第163回国会 厚生労働委員会 第8号 平成17年10月28日(金曜日) 抜粋

案件:
 政府参考人出頭要求に関する件
 障害者自立支援法案(内閣提出第一一号)(参議院送付)
 障害者の自立の支援及び社会参加の促進のための身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案(山井和則君外五名提出、衆法第一〇号)

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鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私は、本日朝方八時ごろ、通勤の折に、まだ駅はいわゆるラッシュの時間でございましたが、車いすに乗った方を囲んで数人と、そして恐らく知的な障害をお持ちであろう方を囲んで数人の方がプラットホームで待っておられました。ああ、こんな時間にどうしたんだろう、珍しいなと思って一緒のボックスに乗り合わせました。そして、聞くともなくお話を聞きますと、まさにこの国会にいらっしゃる方々でした。だれに言われたのでなく、本当に心配だから、そして朝のラッシュ時に車いすでやってこられる方がいる。それほどに、本当にどうなっちゃうんだろう、本当にやっていけるんだろうか、そういう不安がまだ、日々これ大きくなろうとも、ちっとも消えていないんだと私は思います。

 そして、本日、聞くところによりますればというか、理事会などでは採決のお話も出ております。しかし、午前中の村井委員と中村局長あるいは尾辻大臣の答弁を聞きましても、なぜ障害者の所得が全く把握されていない、把握しようともしない中で、いわゆる相手を見ないで、実態を見ないで、現状を見ないで法律をつくろうとするんだろう。それは支援費で生じてしまったある種の失敗、いいアイデアであったと思います、でもお金が足りないからやれなくなったということの二の舞を踏むんじゃないかとすごく懸念しますし、その結果、負担や利用できない苦しい目に遭うのは障害のある方そのものです。

 そして、きょうは、私は本来であれば、そうした採決も迫ったと言われる状況の中で、骨格論議をしたいです。しかし、その骨格論議の前にまず事実のデータ確認を今もってしなきゃならない国会状況と、逆に厚生労働省の提出される資料のずさんさが今もってあることをすごく残念に思います。

 冒頭、中村局長にお伺いいたします。答弁はイエスかノーかのデジタル思考でお願いいたします、長々言われますとごまかされますので。

 きょう中村さんが御説明の障害者福祉サービスに係る利用者負担の見直しに対する影響、先ほど村井委員にお示しくださいました。この二ページの左端の人員、生保、低所得一、二、一般、これはその障害のおありの本人の所得ですか、あるいは世帯のものですか。必ず一言で、本人か世帯かお答えください。もう先ほどの長い説明は聞きましたので、最終盤ですからそれ以上は要りません。本人か世帯か、お願いします。

中村政府参考人 現行の支援費制度の実績は、本人所得に基づく費用徴収を基準といたしておりますので、その実績に基づくデータでございますので、本人の所得をもとに推計をいたしております。

阿部(知)委員 先ほどの答弁とは違うんですね、局長。先ほどの答弁とは違うんですね。本人ですね、本人ですね。イエスかノーかでお願いしますね。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 予算の考え方として、世帯の所得状況を推計するに際し、本人の所得がそのまま世帯の所得と同じであるとみなして推計を行っているものでございます。

阿部(知)委員 そんなばかな推計をしてはいけないのです。そんな推計の上にこんな論議はできないのです。

 では、委員長、申しわけありませんが、午前中の答弁とそごがあります。まず、世帯のものか本人のものか、この点をそちら側で明確にしてください。それまで時間をとめてください。

鴨下委員長 中村局長。(阿部(知)委員「恐縮です、中村さんには今もうお答えいただきましたので。委員長、きちんと仕切ってください」と呼ぶ)

