第164回国会 厚生労働委員会 第6号(平成18年3月8日(水曜日)) 抜粋

案件:
 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人に係る改革を推進するための厚生労働省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第一八号)

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〔前略〕

岸田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、与野党の理事の皆さんの御好意で二十五分というお時間をちょうだいいたしましたので、冒頭、大臣と少し根本的なところでの質疑をさせていただきます。なお、これは質問通告してございませんが、川崎大臣の政治家としての姿勢を伺うものでありますので、どうかお許しをいただきたいと思います。

 大臣は、今回のこの行政改革の一環としての独立行政法人の組織変更という法案の審議に際しまして、それ以前に、例えば、今度は労働安全衛生総合研究所という名前がつく機関ができるわけですが、労働安全衛生の今日的課題とは何であるというふうにお考えでしょうか。

川崎国務大臣 今日というか今時点だけで申し上げれば、最近は大規模の災害が多い、この問題についてしっかり取り組まなきゃならない、こう思っております。

阿部(知)委員 私の質問が少し唐突であったかもしれませんが、実は、今回この質問に際しまして、厚労省の担当の部署の方から、いろいろなことを調べて情報をいただきました。ここに私がいただいたものの中で、アメリカにございます米国国立労働安全衛生研究所という組織がございます。国立であるかどうかは、先ほど岡本委員の御指摘にもございましたけれども、結局、労働現場の安全や安心あるいは国民の健康ということをめぐって、ある意味でのどんな国家意思があるか、そして現状の課題が何であるかということを、私は、まずこの委員会は共通認識にすべきであると思うのです。

 この米国の労働安全衛生研究所においては、アメリカでも現在日本と同じようなことが進んでいて、一つは大臣の御指摘になった大規模災害、あとは、長時間労働、非正規雇用、そして勤労者が平均年齢が上がっておるなど、やはり今の時代、私どもが世でいうところのグローバル化経済のもと、規制緩和が進行している中で働いている生身の人間が抱える労働安全衛生上のいろいろな課題ということを、私は冒頭、やはりしっかり大臣にお考えいただきたい。大臣の意思が労働安全行政をどのようにも向けていくんだと思うのです。その組織がどのようにいじられるか。例えば、表面上独立行政法人の非公務員型にして、公務員の数を数合わせだけでいじることではなくて、私は、労働安全行政というのは今本当に転換点に差しかかっていると思います。

 ちなみに、目標を立てたりデータで比べていくという方法もあると思います。アメリカにおいては、例えば、労働災害によって障害を残し、世でいう障害者という形になる方が毎日九千人、人口規模がもちろん違います。あるいは、事故によって亡くなられる方が十六人、そして、労災関連で亡くなる、例えば中皮腫なんかもそうですが、それも含めて、これが一日百三十七人となっております。

 果たして、我が国ではこのような統計はどうなっておるのか。あるいは社会的コスト、そうして人が病になり、傷つき、倒れることの社会的コストはどのように算定されておるのか。もしデータをお持ちであれば、青木局長でも結構です、お願いします。

青木政府参考人 今ちょっと手元に資料がございませんので、出次第、またお答えいたします。

阿部(知)委員 私は、こうした組織いじりをするときに、やはりそれが本当の労働安全行政の向上に結びつくのかどうかということが大きな評価の視点なんだと思います。大臣は、もちろんそれは共有していただけますよね。どうでしょう、ここは。

川崎国務大臣 言われるとおり、データを持ってきちっとした議論をしていくというのが一番国会で求められていることであろう。我々も把握をしたデータを、正確性がなきゃいけませんけれども、正確性を持って公表していくということは心がけてまいりたいと思います。

阿部(知)委員 私は、単に数値のための数値目標というよりは、現状を改善していくための数値目標をぜひ厚生労働省でも立てていただきたいと思います。そして、現下の労働者が置かれた労働実態をもう少し、先ほどの大臣の一点の御指摘はございましたが、多面的にしていただきたいということ。

 もう一つ、この米国の国立労働安全衛生研究所を例にとりましたのは、実はこの研究所は、一方で、疾病の登録機関であるCDCと申しまして、アメリカでどんな病気がどの数あるかという国家統計をしております、これと深くリンケージ、連動して動いております。

