第164回国会 厚生労働委員会 第16号(平成18年4月21日(金曜日))抜粋

案件:
 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

 良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)

 小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案(小宮山洋子君外四名提出、衆法第一七号)

 医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案(園田康博君外三名提出、衆法第一八号)


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〔前略〕

大村委員長代理 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私は、先回のこの委員会で、いわゆる医療現場、人によって支えられる、人が人の命を支える医療現場において、その支え手である医師や看護師サイドに起きていることをお話し申し上げました。

 きょうの委員会では、また各委員が、先回の新潟の例に引き続いて、きょうは青森での、田名部委員がお取り上げになった実際の人の配置が、看護婦さんも医師もいない、産婦人科の医師もあるいは助産婦さんもいないような状態の中で、どうやって次の命が生まれ得るのかというようなお話もございました。

 私は、こうした問題がこの委員会で取り上げられる都度、果たして本当に厚生労働省の皆さんは、今の医療の実態をどの程度把握して今回の改正案を出されてきたのかということにおいて、非常に疑問が広がるばかりでございます。

 きょうは、冒頭、こうした医師の偏在、診療科別の偏在、地域別の偏在、そして、あえて申しませば、医師のモラルにおける崩壊や、あるいはやる気がうせていくということも含めた三つの難局を抱えた中で、今回、厚生労働省が医師の派遣業法に道を開かれました。派遣といえば、この間、小泉改革の中でたくさんの非正規雇用がふえまして、パート、アルバイト、派遣、請負などで働く方々が一千六百万人ということで、我が国の社会を揺るがす大きな問題になっております。

 しかしながら、従来、医師においては、この派遣という問題は実は極めて限られた分野で、例えば、紹介をして、その後の実際の勤務が保障される形の紹介予定派遣が十六年三月、あるいは、いわゆる社会福祉施設等で行われる、老人保健施設とか、そういうところでの医師の派遣は、労働者派遣として平成十五年三月から解禁ということをとっておりますが、今回、厚生労働省が政令の改正でこの四月一日から解禁された医師の派遣の内容について、冒頭、事務サイドから御答弁ください。

松谷政府参考人 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の施行令の改正がこの平成十八年三月十七日付でございまして、従来、紹介予定派遣の場合以外禁止されておりました医師、看護師等が派遣労働者として病院等で行う医療関連業務につきまして、二つの場合について認められることとなっております。

 一つは、産前産後の休業、それから育児の休業、または介護休業中の医療関係労働者の業務を代替する場合、いわゆる休業代替の派遣です。それから、僻地にある病院等において医師が医業を行う場合、医師確保のための選択肢の一つということで変更になったものでございます。この場合の僻地の範囲につきましては、離島振興法等七法のいずれかの地域をその区域内に含む省令で定める市町村となっております。

 以上です。

阿部(知)委員 簡単に言えば、一つは、女医さんがお産で休まれたときに、これを代替のために派遣をなす。ただし、これは業としてなす派遣であります。紹介には派遣の手数料が取られ、女医さんたちはその派遣のプールの中に入っていかれるわけです。

 後者は、僻地とおっしゃいましたが、一体、日本全国の中でどのくらいの地域がその派遣による、派遣業法の業者から医師を受け入れることを可能にしたか、全体の自治体数と利用し得るエリアについてお答えください。

松谷政府参考人 平成十八年四月一日現在で、先ほど申しました離島振興法の離島の区域等七つのカテゴリーがございますが、これらを含む市町村は千百六十ございますので、千八百二十市町村の六四%に当たります。

 ただし、具体的な地域までのデータはちょっと手元にございません。

阿部(知)委員 簡単に言えば、日本全体の六、七割で派遣が可能になったということであります。

 私は、ここには二つ大きな問題がある。一つは、派遣業法、派遣業者が行う派遣になったということであります。従来、医師の研修の義務化の以前は、確かに大学等々で無料で派遣という形態をとることがございました。しかし、これからは、医師も一つの派遣労働者としてここに私は門戸がある意味では開かれた。

 しかし、我が国の、先ほど来、私がさきの委員会でも、また、きょうの委員会でも取り上げましたが、一体、医師の実際の需給状況や現地での配置状況に、厚生労働省が根本策を持たないまま派遣という道を選んだ場合に起こり得る弊害の方が、私は、目前の多少の、本当に産休代替の人が欲しい、そういう気持ちはあると思います、しかし、その目前の利益以上の私は医療界の崩壊、モラルの崩壊であったり、あるいは医師たちが自分の将来をどのように計画し、研修し、育っていくか、強いては、国民の命を支える医師の倫理や価値観や何を尊厳とするかという点において、大きな変容が起こると思います。

