第164回国会 厚生労働委員会 第8号(平成18年3月14日(火曜日)) 抜粋

案件:
 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う児童手当法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一七号)

 児童手当法の一部を改正する法律案(小宮山洋子君外四名提出、衆法第九号)

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〔前略〕

岸田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、五人の参考人の皆さんには、子供たちの未来とそして私たちの社会の将来設計のために、前お二方には学際的な分野から、そして残るお三方には現場からの御発言ということで、大変参考になり、またそれを踏まえて質疑をさせていただこうと思います。

 冒頭、京極先生には、介護保険の折にもあるいは自立支援の折にもいろいろ御意見もちょうだいしておりまして、特に先生がかかわっておられた生活保護と児童扶養手当に関する関係者協議会の中でのいろいろな御意見もお述べになっていると思いますが、私はその件に関して二つお伺いをしたいと思います。

 一点目は、先ほど先生がおっしゃいました機関委任事務から法定受託事務になった場合の国の補助のあり方は、必ずしも財源を伴うもの、財政的なものを伴うものではないというお話も少しされたかにお聞きいたしました。

 一方で、これは上田委員もお取り上げですが、生活保護なりなんなりはある程度基準を設けて、全国一律にナショナルミニマム、到達すべき基準を設けながら、しかし、現金給付にかかわるところの財源措置においては国の分担分を下げていく。となりますと、現金給付で余り裁量権のない、ほぼ裁量権のないと言える側面もあると思いますが、そういうものについて、今回の特に児童扶養手当における国の負担分は四分の三から三分の一とかなり急激な減少になっております。これは果たして、先ほど漢人さんのお話にもございましたが、現実にはそれを受けている皆さんには大変に苦しい状況になるのではないかという懸念があるがこれはいかがかということと、逆に、この場合、地方からの逆選択が働きはしまいか。

 どういうことかというと、例えば生活保護や児童扶養手当をお受けになっている方の窓口が狭められることによって、その地域に生活できない、あるいはそういう方の流入が現実には阻止されていく。これを地方からの逆選択、本来は地方を信じたいと思いますが、限られたパイの中でやるときにそういうことが起こりはすまいか。この二点について、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

京極参考人 まず、生活保護に関しましては法定受託事務ということでございまして、ただ、その法定受託事務が、財政法上は何分の一国が負担したらいいかとか、十分の十がいいのかということが書かれているわけじゃございませんので、政治的な状況の中で決まっていくということだと思います。

 私は、今回の関係者協議会の結論はこれはこれでよかったというふうに先ほど申し上げました。児童扶養手当に関しましては、これも考え方によってでございますけれども、扶養手当の基準は下げているわけじゃございませんので、受け取る方は全く従来どおり児童扶養手当を受け取るわけでございます。

 窓口は福祉事務所になっておりますので、福祉事務所の対応がどの程度ちゃんとしているかということで国もいろいろ今福祉事務所のあり方について指導しているわけであります。

 ちょっと申し上げにくいんですけれども、かつては県がかなり福祉事務所の所管を持っていたところ、市町村合併で、実際に県が所管しているのは町村に限られまして、給付でいいますと二割程度しか給付しておりません。ただ、県の福祉事務所の方が非常に懇切丁寧という話がありまして、むしろ市の福祉事務所の方が職員配置なんかでもかなりばらばらだ。市と区の福祉事務所の体制は必ずしも全国一律になっていないのであります。むしろ、その市長さんというか首長さんの姿勢によって大分違っている。むしろ、裁量権がかなりあるのではないかというふうに私は思っています。

 国と県と市町村の関係については、確かに割合は国の負担が減りましたけれども、財源をつけた上での移譲でありますので、責任転嫁という言い方もされていましたけれども、児童扶養手当に関しましては、そうではなくて、財源を移譲してその分県と市が負担割合を大きくしたということで、問題はそれをどう実行するかという福祉事務所の体制いかんということでありますので、特に母子家庭に対する対応は必ずしも各福祉事務所十分ではないというふうに伺っています。特に就労支援に関しては、ほとんど福祉事務所はワーカーの力量に任されている、組織的な対応が非常におろそかになっているということも聞いておりますので、この点は今後改善していくべき課題かと思います。

 割合は変わっても中身は変わらないというふうに申し上げさせていただきます。

阿部(知)委員 そうであればいいのですが、先ほど申しましたように、現実にはほとんど裁量権がなく、地方側にとっては、それが財源移譲されても地方の創意と工夫の発揮のしどころがなかなかない形で今回三位一体が全部進行しているのではないか。私自身もそう思いますし、先ほど漢人さんのお話の中でも幾つかの指摘がございましたが、特に、今京極先生が就労支援のことでおっしゃってくださいましたので、私は、今度、漢人さんにお伺いいたしたいのです。

