第164回国会 厚生労働委員会 第18号(平成18年4月26日(水曜日))抜粋 案件:
健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)
良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)
小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案(小宮山洋子君外四名提出、衆法第一七号)
医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案(園田康博君外三名提出、衆法第一八号)
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〔前略〕
○岸田委員長 次に、阿部知子君。
○阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
本日は、各参考人の皆様に貴重な御意見を拝聴いたしました。また、お昼どきを挟んでの長時間の、皆さんからの貴重な御意見を拝聴する時間をちょうだいいたしまして、大変にありがたいと思います。
私は、きょう冒頭、川渕参考人からお伺いをしたいと思いますが、実は、川渕参考人のお仕事は、日医総研におられるころ、あるいはせんだって送っていただいた御本も拝読し、ただ、読むと聞くとは大違いというか、やはりきょうまた拝聴して、ああ、さすがになるほどだと思ったことがございますので、まずその点からお願い申し上げます。
と申しますのは、川渕参考人のこのいただきましたレジュメの中で「三つの素朴な疑問」、あえて素朴という言葉を使われたんだと思うのですが、三ページに参りますと「本当に医療費はコントロールできるのか」と。私は、これを、どんな立場に立つ人も本当にエビデンスベースドで論議すべきときなんだと思います。
実は、土光臨調で、御指摘のように、国民医療費の伸びを例えば経済の伸びに連動させよう、今もまた同じことを財政諮問会議がおっしゃっているわけですが、結果的に、今度の改正でやっていることは、国民医療費の伸びではなくて、医療給付費、いわゆる公的負担を抑えようというだけであって、それが果たして本当に国民医療費の伸びを抑えられるのかどうかということは、何の論拠も示されていないんだと私は思うんです。
先ほど来、やはり国会の場にいると、お金、財政運営のことが大事だから、このままじゃ、広がったばかりのふろしきでどうにもならないんだという論議もありますが、そういう立場に立たれる方も、私は、本当にこの方策が将来国民医療費を抑えるんだという論拠がどこにあるのか。もう一点、私は、きょう内田参考人にお話しいただきましたが、医療は、単なる消費ではなくてニーズ、人間が生きていく上の絶対不可欠なものですから、それに対してまたもう一方の配慮が必要であろうという二本の軸があろうかと思います。
川渕参考人には、もう一度、果たして医療費抑制策は成功してきたのか、いくのか、もしかしてこの方策は間違った方向に、医療給付費、国民医療費ではありませんね、給付費を抑えていく方向が逆に、思うところと違う方向に行くのではないかという点について、御意見をお願いいたします。
○川渕参考人 非常に難しい質問をありがとうございます。
私、医療の研究をやっておりまして、今、医療界に入ってもう二十二年になるんですけれども、いろいろなところを転々と回っておりまして、ついに今学者になったんですが、非常に医療費について思うのは、今議員の方から御指摘がありましたように、本当に、医療というのは、やはり技術革新が一番ポイントだなと。
実は、先日、ハーバードのパブリックヘルスの教授でデビッド・カトラーというのがいるんですけれども、その人がおもしろい推計をやっておりまして、高齢化による伸び率だけを見れば、アメリカより日本の方が大きいと。日本は、彼の推計によりますと、四・四ポイントぐらい今後伸びていく、それからアメリカは三・七ポイントというような論文を間もなくNBERというところからパブリッシュしますけれども、技術革新を含めると、アメリカは九ポイントぐらい、日本は六・七ポイントとなっております。やはりアメリカの方が医療費が伸びるというのをどう考えるかですね。ただ、アメリカ人は医療を一つの産業と見ておりますので、市場規模という見方をしますと、技術革新をきちんと見てくれるからいいじゃないかと。
きょう余り産業界の方のお話はなかったんですが、例えば日本の製薬メーカー、世界に余り通用しない薬をつくってきましたけれども、ここへ来て、数社は海外で治験をやっております。そういう点で、私は、やはり、成熟社会になってきますと、医療というのはある意味では産業とする見方も必要じゃないかと。結果的にもう産業になっている部分もありますよね、雇用を生み出し、MRさんとかそういう人たちも含めますと、三百二十万人ぐらい今医療に携わっているわけですから。そこをどう考えるかということはあります。