 厚生大臣に伺います。

 私は、これまでの委員会の何度かの質問の中で、一般の、他の派遣問題でも、やはり基本は、本当にその人が仕事を続けられる、キャリアアップできる、安心して働ける、そうした正規雇用というものを中心に重く見ていくべきではないか。もちろん、一方で選べるという働き方は必要であります。しかし、とりわけ医師という、非常に重い責任と、そして社会の、あえて言えば生命観、生命倫理を実践する分野の人間にこの派遣業法を導入された、このことはどんなお考えがあってのことなのか、お伺いいたします。

川崎国務大臣 午前中からも、僻地の問題を、さまざまな議論をいたしてまいりました。いろいろな方策を重ねながら、この問題に対処をしなければならないことは事実であろう。

 それをやる手段としてさまざまな対策が考えられる中で、今回、へき地医療支援機構による僻地研修を派遣される前に原則として受講すること、派遣先の選択に際しては、原則として派遣された医師のみが勤務することにならないことという条件をかぶせて、今日の構成をつくらせていただきました。

 いろんな御議論はあるんだろう、阿部委員のは阿部委員の御主張としてあるんだろうと思いますけれども、私どもは、今僻地医療に課された課題というものを考えるときに、ここに踏み込ませていただいたということでございます。

阿部(知)委員 私は、このような重要なことが、国会の審議もなく、政令の改正だけで行われていく。例えば、派遣業法の業法を十六からたしか二十六に開いた、九六年の改正であったでしょうか、そのときも論議がございました。それから、二〇〇四年に製造業への派遣を解禁するときにも論議がございました。一つは、当然、その分野が抱える問題が何であり、派遣という形態が何をもたらすのか、このことに私は、国民も周知のもとに行われるべきである。

 そして、もっと言わせていただければ、今派遣業という、なりわいとしてなされた場合に、これは大臣がどの程度御存じかどうかわかりません、今医師たちは、自分の時間当たりを幾らで売るか、あるいは一月を幾らで売るか、給与によって自分の行き先を決める人も非常に多くなりました。そのことが医療界にもたらす負の弊害、当然大臣は勘案されたのでしょうか。

 一点目は、なぜ国会審議を経なかったかです。

 二点目は、ただでも足りないと言われている、そして、地域によっては高いお金で医師たちに来てもらわなければいけない。これも、従来もちろんあったことです。ゼロではなかった。しかし、こうした形で、業となり、なりわいとなり、そこに医師たちがそのルートの中で動く、こういうことをやる前に、根本的になすべきことがあるのではないですか。本末転倒。私は、誤った選択をしたと思います。

 派遣業法としてなさるのでなければ、まだバンク形式のいろんな方法もあったでしょう。しかし、これは派遣業の、なりわいとしてやるわけです。このことがもたらす医療崩壊の上に瓦解させる、もう崩壊も瓦解もそれは一緒だと言われれば、そうかもしれません。しかし、現実の深刻さを大臣はどこほどお考えになってこの道をとられたか。再度お願いします。

川崎国務大臣 阿部委員の御指摘も一つの切り口であることは間違いございません。一方で、午前中から議論しておりましたように、僻地医療に課せられた課題というもの、極めて重いものがある。そういった中で、今回政治として判断をさせていただいたということでございます。

阿部(知)委員 何度も申しますが、政治としての判断ならば、きちんと国会で審議していただきたい。派遣の解禁は、これまで、私が先ほど例示しましたように、極めて慎重にこの委員会でも論議されたことであります。

 そして、私は、きょうで三回目の審議といたしましたときに、厚生労働省から根本的な、医師の医療提供体制における偏在の問題、診療科ごとの格差の問題、モラルの崩壊の問題、サボタージュ、やめていきたくなる気持ちの問題、このことに厚生省が本来的に対策している御答弁をまだ一つもいただいたことがございません。医師が足りないという指摘がされれば、全体の数は足りております、偏在があると言われれば、地方で御尽力いただきます、しかし、それでは済まされない状況がある中で、厚労省が唯一と言っていいほどやったことは、派遣業者に任せようと。

 これでは、なぜ医師は国家資格なのですか。そして、国が医学教育にどのくらいのお金をかけているか。厚生労働大臣、伺います。一人の医師を養成するのに、一体幾らかかると思われますか。