 例えば、このたび厚生省では、母子家庭の母親に対する職業訓練受講機会の提供ということで、無料で職業訓練を受講させるということに六億何がしかの予算をつけました。ところがそれは、先ほど漢人さんがおっしゃったように、地方自治体になるとその窓口を開いても実際に応募してこられる方がいない。川崎大臣のあめとむちの御発言ではありませんが、これをあめと称するならば、あめはあるよと言ったんだけれども、お母さんたちは来てくれない。

 私は、実はここには幾つかの問題があると思うんですね。先ほど京極先生がおっしゃった、地方自治体の福祉現場の職員の例えば数とか経験の不足もありましょうし、でもそれ以上に、私は、実は、こういう母子家庭のお母さんたちがこの無料の訓練を受けるとして、その間の他の収入はどうなっていくのか。これはフリーターの皆さんもそうですが、いろいろな職業訓練を受けるときに、訓練無料でも、その間の生活支援というものが充実しないとなかなか行けない。

 このあたり、現場で、どうしてゼロ回答なの、だれも来ないの、どう改善すればいいのか、これは国の政治の方でどう改善すればいいのか、そのあたりで御意見があったらお願いします。

漢人参考人 御指摘のとおりだと思います。

 幾ら無料で職業訓練が受けられても、その間の生活保障がなければ絵にかいたもちになってしまうということなんですけれども、では、それをどうすればいいのかというのは、ちょっと私も答えはまだ持っておりません。

 ただ、職業訓練校などに行く場合には、試験などありますけれども、ある程度の生活面での給付も受けられるというのは現状でもあるわけですね。本当に必要であるということであれば、やはり生活面での給付も含めてしなければ実現性がないということだというふうに思います。

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 それでは、もう一度京極先生にお伺いいたしますが、幾つかのお話の中で、企業参加、社会の財産ですから、こういう子育てということに企業も参加してほしいというような形での御発言がありました。私もそのとおりと思いますが、例えば今回の児童手当の年齢を小学校六年まで上げます場合にも、実は全体のお金の中での企業負担分というのは、割合は低下していっています。全体額は確かにふえましたが、そのどのくらいの部分を企業が負担しておられるかという部分はむしろ減少していっている現実があります。

 例えば、ゼロから三歳未満の財源の構成では、これまでですと事業主拠出金が五七%、そして児童手当全体で見れば事業主は二〇%を負担しておられましたが、今度の政府側の御提案の六年生まで延ばしたとして、その場合の事業主負担は、ゼロから三歳では五四%、全体で見ても一四%。そういたしますと、本来は少子化というのは社会全体で考えていくべきときに、もっと企業にも拠出という形で頑張っていただきたいのに、結果的には割合が下がっている。このあたりは、いろいろな影響力のある先生ですから、お考えとそして今後の改善、やはりもっとこれを変えていくにはどうすればいいかということをお聞かせください。

京極参考人 大変難しい御質問でございますけれども、児童手当の歴史的な経緯がございまして、当初、出発したときは、事業主が十分の七、そして国が十分の一、地方は十分の二という割合でスタートしまして、ところが、サラリーマンの方は比較的年収が高いものですから、所得制限にひっかかりまして、かなり低い方でも一般の自営業者等に比べますと高い。したがって、事業主負担をしても、もらうサラリーマンの方がいないという矛盾が起きたわけです。そのために、あえて所得制限を緩和しまして、事業主として現在の段階で十分の十の特例給付で百七十九億円を継ぎ足したわけであります。

 これはどういう経緯でなったかというと、経済界としても、自分たちの職員の中で所得の低い方が子育てしやすいようにするために、企業としては思い切って出したということでとまりまして、その後は全然ふえていないということであります。その後はほとんど国と地方で分かち合って対応している。今回も、小学校六年までになりましたけれども、所得制限を緩和しました分は、国が三分の一、地方が三分の二ということで、要するにほとんど公費なわけでございます。

 私、将来的に考えますと、企業の御理解というのはなかなか、今社会保障について経済界は大体二つの批判がありまして、一つは企業負担が多過ぎるということで非常に批判をしております。

 実際に平成十四年度の数字で概算いたしますと、企業の負担は、年金保険に関しては約十三兆、医療保険に関しては約七兆、約二十兆負担しております。それと、労働保険、労災保険と雇用保険でございますが、これは約二兆円。約二十二兆円負担しておりまして、児童手当はその中ではわずかなものでございます。

 それから、ちなみに介護保険について申し上げますと、二十からか二十五かいろいろ議論があるところではありますけれども、第三号被保険者をつくる場合、企業は大変負担がこれ以上ふえちゃ困るということを言っておりますけれども、現在の段階では四十歳以上でございますので約五千億円、〇・五兆円。だから、二十二兆円に対して〇・五兆円、児童手当の特例給付は百七十九億円、〇・〇一七九兆円ということでございまして、大変負担が低いわけでございます。だから、相対的に見ますと、社会保障全般の中で企業負担はどうなのかということをやはり改めて議論するべきことかと思います。