したがって、私の答えから言いますと、医療費はコントロールできないのではないかと思っています。
ただ、もう一つの御質問でありますけれども、議員のあれにありましたが、では、これまで厚労省がやった政策、これは、一九八一年、土光臨調の後を受けて何をやったかといいますと、専ら使っているツールは、診療報酬のツールなんです。つまり、医療費は、診療報酬、プライスをもってして神の見えざる手を数人の技官でつくっているわけですから、これはもう神様もびっくりであります。問題は、これがきいているかどうかですね。これは、OECDの連中と会いますと、日本というのはすごいよね、こんな統制管理がよくできるねと言うんですね。だって、三十一兆円の医療費の値段表を上が決めるわけですから、カミというのはお上ですよ、これはすごい。
私が申し上げたいのは、ここ最近であります。ここ最近は、例えば、九七年以降、我が国はデフレ不況に入りました。言うまでもなく、国民所得はむしろマイナスであります。そして消費支出も減っている中で、我が国の医療費は粛々と上がっている、ここを今危機的だとおっしゃるわけですね。ただ、何が危機かというと、必ず厚労省が、社会保険庁あるいは政管健保のところ、もっと言うと保険局総務課、ここのバジェットが厳しくなると抜本改革になるわけです。短期保険なわけですね。したがって、中長期的なビューなんかないわけです。年金は、若干でありますけれどもまだ積み立てがある。ですから、この短期保険をどうするかという問題が私はやはりあると思うんですね。
したがって、ちょっと長くなりましたけれども、最近の医療費適正化については、もうPだけでは無理じゃないか。というのは、先ほどの内閣府のスタディーでもありましたように、皆さん、やはり民間病院が多いですから、やはり調整してくるわけです、数量で。これがいいかどうかですね。私は、やはりPとQの両方を考え、やはり質、ここが一番抜けているんじゃないかと思います。
以上であります。
○阿部(知)委員 私も常に思いますことは、医療費の論議をするときに、すごく後ろ向きなんですね、縮み思考。技術革新だって、これからは、現在日本が置かれている地位とかいろいろな技術力をもってすれば新しい分野もまだまだ開けようと思いますし、ある種医療産業的な視座というのも必要になっている時代にもかかわらず、とにかく医療費を、それも誤った手法で抑えようとするから、非常に患者さんたちにも負担が強いばかりか、もう一つ、医療提供体制を担っている医療従事者が疲弊し果てていくと思うんです。
私は、引き続いて内田参考人と鈴木参考人に同じ質問をさせていただきたいのです。
私自身も、病院の勤務医もやり、また開業を現在もしておりますが、何が国民に一番見えていないかというと、医療という、あえて言えば労働集約型産業、すなわちたくさんの人手で支えているこの仕事がどのくらいの人件費で成り立っているのかということを医療者ももっともっと国民に見せて、それこそ財務諸表を見せて、これだけの医療を提供するにはこれだけの人件費がかかっているんだ、安かろう悪かろう、死んじゃったでいいのかと、私は、はっきり言えば、そこまで国民に明示しなければ、この不毛な論争は、結局、私たち医療者も泣く、国民も泣く、命はなくなるとなっていくと思うのです。
そこで、内田参考人は医師会というお立場、そして鈴木参考人は民主医療機関連合会という、病院団体も多いかと思います、そこの中で、医療という、あえて産業と言わせていただきます、この仕事にかかわる人件費の問題はどんなふうに分析されているのか、よろしくお願いします。
○内田参考人 お答えします。
さすがに医療の現場から出ていらっしゃる阿部先生の御質問だと思いますけれども、国民医療費を抑制できるかという議論が先ほどありましたけれども、診療報酬がツールになっているという話がございました。
この間の国民総医療費の伸びを見ますと、非常に低いレベルで抑えられていまして、厚労省の推計をはるかに下回っております。このような事実を見ますと、どこでそれを支えているかといいますと、やはりこれは、現場の医師たちあるいは医療関係者たちの献身的な努力、職業倫理といったようなものに支えられてきたと思っております。現状ではこれがもうそろそろ限界に来ているのではないか、そのために、病院から開業へとか、地域格差を含めてそういうシフトが起きてきているというふうに思っております。
ただ、現状はこれを受け入れるしかないわけで、その中で、いかに医療の水準を後退させず、良質な医療を平等に提供していけるかということを考えますと、やはり、機能分担、機能分化、それから有機的な連携というものにしっかり取り組んでいくしかない。病診、診診、病病連携、あるいは介護との連携といったようなところ、それから予防や健診についての取り組みを進めるといったようなところでの対応ということを現実の枠組みの中で考えて取り組んでいくしかないのかなというふうに思っております。