川崎国務大臣 一人にどのぐらいかかるかということについては、なかなか積算がないようでございます。

 御質問いただいておりましたので調べさせましたけれども、数字として出てまいりますのは、医科の大学ですね、要するに単科大学、そこで運営費交付金が、十八年度、例えば旭川の医科大学をとりますと五十三億円でございます。それを人数で割ったらいいのかどうか、これはいろんな議論のあるところでもございますので、その詳細については私の方から申し上げるべきではないだろうと思います。

阿部(知)委員 この質問を厚労省にお伺いいたしましたときから、厚労省は実は真剣に考えていないんだと思います。資料を求め、どのくらいの費用がかかって一人の医師が養成されていくのか。今、例えば旭川医大の五十三億円であれば、いろいろな設備も含めて、いろんなものが合算された額ですから、確かに川崎大臣がお答えになったように、なかなか適切な数字が思い浮かばれないのでしょう。

 しかし、求めよ、さらば与えられんです。どういうことかといいますと、私は、きょう大臣のお手元に、あけていただきまして、資料の三枚目をごらんいただきたいと思います。これは、出典を明示しませんで恐縮でありますが、日本私立医科大学協会という加盟二十九大学の医学部でおつくりになっている資料から拝借いたしました。

 医師の教育にかかわる経費、学生一人当たり一年間というのが上のグラフでございます。これは、私学において教育にかかる費用が、やはり多くの補助を入れていただいている国公立よりは重いということで、こういう向きにとりわけ私学は敏感でなくては運営がしていけませんから、その結果で調査されたものであります。

 平成九年度から平成十六年度まで推移してございますが、一年当たり、学生一人当たり一千六百五十六万円です。現在、まあ、もうちょっとふえたでしょう。これを六年という年限、単純に掛けたとしても、約一億近いお金がかかっております。

 医師を養成するとは、それだけ手間暇がかかり、なおかつお金もかかっていることです。そして、それを国民の命を支える安心と安全の担い手として送り出すために、医師国家試験を国は行うわけです。私は、そうしたことをやった結果育てた大事な大事な人材を、派遣業法の中にたたき込むというそもそもの感覚を大きく疑います。

 大臣、下をごらんください。ここには国立大学の医学部と私立医科大学で、学生の平均納付金比較というのがございます。上は国立大学で、六年間合算すれば、近年でも約三百四十万円です。私学では三千二百四十九万円です。これだけ、もちろんこの数値があるからこそ、私学の大学には比較的富裕な御家庭のお子さんしか行けませんし、国立大学でも、六年間で三百数十万というのは決して安いお金ではありません。

 ただしかし、先ほど申しましたように、全体は年に一千六百万円かかり、六年間を経過してそれだけ、他はほぼ税で賄っているものであります。もちろん私学にも税が入っておりますが、今、私学の皆さんは、先ほど来申しますようにこの官民格差に、非常にお金のあるおうちの人しか医師に養成できないということに、逆に私学も悩んでおられます。

 まして、これだけの税金、お金をかけて医師を養成しているという事実を果たして川崎大臣、お考えになったことがあるかどうか、一点お願いします。

    〔大村委員長代理退席、谷畑委員長代理着席〕

川崎国務大臣 医学教育経費ということでお示しいただきましたけれども、多分、下にもありますように、高校時代、中学時代からの親御さんの負担も含めて、実際問題、私はもっと大きな金額だろうと思っていました。何億円という金額が一人当たりかかっているんだろう、こう思っていました。

 それを、税という形で国立大学の支援という形でやっている場合と、先ほど申し上げたように親御さん等の支援、また自分等の働きによる支援というものでやっている人たちがいるだろう。それは、医学というものを学ばれる六年間の教育、またその後の研修も含めまして、大変な経費がかかりながら一人の医師が養成されていることは間違いない。それは、私は正直、もうちょっとかかっていると思っておりました。

    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕

阿部(知)委員 ここはあくまで六年間の医学部における経費でございます。そしてこれが、何度も申しましたが、私学であればそのうち三千万から四千万は授業料です。国立であれば三百万から四百万が授業料で、残りは、何度も申しますが、税金から出ているわけです。幾ら大学が独立行政法人になっても、この部分についてはほぼ変わることがありません。

