第166回国会 本会議 第25号(平成19年4月24日(火曜日)) 抜粋 案件:
議員請暇の件
イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案 (内閣提出)及びイラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人 道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案(原口一博君外四名提出)の 趣旨説明及び質疑
〔前略〕
○議長(河野洋平君) 阿部知子君。
〔阿部知子君登壇〕
○阿部知子君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となりました政府提出の イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案について 質問させていただきます。(拍手)
二〇〇三年三月二十日、米英によるイラク攻撃の開始から四年以上を経た今日、イラクの人々にとっては治安、 経済、生活のすべてが危機的状況となり、子供らも住む家を失い、親を失い、ユーフラテス川に泳ぐこいのぼりを 見るかわりに、ただただ張りめぐらされる鉄条網を茫然と眺めるのみになりました。平和のうちに生存する権利は、 今この瞬間にも脅かされております。
冒頭、安倍総理にお伺いしたいのは、果たしてこのイラク開戦に本当の正当性はあったのか否かであります。
総理は、これまで再々、イラク・フセイン政権が十二年間にわたって累次の国連安保理決議に違反し続け、平和 的解決の機会を生かそうとせず、国際社会の真摯な努力にこたえようとしなかったことをテープレコーダーのよう に繰り返されるだけで、米英のイラクへの先制攻撃を支持するという立場は、一切内容にわたっての答弁をされて いません。
しかし、そもそもイラクは、一九四五年、国際連合設立当初からの加盟国でありました。そして、国連憲章第二 条及び第七章によって、個別国家あるいは国家集団による先制攻撃は禁止され、安全保障理事会にのみ武力行使が 認められるとされています。しかるに、このたびの米英有志連合によるイラク攻撃は、武力行使に踏み切る新たな 国連決議もなく、明らかにこれまでの国連のルールに違反する行為と考えるべきではないでしょうか。改めて国連 憲章との関係でお答えください。
また、こうした形での先制攻撃に米国が打って出た背景には、二〇〇二年九月に発表された米国の国家安全保障 戦略があります。そこには明確に、テロや大量破壊兵器攻撃に対し、敵が攻撃の意図と能力を持っていると判断し た時点での単独での先制自衛権の行使がうたわれていますが、日本政府は、こうした米国の先制攻撃容認の立場に 同調するものでありましょうか。それは、国連重視の従来の我が国の外交方針からも大きく逸脱するものと考えま すが、果たして国民にはどのように説明されるのでしょうか。
さらに、イラク戦争の正当性をめぐっては、開戦後に判明した決定的に重要な問題として、米国が先制攻撃の根 拠とした大量破壊兵器も、テロ組織アルカイダとの関係もイラクには存在しなかったという事実があります。この ことに関しては、ブッシュ大統領やイギリスのブレア首相も、大量破壊兵器の情報の誤りを認めて明確に謝罪をし ておられますし、開戦前に国連安保理で軍事行動の必要性を訴えたパウエル前国務長官は、人生最大の汚点だった とすら回顧しています。
この大量破壊兵器の存在について、安倍総理御自身は、イラク開戦を日本政府が支持することを表明した段階で どう考え、また、米英の見解が訂正された今日において、日本政府もまた当時の情報と判断の誤りを認められてい るのかどうか、はっきりさせていただきたいと思います。
これまでの何人かの御質疑に対して、安倍総理はこの点を一貫して逃げ、はぐらかしておられると思いますので、 この場で明確な御答弁をいただきたいと思います。果たして、日本は大量破壊兵器があったと思っていたのか、そ して、現在はそのときの判断は誤っていたと思っているのか。これくらいのことを国民に説明できずして、総理た る者の任にあらずと思います。
そして、アルカイダとの組織的関連もなく、大量破壊兵器もなかったのなら、そもそも米国や日本が開戦の根拠 として挙げた累次の国連決議の前提すらも揺らぐはずではありませんか。サダム・フセイン体制を専制国家として、 その体制の転覆を図るための攻撃であったとするなら、それはまさしく武力による侵略、国家転覆であり、国連憲 章第二条に明らかに違反するものです。総理の見解を伺います。
