第166回国会 厚生労働委員会 第12号(平成19年4月11日(水曜日)) 抜粋

案件:
 連合審査会開会申入れに関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(西村智奈美君外二名提出、衆法第九号)

議事録全文(衆議院のサイト)
ビデオ(衆議院のサイト)


〔前略〕

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、予定いたしました冒頭の質問、出産の場の確保と助産のあり方につきましては、 武見副大臣にお願いいたしましたが、他に委員会があり御不在であるということで、次回送 りにさせていただきますので、配付しました資料とは違う資料を用いまして、本来の質疑に 入らせていただきます。

 先週そして参考人の皆さんのお話も伺いまして、きょうの審議に臨み、また朝からずっと 今まで伺っておりましたが、何人かの委員も御指摘でございますが、果たしてこのパート労 働法の改正というものが、パートという身分格差を固定し、むしろこれから先その方たちに とって抜けることができない状況をつくり出すのではないかという懸念を私はまたきょうも 深く抱きました。

 そこで、私は、残念ながらこの法案がいいものと思いませんけれども、それでもせめて現 状を後退させることがないようにくらいは獲得したいと思いますので、そういう観点から伺 わせていただきます。

 今回の法案の大きな枠組みは、いわゆる均衡処遇と申しまして、同じ職場内で働く正社員 の方とパートを引き比べて、同じ職務や、あるいは人材活用の仕組み、あるいは期間の定め のない雇用であれば、なるべく同等にしていこうということであるとは理解しておりますが、 そもそもこの法の枠自体、例えばそこに比較すべき正社員の人がいない場合だってあります し、はなから規定の立て方がおかしいなとは思います。それでもあえて質疑させていただく とすれば、そもそも職務のところで、きょう大谷局長が何度も何人かの委員に御答弁であり ましたが、残業の問題で最後にまた確認をさせていただきたいと思います。

 今、現行法でございますと、第三条の事業主等の責務にあるところの、就業の実態を考慮 してというところで、厚生労働省がお使いになる解釈通達、こう理解してこのように施行、 実施するんだという通達の中に、その就業の実態には、業務の内容、所定外労働の有無、配 置転換の有無、契約期間、勤続年数、職業能力等々が挙げられているわけであります。とこ ろが、現行のパート指針においては、逆に、このパートの皆さんに対して、短時間労働の労 働者の多くは家庭生活との両立等のために、事業主はできるだけ所定労働時間外または所定 労働日外に労働させないように努めることとなっておるわけです。

 パート労働指針では残業と言われる部分についてはさせないように努めるものとされてい て、しかし、今回の改正法の枠組みでも、現行の枠組みでも、もしこの所定外労働というと ころが就業の実態の考慮すべき事項に挙げられるとしたら、これは大きな矛盾ではないかと 思うわけです。せっかく改正なさるなら、この所定外労働、もともとそれを求めるというこ と自身も労基法からかんがみていかがかと思います。ここは何回か御答弁でしたが、しかし 最終的にはっきりしないんですね、この解釈通達等々に用いられている就業の実態を考慮し てという部分の、所定外労働は思い切って削除されてはどうでしょう。いかがでしょうか。

大谷政府参考人 現行のパート法第三条に規定されております就業の実 態ということにつきましては、今お話がありましたように、一つは、業務の内容や労働時間な どのほか、所定外労働の有無が含まれるというふうに解釈しているところでございます。

 今回の改正におきまして、差別的取り扱い禁止の規定を設けまして、その対象者につきまし ては、何度か申しておりますけれども、職務の内容、それから人材活用の仕組み、契約期間、 この三つの要素に整理しております。

 その職務の中の責任という考え方につきまして、所定外労働時間の有無、これはやはり含ま れないと言うことはできないと思います。ですから、含まれ得るものと考えますけれども、 ただ、本日何度か御答弁申し上げましたが、正社員の残業の有無にかかわらず一律に考慮され るという要素ではない。やはり責任に伴う必要な残業については考慮されますが、正社員が 残業するから、その連動でパートタイマーについてもただ同じものを当てはめる、というわ けではないということでございます。