 ですから、私は、この問題の当初に、これは長期的に見た医師の教育体制と、そして国が教育に責任を持つ限りにおいて、いろいろなところに、例えば僻地研修も、その後の何年間かの義務年限も、私は設けていいんだと思います。それは職業選択の自由云々以前の、これだけ経費をかけて育てているのです。私もまたそうやって育ててもらいました。このことを忘れて、あるいはこの官民格差を忘れて、何度も申しますが、派遣業で、何ぼのものか、何ぼ安いか高いかという基準の中にたたき込んだら、私は世の中のルールがおかしくなると思います。

 そして、あえて言えば医学教育ということについて、教育は文部科学省、医師の配置は厚生労働省とやってきたこれまでのやり方では、こういう実態も御存じないままに、厚労省は勝手にこれからは地方自治体の首長やあるいは病院関係者にいろいろな義務を課していくわけです。無理です。

 何が無理かというと、入り口でどうつくるか、どんなことをこの方たちには義務としてお願いするか、その大前提がなければ、その先を、派遣業者に任せるか、片一方には、自治体には義務を課して、こんなアンバランスなことをやって、日本の未来の医療が保たれるかどうか、私は本当に深く懸念し、また憤るものであります。

 私は、実は医学教育に幾らかかるのという問いは、ずっと厚労省に投げておりました。そして、ずっとさっきのような御答弁でありました、事務サイドも。これは文科省にお願いして、私学の私立の医科大学から出していただきましたが、大臣には、そこまできっちりと自覚して私は政策を打っていただきたいんです。余りに安易に過ぎます、選ばれる道が。

 また、女性たちの問題、例えば産休や代替要員がないからということで派遣にも道を開かれたと言いますが、こちらの方は、あくまで厚生労働省がやられようとしている女性の医師のバンクの方で私はやるべき、いわゆる無料職業紹介で十分いいのです。有料でやるべきことではないんだと思います。

 なぜ業に任せたのですか、大臣、もう一度お願いします。

川崎国務大臣 前回も御議論を賜って、医師というものは高い倫理性を持ちながら、そして国もこれだけの資本、資本といいますか、税を投じるんだから、多少、社会主義的というんでしょうか、義務をかぶしても構わないんだという御主張をいただきました。

 先日の答弁で私は、正直言って、行政もそれに対して魅力を感じるし、また、知事さん等からも、研修制度の中で僻地医療や急性期の医療を医師に課すことはできないか、こういう御相談を受けたことも事実でございます。しかし、一方で、これは職業選択の自由もあり、さまざまな皆さん方の御意見がある中でございます。

 そういった意味では、阿部議員の切り口としてはそうした切り口でございましょうけれども、今日そこまで、医学部を卒業した人たちに、もしくは研修を終わった人たちに義務をかぶせることが、方向性も含めてできるかということになりますと、正直、もう少し議論を煮詰めなければならないんだろうと私は思っております。ただ、方向性としては私ども一度示したことでありますので、また与党内でしっかり議論をしたいな、こういう思いは持っております。

 ですから、そうしたものと、さっき女性が産休をとる場合はというお話がございました。しかし、産休同様、僻地医療についてもいろいろ御議論いただいているように、極めて厳しい現状にある中でこの判断をした。阿部議員の切り口からいえば否定されるべきものかもしれませんけれども、私ども、さまざまな議論をし、パブリックコメントもいただいた中で決断をさせていただいたと申し上げたとおりでございます。

阿部(知)委員 私が指摘させていただいたのは、派遣業法にゆだねれば価格競争になるということであります。このことは大臣が思っておられる以上に深刻な、実態、現状をさらに悪化させるものを生むであろうということです。

 そして、女性医師の産休代替の問題も、厚生労働省は女性の医師たちの労働実態を御存じでしょうか。今、医師不足と言われている診療科別の格差は、少ない科と言われている産科、小児科、麻酔科、これらはいみじくも女性医師の比率の高い診療科であります。そうした女性たちの労働実態、例えば、お産が終わって預けられる保育園が彼女の勤務のすぐ近隣にあるのか、子供が、我が子が熱を出したとき病児保育として預けられるのか。

 私は、まず厚生労働省がやるべきは、何度も申しますが、安易に派遣業法にこれを投げ込むのではなくて、女性医師たちの労働環境、これをきっちり調べる、そして必要な施策を打つということであると思いますが、どの程度の実態を把握しておられますか、お願いします。

川崎国務大臣 後で局長から詳細を答弁させますけれども、先ほどの看護師さんの話と少し違うと思っております。

 医師の資格を取られた方々は、基本的には医師としての仕事にそのまま継続してつかれていると承知いたしております。したがって、先ほど言いましたように、医療という仕事を自分の天職として仕事を続けたいという気持ちは高いものだと思っております。