○鈴木参考人 どうもありがとうございます。
私ども、今度のこの医療制度改革をめぐる国民と医療者との関係ですね、この間、郵政、それから最近は役人、そして今、医療者を国民と乖離させるような報道あるいは流れがあるのではないかなということがあります。それは、ある意味では意識的にやられている感じもしますし、一方で、医療者側の透明度といいますか、そういうことが疑われることがあった。日歯連事件なんかがその典型だと思います。
そういうことも含めまして、日常的に、最近はインフォームド・コンセントとか、いろいろな意味で随分医療者が頑張ってはいると思います。医療の医師の労働というものが、私も外科医ですので、例えばいろいろな手術の前の説明、どういう医療機関がいいかと選ぶこと、家族にあれすること、それからまたお亡くなりになられる場合のいろいろな説明、書類とそれから説明に非常に時間がかかるということがかつてよりもずっと多くなっております。それはある意味で進歩だとは思いますけれども、今までが説明なしのことも多かったという反省もありますが、そういう時間が非常にとられている。それは夜の夜中も含めて行われています。そういう医療そのものを超えた労働、先ほどのいろいろ事務的なことが非常にふえてきておるということが一つあります。
それから、看護労働が、今、電子カルテが入ってきたり、あるいは在院日数短縮、そういうことで看護師さんが非常に過密な労働になっているということが非常に看護界でも問題になっております。これは今、看護師さんもいろいろと、看護協会なども国民に向けていろいろな発言を、メッセージを出しておりますし、私どもなども、看護師さんたちが頑張ってメッセージを出しておりますけれども、このような姿を、我々ももっと努力してあれしなくちゃいけないと思います。
それから、ぜひマスコミの関係者の方々も、医療の現実の姿、随分いろいろな連載は出てはおりますけれども、例えば先ほど問題になった福島の大野病院みたいな事件、非常に痛ましい事件で、外科学会総会で、私も出ていましたところ、あの事件のリアルな報告がされました。本当に出血がどんどん多量で幾ら輸血を申し込んでも来ない、一時間来ない、一時間半来ない、そのうちに亡くなったというその報告は、本当に痛ましい報告でした。この産婦人科医の気持ちたるやいかなるものかという報告がありました。
そういう形で頑張っている医師たちに、本当にいきなり警察権力で入ってくるというようなやり方というのは、うがって考えますと、医師とほかの国民と差をつけるような、分断するような動きではないかなと思いまして、ああいう事件に関しても、きちっと第三者機関で評価するような、そういうシステムをつくらなくちゃいけないなというふうに思っています。
私は、一番今重要なのは、医療者と国民の皆様方、患者様との相互理解、最近も自動車会館でシンポジウムがありましたけれども、こういう取り組みをどんどんやっていくことが必要なのではないかというふうに思います。
以上でございます。
○阿部(知)委員 金銭面だけでこの医療改革、あるいは私から言わせれば改悪になってしまうようなことをする以上に、本来的に今行わなければならない医療制度の改革は、恐らく、渡辺参考人がおっしゃいました地方分権ということの大きなてこに医療というのはなるし、また、していくために本当にどうすればいいかということなんだと私は思うのです。この間のやり方ですと、一切地方に税源の移譲もなく、今、ほとんどの地方の例えば都道府県立の病院は大きな赤字を抱えたまま、もちろん市町村立病院もそうでございます、このまま例えば医療計画等々のその業務だけ投げられても、本当のビジョンを描けない。
そこで、渡辺参考人がスウェーデンの例を引かれて、確かに北欧諸国、ほとんどの分権は医療という単位において区分けされ、現実に支出もされていると思います。
三位一体改革ということと絡めて、本来的に今回なされるべき地方分権と医療ということを考えました場合に、先ほど参考人は税の負担を増しましょうという御意見でありました。私も、どこから取る税かという問題はまたございますが、それもあり得ると思います。でも、今のこの姿では、地方は本当に担っていけるだろうか、財源はどうするんだとすごく不安になるのですが、この点はいかがでありましょうか。
○渡辺参考人 お答えします。
おっしゃるとおりで、私は、基本的に医療行政を都道府県に持っていくことは賛成だと先ほど申し上げましたし、それは地方分権の大きな一つの引き金といいましょうか、きっかけになると。ただ、これもまた先ほど申し上げたように、では今の県の問題、このままでいいのかという問題は当然残ります。そうすると、先ほどは例えば鳥取、島根という固有名詞を出して申しわけなかったですが、人口の規模の少なさ、あるいは財政力の少なさといった問題があります。