 中村局長、答弁で正してください。

中村政府参考人 私が申し上げましたのは、午前中も申し上げましたのは、積算根拠についてお話を申し上げました。

 二ページの、制度改正のこの積算根拠は……(阿部(知)委員「そういう説明を聞いているんじゃないんです。時間を食わないでください。限られた時間です。そんなわけにいかないんです。世帯か本人かだけで結構です。尾辻さんにも同じことを伺います。世帯か本人かだけで結構です。今の、中村さんは、世帯の収入はイコール本人の所得だとおっしゃいました。そんなはずはないのです。その一点だけ明確にしてください。それじゃないと進められません。答弁にならないから言っているんです。けんか腰じゃないです」と呼ぶ)

鴨下委員長 阿部君に申し上げます。

 委員長の指示に従ってください。

阿部(知)委員 従いますが、では、確認してください。そちら側の意見をまとめてください。本人か世帯か。

鴨下委員長 それでは、中村局長、答弁で正してください。

中村政府参考人 答弁申し上げます。

 それぞれ積算が違うということを申し上げているわけでございます。世帯人員と申しましても、六ページのものは、先ほど申し上げましたように支援費制度の実態に基づきますものでございますから、六ページの統計につきましては支援費制度の実態は本人所得に基づく費用徴収を基準としているということでございますので、ここの部分は本人でございます。

 四ページでございますけれども……(阿部(知)委員「二ページを聞きました。ほかのことを答えないでください」と呼ぶ)ですから、それぞれ違うということを申し上げているわけでございまして、二ページにつきましては、三ページに書いておりますように、所得及び一般は平成十年の国民生活基礎調査の数字によるものでございまして、ここにつきましては、所得階層につきましては所得階層区分の人員を算出しております。

阿部(知)委員 それだけぐちゃぐちゃ答えても、本人か世帯かわからないんです。

 大臣、この二ページの左端は本人所得ですか、世帯ですか、お願いします。ここが出発点です。本人ですか、世帯ですか。二ページのここです。大臣。もう時間をつぶさないでください。

尾辻国務大臣 先ほど来お答えいたしましたのは、十七年度予算の計算方法をお答え申し上げております。この予算は、現行の支援費制度の実績等をもとに所得階層を考えておりまして、予算上はこれに基づき積算をしておる、このことを繰り返し申し上げておるわけであります。

 現行の支援費制度の実績は、本人所得に基づく費用徴収を基準といたしております。これもお答え申し上げております。

 予算の考え方としては、世帯の所得状況を推計する際にも、本人の所得がそのまま世帯の所得と同じものであるとみなして推計を行っておるということを御説明申し上げておるわけであります。

阿部(知)委員 では、大臣が今おっしゃった三つ目の根拠が間違っているんです。いいですか、三つ目の根拠が根拠レスなんです。

 理由は、きょう私は、たまたま同じ支援費で東京都で行われた十月四日のフォーラムに出された資料を入手しました。これは朝、電車の中で立ち聞きしたんです。低所得一、二の数、厚生省が出しているのと違うよねとおっしゃっていました。そこで、では、どんなデータがあるんだろうと私も耳がダンボになりました。そこでお話しだったのが東京都の支援費の本人と世帯の所得を分布したものです。きょう新たに資料として出させていただきました。大臣の三点目の、本人の所得を世帯の所得と類推するというのは、このデータを見ていただければ一目瞭然に違っています。

 このデータでは、小さい字で恐縮ですが、例えば御本人に着目すると、所得税課税六・六%、所得税非課税、住民税がお払いが二・一%、低所得の一、二が七〇・五%、大体このお示しの二のようなデータになります。しかし、世帯の所得に着目いたしますと、所得税課税が五二・六%、住民税が課税で所得税非課税が一三・二%、合わせれば六五・八%がここでいう低所得ではなくなるんです。一般になるんです。大臣、これくらい差があるんです。そして、資料は求めようと思えば求められるんです。これは東京都の事案です。十月四日に出された公なものです。