 看護師さんの場合は、職場の問題もあったんでしょう、残念ながら、職場を離れて医療の現場から離れる方々が多い。こうした人たちをどうやって再研修しながら医療現場に戻すことができるかというのが大きな課題。

 医師の現場は、働きたいという意欲は強いわけでありますから、どうやって医療の行為をしていただくかというところに結びつけるのにはどうしたらいいかというところで、もちろん今お話ございましたように、保育の施設の問題、また、何といっても医療を預かる責任者の人たちが、女性医師の仕事がやりやすいような方法を選択していくというところにしっかり着目しなければならないのであろう。

 そういった意味では、まだまだそこまでできているんですかといえば、足らざる面があるのだろう、このように思っております。

阿部(知)委員 私は、今大臣がおっしゃった現状認識はやはりちょっとずれていると思います。

 今、女性医師たちも多く臨床を離れております。続けられない状況があるのと、やはり、きついよりは自分の子育てなり自分の時間を充実させようという向きが多くなりました。これは、一つは価値観の問題でありますが、しかし、続けられる体制を日本の社会がとっていないという状況もあります。看護婦さんだから離職する、女性の医師だから離職しないというのは、もちろん程度に多少の差はあったとしても、私は、今それに近い状況が起きているからこそ、小児科も麻酔科も産科も大変に倍加して医師不足が、現実には数が登録されても、深刻になっていると思います。御答弁どうぞ。

松谷政府参考人 女性医師でございますが、現在、全医師の中で女性医師の割合は一六・四%になってございます。近年、医学生の中で女性の医学生が占める割合は多くなってございまして、医師国家試験の合格者でいいますと三分の一程度となっているところでございまして、今後増加の傾向にあるのではないかと思ってございます。

 女性医師の労働状況でございますけれども、これは、ひとり医療界だけではなくて、女性の労働の問題というのは厚生労働省としても大きな課題として取り組んでいるところでございますけれども、女性医師について先般の調査等を見ますと、女性の医師は男性の医師に伍して、まさに今御指摘いただいている長時間労働にも耐えてやっているという状況にあるというふうに認識してございます。

 ただし、女性医師の場合は、先生御指摘のとおり、小児科、あるいは最も多いところは皮膚科、眼科、そして麻酔科、産婦人科というように、診療科によって若干偏りがあることは事実でございますけれども、それぞれの分野で男性の医師と同様に働いていらっしゃるという状況にあると思います。

 こうした女性医師が医療の分野でも非常に多くなっているということですから、女性医師にとって、女性としての出産、育児といったようなライフステージに応じた対応ということが迫られていることは御指摘のとおりだと思っておりまして、ライフステージに応じた就労の支援のための女性医師バンクの設立とか、講習会の実施、あるいは女性医師の労働環境の改善に必要な経費の補助などの予算を計上しているところでございます。

 また、別のところで御質問ございましたけれども、保育につきましても、保育政策全体の問題ではございますけれども、従前の看護職員の児童のための院内保育所につきましても、女性医師を含む職員の児童を補助対象に追加しているところでございます。

 女性医師を含めた一般女性労働者についてのいろいろな施策と相まって、やらなければならないことがまだまだあろうかと思っておりますけれども、今申し上げたような、女性医師の割合がふえてその労働力というのは医療界で大変重要な課題であるということを認識して、さらに進めていきたいと考えております。

    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕

阿部(知)委員 簡単に、伍して働いているとおっしゃいましたが、その陰には幾多の苦労もございます。一例挙げられたように、看護婦さんのお子さんならば入れる保育所も、女性医師である場合は預けられないところも現実まだまだございます。どういう保育がそこで保障されるか、先ほど言った病児保育もそうです、つまびらかにもっと実態に密着してぜひ厚労省は調べられるべきです。

 何度も言いますが、そういうことをしないで安易な派遣に投げ入れるということは、女性医師たちの、仕事を続けるというやはり生涯の本当の誇りを失わせていくと思いますから、もっときっちりしたデータがあるなら、後ほど私の部屋にいただきたいと思います。

 もう一点だけ、今は医師の、人間の方の問題を言いましたが、今度は地域の方の問題に振りかぶって、病床数のことで一点だけお願いいたします。

 この間、厚生労働省はずっと日本の病床数は多い、多いと言ってこられました。そして今度の改正で、先ほど高橋委員もお取り上げでしたが、いわゆる療養型病床群を医療型と介護型、おのおの転換させていって十五万床くらいに、現状三十八万から十五万床に減らそうというお考えも述べられております。