阿部(知)委員 それではミミズがはったくらいの前進と、受けとめたい ですけれども、せっかく改正なさるんだから。しかし、そのような実態の中では、例えば懸念さ れるのは、残業しないからあなたは同じ働きをしているんじゃないんだよというふうに理解され かねない余地を残すわけです。そこは局長もわかって御答弁だと思うんです。せっかく改正なさ るなら、やはりそういう余地が残らないようにすることこそ、私は厚生労働行政だと思います。  二点目。同じような、人材活用の仕組みというところで、皆さん転勤という言葉で言っておら れるのですが、果たして本当にそこを転勤というふうに言い切らなきゃいけないのかどうかで、 人材活用の仕組み、運用等とは、人事異動の幅、頻度、役割の変化、人材育成のあり方などと挙 げられているんですね。

 転勤という問題は、例えばことしの四月から施行された男女雇用均等法の中では、募集や採用 や昇進に際して、転居を伴う転勤を要件に挙げたら間接差別である、差別であると言われている わけですよ。そうすると、せっかく始まった雇用均等法との並びもまたここで後退させていくの かというふうな懸念にとらわれるわけです。

 この点は、雇用均等局長、どうですか。

大谷政府参考人 これは、今回の短時間労働者の法律と、それから今御指 摘のありました男女雇用機会均等法、二つの法理念をいわばかけ合わせて考えなければならない と思うわけであります。

 パートタイム労働法におきましては、職場における転勤、正社員に転勤があるとするならば、 比較すべき対象がそうである範囲において比較対象と連動してその違いを考えるということで、 ここは合理性の中身よりも実態に着眼して判断をするわけであります。しかし、昨年改正しまし た男女雇用機会均等法にかんがみまして、その転勤が合理性がないものということであれば、 そちらの法律根拠に基づいてその企業の実態が指導されていくべきものというふうに考えてお ります。

阿部(知)委員 雇用均等法というのは大変大きな法の考え方の概念の転 換ですから、もっと積極的にそちらの水準に合わせるということで、今のもまたミミズ一ミリ でしたけれども、まあ前進というふうにとらえてやっていただきたいです。

 それから、三点目。いわゆる期間の定めのない雇用ということに関して申しませば、これも これまでさまざまな有期労働契約の締結、更新及び雇いどめに関する基準というものが厚生労 働省告示で上がっております。「使用者は、有期労働契約(当該契約を一回以上更新し、かつ、 雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しよう とする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限 り長くするよう努めなければならない。」という厚生労働省の告示であります。

 今回の法案で、期間の定めがないと同視されるというときの判断は、この告示を十分に受け とめたものと考えてよいのですか。どうでしょう。

大谷政府参考人 この改正法における差別的取り扱い禁止の対象者の要件 につきまして、有期契約を反復更新し、期間の定めがない場合と社会通念上同視し得る場合に ついては、期間の定めがない場合に含まれるものというふうに明快に規定しているわけであり ます。

 この社会通念上同視される場合の解釈、運用につきましては、これは雇いどめが権利濫用に 当たるか否かに関して蓄積された有期契約の反復更新に関する裁判例を踏まえつつ解釈、運用し ていくことになると考えておりますけれども、これまでの進め方について、それを後退させるこ とはないものというふうに考えております。

阿部(知)委員 その点はきっちりお願いしたいと思います。

 特に、やはり最も問題が大きいのは、有期契約、反復更新、そしてそれを労側、使側、おのお のどのように受けとめているかというところがいつも一番最大の争点になるわけです。そもそも、 共産党の皆さんが修正案に挙げられていますが、私も、この有期契約ということについても今回 のパート労働法がきちんと対応できるものとなることが本来望ましいと思っておりますが、政府 の法案はそういう体系をとっておられませんので、政府どおりの法案であるとすると、今局長が 答弁された点はかなり重要になってまいると思いますので、行政サイドとしてよろしくお願いし たいと思います。

 引き続きまして、今言ったような三要件、三つのハードルが労側と使側から見ておのおの判断 が違う、これが一番混乱のもとであるわけです。その中にあって、これは先ほどの筒井委員との 御質疑だったと思いますけれども、民事裁判に行く前に雇用均等局は頑張るんだ、労働局も頑張 るんだというお話でありました。それを素直に実は受けとめたいのですけれども、しかし、ちょ っとどうかなと思うことがございまして、次の質問に移ります。

