第164回国会 厚生労働委員会 第30号(平成18年6月13日(火曜日))抜粋

案件:
 政府参考人出頭要求に関する件
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第六八号)(参議院送付)

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(小宮山洋子君外五名提出、衆法第三二号)


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〔前略〕

岸田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、各参考人の皆様は、もうお昼も過ぎましたのに、大変長時間の御出席で御苦労さまでございます。

 本日の委員会の参考人からお話を伺うという場は、既に参議院で本法案が成立して、衆議院に移ってきたということで、論議の当初から熟した部分といいますか、かなり皆さんそれぞれの御主張で、参議院での主張をなぞられて御発言の部分も多いと思います。しかしながら、私といたしまして、この衆議院では本日が始まりの始まりでありまして、やはりそもそも論のところも少し私もお伺いしてみたいと思いますので、その点、よろしくお願い申し上げます。

 実は私は、私的なことを申せば、小児科の医者でございます。最近騒がれております出生率の一・二五という値を、もちろん数だけではない、産めやふやせやではないけれども、女性も男性もやはり子供を持つ機会に恵まれること、それからまた、その中でみずからも育っていくこと、社会的にも、そうした子供をはぐくみ、育てられる社会の力があるということはとてもいいことであるし、また未来そのものであるとも思っております。

 そうした中で実は三十一年やっておるのですが、この雇用均等法が二十年前にできて、果たして本当に、正直なところ、よくなったかな。お父さんの働き方、お母さんの働き方、あるいは予備軍である若い人たちの働き方、あるいは子供を生み育ててみようというふうに勇気を持って思えるか、あるいは結果的でもいいんです、できちゃった、育ててみよう、こういうふうになっているかというと、やはりちょっととすごく思います。その結果が一・二五だと思います。

 そして、今、その子供たちを診る小児科医の、数の不足ではなくて、臨床現場からの、何といいますか、立ち去り型サボタージュというんですが、いなくなっちゃうということが相次いでいます。どうしてかというと、本来は、数が少なくなったはずなのだから、小児科医の仕事は楽になっていいはずなのに、受診時間は夕方から深夜、本当の真夜中、三時、四時、うし三つ時にがあっと寄せ集められて、果たしてこの子供さんと親御さんの時間はどんな時間なんだろう毎日日にち、と思うことしきりでございます。

 一方では、社会的に見れば、この数日、世上を騒がせております、ある若いお母さんが御近所の子供さんを殺してしまったかもしれない事件、これとて本当に、正直言うと、数十年前には、私が小児科医になりたてのころには想像もできなかった。どこかがひずんでいるし、ゆがんでいるし、そして願わくば、この本日の雇用の均等法の改正、二十年目、改正がそうしたことに何がしかのパワーを与えてほしいと願うものでありますが、果たしてこのままではそうなれるのかどうかということを懸念するわけです。

 特に、冒頭の参考人である川本さんにお伺いしたいのですが、この間、我が国においては、一九七〇年代は、女性の労働力率は、例えばアメリカやノルウェーよりも高いものでございました。現在では、アメリカ、ノルウェーは、まあアメリカを上げるとまた問題になりますので、ノルウェーとかにいたしましょう、労働力率も上がり、出生率も上がったという経緯をとってございます。

 簡単に言えば、昔は働いていると子供はなかなか持てなかったのが、働くことと子供を持つことがちゃんと両立し得るんだということでございました。でも、日本の場合は、労働力率の回復も、それは多少は回復といいますか上昇もなってございますが、しかし、その中で出生率は下がってきております。労働力率でも、平均すればまだ六割にも行かないんだと思います。

 こうした実態があるということは、すなわち、働く場における、やはり女性、そして近年では、男性の働くということと生活ということの両立がなかなか困難な働き方をしているんだという実態であると思いますが、このことに対して、最も大きな使用者側であります日本経団連の皆さんからごらんになって、我が国の働き方、このままで将来大丈夫だろうか、この一点を冒頭お願いいたします。