 企業負担について、私は、どういう形であれ、しかるべき負担を求めて、また理解を得られるような方向で国民的議論が進むことを願っております。

 それから、将来の問題でございますけれども、やはり保険というのは一つ大きな、税と違いまして――済みません、一つ忘れていました。

 もう一つ、経済界の社会保障に対する批判は、社会保障は大体非常に非効率的である、民間活力が欠けているという批判がございます。

 しかし、これに関しましては、例えば医療保険などをとりますと、アメリカなどはかなり民間の医療保険が多いんですけれども、非常にお金がかかる医療でございまして、日本の社会保険の方が非常に効率的にされているということもありますので、必ずしも経済界の言っていることが、公的な社会保険は非常に非効率的だということは言えないというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、今の経済状況、確かに大変厳しいですけれども、経済も好転してくる兆しもあり、経済界も全体として、大きな面で見ますと、デフレから脱却ということもございますので、企業負担については、改めてどういう負担が望ましいか、私は介護保険みたいな形で、従業員の方に対しては企業負担はある程度求めてもいいのではないかと思っております。むしろ、これ以上言うとちょっとあれですけれども、社会保障の中でいろいろ改善しなくちゃいけないことが多々ありますので、特に労働保険のあり方についてはもうちょっと見直していいんじゃないかというふうに思っております。

 以上でございます。

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 それでは、中根参考人にお願いいたします。

 実は、私も日曜日に十五人くらいのお母さんたちとお話をして、今度児童手当が小学校が終わるまでになるのよ、どうと聞いたんですね。大体先ほど中根さんが御紹介くださったのと同じで、助かるけれども、額が余り多くないし、お小遣いが、お小遣いというのは子供たちの習い事か何かになるくらいかなという感じでしたね。

 一方で、何に今困っていると言うと、学童保育が満杯状態で、例えば、本当は今小学校が終わるまで預かってくれる、子供たちの放課後時間なんだけれども、ふえちゃったので、もう四年生からは預かれませんよという方がふえている。こうなると、例えば少々の児童手当をその後もらうよりは、学童保育を充実してほしいんだという声が、私はちょっと年上のお母さんたちだったせいかもしれませんが、多かったんですね。

 これは、先ほど来のお話の、要するに現金で幾ら来るというよりも、関連の社会施設整備の問題と、それから学童保育などは、さっき参考人もおっしゃった、要するに、これは文部科学省と雇用均等・児童家庭局と両方が、縦割りではやれないことですよね。このあたり、先ほど縦割りのお話もありましたし、御自身が学校法人をやっておられるということで、子供施策全般について、この改善点、那辺にありや、どこにあるかということを最後にお願いいたします。

中根参考人 冒頭の私の意見をよくお聞き届けいただいて、感謝を申し上げております。

 全く政治的な意図抜きに、お母様方から出てきた意見を、箇条書き的に、羅列的に御報告を申し上げたその中にも、学童保育という言葉もありました。

 学童保育、幼稚園においては、現在預かり保育ということで、本園においても五時までお子様をお預かりをさせていただいておりまして、その需要も大変高うございますけれども、学童保育に対するニーズも高い。そして、学童保育を利用する方が多くて、私どもの地元の岡崎市というところでも、幾つかあるんですけれども、いずれも満杯で、例えば一人当たりの占める面積ということでいうと、本当に一人一平米ぐらいの施設といいますか建物の中で学童保育が行われているという実情があります。

 そういうことを初めとして、子供に対する施策の不十分さというのは、もう至るところで具体的にあらわれていると思います。やはりそれは、予算のつけ方、国からの、あるいは自治体からの、特に自治体なんかの場合は、先ほど来の話もありますようになかなか厳しいものですから、国がしっかりと方向性を示してもらわなくては、あるいは姿勢を示してもらわなくては、やりたくてもできないというところはあろうかと思います。

 その予算が十分つかないということの一つの理由の中に、総合的に一体的に政策が行われない。それは例えば、文科省と厚労省との縦割り、それぞれがそれぞれを主張し合っていて、ばらばらに政策がとり行われているということがある。あるいはまた、そういったことが、例えば学校法人の経営にいたしますと、事務費用の増大、あるいは手間暇の増大ということになって、本来やるべき仕事、時間がそういった分野に割かれてしまうという悩ましい点もあることも、小さな問題ですけれども、あるということもあります。

 子ども家庭省ということを民主党が言っておるようでありますけれども、例えばそういう形で行政の一元化ということを早急にやってもらいたいし、もう自治体においては子供課という名前で先進的に取り組んでおられるところもたくさんありますので、その面では国の方がおくれているというふうに思いますので、時間との闘いだと思って頑張ってやっていただきたいと思います。

 不十分ですが。

阿部(知)委員 大日向参考人とそして増田参考人には時間の制約でお伺いできませんが、審議の中で生かさせていただきます。ありがとうございました。

〔後略〕


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