 皆さんのお手元に配らせていただいたのは、「男女雇用機会均等法に基づく紛争解決援助及び 調停の件数」ということでございます。今回のパート労働法でも、雇用均等法ででき上がった体 系を踏んでいくということになると私は受けとめました。しかし、雇用均等法で実際に行われて いる助言、指導、勧告、調停の数々は一体どうなっているのかなというのをデータで出していた だいたものがこれであります。

 先ほど大谷局長は、平成十一年から十七年全部の助言を合わせて千百七というふうなお答えだっ たんだと思うんですね。では、指導、これは大体件数は足していけばわかるわけですが、非常に 数が、毎年一けた台ですから、どのような内容で指導されたのですか。勧告、一例も事案はない んですよね。そういう体制で臨んで、果たしてこのパート労働法、本当に助言、指導、勧告がで きるでしょうか。

 どうしてこんな実態なんですか、お答えをお願いします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 まず前半、雇用機会均等行政の中でのいわゆる調停等、こういう実例が少ないという御指摘で ございます。

 これは、今資料にありますように、十七年度の機会均等調停会議による調停の申請件数が四件 ということでございまして、これは原因をいろいろ中で検討したところでありますけれども、調停 制度の存在がまだ十分知られていなかったり、あるいは相談者自身が名前を明らかにして事業主と もに、均等法に関する個別紛争についての相談があった際に積極的に機会均等調停会議による調停 の利用についても説明するということで、実はこれは先般開催しました全国の雇用均等室長会議に おきましても指示したところでございまして、こちらの分野における調停制度の一層の活用という ものも図っていきたいと考えるところであります。

 今回のパートタイム労働法について申し上げますと、労働局におけます調停制度あるいは指導、 勧告というものがこの制度の特に均衡処遇の実効上非常に重要な要素というふうに考えておりまし て、新たにパート労働法に基づく調停制度が創設されたことについて十分に周知を行うとともに、 労働者から相談があった場合にも、この調停制度というものをきちっと紹介していく、また、助言、 指導、勧告につきましては、事案に応じて適切にその権限を行使していく、こういったことにより まして、この法の実効を上げていきたいというふうに考えております。

阿部(知)委員 勧告に至るような実態はまずなかったんでしょうか。上げ ていきたいと思いますとおっしゃる気持ちはそうでしょう。しかし、これは実績なんですね。実績 を見ると、先ほど申しましたが、指導もほとんどないし、勧告は全くない。おっしゃった調停が、 名前を明らかにして言い出しにくいから、あるいは周知徹底されていないからといっても、もう六 年たつわけですよ。そうすると、このたびパート労働法が改正されてまた同じような轍を踏むので はないか。

 やはり、ここをどう見直されて前に進もうとしているのか。そこが具体的でないと、おいそれと は、今度この法律ができても、さっき言いました、逆のハードルになってパートという身分が差別 的なままに固定されるんじゃないかという懸念を一方ですごく多くの人が抱いているわけです。そ うなったら、それを少しなりとも違うんだと厚生労働省が言うためには、行政の部分がしっかりし なきゃいけないと、きのうの参考人も、中野弁護士もおっしゃっておられましたね。労政審の委員 であった方もおっしゃっていました。

 私は、その意見を素直に受けたとして、しかしこの実績を見て、さっきの局長の、これから労働 局の雇用均等室の中で受けとめる、あるいは労働センターでとおっしゃいますが、今まで一例の勧 告もしていない。調停については、だって三十一件あったのは平成十一年度だけで、そういう調停 事案が少なくなるということはいいことですが、では、実際に性差別がなくなっているかというと、 そうではないと思うんですよ。

 そうすると、もう少し実のある御答弁、局長、本当に実感としてどう思われますか。何をしていっ たらいいか、もう一歩踏み込んで答弁いただかないと、これはとても懸念が広がりますが、どうで しょうか。

大谷政府参考人 男女雇用機会均等法につきましても、これは昨年法律改正を させていただいて、この四月から新たに施行するということになっておりまして、その新制度をさ らに周知する、また雇用均等室がその指導力を高めていくということは非常に重要であるというふ いろ制度が推移してまいりましたけれども、基本的には指針において進んできたわけでありまして、 今回、義務事項、努力義務事項、相当の前進を見たところでありますので、これを根拠にして、ま たその行政をさらに推進していきたい、この法律の実効を上げるためにもそれは大変重要であると いうふうに認識して取り組みたいと考えております。