 このことの細かな取り上げは別途させていただくといたしまして、果たしてそうした計画の結果、日本の残る病床数はそれでもなお多いのでしょうか、厚労省の認識を伺います。大臣、お願いします、簡単なことですので。

川崎国務大臣 簡単なことですから、私から答えます。

 OECDの調査による我が国の人口当たりの病床数は、ドイツやフランスなど、欧米諸国と比べて実際問題かなり多いようでございます。人口千人当たり病床数、日本は十四・三、ドイツは八・九、フランスは七・七、イギリスが四・二、アメリカが三・三という数字のように承知いたしております。

 ただ、欧米諸国については、一般病床だけの数値がないために正確な比較は困難であると思っております。精神病床や療養病床を除いた我が国の一般病床だけの数値であっても、精神病床などを含んだ欧米諸国の数値と同じ程度か多くなっていることから、我が国の病床数が多いという傾向は基本的に変わらないと考えております。

阿部(知)委員 大臣の御答弁、御丁寧でしたが、もともとOECD諸国との比較の十四・三というのは、大臣がおっしゃったように精神病床や療養型病床群を含んだものです。我が国は何せ精神科の病床が多いわけです。それと、先ほど私が申しました療養型病床群を除いて果たして本当に多いのかどうか、数値で御検証いただきたいと思います。そして、その結果は、きょうでなくて結構です、また審議させていただきます。

 さらに、もしそれで多いとしても多少です、私は余り変わらないと思いますが、多いとしても、病床がそこにあるということは、単に地域経済にとっても、日本の社会にとっても、もちろん患者さんたちにとっても果たしてマイナスなんだろうかということを、きょうは大臣にお伺いしたい。

 理由は、例えば、今、この委員会ではございませんが、まちづくり三法等々の中で中心市街地の空洞化ということが言われております。病院や市役所や公的機関が郊外に出て、そうすると中心市街地が空洞化いたします。病院というのはいろいろな人間がアクセスできる、地域でも人の行き交う一つの場になってございます。私は、今後、厚生労働行政を考える大臣にあっては、単に外側からのマクロなものだけでなく、医療というものが高齢社会の中で地域基盤として重要なんだという視点をお持ちにならないと、いたずらにそろばんで、机上で削減していくということを進めた結果、結局は、人もいない、病院もない、何もないという結果が出てくるのではないかと思います。大臣、いかがですか。

川崎国務大臣 そこのところは、まさにこれから十年後、二十年後、医療費がふえていく中、だれが負担していくべきか、私たちが負担をしますよといえば、よりベッド数をふやしながらお年寄りにより優しい政策を進めていくということは、まさに阿部委員の御指摘のとおりだろうと思います。

 しかし、その費用は若者が負担をしなければならない。そういう意味では、OECDの例を取り上げていただいてこうした議論に入るならば、どうぞ今度は、その負担というものをどういうふうに考えていくか、そういう意味では、我々、六月には歳入歳出計画をやりますけれども、どうぞ消費税等の議論についても活発な議論をお願い申し上げたいと思っております。

阿部(知)委員 もちろんそれを避けるものでもございません。ただ、その前提には、医療は単なる消費ではないということをどの程度厚労省がしっかりと自覚しておられるかです。単純に対GDP比でも、もちろんさらに私は上げるべきだと思います。単に消費で、御高齢者が荷物だ、医療にかかるのは金食い虫だ、こういう形でこの長寿高齢社会を考えるのであれば、私たちは、果たして何が富を生んでいるか、何が財になっているか。私が指摘させていただきたいのは、医療とは社会的公共資本だということです。いろいろな数値も合わせて、次回でも私も審議させていただきたいと思います。

 きょう、総務省にお越しいただきましたのは、総務省は、この間、地域が病床を削減したら、その分財政措置において多少の目配りをするというお話ですが、総務省のこうした案が出てくるもとにも、病床が多いんだ多いんだという御認識でこうしたことが出てきているのでしょうか。お願いします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 道路交通網や情報通信網の発達、あるいは、僻地等を中心とした条件が不利な地域における医師の不足等、病院経営を取り巻く環境が大きく変化しておるところでございます。これに伴いまして、自治体病院におきまして、地域におけるこうした自治体病院の役割を明確にし、診療科目あるいは病床規模等について見直しを行うとともに、必要に応じ、病院の再編、ネットワーク化など、医療機関相互の連携あるいは機能分担を推進して、医療提供体制の見直しを検討するということが必要というふうに考えてございます。

