第164回国会 予算委員会公聴会 第1号(平成18年2月24日(金曜日)) 抜粋

案件:  平成十八年度一般会計予算

 平成十八年度特別会計予算

 平成十八年度政府関係機関予算

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〔前略〕

大島委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、四名の公述人の方々から、それぞれに異なるいろいろな立場からの御意見をいただき、大変勉強になりました。限られた時間の関係で皆さんに質問できないかもしれませんが、お許しください。

 まず冒頭、木下公述人にお願いいたします。

 今も佐々木委員からの御質疑にもありましたが、今、私どもの社会というのは、ある意味で非常に大きなスピードで崩壊しつつある。幼い子供たちがあやめられたり、社会規範が全くなくなっていっている、先生の御指摘でいえば、労働と生活をめぐる戦後的システムの崩壊、まさにそういうふうに言えるんだと思います。

 先生のお話の中で、今までのある種の格差社会がもっと二極に引き裂かれていくという中で、もちろん経済も失われた十年かもしれませんが、人間の生活の価値規範やさまざまなものも失われた十年であると。

 この二十一世紀初頭の出発が、まず二つの面で、例えば国がこの事態に対して行うべきナショナルミニマムとは何か。それから、今まではいわゆる企業が代替していた社会保障の役割、あるいは人間の安定、人間関係もかなり企業文化の中で組み込まれてまいりましたが、それも今崩壊しています。そして、国にナショナルミニマムを求めるとき、もう一方の企業にどのような社会的責任を求めていくのか。今までは、企業という枠内へのいわゆる社会保障政策で企業も成り立ってまいりました。しかし、これからはそうではないだろう。そこでの企業の社会的責任とは何か。一方の、国のナショナルミニマム、先ほど先生は住宅政策を一つおっしゃいました。そのほかにもここの中にも触れられておりますので、この二点をお願いいたします。

木下公述人 一つは、これはそれほど予算上膨大とは思えないんですけれども、最低賃金制度については、今、生活保護の方が下回っているから最低賃金制を下にするという、まさしくそこに向けた二つの競争がありますけれども、これをやっていくとやはり生きていけない人たちが出てきますので、生活保護と最低賃金制度については少なくともそこをきちっとする。そこが今破れつつあるわけですから、ともかく、ここのところの、そこだけは、これ以上、下に下がらないという手当てだけは急いでやらなければならないと思います。

 それから、社会保障、社会政策ですけれども、これについては、私は医療、年金ということがもちろん大切なことはわかっています。しかし、日本で足りないのは、勤労者に向けた社会政策、社会保障です。

 これは、ヨーロッパ型となると大きな政府とよく言われてしまいますけれども、少なくとも、これまでは老後ないしは緊急の医療というところに向いていましたけれども、働く者にとって、例えばフリーター同士、二百万、二百万で結婚して四百万の収入のある人をどのようにして支えるのかという社会保障、社会政策に対象を広げるべきだというふうに思っております。

 それから、企業の社会的責任ですけれども、確かに正社員化すればいいわけですけれども、先ほどだれか御指摘あったように、やはりスキルを身につけさせて、企業が雇えるようにするということ自身が非常に重要だと思います。

 あと一つ、企業の社会的責任というふうに言うのならば、これは多分無理だと思うんですけれども、今、労働時間について少し真剣に考えないといけない事態になってきていると思うんです。

 つまり、労働時間の二極化です。フリーター、アルバイターのような大変短時間の働き方と、あと一つ、例えば三十歳代前半の男性の二四%、四人に一人あたりは週六十時間働いているんですね。この週六十時間、四分の一働いているのを学生に説明するときに、週休二日制、六十割る五、十二、プラス一、休憩時間が一時間必要です。そうすると、九時出社、夜の十時退社というのを月火水木金とやるんですね。これが四分の一ぐらいいるんだということを話すと、教室はざわめきます。そして、東京の男性の三十五歳前半の未婚率は約五五%です。

 労働時間をこういう少子化と絡めて考えないといけないと思います。当時、坂口厚労大臣が民族の滅亡であるというふうにおっしゃったことが大変耳に残っておりますけれども、まさしく今、日本民族の滅亡に向かってひた走っているわけでありまして、だから、少子化対策のつぼは家族形成期における働き方なんですね。ここにメスを入れない限り、日本民族の滅亡はとまらないと今考えています。