また、今委員が御指摘なさったような自治体病院、つまり、県立、市町村立千百ある病院のうち、一般会計繰り入れを除けば九六%が赤字という状態で大変厳しい。一方で政策医療もやらなきゃいけない。そういった数々の問題を抱えている中で、いきなり都道府県にすべての責任、あるいは市町村にすべての責任ということではなかなかうまくいかないのは当然であります。ですから、財政的にどう裏づけするのか、あるいはもっと言えば人的な問題ですね、そういったものをもらってするのか。
さらに、さっきの御質問は私には直接関係なかったのでありますが、私自身も、医師及び医療従事者の収入といいましょうか、極めて少ないなと思っている一人でございます。先ほどあったように、医療費三十一兆円、医療従事者は先ほど川渕さんからあったように三百万人。そうしますと、単純計算しますと一人当たり約一千万円ですね。これは全部売り上げの話でありますから、一千万円入ってくるわけがない。そういった意味からいいますと、人件費も相当低いなという気もいたしますので、今時間の関係で詳しくはあれですが、そういったことも勘案しなければ、単純に県に移せばそれですべて成るというものではないと思っております。
○阿部(知)委員 残された時間が些少です。申しわけありませんが、星野参考人にお願いいたします。
社会保障審議会の医療保険部会の中で、現状、国保が五千万人になんなんとしている、恐らく、星野参考人の御経験の中で、国民皆保険制度の成り立ちから今日に至るまでの中で、かほどに国民健康保険が人数的にも多くなろうということは予測を上回るものであると思うのです。
それで、この国民保険五千万人現状というのはどのように分析され、どう方向づけられていくべきかということを一言教えてください。
○星野参考人 全く御指摘のとおり、大変な問題だと思います。
私どもが若いころの人口推計から始まって、そもそも論から言うのは時間の無駄ですけれども、ともかく、だれがこういう状況を三十年前に想像したか。ないんじゃないんでしょうかね。
しかも、皆さんが悪いことをしたからこうなったんじゃなくて、長寿社会になったからこうなったんですね。だから、そういう意味では、本当はことほぐべきことにもかかわらず、実際の生活になると、みんな六十歳定年でおやめになるとかリタイアして、その後もう一回人生があります、こういう話になるわけですね。ところが、病気の発症率が確率論的に言えば大変高い世代になってしまうわけですから、当然医療費がかかってくるのはやむを得ないんですね、事実上の問題として。
そこで、今度の医療制度改革も、一言で言えば、そういう問題についての七転八倒をしているところなんじゃないか。こうやって先生方が皆さん大変御熱心にこれを議論していただくというのは非常に国民としてありがたいことでありますし、また、いい知恵があれば知恵を出していただきたいと思いますが。
私も、部会長をやっていて、関係者、ずらっと皆さんおいでいただいたわけです。保険者だとかお医者さんだとかあるいは労働組合の方、経団連の方とかにおいでいただいたんですが、それぞれがそれぞれの立場でそれぞれ率直に言っていただくわけで、これは大変ありがたいことです。というのは、どこにそれぞれの立場からすると問題点があるのかというのがはっきりするわけですから、ありがたいんですが、今の状況は、それぞれのお立場からいったら、みんな不満です。何かをすれば必ずこっちが不満になる。
したがいまして、どちらかというと、先生方は頭がよろしいから、多分、ウイン・ウインの、みんなが喜ぶような御解決案を出されるかもしれませんが、私なんかの頭ですと、今の状況は、いかに不満を最小化するか、あらゆる関係者の不満を最小化していくかということが非常に重要なんじゃないか。その間にもうちょっと頭のいいのが出てくれば、もっとうまい案を考えるのかもしれませんけれども、どうも、今の状況を言うと、先生御指摘のように、余り現実をなめちゃいけないんじゃないかと。
やはり、何かいい知恵があって、あっという間に、ある党がやれば立派になり、ある党がやるとだめになるとか、その程度の話ではない。むしろ、ダイナミックに事態が変わっていくわけでしょうから、もし今度の医療制度改革がうまくいかない、例えば、先ほど格差の話が出ましたが、格差でも出てきたら、むしろ野党の方々にとってはダイナミズムが働くわけですから、今度は政権をおとりになって、ぜひ国民のためにやっていただく、そういうダイナミズムをお互いに許容すること、それが今一番大事なんじゃないんでしょうか。
それで、精いっぱい今やったのは、政府案だって精いっぱいやっているわけですから、ひとつその上で大いに討論していただくということが非常に重要だと思います。
どうも勝手なことを言って申しわけございません。
○阿部(知)委員 逢見参考人には、出産の医療保険適用をさらにお進めくださいますようによろしくお願い申し上げて、質疑を終わります。
〔後略〕
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