 そのために、平成十七年度より、自治体病院の医療提供体制の見直しによりまして病床の削減が行われた場合につきまして、削減後五年間に、当該の削減病床数がなお存在するものとして扱うという普通交付税措置を含む地方財政措置を講じたところでございます。この措置が自治体病院の再編やあり方の見直しのインセンティブとして働いて、経営の健全化、効率化につながるということを期待しておるところでございます。

 総務省といたしましては、こういったことで引き続き、そういうネットワーク化の支援を進めてまいりたいということでございます。

阿部(知)委員 もう少し簡略に、そして私の聞いたことに本当は答えてほしいですが、私は、わざわざまちづくり三法の例まで出して、単に病床数が云々でなくて、その地域の、先ほどおっしゃったような道路交通網も含めて、人の流れも含めて、どんなものであるのかという目を医療について持たないと、本当に無益な削減と税の使われ方がすると私は思いますから、今、わざわざこの委員会にお呼びいたしましたので、御答弁は御答弁として承りますが、私のお伺いしたい点にはちょっとお答えでなかったと思わせていただきます。

 引き続いて、私は、きょう、医療提供体制の問題と同時に、その医療を受ける患者さんサイドの問題、そして、ずっとこの間、問題にさせていただいている医療過誤、医療事故の問題について少し追加的に質問をさせていただきます。

 皆さんのお手元にお配りしてある一面は、いわゆる医療過誤における逮捕事案でございます。ここの三点目の福島県警察というのは、あの大きな騒ぎになった大野病院ですが、一番上にございます東京女子医大で、人工心肺を回す中で、平柳明香ちゃんというお嬢ちゃんが心臓手術の中で亡くなっていかれたという事案がございます。

 この事案は、これまでもいろいろな取り上げられ方もいたしておりますが、カルテの改ざんがあり、それに伴う医療費の保険上の不正請求があったということで、同大学が特定機能病院という病院であったことの取り消しと同時に、その他、白紙のカルテがたくさん出てきたり改ざんがあったということで、厚労省の方からも、恐らく去年の四月から七、八回に及ぶ立ち入りの監査が行われたと思います。その結果、現段階で、大臣、何が明らかになり、厚労省としてどんな方針をお持ちであるのか、お教えください。

    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕

川崎国務大臣 御指摘の事案、東京女子医科大学病院における問題については、現在、事実関係を調査中であることから、具体的な対応については、現時点では確定的なことは申し上げられない。これはお許しを賜りたいと思います。

 なお、一般論として申し上げれば、改ざんされたカルテなどに基づき診療報酬の請求が不正に行われた場合には、その態様に応じた処分や措置が行われるものであり、今回の事案についても、仮にそのような事実が確認されれば、厳正に対処してまいりたいと考えております。

阿部(知)委員 私は、先日来、この委員会でも、例えば医師たちが警察によって逮捕されるというような事態の前に、医療として、医療行為としての適切さと、そして、それに、きちんと法令にのっとった医療ができるように、まず医療現場自身がしっかりしたものになるように、厚生労働省に御指導いただきたいということを申し上げてきました。

 このカルテの改ざんということに関しては、実は、医師法上は何ら罰則がございません。医師法の二十四条では、簡単に言えば、カルテは速やかに書かねばならない、そういう条文はございますが、改ざんをしてはいけないとか、改ざんした場合どれだけの罰則があるとか、そういうことがございません。

 私は、医療がもっと信頼されるものになるためにも、この医師法という医師ののっとる法律の中で、カルテの改ざん問題にきっちり厚労省として法制化をするべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

川崎国務大臣 医療事故を隠すという目的のために診療録を改ざんする、これは医師の職業倫理に著しく反する行為であり、法律以前の問題だと考えております。

 十五年九月に策定した診療情報の提供等に関する指針、平成十六年十二月に策定した医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドラインにおいても、診療録等を不当に変える改ざんを行ってはならないと記載しております。このような行為が行われた場合、医事に関する不正等があったものとして、医師免許の取り消し等の処分の対象ともなり得ると考えております。

 したがって、カルテの改ざんという項目だけを立てて、これの罰則規定をつくるかということまでは必要ないのではなかろうか。医事に関する不正等があったということでございますので、厳正な対応をしなければならない課題と考えております。