川本参考人 ただいま、働き方、仕事と家庭という関係の御質問だったかと思います。

 今、先生の方からは、かなり少子化を前提としたお話があったかと思います。実は私ども、私のセクションではございませんけれども、この少子化の問題についても検討を続けておるところでございます。

 この少子化の問題、働き方の問題もございますし、実はそれだけでなくて、多分要因は多岐にわたっておって、今その多岐にわたる項目を実際どこまでやれるんだろうか、あるいは、今後の日本における労働力人口というのはどの程度必要なんだろうか、生産性はどうなんだろうか、非常にこれは大変な範囲の問題でございまして、現在、私どもの中の担当部署で鋭意これは検討をしているということをまず申し上げておきたいと思います。

 また、今、仕事と家庭ということでございました。この仕事と家庭の両立という、そのものの考え方につきましては、重要だなというふうには思ってございます。

 ただ、先ほども申し上げましたとおり、だからといって画一的な基準でやれるかといいますと、それは大変難しいのであろうと思っております。非常に個々人の価値観も多様化しておりますし、そういう中を受けながら、どういうふうにニーズにこたえていくのか。働く方のニーズだけにこたえるというのも、またこれは難しい部分がございますので、企業としても、そういう仕組みをどうやってつくっていけるのか、こういう企業のニーズと働く側のニーズ、どういうふうにマッチングしながらやっていくかというところで、今非常に各企業においても御検討されているところが多いのではないかなと思っております。

 私どもといたしましては、報告書等を通じて、こういう仕事と家庭の両立あるいは少子化対策として、産み、そして育てていく、いかに社会なり企業の環境をつくっていくかということの必要性は訴えてきているところでございます。

 以上でございます。

阿部(知)委員 私はもちろん少子化の観点からお伺いいたしましたが、社会が健全であるためにも、私は、もう少し企業に、社会的責任と言われる部分と、それから多様化、ダイバーシティーという言葉で昨今企業の皆さんはおっしゃいますが、その中身を具体化していただきたいと思うのです。

 日本の企業は、社会的責任ということについて言えばまだまだ、女性たちの働くことと子育ての両立、あるいは男性方もそうですが、しかし、これが女性に限られて非常に強く出てくるというところには、もちろん、一日の生活時間の調査、この数日、またこれも新聞に出ておりますが、男性、女性を比べれば、圧倒的に女性の方が家事労働も担い、これは働いている女性でもしかりであります。男性方は大体、一日平均二十数分の家事労働、妻が共稼ぎの場合でも。そういう中で現実に暮らしておられるわけですから、やはり本当にこの我が日本の社会が健全で、そして豊かであるためにも、ぜひぜひさらなる警鐘を鳴らしていただいて、私は取り組んでいただきたいと思うんです。

 そういう中で、きょう私は、やはり一番衝撃的というか、私の心に強く響いた発言は、実は中野さんがお話しになったことでありました。すべての差別は、これは差別される側にとって非常に強く認識されますが、差別している側は、それが何かよくわからない。それで、どんどんどんどん見えない差別にすりかわっていくと。

 そもそも、男女雇用均等法を最初につくった二十年前の時点から、この雇用均等法が人権ということとどう密接に結びついた概念であり法の体系であったかということと、それから、今般とりわけ労働が多様化した中で、非常に人権ということを保障されず働いている多くの皆さんがおられるわけで、この時代背景を踏まえてのこの均等法二十年の改正はいかにあるべきか、核心点について、再度お願いいたします。

中野参考人 均等法は努力義務規定から始まったわけですけれども、差別というものは、人間の尊厳、人格に対する最大の犯罪でありまして、これをなくすということは、人類普遍のテーマでありました。

 二十年前に私が本当に御指導いただきました総評の山野婦人局長が、小さく産んで大きく育てようというふうに均等法を発足させたわけですけれども、このときに女性たちが願ったものというのは一体何だったのかということを、もう一度この審議のところで思い起こしていただきたいと思うわけです。