 私は、もし組織改編が行われるのであれば、やはりよりよきもの、そして、より安全や安心に向けて国家意思の働くものにすべきであると思いますが、果たして、今度改編されるこの組織においては、疾病の情報処理と数でございます。日本はなかなか疾病の登録がありません。例えば、この前問題になりました石綿の中皮腫一つ登録制度がございませんでした。大臣、どうでしょう。ここは、例えば中皮腫の登録制度を初めとして、疾病の登録ときちんとタイアップできるような研究所に機能していただきたいですが、お考えを伺いたい。

川崎国務大臣 アスベストの話がございましたので、これはもう既に委員会で御答弁申し上げましたけれども、基本的に、労働災害の方々は全員を私どもで把握できることになるだろう。そして、一方で、環境省の方のテーマで、住民の方々の数の把握にも入ってまいるだろう。そういう意味では、中皮腫全体の概要はつかめるようになるだろうと思っております。

 そういうように、アプローチの方法、いろいろなアプローチの方法があるんだろうと思いますけれども、現存のデータを集めても無理ならば、いろいろなデータの集め方を考えながらやっていかなきゃならない。そういう問題も当然こういうところで議論をしてもらっても結構だろうと思っております。

阿部(知)委員 しつこくて申しわけありませんが、私は、議論をしてもらって結構だろうという程度のことでなく、そのように国を挙げて労働災害に取り組んでいただきたい。

 例えば、大臣もよく御存じのように、一九七二年、かつての、産業医学総合研究所の前身である労働衛生研究所が、工場周辺の住民のアスベスト被曝、一九七二年のことでございます、お調べになって、あるというデータを出されました。しかし、これがずっと活用されずに、この前の私どもが審議いたしましたアスベストの救済法につながっていくわけです。七二年から失った三十数年は非常に大きいし、こうやって、情報をどう生かすか、国の研究機関でありながら疎通もなかったこともあるわけです。そういう点ももう一つ反省していただいて、迅速に情報処理をしていただくという点を一点御確認いただきたい。

 同時に、何度もアメリカを出して恐縮ですが、私は、アメリカの方がすべていいとは思わない点も多いですが、しかし、アメリカにおける労働安全衛生研究所では、勤労者側から、こういうことがあるから調査してほしい、研究してほしいというアクセスの窓口を持っております。これは私は非常に重要なこれからの情報の、お互いの、何よりも被害者がまず自分の体に負うわけですから、そうした労働者側からの研究の訴え、例えば労働団体とはどのようにこの機能を連結、意思疎通させていかれるのか。この二点、お願いいたします。

川崎国務大臣 一つは、関係省庁との連携に欠くることがあった、アスベストの反省の中で申し上げております。そういった意味では関係機関としっかりやっていかなければならないだろう。

 この例とは違いますけれども、最近の例では、タクシーの問題、過重労働、この問題については、国土交通省と労働基準監督署とチームを組みながら一緒に作業をするということで、実態の解明と、そしてしっかりとした指導をしていかなければならない、こういう立場に立ってやらせていただく。そういう意味では、各省庁間の連携が大事であるという御指摘はまさにそのとおりであろうと思いますし、より進めなければならないだろう。

 一方で、今度、医療の分野と労働の分野をしっかり結びつけてやりなさい。厚生労働省という役所をつくったこと自体がその大きな目的であろうと思いますので、そういった意味では、この研究の中においてそういうものがしっかりなされるように私どもの方からも指導してまいりたいと思います。

阿部(知)委員 私が今伺いましたのは、もう一点、例えば住民とか勤労者との窓をどう開くかという点でございます。

 大臣、一つ追加させていただきたいので、例えばアメリカの労働安全衛生研究所では、毎月五十万件のアクセスがございます。ホームページを開いて、そこに五十万件のアクセスがある。情報を得たいと思う人がアクセスするわけです。私は、今回のこの機構いじりの中で、むしろ人員が切り込まれていく、そのことによって外に発信する力あるいは相互交流する力を失っていく、これも懸念するわけです。

 大臣が今おっしゃったのは省庁間の問題、これも大事です。私がお尋ねした国家意思も大事です。あともう一つ、やはりその情報にどれだけの人がアクセスしてくれるか、これが開かれた行政になるかどうかの私は決め手であると思います。その点はいかがでしょう。

川崎国務大臣 予算の分科会の御議論の中でもありました不当解雇の問題、特に出産を理由とする解雇、これについては御相談くださいということになっておりますが、割合数が少ないということを申し上げました。確かにどのぐらいのアクセスが、何も研究所ということじゃなくていろいろな機関がありますから、またこの機関から上がってくるデータを逆に研究所はどうとらえて、それをもっと掘り下げて研究するか、こういう連携の話だろうと思います。