阿部(知)委員 カルテという言い方はドイツ語を、日本の医学がドイツから輸入して始まったところによりますが、英語ではこれをヒストリーといって、患者さんの診療録はその方の歴史である、その方自身の生きた歴史であるというふうな教えられ方をします。それを改ざんするということは、やはり大臣が今おっしゃったような一般的な医療上のこととは違う重みを持っていると私は思います。そこに書かれたものがすべてであります。

 何度も申しますが、医療の中できっちりとした体系なり法ができれば、それは医療の中でおのずと解決していける道を開くことです。大臣の今の御答弁は、私が納得し得ないばかりか、数多い医療の中でのカルテの改ざんという事例について、やはり厚生労働省がどのほどに御自覚であるのかということを疑わせますが、とりあえず、次の案件に移ります。

 こうした医療の中の問題を、何度も申しますが、検察ないし逮捕という形で解決されるよりも、やはり医療現場での、医療事故が起きた場合のきっちりした報告、そして報告を受けた場合の立入調査並びに患者救済というような仕組みを、一貫して考えるべきではないかと思います。

 特に、きょう大臣に伺いたいのは、この間厚労省がやっておられるモデル事業は、亡くなられた方を病院がそのモデル事業にお願いしたり、あるいは医師法二十一条に基づいて、検察からこれはこのモデル事業にどうですかということを受け取られて、十四件の死因の分析をなさっています。

 でも、医療事故というのは単に死因、この方が何で亡くなったかだけではなくて、どういう過程で事故が起きたかということも含めて、やはり医療現場に厚生労働省が、行政立入権を持ってきちんと調査に入ることというのが不可欠と思います。

 皆さんのお手元に配らせていただきましたが、ことしの三月の新聞に載せられました記事で、ああ、前向きかなと思いましたが、「病院の強制調査も」と、行政処分を強化するというような報道がございました。しかし、今回のいろいろ御説明を私がこの医療法の改正の中で受けた中で、果たして予算措置、人員措置がどうなっているのかが見えません。

 大臣、これは厚労省としてどの程度真剣に、そして人の配置やお金も伴って取り組まれるものであるのかをお教えください。時間の関係で、大臣にお願いします。

川崎国務大臣 予算内容の詳細については、時間があれば担当者から申し上げます。

 このモデル事業、医療機関が遺族の同意を得た上で調査依頼を行う仕組みとなっております。これは、調査を行うに当たって、診療録の提供、医療従事者からの聞き取りなど、医療機関の協力が必要であるためであります。

 このため、本事業では、遺族が直接調査依頼を行うことができない仕組みにはなっております。遺族からモデル事業に参加したいという相談があった場合には、モデル事業の担当者が医療機関に対して御遺族の意向を伝え、モデル事業の趣旨を説明して参加を促すことという仕組みにしております。

 問題は、今後、モデル事業の実施状況を踏まえ、死因究明制度等について検討を進めることとしておりますが、その際に、医療機関の同意がない場合であっても、遺族からの依頼に基づき調査を行うことが適当かどうか、これは大きな検討課題、このように考えております。

阿部(知)委員 大半の医療事故は、患者さんサイドと医療者サイドの対立がある中で生まれてまいります。この対立が極限になれば逮捕とかいう事案も生じます。医療サイドもこの問題は悩んでいます。

 私は、厚生労働省がきちんとした立入調査も含めて、例えば労働災害では、その事案が発生すれば、きちんと何が原因でどんなことが起こったかということをつまびらかにするだけの権限をお持ちです。是正勧告もなさいます。労災の救済もなさいます。そういう制度がきっちりこの医療事故について保障されることによって、逆に、医療の中で安心して私どもも患者さんと向き合える体制ができるのだと思います。

 大臣は、きょうの私の質問時間はこれで終わりましたので、今私が申し上げたことをよくお聞き取りいただいて、本当に真剣に、そして早急にこうした体制を整えていただきたいと思います。

 終わらせていただきます。

岸田委員長 北川知克君。

北川委員 動議を提出いたします。(発言する者あり)

 ただいま議題となっている各案審査のため、その審査中、参考人の出席を求め、意見を聴取し、その日時、人選等は委員長に一任することを望みます。(発言する者あり)

岸田委員長 北川君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岸田委員長 起立多数。よって、動議のように決しました。(発言する者あり)

 次回は、公報をもってお知らせするとし、本日は、これにて散会いたします。


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