第166回国会 厚生労働委員会 第11号(平成19年4月10日(火曜日)) 抜粋

案件:
 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(西村智奈美君外二名提出、衆法第九号)

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〔前略〕

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、六人の参考人の皆さんには貴重な御意見、ありがとうございます。

 私は、特に私どもがお願いした中原参考人に、実は、このパート労働法の審議のさなかでも私は 実感いたしますが、果たしてどれくらいパート労働の皆さんの実態を踏まえて国会での審議という ことが行われておるのか。その点で非常に懸念されましたので、実は、せんだっての委員会でも、 中原参考人たちがおつくりになった資料も配付させていただき、御紹介ありましたように、柳澤厚 生労働大臣は、こういう方たちがこのパート労働法の適用なんだから、しっかりと取り組まねばな らないという御所見でありました。

 さらに加えて、私は、きょう伺っておりまして、例えば雇用契約期間、有期契約の問題でも、中 原参考人のお話の中に、労働組合をつくられて以降、契約がある意味ではスムーズに進むようになっ たというお話もあったと思うんですね。逆に言うと、では、今、パートの方たち、組合もない場合 も多いですし、その点は後ほどまた中野参考人にも伺いたいですが、中原さんのところでは組合を つくられて、この契約期間の問題、並びに、先ほど賃金の賃上げも、例えばDTP課の方は十五年 間で四十五円の賃上げということでありました。

 では、例えば組合をつくってあったとした場合、こういう賃上げ問題にどう取り組んでこられた か、このあたりの実態も少しお話しください。

中原参考人 ありがとうございます。

 労働組合、私どものところはパートと正社員が同じ組合で活動しておりますので、当初はなかな か意思の疎通も難しいところもありましたけれども、きょうも傍聴されているパート組合員がおり ますけれども、要するに、同じ生産ラインの中で助け合いながら仕事をしているわけですので、当 然、理不尽な労働条件を正社員の組合員が理解していく中で、随分とパートに対する待遇改善の具 体化が進んではきております。

 ただし、例えば労働組合がないところでも、パート、非正規に対する均等待遇はあるんですね。 その均等待遇は何かというと、賃下げと首切りのときなんです。賃下げと首切りのときは、均等待 遇というよりも、正社員を首にするわけにはいかないから、パートのあなたにやめてほしい、そう いうふうに言われたといって駆け込んできたパートの仲間がおります。

 契約更新を十年も十五年も繰り返していても、次の更新があるのかどうか、とても不安がってお りますが、そういう中で、労働組合に加入して、例えば労災保険、労災、職業病になったときに、 そのまま泣き寝入りをして契約更新がなされないケースも多々あったようなんですが、最近は、労 災申請をしながら休職して、きょう労働基準監督官が私たちの職場に調査に入っているというパー ト組合員の取り組みもございます。その方は、多分組合に入っていなければそのまま泣き寝入りを して、契約更新をされないままやめざるを得なかったケースだと思います。

 とりあえず、そのぐらいで答えとしておきます。

阿部(知)委員 組合をつくり、事業主側と交渉するなどなどで現実にはか ち取られていく身分や契約や賃金の問題が根本には非常に大きく横たわっていて、一口にパート労 働者といっても、困難の度合いというのは、私は非常に深刻なんじゃないかと思って参考人のお話 も伺いました。

 中野参考人に、恐らく今後の法律の中でも事業主に対して努力規定等々が課せられるということ になってまいると思うのですが、実効性はどうか、いろいろな判例にも携わられて、果たして今回 の法改正は本当に有効に働くであろうかという点についてお願いいたします。

中野参考人 ありがとうございます。

 司法的な効果、司法というのは、要するに裁判で争いにした場合に、その努力義務規定の法的な 効果はどうかということをめぐりましては非常にネガティブな裁判例も出ておりますので、私ども はクエスチョンマークです。ただ、現場の取り組みとして、やはりそれを促進させるようなシステ ム化というのが不可欠だというふうに思っております。

 先ほどの労働組合の例もそうですけれども、やはりこのパートの均等待遇あるいは差別をなくし ていくという課題は、人権の問題でもあり、職場における信頼の問題でもあります。そして、格差 を解消していくというのは、言ってみれば、使用者側にとっても生産性を上げていくという課題に もつながることでありますし、労使が一致して取り組んでいくべき課題ではないのかというふうに 思っております。

 そういった意味では、使用者側の説明義務というのは不可欠なものでありまして、そこに格差が あったときに、なぜこの格差というものをつけなければいけないのか、その理由を明らかにすると いうのは、労使間における、これは労働組合があってもなくても貫かれなければならない信頼に基 づく原則による説明義務だと思います。そして、その説明義務を尽くせないということになれば、 それはやはり不合理な格差ということにならざるを得ないのでありまして、それをどういうふうに なくしていくのかということになるんだろうと思います。

 その場合に、努力義務ということによってどのようなレベルで行政権限が発動されて実効あるも のとしてこれが機能するのかということについては未知数だというふうに思います。そういった意 味で、日本の法制度全体が不十分な課題を抱えておりまして、これを補充していくという作業が不 可欠だというふうに思っております。

阿部(知)委員 佐藤参考人にお伺いいたしますが、その差別が合理的か不合 理かをだれが判断するかというところが私はやはり非常に大きいと佐藤参考人のお話を伺いながら 考えたわけです。

 民主党の皆さんの御提案の場合は、各職場に検討委員会等々を設けて、合理性についてもさらに 職場内のいろいろな意見を交わしながらつくり上げていくというふうなものだと私は理解しており ますが、さて、佐藤参考人にあっては、その合理性をだれが判断するのか。そして、その場合に、 ある意味で、先週の委員会では事業主の側が合理性を判断するというような御意見があったんです が、それでは圧倒的に労使の力関係の差があった場合に本当にうまくいくのであろうかというとこ ろがございまして、佐藤参考人はどうお考えであるのか、お願いいたします。