 当時から女性たちはセクシュアルハラスメントを受け続けてきました。低い仕事に塩漬けをされて、その結果として低い賃金しか与えられず、そして、一個の自立した人間として生活を営むということが本当にできないほどの低賃金というものが女性たちを襲っていました。本当に、この奴隷的な労働からいかにして解放されるのかということが、均等法を生み出し、そして女性差別撤廃条約を批准させていったエネルギーであったと思います。

 こういった願いというものは、今女性たちの願いとしてはもっと大きくなっているということ、見えない差別の前に立ちすくむということが、声として差別を告発することを困難にしているということはあっても、この差別に対して、なくさなければならないという思いはさらに当時よりも強くなってきているということを、ぜひ念頭に置いていただきたいというふうに思います。

 一人一人が大事にされない、これはもう差別の基本だと思います。大事にされないということは、次代を生み出す次の世代を自分たちで育てていこう、生み出していこうという意欲も奪ってまいります。そういう意味では、差別はなくさなければいけない。そのために効果的な措置はといえば、何といっても、間接差別の法理に基づいて、目に見えない差別を可視化していくという手法を制度の中に盛り込むことだ、これ以外にないというふうに思います。

阿部(知)委員 ヨーロッパ等々では、そうした間接差別の問題と、働き方の、非正規労働等々の問題をちょうど解決するための、一人の人格としての存在としての労働者の問題として取り上げているというふうに伺っておりますし、願わくば、我が委員会もそのようなものとして審議を深めていきたいと思っております。

 続いて、連合の参考人である龍井さんからお願いいたしますが、私がきょういただきました資料で、ああ、よくできているな、そうだなと思いましたのは、実は一九九七年に雇用機会均等法の改正がございまして、同時に、時代は働き方の多様化ということに向かって、実は均等とは逆方向に車を走らせておったと。十年近くたった今日、男性も女性もこれで走り続けて大丈夫かといえば、男性方は長時間労働で、うつ、ノイローゼ、自殺がふえる、女性たちはもうコマネズミのように働いても働いても働いても摩耗していくだけの中で、例えば出生率を上げよと言われたって、もう頑張れないという状態が来ていると思います。

 そこで、それこそワークライフバランスのお話、繰り返し各委員もあったと思います。これは八五年当初は法案の中にあり、すっと消えてしまった。やはりこの時点で明文化して、さらに強く組み込むべきだという御意見と伺いましたが、もう一度お願いします。

龍井参考人 先ほど、働き方の多様化という表現がありました。私は、別の言い方をすると、多様化はしていないんじゃないか、つまり、ステレオタイプな基準は全然変わっていないということをむしろ強調したいわけです。

 八五年当時の話が出ましたけれども、当時の多くの女性たちは、二十年前、その法制定のもっと前から、つくる運動のときから、男性並みの平等じゃないよねというのがもう一つのスローガンだったわけですよね。

 おっしゃったように、ふたをあけたら、結局そのスタンダードが変わらないで、そのスタンダードというのは男性正社員基準ですから、そのちょっと前でいうと、専業主婦的な、つまりケアをする人が、専業主婦がいるから専業労働者がいるという、ほぼそのユニットで来たわけですよね。そこに女性たちが合わせざるを得なくなってしまう、したがって二極化している。ですから、実はその基準そのものの揺らぎというのが、頑として、ダイバーシティーと言われていてもモデルが変わっていない。

 だから、それが、もういいかげんにしてよというのは、先ほどの例を出せば、例えば、では、男性の管理職の中でちゃんとそれが、育児も含めて、介護も含めて、両立できている人がどのぐらいいるか。男性の管理職割合じゃなくて、男性管理職の中でそういう人たちが。

 実は、日本経団連の今回の経労委報告の中で非常に注目をしていますのは、ワークライフバランスとは単なる育児支援ではなくて、すべての人を対象にということを明記されています。ここはとても大事な視点だと思っていますので、だとしたら、そういうところがまず変われるかどうか、そういうことを後押しできる、あるいはフォローできるような均等法なのかということだと思っております。

