、大臣、恐縮ですが、生活保護という制度をどのように御理解でありましょうか。
○尾辻国務大臣 よくセーフティーネットという言葉を使いますけれども、生活保護というのはまさにセーフティーネットだというふうに私は理解いたしております。
○阿部(知)委員 確かにセーフティーネットであるわけですが、生活保護法の第一条には、この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保護する、国の義務を憲法二十五条を引いて規定したものでございます。
そして、現在その事務等々は地方自治体にお願いをして、また、地方負担も何がしかをお願いして実施されておるわけですが、この間の三位一体改革の中で、国と地方の負担割合をどのように考えるのかという去年から持ち越された問題がございます。特に生活保護の保護率が高い市町村、政令市の首長さんたちが、このままではもしかして押し切られる形で地方が負担を請け負うことも懸念されて、生活保護制度自身に根本的な見直しがなされるということの必要性をお訴えになり、現在これにかかわる、どのくらいの方が生活保護下にあるかという数の報告を七月末でストップしておられると思います。
これは、国が地方にお願いし、地方からデータを上げてもらって、さまざまな集計が出る大事な国と地方の連係プレーの分野でございますが、それが、今現在この政令市を中心に情報を国に伝達する作業がストップされているという事態と、これをよい方向に打開するために大臣はどのようなお考えを持っておられるかについてお伺いいたします。
○尾辻国務大臣 今、確かに、各自治体において報告をしていただくその報告を政令指定都市の皆さんがとめておられるというのは、そのとおりでございます。
このことが、今直ちに被保護者に対して保護費を支給することに関して支障が生じておるものでもございませんけれども、しかし、これは、こういうことをしておられるというのは、私どもとして申し上げると極めて遺憾なことでございますので、ぜひ報告をまたしていただきたいというふうには思っております。
ただ、大きくこういう事態にどういうふうに対応するかというお話でございますけれども、このことにつきましては、今私ども協議会をつくりまして、そして、市長会の代表の方も入っていただいて、今後のことを協議しておるさなかでございますから、十分協議をさせていただいて答えを出したいというふうに考えております。
○阿部(知)委員 その協議の視点の中に、ぜひ厚生労働省として抜本的にお考えいただきたいことがございまして、きょう、残り二枚の資料提供をさせていただきました。実は、この二枚目の資料の作成に、昨夜遅くまで厚生労働省の担当部局がお働きいただきまして、まず、その件については大臣にも御礼を申し上げます。
ここの一枚目は世帯類型別の被保護世帯の年次推移というのがございまして、生活保護になる理由が御高齢であるか母子世帯であるか傷病者であるか障害者であるかというものの年次推移が書いてございます。十六年度という年度でまとめ上げますと、現在九十九万七千世帯が総数で、そのうち高齢世帯が四十六万五千ということになってございます。
これは大臣も御存じだと思いますが、我が国の生活保護制度の際立った特徴で、半数近くが高齢世帯である。残念ながら、高齢世帯であれば、いろいろな自立支援策、就労をお願い申し上げても、大体六十五歳以上でいらっしゃいますから、なかなかそこからお仕事で収入を得るということも、本当のところ難しゅうございます。
大臣に一枚おめくりいただきたいのですが、その次には、被保護高齢者世帯が年金を受給しておるかどうかの表がございます。平成十年から十五年までずっと見ていただきますと、六十五歳以上の被保護人員のうち年金受給者の数をあらわしたものがございます。例えば、さっきは世帯数ですが、人数だと平成十五年で百三十四万、六十五歳以上の方は四十九万人、そのうち年金受給者は二十三・二万人で、年金受給率は四七・二でございます。これは少ない年金でも何がしかの年金をお持ちである方で、逆に言うと、五〇%以上は六十五歳以上で無年金ということでございます。
となりますと、現状、我が国の生活保護制度は、高齢者を支えるためのいわば年金にかわるものになっておるのではないかという指摘が、これは従来からもなされておるところであり、さらに下を見ていただきますと、被保護者の年金受給状況を今度は六十歳から七十歳まで段階的に見ていただきますと、この中で、実は六十五歳から六十九歳の年金受給なしが六一・〇%、七十歳以上は四九・一%。高齢者の方がまだ年金をお持ちの方がいらして、六十五歳から六十九歳、基礎年金が入ったにもかかわらず、そこで現状六割が無年金になっておる。
そうしますと、これは将来のことを考えますと、今、国民年金の空洞化も含めて極めて深刻であるということを考えると、生活保護が本来の生活保護ではない形にさらになっていくであろうと思われます。
大臣にお願いがございますが、やはり骨格的な論議、この高齢問題が年金問題の給付の半数以上を占め、さまざまに生活保護という最後のセーフティーネットを考えるに当たって、もう少し、例えば他制度、年金制度とこの生活保護制度、あるいは母子世帯への扶助制度と生活保護制度と、もっと大ぐくりな論議を一度私はなさっていただきたい。
これはいろいろな文献で拝見、拝読いたしましたが、そうした根本論議がなかなか、平成十二年に言われましてからもないように思います。そのあたりが、今各市町村が高齢者をこんなに抱えて年金給付大変なんだと、ここをただ単にお金をどっちが持つかだけの問題で解決していただきたくはないとおっしゃっている根幹だと思いますので、本日は私の問題指摘でございますから、大臣のお受け取りと、また、どのようにお進めいただけるかをお願いします。
○尾辻国務大臣 まず、先ほど話題になりました指定都市の市長さん方のお話でございますけれども、昨年この市長さん方からも、生活保護というのはもう制度疲労を起こしているんじゃないかというお話も、要望書として上がってまいりました。そうしたことも受けて、先ほど申し上げた協議会は、生活保護をどうするかということで抜本的な議論もしなきゃいかぬと思って今それを進めておるところでございますから、まず生活保護については、きっちりしたいろいろな角度からの議論をしたいと思っております。
今、年金との絡みの話もございましたけれども、そうなりますと、それにとどまらず、今度はまた社会保障を一体的に見直すといったような議論の中でも議論が必要になってまいりますし、今その議論もいたしておりますから、これはお話のとおりに、いろいろなところで幅広く議論はさせていただきます。
○阿部(知)委員 ありがとうございました。終わらせていただきます。
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〔後略〕
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