 大臣の三点目の、本人所得と世帯所得は同じとみなしてよいとする根拠はこれからはないですよね。どうでしょう、大臣、大臣。

鴨下委員長 中村局長。

阿部(知)委員 もう中村さんは結構です。ちょっと待ってください、委員長。今、大臣の答弁に私は伺っているんです。大臣が三点目におっしゃったから、大臣に伺っているんです。局長ではないです。大臣、お願いします。私の説明がわかっていないと申しわけないから。

鴨下委員長 尾辻大臣。

尾辻国務大臣 今先生お示しの、左側と右側のこれを見ております。さっきも申し上げましたように、十七年度予算ではこの左側の方の数値を根拠にして私どもは積算をし、予算要求したわけであります。

 右側のこの数字は予算編成には使えないと言っておりましたが、これは局長から使えない理由は御説明をさせますけれども、使えないと言っておりました。その理由は説明させます。

 ただ、その前に申し上げたいことは、私どもはできるだけ支援費もたくさん予算をとりたい。それで、できるだけとっても足らなかったのは御案内のとおりですから。ですから、予算額が大きくなる積算を使いたいというのは私どもの気持ちとして当然でございますから、二つ数字があっても、私どもの予算が大きくなる、障害者の皆さんの予算額が大きくなる方を使ったということは、いずれにしても決して間違いでない私どもの思いであったということだけは私は申し上げて、あとは必要があれば局長に答えさせます。

阿部(知)委員 では、大臣に二つお伺いします。

 前言の、本人の所得と世帯の所得はイコールであるということは訂正してください、これは大きく違いますから。大臣、議事録を見れば、三点目はそうおっしゃいました。それは違いますから。

 それから、いいでしょうか、一個ずつやる余力が私の時間にはないので。大臣は、本人の所得と世帯の所得はこの場合一緒であると、三点上げられた三点目にそうおっしゃいました。それはこのデータから見ても違いますよね。大きく違いますよね。いいですか。その後の大臣のお話には私もお答えがありますので、まずその一点だけ、本人と世帯は違いますよね。

尾辻国務大臣 先ほど三点目として申し上げましたのは、予算の考え方としては、世帯の所得状況を推計する際には、本人の所得がそのまま世帯の所得と同じであるとみなして推計を行っているもの、予算をつくるときの考え方として私どもがこうしてまいりましたということを申し上げ、そして、さらに申し上げましたのは、その方がやはり私どもの予算額が大きくなる、そういうことを申し上げておるところでございます。

阿部(知)委員 物事の考え方は、確かに、予算作成上、やはり厚生労働省予算を多くとっていただくということは肝要ですので、それは重々お認めいたします。

 しかし、大臣の頭の中から恐縮ですが抜けているのは、これは本人の所得だけじゃなくて家族世帯に着目しており、家族はその場合負担をするということです。厚生省は予算をとられるかもしれません。その予算が障害者本人に行くんじゃなくて、家族が一定以上であれば、ここの言う所得税非課税までの六五・八%の人は家族が負担するということなんです。

 大臣、おわかりですか。厚労省が予算をとりたいというのは本当に賛成です。だけれども、その中からすこんと抜けちゃうのが、だれがお金を負担しているかなんです。そして、みんなが心配なのは、それだけ負担して家族がもつだろうか、やっていけるだろうか、障害のある子を抱えて、ある人を抱えて、家族は本当に、日本の場合、家族に頼り過ぎの現状があるわけです。その方たちから取るわけです。

 厚労省の予算は、見せかけ上というか、本当に、こうやっておいた方が大ぐくりで、この話は財務省にちょっと聞かせられません、そういうところでしょう。でも、その負担をだれがするかというところが問題なんです。家族がそれを負担しなきゃならない、そこの重みがそこの家庭をさらに貧困化させたり、負担をふやす。

 実は、これがこの法案の最も根本的な問題にかかわっているのですが、日本の民法では、明治の三十一年の、たしか民法の八百七十七条から八百八十一条に関して、家族制度、扶養義務というくくりで、家族が責任を負う制度ができ上がっています。でも、障害者問題は、究極のところ、家族からの自立でもあるわけです。これは繰り返し繰り返しこの間の、一九八七年、施設のサービスでも障害御本人の所得に注目、二〇〇三年の支援費においても、在宅サービスについては親兄弟は外れました。少なくとも、福祉の流れは本人の所得に着目するように流れてきているんです。