阿部(知)委員 昔、第二の性という言葉がありましたが、この雇用均等法ででき上がったものは、もう一人の男性型女性をつくってきたのではないかという御指摘だったと思います。

 私も、実際に目の前にあらわれる子供たちの親御さんを見ていると、本当にそんな気がしてならないわけです。そして、逆に、もっと人間的に生きたいという思いも皆さん絶対に強くなっているし、逆に、少子化の現状も、若い人たちが前の世代を見ていて、これじゃちょっとねというところもあると思いますので、さらに労働団体としていろいろ、これからはホワイトカラーエグゼンプションとかいって、またまた長時間になる。私が町中で出会う若い男の子たちが、若いといっても三十代の男性が最も気にしている改悪でございます。これでもっと、残業もなくなり、労働時間がこんなになったらやれないよと、本当に声をかけてくれる男性が多くなった昨今ですので、ぜひ連合の皆さんも、さらに鋭意取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、酒井参考人にお願いいたします。

 きょういただきました資料を見ると、唖然、歴然、びっくり、本当にこんなふうに、コース別管理という言葉なのか、これがどうかわかりませんが、賃金から働き方まで、寸断され、分断され、なかなか均等たらざる現実というのがあると思います。

 二〇〇〇年段階から、既にこの間接差別のことも含めて熱心に運動してこられて、また、参議院でもいろいろな働き方をされて、衆議院に移ってきたわけです。この段階で最も強調しておきたいこと、最後に一言お願いいたします。

酒井参考人 やはり、特に私は、ずっと非正規労働者、特にパート労働者、パートの女性たちの処遇をどうやって均等待遇にしていけるのかという問題に非常に関心を持ってきましたけれども、そういう意味では、今、パートの女性たちは、今ここでこういう均等法の審議がされているということについて、実はほとんど知らないと思うんですね。

 ここに例えば傍聴に来ておられる方、あるいはずっと均等法について関心を持ってこられた方というのは、やはり労働組合に属している方、それから正社員として働いてこられた方が多くて、恐らく、パート、女性は七百万と言われますけれども、そういう方々は、自分の働き方がここで審議をされているなんということは全く夢にも思っていないと思います。それぐらい均等法というのはパートの女性にとって遠い法律だったんですね。

 今、私は、ここでもう一度この均等法の考え方、基本理念も含めて議論をいただいて、そして、この均等法は決して正社員の女性だけのものじゃないよ、パートで働いていても、派遣で働いていても、契約社員であっても、どんな働き方をしていても、女性にとって自分の働き方を変えていく、差別をなくしていく、そういう法律なんだよということを、もう一度やはりここで、パートの人たちが本当に絶望をしないで、本当にこの均等法で救われると思えるような、そういう法律に変えていっていただきたい。そのためには、やはり間接差別。

 私たちは、実は、この前の均等法が改正されるときに、セクシュアルハラスメントという言葉が均等法の中に入りました。そこで初めて、ああ、そうか、今まで私たちが不愉快な思いをしてきた、これが実はセクシュアルハラスメントというはっきりした名前があって、それによって私たちは権利を侵害されてきたということを、目からうろこが落ちるような思いで感じたわけですね。

 そういう意味では、今回この間接差別が入ることによって、そうか、今まで、パートだからしようがない、パートだから安くてしようがない、パートだから首切られて当たり前と思っていたけれども、これははっきりした間接差別だということで、パート女性の中にとても自信が芽生えてくると思うんですね。

 そういう意味では、限定列挙ではなくて、形を変えてあらわれる差別を間接差別というふうに命名することによって、これまで差別されてきた女性たちが本当にもう一度自信を取り戻すことができる、そういう法律にしていただきたいと思います。

阿部(知)委員 貴重な御意見をありがとうございます。

 田島参考人と伊東参考人には、御自身の経験も踏まえて、また、いろいろな仕事の取り組みも聞かせていただきました。本日、質問時間がなく、伺うことができませんでしたが、心からお礼申し上げます。ありがとうございます。

岸田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

〔後略〕


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