阿部(知)委員 今の答弁を一応は伺っておきますし、また何年かして実績も 出るやもしれませんから、そのときにも伺わせていただければと思います。

 最後に、大臣、お待たせをいたしましたが、実は、ことしの十月から郵政公社が民営化されます。 いわゆる郵政民営化ということで、選挙も経て、政府の中心事項として大変に進められたことでは ありますが、果たして大臣、現状でも結構ですが、今郵政公社ですが、郵政公社にもまた多くの非 正規雇用の方がおられます。正規雇用と非正規雇用の方の数の比というのは御存じでありましょう か。まず一問。

柳澤国務大臣 日本郵政公社の職員の中における常勤、非常勤の数でございま すけれども、十八年度におきましては、常勤は徐々に減っているわけですが二十五万四千、それか ら非常勤は徐々にふえておりまして十三万二千ということですので、大体二対一の割合ということ かと思います。

阿部(知)委員 資料をもらわれてお読みになればそうだと思うんですね。し かし、そこに働く一人一人の人間に目を向けると、今大臣がおっしゃった数は違ってくるんですね。 常勤は確かに一は一なんです。二十五万四千百七十七人は七十七人なんです。ところが、非常勤は十 三万二千四百十二人となっておりますが、常勤換算なんですね。ここは大臣、やはりパートで働く、 時間を限られて働く、ここに膨大な数の非正規雇用が人としているんですね。私は、きのう総務省に、 本当に人はそこに一体何人いるのかと伺ったんですけれども、定かな数は上げていただけませんでし た。

 しかし、これも先ほど高橋委員もおっしゃいましたが、例えば物件費で処理される人間の処遇のさ れ方、それもやはり私はおかしいと思うんです。こうやって数で出てきたときも、常勤換算という概 念は理解しますし、必要な場合もあるとは思いますが、労働現場で働く人に目をやる政策というもの でないと、本当のパートの処遇改善には結びつかないと思うんです。

 これが十月から民営化されますと、今までは先ほど高橋委員がお取り上げになった公務員の中のパ ート労働者、これも非常に問題が多うございます。しかし、今度は膨大な数の、最大規模かもしれな い民間のパートがここに発生するわけです。この人たちの処遇が本当にきちんとした今の法の枠、政 府がおっしゃるのは均衡処遇ですね、そういうものになるかどうかについてもきちんと目を光らせて いただきたい。

 まずはその御決意と、後ほど、もし次回でも時間をいただければ労働実態、非常に区分されていて、 複雑でこれだけ身分があるのかと思うような実態なので、中身については次回できればやらせていた だきますが、まずは概略的なところで大臣に事態を認識していただいて、ここに膨大に発生するパー トの人、一人一人に気を配る行政をやっていくという御決意をお願いいたします。

柳澤国務大臣 パート雇用労働法の改正は、私ども、雇用の形態が多様化する 中で、前から何回も申し上げておりますように、希望する方はできるだけその希望がかなえられて正 規雇用に移行することを応援していきたい、しかし、選択をしてみずから非正規の一形態であるパー ト労働というものに従事し続けるという方においても、処遇において、パートだからという理由で大 幅に劣後するということがあってはならない、そういうことで全体として日本の労働市場というもの をもう少し立て直していきたい、こういう気持ちを何回も我々表明させていただいているわけですが、 いわば、その非常に重要な部分の一つとしてさせていただいておるのが、今回のパート労働法の改正 でございます。

 そういう意味合いで、私どもは、この法律によって、そのような私ども政府の持つ基本的姿勢が実 現されるということでなければならないと強く考えておりまして、そういう方向に沿った行政を通じ て、この法律の所期の目的が確保されるように努めてまいりたい、このように考えます。

阿部(知)委員 郵政の現場で、例えば一人の労働者が正規職員でありたいと 願っても、そうならない状況も起きているやもしれません。次回、それはまた御質疑させていただこ うと思います。

 ありがとうございます。


第166回国会 国会活動コーナーに戻る   阿部知子のホームページに戻る