 ここにあって、家族ということが、実はこの試算の中では、厚生労働省の予算としてはとられ、負担は家族がするんです。この大きな、逆に言うと問題点、ここが一番やはり、本当にこの法律でやれるんだろうか……(発言する者あり)そうです。まさに家族負担をやめて、この予算のとおり本人所得だけでやっていただけませんか。

 それと、中村さんだって、こういう東京都のデータだってとれる立場でしょう。あなたは、厚生労働省の局長として、日本の厚生労働行政に責任と本当に権限を持った方です。なぜ、実態はとろうとすればとれるのに、厚生労働省として把握しないのか。

 これは、けさのあのいいかげんな審議を聞いて、きょうされんから連絡があったものです。でも、私は電車の中で聞いていました。ちょうど同じ情報でした。みんな心配して、あのデータは違うんじゃない、また違うんじゃない、みんなそう思っているんですね。大臣、そんな中で信頼性のある行政ができるでしょうか。私は、本当に事態は深刻だと思うんです。納得と信頼がなければ、こういう問題は解決しないんです。

 確かに、最後の最後まで納得はいかないところはありますでしょう。しかし、やはりこんなにずさんなデータが出されて、私がおとといいただいたのは、世帯収入の七割という方が一般の範疇に入るというデータでした、大臣にお渡しした。二日たったら、今度は全然違うデータでの試算根拠が出てきました。私たちが求めているのは、実態を把握してほしい、どのくらいの人が家族にカバーされて生きているか。そして、それはすごく肩身が狭い。もっと自立したい、もっと自分たちで自由に生きたい、それがこの政策の根幹でなくてはいけません。

 大臣、いかがでしょう。この思いがおわかりでしょうか。そして、なぜボタンがかけ違っているのか。やろうと思えば出る実態調査、東京都ができること、なぜ厚生労働省ができないのでしょう。

鴨下委員長 中村局長。(阿部(知)委員「ごめんなさい、中村さんは私は指名しませんので、大臣に伺います。恐縮です、これは政治的マターなんです」と呼ぶ)

中村政府参考人 お答え申し上げます。(発言する者あり)

鴨下委員長 中村局長、申しわけないけれども、では、大臣に答えてもらいますから。

尾辻国務大臣 いろいろおっしゃいましたので、どこの部分でお答えすればいいのかというふうに思いますが、まず一つは、データにこだわっておられます。

 そのデータの話で言いますと、先ほどお示しいただきました、この右と左の数字でありますが、これは必要があれば局長から、右と左の違い、そして、なぜ、私どもが左を使っておるか、右の方は予算編成に使えないんだと言うかという理由は御説明を申し上げたいと思います。

 ただ、局長を御指名にならないので、そこまで私からお答えを申し上げておきます。もし必要があれば、局長を御指名いただきたいと存じます。

阿部(知)委員 大臣、私が聞いているのは、予算編成上どうかじゃないんです。予算編成上はこのような形もとることはあるでしょう。しかし、その方が世帯で暮らされていて、その世帯の方は六五・八%、今度は障害者の方の負担が加わってくるんです。そのことによって障害者が肩身が狭いというのがこの法律なんです。これはおわかりでしょうか。ここを大臣にわかっていただかないと。

 大臣は、予算編成のところでわかれと言いました。それはわかりました。わかっています。では大臣、逆に、六五・八%、家族で見たら、これだけの方はいわゆる低所得には入らないのです。六五・八%の方は、家族の収入も含めて負担が生じます。そのことはおわかりの上なんでしょうか。そして、それが家族からの自立も含めた障害者の基本施策を逆行させる、八七年にも二〇〇三年にも自立の方向は出ていたんです、逆行させているという認識はお持ちでしょうか。