 そうすることによって、つまり、言うならワークシェアリングなんですね。正社員の労働時間は下げて、そのかわり非正規を入れる、こういった国のワークシェアリングというものも根本的には必要だと思います。もちろん、直ちにできるとは毛頭思っておりませんけれども、そのことをやらないと日本は大変なことになるということだけは確かだと思います。

 以上です。

阿部(知)委員 先生にいただきました資料の中でも、特に今フリーターと呼ばれる方々が三十代後半に広がり、そして四十代、普通であれば社会の中堅層が貯蓄を持たなくなっているということで、坂口元厚生労働大臣も、私も厚労委員会で聞いたことがありますから、御指摘をされておりましたが、新たに本当に重要と思います。

 そして、田中公述人にお願いいたしますが、今、同じ質問でございますが、一体ナショナルミニマムとは何だろうというところで、先生のお話の中で、未充足求人、要するに、求人があっても求職する側のスキルが追いつかないということもありますし、イギリスのブレアの場合は、このあたりを教育、教育、教育と言って、子供のときの教育から職業人になってからの教育まで拡大して、ミスマッチを埋めていこうとしたのではないかと私は思っていますが、この未充足求人の問題についてもう少し、どうすればよろしいか。

 それからもう一つは、先ほど、これもナショナルミニマムですが、医療や介護における国の負担の問題をお話しになりました。これも同じくブレアを引いて恐縮ですが、彼は、医療費の対GDP比枠がイギリスで多分七・四%くらいになって、医療が崩壊状況になった。公約に一〇%というのを掲げて、彼自身はもちろん歳出削減はきっちりやりつつ、しかし、国民に聞いてみよう、やはりもっと医療に歳出した方がいいんじゃないかと投げたというふうに私は理解しておりますが、きょうの先生のお話で、国はこうした社会保障分野をどのようにやっていくべきか。

 この二点について、お願いいたします。

田中公述人 日本の企業も、なかなか人が集められないところから、多分人が簡単に集まると思うところに移動することがあります。

 自動車産業が九州北部に立地するようになりまして、トヨタ、日産、ホンダ、そうしますと、関連企業がさらに出ますので、本来は求人数がふえて、それでみんな満足ということになるはずだったんですが、状況は、人が雇えない。だから、もはや限度に来たというのがどうも実際のようです。

 それでは、なぜ職場で迎え入れようとしても、人が本当に払底したわけでもないのに集められないのかというふうに考えますと、やはり職業をめぐる若い人の意識が十分、教育機関の中において職業を前提としたお話を先生方から聞くこともないし、社会から示唆を受けることもないしということで、気持ちの上でのずれが、もう十代あるいは二十前後で起きてしまっているということがどうもあるように、観察的にはそういうことになるんだと思います。

 したがいまして、我々は、二十一世紀における職場というのがどういうふうに変わろうとしているのか、その中で我々は何に備えなければいけないのかを、もう少し広く、少なくとも中学校や高等学校の段階でわかるような仕組みはやはり要るんじゃないか。それがないと、いわゆるミスマッチと言われている現象は簡単には埋められないんじゃないかというふうに思います。

 それから、国民にとってのミニマムは何だ。おっしゃるように、医療にかかわるテーマは極めて重要であります。

 ただ、これまでの観察からいきますと、毎年一兆円近くが医療を中心とした分野でふえていくという現象に対して、医療資源は本当に適正に使われているのかどうか。保険制度は、結局のところ、医療機関が保険会計に請求書を回せば、それで売掛金が取れないこともないし、それからまけろと言われることもない。そういう仕組みの中で、もちろん国民皆保険によって我々は高い水準の医療サービスを受けたというふうに認識はしていますが、しかし、そこにはやはりどうも、保険会計の設計上、結果としての浪費あるいは資源配分のゆがみがある。

 それは、何かもう少し手を加えて、全体としての医療費を抑制しつつ、かつ国民にとって必要な医療サービスが受けられる仕組みはあるのではないか。やっと、医療保険の保険点数に至るまで、いわば総体価格のところにも手を入れて議論するというところになってきたように思います。

 長い時間、まさに厚労委員会も含めて、いろいろな御努力がなされている中で、少しずつ、国民にとってのナショナルミニマムは何か、医療について保障さるべきは何か、そして選択されるべき医療サービスという領域についても、国民の意向は明瞭になってきておりますので、そこの組み合わせは、今後国会の御審議を経ていい仕組みができるのではないか。我々にとってミニマムの意味が皆に理解できるものになるのではないかと期待いたしております。

阿部(知)委員 どうもありがとうございました。


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