また、それゆえ、米軍を初めとする外国軍隊は、不法占領とも言うべき状態を早期に終わらせるべく、期限を定 めて撤退すべきであり、それは、米国内でこの戦争の終結の道を探るベーカー元国務長官ら超党派のイラク研究グ ループの指摘するところでもあります。果たして、総理はこの指摘についてどのようにお考えでしょうか。
次に、イラクの現状について、その認識を麻生外務大臣に伺います。
イラク開戦以降、既に七万人近くの市民が空爆や戦闘の犠牲となり、二百万人近い避難民が生まれております。 また、昨年二月以降は、宗派間、宗派内抗争が激化し、内戦状態に近いとも言われており、米軍の軍事作戦は、事 態を力によって押さえ込み、沈静化させるよりは、むしろ対立と混乱を助長しているように思えます。そもそも、 現状は復興支援という段階よりも、UNHCRやあるいは多くのNGOが緊急アピールをしていることにもあらわ れるように、緊急人道支援がまず不可欠な段階にまで後退しているのではないでしょうか。バグダッド・アダミヤ 地域における米軍のコンクリート壁建設はそのことを如実に物語っております。
一方、我が国のイラク復興支援の基本計画では、イラクに完全な主権が回復され、イラクの本格的な復興に向け た新たな局面が切り開かれ、治安権限移譲プロセスも進行するなど、民主的な政府のもとでイラク人自身による自 立的な復興に向けての本格的な第一歩が踏み出されているとしていますが、これは余りにも楽観的であり、イラク の実情を反映していないと考えますが、どのようにお考えか、御答弁をお願いいたします。
また、この間のイラク戦争で多数のクラスター爆弾や劣化ウラン弾等の非人道的兵器が使われました。その被害 は長期にわたって続き、特に子供たちに今後も集中的にその被害があらわれると懸念されます。イラク攻撃のこう した実態を日本ももっとしっかりと調査し、必要な措置や支援策を講ずることが何より必要だと考えますが、麻生 大臣はいかがお考えでありましょうか。
また、こうした非人道的兵器の規制については、国際的な禁止条約づくりの動きも始まっておりますが、残念な がら日本は極めて消極的な態度に終始しております。原爆による惨禍を経験した日本こそ、劣化ウラン弾やクラス ター爆弾などの非人道的兵器の規制の最先頭に立つべきと考えます。まして、幼子、将来ある子供たちがその第一 の犠牲者となることを日本が座視しているということ自身、既に許されないのだと思います。
空自の撤退そのほかについても、日々戦闘が拡大、激化するイラクでは、米軍支援の活動を担う航空自衛隊の行 動は、これまでのように形だけでも戦闘地域を避けて行うことすら不可能となってくることでしょう。逆に言えば、 いつどのような事態で自衛隊が戦闘下に置かれ得るかということをこのままでは国民も知ることができません。そ もそも、戦闘の後方支援としての物資輸送に当たることは憲法上も許されないことと考えますが、そうした実態、 現状のどのような把握がなされ、またそれが国民にはどのように伝えられているのかということは、シビリアンコ ントロールの観点からも大きな問題です。
防衛大臣は、この間の自衛隊の活動における情報公開について果たしてどのようにお考えでしょうか。今回の特 措法では、さらに航空自衛隊の活動を二年間延長するものとなりましたが、本当にそのことを判断するに足る根拠 を国民には提示しておるとお考えかどうか、お答えください。
多国籍軍、とりわけ米軍の軍事行動支援のために日本の航空自衛隊がこれ以上活動することは、イラク戦争の失 われた大義から見ても、また日本の本来果たすべき人道支援、平和貢献の立場から見ても極めて不適切であり、自 衛隊員にも不当な負担をかけるものです。イラク特措法は即刻廃止し、自衛隊は即時撤退すべきです。
イラク、中東問題の解決を図るための政治・外交的枠組みづくりに日本もまたあらゆる可能性を追求するととも に、医療等を含めた命のための緊急支援や雇用・生活インフラ、農業・環境再生にこそ全力を挙げるべきと考え、 私は、社会民主党・市民連合を代表しての代表質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 阿部知子議員にお答えをいたします。
米国の対イラク武力行使と国連憲章の関係についての御質問がございました。
国連憲章のもとでは、一般的に武力の行使が禁止されています。一方、その例外として、憲章第五十一条の自衛 権の行使の要件を満たす場合のほか、憲章第七章下での安保理の決定に基づく場合には、武力の行使が認められる こととされています。このような観点から、米国の対イラク武力行使は、憲章第七章下で採択された国連の安保理 決議により正当化される行動であったと考えております。
米国の国家安全保障戦略に関連したお尋ねがありました。
我が国としては、他国による国際法の解釈について有権的な評価をする立場にありませんが、いずれにせよ、米 国は国際法上の権利及び義務に合致して行動するものと考えております。