尾辻国務大臣 先ほどお話しになりました一番基本の部分で申し上げますと、まず、今回私どもが言っておりますことは、利用者本人に御負担くださいということを基本で言っているわけであります。これは先生がおっしゃったとおりでありまして、私どもも、今回、負担をどうするかということで、利用者本人に負担してくださいということはまず基本に言っておるわけであります。

 ただ、負担上限額を世帯の収入に応じて設定させてくださいと。これは軽減措置をどうするかということで、そうさせてくださいということをまた申し上げております。その制度そのものは何も全然変化しないわけでありますから、個々の方がどういう軽減になるか、負担になるかというのは、全体の数字がどうなるかということとは、個々の方のそれぞれの、私どもの制度が何も変わるわけじゃありませんから、そこのところにおいては変化しないはずなんだけれども、先生が問題にしておられることがどこにあるのかなというのが、そこの部分は私、よくわからないわけであります。

阿部(知)委員 軽減措置のお話は、厚生省が配られた資料の中でこのようなグラフがございました。この一般以上に行く方が六五・八%だということです。うそも含んだこの図、ここの中で、この一番上の軽減措置されない方が、家族の収入も含めたら六五・八%だということですよ。だから困るんですよ、要は。収入だってそう多いわけではありません。

 大臣、どうですか。私はまだもう一つ、データの偽造問題をやらなきゃいけないので、おわかりになりますでしょうか。このグラフの一番上、これ以上の、一般以上の、負担軽減措置がなくなる人の方が多いんだということなんです。

尾辻国務大臣 ですから局長に答えさせた方がいいと思い、先ほど来、局長に答えさせましょうかと言っておるわけでありますが、今、先生が言っておられるこの数字は、支援費の扶養義務者の範囲であって、というのは、事実上、児童の親だけでありますから、世帯の全体像にはならないはずでございます。そこのところを局長に答えさせましょうとさっきから申し上げておるのでありますが、もう少し詳しく答えさせた方がおわかりいただけるんじゃないかと思うんです。

阿部(知)委員 ちょっと待ってください。今の答弁は大変です。これは子供の場合だけじゃなくて、世帯の全体像です。障害者を持っておられる世帯もそうです。子供がいる場合だけじゃないんです。そして、障害者年金も加算された上での世帯の全体像です。大臣、それは答弁と御理解が違います。

尾辻国務大臣 私が理解しておりますのは、扶養義務者の範囲でいいますと、二十以上の障害者の場合は配偶者及び子、それから二十未満の障害者、まあ障害児でありますが、その場合は配偶者、父母及び子、いずれも、障害者と同一の世帯に属し、かつ生計を同じくすると認められる者、こういうふうに理解してお答えをいたしておるところでございます。

阿部(知)委員 同一の世帯にいればその世帯収入になることは、この法案の全体を見れば明らかです。では、大臣、ここで逆に、二十以上であれば、その御本人の所得以外に着目しませんか。親は入れませんか。いいでしょうか。それならそれで、それは前向きです。二十以上であれば入れない。

尾辻国務大臣 障害者の場合は、同一の世帯にいても親は入らない、こういうふうに理解をいたしております。

阿部(知)委員 親兄弟は入らないということですね。

 私は、実は、この件をもっと詰めたいのですが、もう一つ宿題がありますので、本当に恐縮ですが、残された時間、使わせてください。それは、審議会に出た、世帯所得六百七十万円のお話です。きょう、資料の中で三枚目につけさせていただきました。

 これは、世帯所得六百七十万円以上の方が自立支援医療でその対象から外れるというお話でした。しかし、どう考えても、世帯所得六百七十万円の人は所得税三十万円になりません。もう本当に短時間で恐縮です。Dで、世帯収入六百七十万円であれば所得税十四・七。それからCで、給与収入六百七十万であれば所得税二十一・六。私はこれをきのう遅くまで計算しました。そして、あの審議会の資料が、障害者一級が障害年金を受給している世帯で六百七十万円、所得税三十万円となっていました。私は、審議会のデータの誤りだし、それがひとり歩きして随所で使われているということを申し上げました。