 そういう意味では、しっかり連携をとりながら、窓口はたくさんございますから、いろいろなものを受け付けながらデータ的に最後は整理していくというのが委員の今の御指摘であろうと思いますので、その目的に沿いながらしっかりやりたいと思います。

阿部(知)委員 そういうふうにしっかりやるには、私はこの組織改編は単なる数合わせ、そしてもう一歩先に進むための準備がないというふうに思います。先ほど高橋委員もお取り上げでありましたが、例えば現場で起きたいろいろな労働災害に立入調査をするときに、やはりそれなりの権限と身分がなければそういうことは遂行されませんし、それを非公務員化していくということは、私は、むしろ国は何を専らにやるべきかということからは逆なベクトルだと思います。安心、安全は国が一義的に責任を負う体制ということは、やはりどのように規制緩和されようと譲ってはいけない点だと私は考えております。この点は先ほど高橋委員がかなり突っ込んでやっていただきましたので、次の質問に移らせていただきます。

 先ほど大臣はタクシードライバーのお話をお取り上げでしたが、きょう私が二問目に用意いたしましたのは、長距離のトラックの運転者の労働実態でございます。

 ちなみに、三月四日の朝日新聞の夕刊に掲載されておりましたが、長距離運送業者が、やはり長い時間トラック運転をして、仮眠もせずに運転をする、そして、今ガソリンが値上がりしておりますし、どこを削減するかというと、なるべく荷をたくさん積んで、長く走って、距離で稼ぐ等々の中で、非常に労働時間が厳しい、あるいは仮眠がとれない等々の実態があり、「世界」のことしの二月号には、覚せい剤を使用するトラック運転者が多くなる、眠気を覚ますために覚せい剤を使用するということで、悪循環があるということでございます。

 私がきのうの段階であらかじめ事務局サイドにお伺いいたしましたところ、この長距離トラック運転手の労働時間の実態と申しますのは、大体平成十六年度で年間二千五百五十六時間で、全産業の男子に比べて、これは二千百九十六時間でございますので、一・一六倍も時間が長いという調査でございます。

 私はさっき申しました、こういうことこそこの機関がお調べくださる、時間の長さと同時に、仮眠状況、食事はどのようにとれているのか、あるいはシャワーも浴びなきゃいけない、おふろも入らなきゃいけない、労働実態というのは生活実態とカップリングしたものでありますから、こうしたテーマを、先ほど冒頭申し上げました、現在の私どもの社会が抱えている規制緩和後の労働実態としてお調べいただきたいと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

川崎国務大臣 昨年、随分油が上がった経過の中で、国土交通省、基本的に、荷主さんに、適正な運賃を支給してほしい、そうした要請をいたしたところでございます。私も運輸大臣をいたしておりましたので、この問題の原因、過積載と過重労働問題は、やはり運賃が適正に支払われていない、荷主の問題に半分ぐらいあるのではないだろうか。したがって、経済界にそういった意味では協力を、たしか経産大臣も参加をしていただいて求めた、このように思っております。

 そういう意味では、タクシーと並んでこのトラックの過積載、特に我々からいえば過重労働問題というのは大きな課題であろう。したがって、ことし調査研究を実施するということにいたしております。

 ただ、現時点でどこにやらせるかということはまだ決定いたしておりません。これは、もう何でも全部そこにやるんじゃないかと逆に御批判をいただきますので、そういう意味では労働安全面と労働衛生の両面から総合的な調査が実施できる機関にしっかりやらせたい、このように思っております。

阿部(知)委員 前向きな御答弁で大変ありがとうございます。

 ちなみに、陸上貨物についての規制緩和が行われました一九九〇年以降、例えば交通事故の件数であれば、一九九〇年では二万三千九百六十八件が、二〇〇三年では三万二千四百九十件と三六%増。そして、平成十六年度の統計では、陸上貨物のトラック輸送の死傷者が年に一万三千七百三人、非常に多い数です。日に直すと三十八人が四日以上けがしたり重傷になったり死んでいるという実態でございますので、大臣は先ほど前向きな御答弁でありましたが、正直言って、九〇年から今まで、遅きに失すると私は思う点もございます。