米英の対イラク武力行使支持に関する私の考えについてお尋ねがありました。
当時、イラクは、十二年間にわたり累次の国連安保理決議に違反をし続け、国際社会が与えた平和的解決の機会 を生かそうとせず、最後まで国際社会の真摯な努力にこたえようとしませんでした。このような認識のもとで、政 府としては、安保理決議に基づきとられた行動を支持したものであります。
イラクが過去実際に大量破壊兵器を使用した事実や、国連査察団が数々の未解決の問題を指摘したこと等にかん がみれば、対イラク武力行使が開始された当時、イラクに大量破壊兵器が存在すると信じるに足る理由があったと 考えております。
以上のように、日本政府が対イラク武力行使を支持したのは、あくまで、累次の国連安保理諸決議及び国連査察 団の累次の報告等に基づいて主体的に判断したものだと考えています。
米国の対イラク武力行使と国連憲章の関係についてのお尋ねがありました。
イラクに対する武力行使は、国際の平和と安全を回復するという明確な目的のために武力行使を認める国連憲章 第七章のもとで採択された国連の安保理決議により正当化されると考えています。
米軍のイラク駐留には根拠がなく、米軍は一日も早くイラクから撤退すべきではないかとのお尋ねがありました。 米軍を初めとする外国軍隊は、イラク政府の要請に基づき、国連安保理決議に従って活動を続けているものであ ります。先般来日をしたイラクのマリキ首相やハシミ副大統領も、当面、米軍等には駐留を続けてほしいと述べて いました。
米国政府は、現在、軍の増派を含むイラク政策を実施しています。我が国は、これをイラクの安定化と復興に向 けた米国の決意が示されたものと認識をしています。このような米国の努力が効果的に進められ、よい成果を上げ ることを期待しています。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣久間章生君登壇〕
○国務大臣(久間章生君) 阿部議員にお答えいたします。
航空自衛隊の活動における情報公開についてお尋ねがありました。
空自の活動実績の公表については、国民の理解と協力を得るため、できるだけ公表したいと考えておりますが、 一方で、我が国及び国連等の要員の安全確保を考えることも必要でございます。政府としては、これらを考えなが ら、輸送回数、輸送物資トン数等や対国連輸送支援の実績につき公表してきているところであります。
最後に、航空自衛隊の活動の延長の根拠についてお尋ねがありました。
イラクの安定と復興は、国際社会共通の重要課題であり、我が国自身の国益にも直結します。したがって、我が 国としても、イラクの復興を主体的に支援していく必要があります。
また、潘国連事務総長、マリキ・イラク首相等からも、航空自衛隊の空輸支援への謝意表明や継続要請の書簡が 寄せられていること等を踏まえれば、引き続き活動を継続する必要があると考えます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕
○国務大臣(麻生太郎君) 阿部知子議員から三問ちょうだいをしております。
まず、イラクの状況に関するお尋ねがあっておりました。
紛争後の平和の構築に関しましては、現地の状況、現状等々により、必ずしも緊急人道支援から復興支援の段階 に円滑に移行するとは限らないということだろうと存じます。現場の必要に応じて適切に対応していくことが重要 と思っております。
そのような中で、日本としては、イラクに対しては円借款による復興支援というものを実施しつつ、現地の必要 を踏まえて緊急人道支援を行っているものであります。
クラスター弾についてのお尋ねがあっておりました。
日本は、クラスター弾の不発弾等によります人道上の懸念が表明されていることを十分に認識いたしております。 イラクにおきまして、日本自身が御指摘のような調査を行うという予定は現時点ではありません。イラク政府及び 国際機関等の取り組みの状況、具体的な要請等を踏まえて、イラク復興支援の観点から今後必要に応じ検討してま いりたいと考えております。
最後に、これらの兵器の規制についてのお尋ねがあっておりました。
例えば、クラスター弾の問題につきましては、人道面及び安全保障面のバランスというものを考慮しつつ、幅広 い国の参加を得て議論を深めてまいることが必要であろうと考えております。今後、特定通常兵器使用禁止制限条 約の枠組み等々を重視いたしつつ、国際的な議論に積極的に参加してまいります。
クラスター弾及び劣化ウラン弾を含みます兵器の取り組みにつきましては、引き続き適切に対応してまいりたい と考えております。(拍手)
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