 厚生労働省のデータもずさんであれば、審議会のデータにも誤りがあります。その点はどう是正してくださいますのか。大臣、お願いします。

尾辻国務大臣 昨年の十一月に行われました第二十一回社会保障審議会障害者部会での資料におきましては、自立支援医療の対象外となる方の範囲としてお示しをいたしております所得税額三十万円以上の方の収入については、「概ね六百七十万円以上の収入」と記載をいたしております。これは事実でございます。

 この記載は、制度の検討過程において、自立支援医療の対象外となる方が最大でどれだけ発生し得るのかを見積もるために、各種控除等を勘案せずに試算した結果の数値でございまして、そういう意味では、この数字がまた誤っておるというわけではございません。

 しかしながら、今申し上げたような試算の前提について、注釈を加えるなどの表記上の工夫を行っておりませんので、六百七十万円という数値が確かにひとり歩きをしてしまいましたので、そういうことで混乱を生じさせたということであれば、この点は反省しなきゃいけないというふうに考えております。

 この所得税三十万円に相当する年収の試算の前提等については、社会保障審議会障害者部会の部会長にも、先生の御指摘もございましたので、御相談を申し上げ、御了解いただいた上で、同部会の委員の皆様方に対しては、取り急ぎ要点を書面で、これはファクスでございますけれども、御報告いたしますとともに、次回の部会開催時に経緯を改めて御説明することといたしておるところでございます。

 今後、自立支援医療の対象の範囲も含めた法案の内容について、障害者の方々に正確にお伝えできるように細心の注意を払いながら周知に努めてまいります。

阿部(知)委員 データもいいかげん、与えた負担もはかり知れず、そして、私は、やはり実態を見ないで政策をすれば必ずいい成果が生まれないと思います。私は、採決することに大きな異議を申し添えて、質問を終わらせていただきます。

鴨下委員長 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 この際、山井和則君外五名提出、障害者の自立の支援及び社会参加の促進のための身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 衆議院議員山井和則君外五名提出の障害者の自立の支援及び社会参加の促進のための身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案につきましては、政府としては反対であります。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより両案を一括して討論に入ります。

〔中略〕

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、障害者自立支援法案に対する反対と、そして、障害者の自立の支援及び社会参加の促進のための身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案に対する賛成討論を行います。

 ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、私たちのことを私たちのいないところで決めないで、これは今日の障害者施策にかかわる根本の思想です。そして、本日、その実態の把握もないまま、ひたすらに膨大になる負担が押しつけられるその不安の中でこの法案が成立しようとしていることに、まず冒頭、大きな抗議を私はしたいと思います。

 まず、この政府提出の法案に反対の第一の理由は、分野の異なる障害者福祉と医療を強引に一つの法制度に押しとどめ、介護給付あるいは訓練等給付、自立支援医療等の支給について原則一割の応益負担を導入している点です。租税を財源とし、社会保障の扶助原理に立って行われてきた福祉制度を現行の応能負担から応益負担に転換することは、社会福祉の基本理念にかかわる重大な問題です。

 障害者福祉サービスの利用方法が措置制度から支援費制度へ移行した折にこの議論は一度は行われましたが、障害者の厳しい生活実態にかんがみて、応能負担は今日に至るまで継続されてまいりました。その後、本格的な障害者の所得把握あるいは所得保障、抜本的な就労対策などが行われたわけでもないにもかかわらず、また公式な場での議論も、当事者の意見を聞くことも、国民へ問いかけもないまま、国の財政削減のみを優先させて応能負担を応益負担に転換することは、許されてはならない暴挙だと思います。