 ただ、大臣がかつて運輸大臣であられ、今厚生労働大臣ですから、きっとリーダーシップをとって、この現状を把握し、改善するための諸策を打ってくださるものと確信してやみません。

 そしてもう一つ、交通労働災害防止のためのガイドラインというのを厚生省ではお出しでありますが、これは、現状でいろいろガイドラインはございますのですが、このガイドライン以上の業務をトラック運転手さんたちはやっておられる。どういうことかというと、一人運転になって交代がおりませんので、荷物の上げおろしも全部自分でやり、上げおろして運転しということで、非常にこれも過酷な労働実態になっております。このガイドラインというものを現状のトラック労働者の現状に合わせてしかるべく改変していくべきと思いますが、労働局長、いかがでしょう。

青木政府参考人 今お触れになりましたガイドラインでございますけれども、これは平成六年に交通労働災害防止のためのガイドラインというのを策定いたしまして、これに基づいて自動車運転者についてのさまざまな状況について改善をしてもらいたいという指導の根拠としたものでございます。

 確かに自動車運転者については非常に長時間労働でございます。そういうことで、私どもは、今申し上げましたようなガイドラインなどをつくりまして、労働条件の向上のためにやらなければいけないということで努力をしているところでございます。

 このガイドラインはさまざまなことを言っておりまして、例えば、災害防止のために規定をつくれとか、あるいはそういう管理者、担当者を決めて、それで事業場内できちんと対応してくれとか、あるいは個々の業務でいえば、走行経路を調査してくださいとか、走行計画を作成して不当に労働が長くなったりしないようにしてもらいたいとか、乗務記録等もきちんととって適正な走行管理をしてくださいというようなことでありますとか、教育もきちんとやってください、健康診断等の健康管理もこういうことでやってくださいというようなことを定めたものでございます。そのほか、災害事例などを運転者にも周知をして意識を高揚させるとか、そういうようなことも触れているものでございます。

 これは、申し上げましたように平成六年につくりましたけれども、その後の実態等も逐次把握したり、あるいはこれからも調査をしたいと思っていますが、そういう中で必要な見直しはしたいというふうに思っております。

阿部(知)委員 ガイドライン自身が、御自身おっしゃったように現状に合っていなくなっていますので、ガイドラインもつくって、ほい、投げただけでは意味がない。やはりそのようになされているかどうかの実態が大事ですので、その意味でも、こういう新たにできる労働安全衛生総合研究所等々で実態を調査していただきたいということを重ねて大臣にもお願いいたします。

 それからもう一つ、実態調査、特に夜勤にかかわる実態調査ということにおいては、残念ながら小児科医の夜勤ではなくて、今度郵政公社で、「深夜勤(ふかやきん)」と申しまして連続十一時間くらいの夜勤が郵政公社の中で導入されております。大体夜の九時とかからやって翌朝の八時まで、仮眠なしが連続四日間とか三日間続くということで、非常に非生理的な作業を強いられて、過労死ないしはいろいろな精神的なダメージが大きいということで、一方で裁判等々も起きております。

 大臣に最後にまとめて恐縮ですが、これはILOの百七十八号勧告等々でも、夜間労働者の通常の労働時間は一般的に平均して短くするようにと。当たり前です、夜は寝るものですから。しかし、こうした勤務形態が導入されています。

 このこともあわせて、人間のサーカディアンリズムといいますが、日内リズムを大きく狂わせるもとですので、労働実態が身体に及ぼす影響として、先ほど私が申し上げました国家意思をもってお調べいただきたいが、いかがでしょうか。

川崎国務大臣 郵政公社の実態は私承知しておりません。

 原則論を申し上げますと、深夜業に従事する労働者の健康への配慮が必要であると考えており、深夜業に労働者を常時従事させる場合には、事業者に、半年に一度の健康診断を行うとともに、その結果に基づき必要に応じて深夜業の回数の削減などの適切な措置を講じることを義務づけている。

 「深夜勤(ふかやきん)」の勤務形態に関する健康影響についての調査は、今のところ厚生労働省としては実施しておりません。しかしながら、今後、勤務時間の多様化が健康に与える影響があるかどうかについて、本日御審議いただいております労働安全衛生総合研究所において研究を行う予定といたしております。

阿部(知)委員 やはり人あっての国、安心、安全あっての国だと思いますので、大臣には特にその点、采配をよろしくお願い申し上げて、私の質疑を終わります。

 ありがとうございます。

岸田委員長 次回は、来る十日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。


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