佐藤参考人 まずは均等のところでございますけれども、差別的取り扱いにつ いて、基本的にはこの政府提案については基準が定められている。ですから、議論するまでに基準 は与えられているわけですから、判断しやすい。これが一つです。

 その上で、しかし、その事業主が、こういう法律に定められた基準に則してこれは合理的だ、あ るいはパートは合理的でないというふうに一致できない場合、これは紛争処理の仕組みに移行する。 もちろん、組合があれば組合がかかわるんだと思いますけれども。その後は、最終的には裁判とい うことになるだろうというふうに思います。

 大事なのは、差別的取り扱い禁止ということを一般的にうたうのではなく、その基準が示されて いるという点で非常に重要だろうというふうに思います。

阿部(知)委員 私の懸念しておりますのは、今の参考人の御意見を伺った 上でも、今、例えば職務と人材活用と有期、定めのない期間の雇用とみなされるという三つを基準 とおっしゃったのだと思いますが、そこでもまたやはり判断に差が出るんだ、それが現実なんだろ うと思うんですね。

 中原参考人のお話では、期間の定めをきちんと労と使の側でつくっていくためにも組合があった ということで一歩前進しているとは思いますが、でも、現実には、そこの基準を使側、事業主側が つくって事業主側が判断したのでは、やはり同じようになるのではないかという懸念なのでありま す。

 中野参考人も御指摘でありましたが、では、今、日本の労働基準監督行政の中に、そうしたこと を一緒に連動して相談を受けたり、是正したり、アドバイスしたりしていく機能が十分であるとお 考えか否か、これは中野さんと、恐れ入りますが、もう一度佐藤参考人にお伺いいたします。

中野参考人 格差についての主張立証責任といいますか説明責任というものを 使用者が尽くさないとか、あるいはその説明が非常に不合理である、私の考えは、政府案が示して いる三つの基準自体が不合理だというふうに思っているんですけれども、それ自体が実態に即して どう判断されていくのかというその判断の受け皿というのは現行ではないわけです。

 これを効果的に実行していくためには、やはり専門家集団がきちんとこれにコミットしなければ いけないということだと思うんですね。ILOも、佐藤参考人も強調されていましたけれども、同 一価値労働という考え方とか、職務を基準に置いて格差の合理性を判断していく、これは私は全く 同感であるわけですが、そういった判断をする素材を一線の職員が与えられていない。

 こういう教育というものが実施されているかどうかということが非常に大きな問題になりますし、 また、そういったところに財政が投下されているかどうかということ、人材を拡充していくという ことと、そのための財政をどう投下するのかということも非常に大きな問題だというふうに思いま す。

佐藤参考人 今回の法律全体として、職務が同じかどうかというのがベース になるわけです。差別的取り扱い禁止についてはそれに幾つかの条件が加わっているわけであり ますけれども、まず、政府提案については、差別的取り扱い禁止、何度も言いますように、一般論 ではなくて具体的な基準を示しているということです。ただし、その基準があっても、同一職務か どうかについて議論が分かれることを私は否定しません。それについては、恐らく指針で職務の判 断についてのものが出るのではないかというふうに私は理解しております。

 そういうものを通じて、事業主も、差別的取り扱いあるいはそれに当たるもの、均衡、どう取り 組めばについての法律プラス指針という形で、より取り組みやすくなりますし、パート労働者自身、 あるいは労働組合なら労働組合も、事業主にどういう要求をしていけばいいのかというものがより 明確になるのではないかというふうに考えております。

阿部(知)委員 では、最後に中原参考人にお伺いいたします。

 今、厚生労働行政の中でいろいろな指針、ガイドライン等々がつくられることが少しなりともい い方向になるのではないかというお話でありましたが、以前に中原参考人から、特に雇いどめ問題 に関して、この間、厚生労働省はいろいろなパンフレットなり指針なりで現場にメッセージを送っ ていると思うのですが、パートで働く側の皆さんから見てどのようにお感じであるか、これを最後 にお願いいたします。

中原参考人 私たちは、厚生労働省の作成しているパートに関するパンフレッ トをずっととっておいております。最近、ここ数年、特にパートが激増してきている中で、非正規 雇用がふえていく中で、こういうふうにすれば雇いどめができるというハウツーのパンフレットの ように私たちには見えます。とても腹立たしく思います。パート労働者のためのパンフレットでは ないんですよ、その中身の実態は。私の職場の経営者に見せられるものでもないです。隠していま す。

 要するに、私の職場でも大いに問題になったんですが、例えばパートに定年があるかないかとい うことですね。パートに定年があるのかないか就業規則にも契約にもないのに、契約の途中六十歳 ということで雇いどめで、あしたから来るなと言われた労働者がおりまして、ちょっと争議になり ました。そういうことにつきましても、こういうふうにやれば雇いどめができますよということを 教えるようなパンフレットを作成するのはやめてもらいたいと思います。

阿部(知)委員 厳しい御指摘でありました。職務についても人材活用につ いてもまた雇いどめの問題に関しましても、やはり現場サイドの声がきっちりと反映される厚生労 働行政並びにその結果できるガイドラインでなければ、非常に、かえって明示された要件によって 差別が深刻になるという懸念を私も抱いております。

 現状、日本で一千二百万人のパートでございます。一九九三年、パート労働法が始まったときに は八百万人でありました。ふえる一方のパートが、さらに身分が差別的に固定されていくというこ とにもなりかねない事態があると思いますので、さらに慎重な審議、深めてまいりたいと思います。

 本日はどうもありがとうございました。


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