 参議院の審議における我が党の議員の質問に対し、担当局長は、応益負担について、「新しい福祉の考え方」「サービスは買うものだ」と豪語しておりました。食事、トイレ、入浴など、障害者にとって生きるための最低限の介助をお金で買わせ、障害が重いほど、社会的な困難を抱えているほど費用負担を重くするという制度は根本的に間違っています。障害者基本法の基本理念、生活保障の権利、憲法二十五条、生存権に違反するものだと言わざるを得ません。多くの障害者が生活保護より現実には低い所得水準にある中で応益負担が導入されれば、障害者の生活の水準のみならず、それを抱える御家族あるいは日本の社会福祉の最低ラインが引き下がることは目に見えております。

 また、成り立ちもその意義も異なる精神通院公費、更生医療、育成医療を自立支援医療制度として一本化し、応益負担を導入することについても断じて容認できません。医療負担の増加は、障害者、障害児の受診抑制、医療の中断、新たな障害の発生、ひいては生命の危機に直結します。公費負担医療制度は現行どおり継続すべきです。

 反対する第二の理由は、障害程度区分、サービスの報酬額基準等の詳細が二百十三項目にも及ぶ政省令、告示事項にゆだねられ、現時点で一人一人の障害者の生活がどうなるのか皆目わからないという点です。障害者の生存を左右する部分を白紙委任することはできないのです。

 十月五日に障害程度区分判定等試行事業の結果が示されましたが、精神障害者は第一次判定で三三・二%が非該当です。さらに、第一次判定と最終結果との変更率は五〇%を超えております。障害程度区分はサービス支給決定の基礎となるものであり、本法案の骨格です。それを、さらなる試行事業もきっちりした検証も行わず、障害当事者の意見表明権の確保もあやふやなままで来年の四月から実施するということは、余りに乱暴です。

 第三の理由は、本法案において、障害者の地域生活、自立を支えるための社会基盤、すなわち就労の場、住居、人の支え等の確保を担保する制度設計が極めて不十分であるということです。障害福祉計画の策定等だけでは基盤整備は進みません。基盤整備によってサービス量が確保されてこそ障害者の地域生活、自立は可能であり、それを強力に推し進める特別立法が別途に必要です。

 本法案は、公平なサービス利用を建前に、障害程度区分や行政によるケアマネジメントが導入されています。しかし、社会的基盤が確保されなければ、これらは逆に、行政によるサービス利用の制限につながり、自立はますます遠のきます。さらに、利用者がサービス事業者を選択するのではなく、事業者が経済的により安定した障害者、家族を選ぶという逆選択の危険性さえ出てきます。

 本法案は、さきの第百六十二国会にも提出されましたが、数々の重大な欠陥が指摘され、慎重審議が強く望まれていましたが、今回政府が再提出した法案は、形式的な修正にすぎず、骨格の問題が全く是正されておりません。参考人質疑では、与党会派推薦の参考人からもさまざまな懸念が表明されています。全国の障害者、難病患者、その家族、関係者からは、拙速に法案を成立させないでほしいと必死の訴えが続いています。国会審議が深まることによって法案への疑問、不安が払拭されるどころか、審議を進めれば進めるほど障害当事者の不安が一層強くなるという事態は、まさに尋常ではありません。

 障害者の真の自立支援、そして完全な社会参加と差別のない社会、つまりノーマライゼーションを実現するためには、本法案は廃案とし、基礎データを積み上げ、障害保健福祉に係る予算を正当に見積もり、抜本的な再検討を図るべきです。

 そして、山井和則さん他提出の障害者の自立の支援及び社会参加の促進のための身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案については、これまで対象外であった精神障害者を支援費の中に加え、応能負担制度を維持し、医療費の公費負担制度の継続、居宅生活支援等の国の財政負担の義務化など、直面する課題に対応する内容であり、今後、障害者施策を根本から検討し直すための時限立法として賛意を表明いたします。

 終わります。(拍手)

鴨下委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより採決に入ります。

 まず、山井和則君外五名提出、障害者の自立の支援及び社会参加の促進のための身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、参議院送付、障害者自立支援法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。


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