第166回国会 厚生労働委員会 第2号(平成19年2月21日(水曜日)) 抜粋 案件:
政府参考人出頭要求に関する件
地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、社会保険事務所の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、第百六十四回国会承認第三号)
厚生労働関係の基本施策に関する件
〔前略〕
○櫻田委員長 次に、阿部知子君。
○阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
本日、私は、柳澤厚生労働大臣の厚生労働行政を預かります基本的な姿勢、所信についての質疑をさせていただきますが、実はこの国会は、先ほど来皆さんが御質疑のように、柳澤大臣の、女は産む機械発言によって、産むという人間にとって最も根源的な営みが果たして現代社会において保障されているんだろうかということが問題になった国会であろうと思います。
私は、これまで予算委員会の中で二回、柳澤大臣に、実はこの産むということをめぐって、現実に非常に大きな問題が生じている出産現場ということを取り上げ、さらに本日は、いわゆる産科領域における無過失補償制度のことを取り上げさせていただく予定でありますが、その審議に先立って、実は大臣にお願いを申し上げました。
産むという作業、決して機械ではない、生ものの、生き物の、一人一人の人間が選び取るその作業の中で、不幸にして産む御本人が亡くなられるケース、母体の死亡と言いならわしますが、あるいはお子さんが亡くなられるケース、あるいは障害を持って生まれ、生きていくケースなど、さまざまなドラマがそこにはございます。
実は、きょう私は、大臣に、この審議の後に六時から、そうした出産にかかわりますさまざまな困難を抱えて、現状でいろいろな取り組みをなさっておられる、特に陣痛促進剤の被害等々を負った御家族、あるいはお子さんを亡くされて裁判等々の経過を経て、現在は例えば医療事故の再発防止に取り組む皆さん、計十一家族、十二人の方にお会いいただくことになっております。
実は、その十二人の中に、お一人の十歳の脳性麻痺の患者さんがおられます。大臣はお会いになればわかると思いますが、車いすを使用であります。また、口から食べることができませんので、胃に直接チューブを入れて、そこから栄養物を流し込むという作業が必要でございます。
本日、養護学校が終わってから、夕刻来られますので、食事をする時間がありません。そこで、私の方から厚生労働省にお願いして、厚生労働省内の一室で食事をとらせていただけまいかとお願い申し上げました。ところが、これは大臣によくお聞きいただきたいのですが、お手洗いの障害者用のところでさせたらどうですか、こういうお返事でした。トイレと食事を一緒にしろと言うような厚生労働省であっていいかどうか。これは大臣の暴言や失言ではありません。でも、私は、厚生労働行政にかかわる方がそのような意識でいるということが情けなくもあり、本当に怒りで震えました。
そして、何回かの交渉の後にやっと一室を確保していただきましたが、きょう、わざわざ私の質疑時間で大臣にこのことを申し上げるのは、やはり私は、大臣の発言もそうですが、厚生労働行政に変わってほしいんです。温かい血のぬくもりの、血の流れる人間の行う行政に変えていただかねば、今本当にあちらこちらで悲鳴が上がっています。
実は同じような出来事が、もう四年前になりましょうか、支援費の法改革のときに、自立支援法以前の支援費のときにもございました。外で座り込んでいる障害者の方が、お手洗い、その場合は障害者用のお手洗いがないので、中に入れてお手洗いを使わせていただきたいとお願い申し上げましたところ、本当に無慈悲にお断りでありました。私は、その当時、木村義雄さんが副大臣でありましたので、副大臣室にお願い申し上げまして、たかがお手洗い、されどお手洗いでございます、やっと使わせていただきました。
一々こうやって副大臣や大臣に、こんなことがありました、あんなことですよと申し上げなきゃいけないような、特に障害の問題は本当に冷たいの一言に尽きます。もちろん私は、そこはどこの部署のだれがというようなことは申しません。しかし、大臣がつかさどる省庁であります。
まず、大臣がこのたびの御発言を非常に深く悔いておられるということでありますので、厚生労働省全体がどんな意識で事に臨んでいるのか、申しわけありませんが、その点についても大臣がきちんと御差配いただきますように、私は重ねてこの件は要求を申し上げます。
そうしたことにのっとって、質疑を重ねさせていただきます。
きょう、先ほどお話し申しましたが、十二名、そして十一家族のうち、実は四名は奥様が亡くなっておられます。御主人というか夫殿が来ておられます。また、四名は子供さんが亡くなった御遺族であります。あと四名は現在脳性麻痺のお子さんを抱えて闘病中というか養育中の方であります。
それで、皆さんが大変に御心配されておるのは、今回の無過失補償制度と言われますものが、まず、そうしたいろいろなさまざまな問題を抱えた方々の御意見をほとんど伺うことなくつくられて非常に急速である、そしてなぜ脳性麻痺のケースだけなのかということであります。
火急なことは、ある意味で、状況的にわかります。しかし、これまで、例えば陣痛促進剤の被害を受けられた方は、たしかせんだっても申しましたが、二百二十六ケースのうち半数近くはいわゆる医薬品の被害情報という形で厚生労働省にも情報を寄せております。産科の現場、出産の現場がどうであるかという声をお聞きになることなくこの制度が進められたら、私は、実は仏つくって魂入れずになると懸念しております。
大臣に一問目。これまでの制度設計の仕組みの中で、患者さんたちの声をどのようにお聞きになったのか。そして、なぜ脳性麻痺をまず取り上げられているのか。まずというと変ですが、そのケースなのかについて、二点お願いします。
○柳澤国務大臣 医療事故に関します無過失補償の問題については、もとより、私どもの役所でもいろいろと、どのようにすべきかということについて検討をいたしておりましたが、十一月の末の段階になりまして、与党の検討会の話が進みまして、分娩により脳性麻痺となった場合を対象とする制度という枠組みが取りまとめられ、我々の方にもお伝えいただきました。
これにつきまして、もとより、私どももこの考え方をもとに当然我が省としての態度も決めたわけでございますけれども、医療事故の中でも、分娩時の医療事故では過失の有無の判断が困難な場合が多くて、裁判で争われる傾向がある、このような紛争が多いことが産科医の先生方の不足の理由の一つでもあるという指摘を受けて行われたというふうに私どもは受けとめたわけでございます。
なぜ脳性麻痺だけなのかということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、脳性麻痺の方々について、そうした過失の有無の判断が困難な場合が多いというようなことだということで、まず緊急度からいって、ここから着手して、その余のことにつきましては、この制度の設立後にその運用状況を見ながら検討していくべき課題だ、このように考えたという次第でございます。
厚生労働省といたしましても、この与党の検討の状況を踏まえて、安心して産科医療を受けられる環境整備の一環として制度構築に取り組んでいきたい、このように考えている状況でございます。
○阿部(知)委員 緊急度とおっしゃいまして、そのことは、私も小児科医ですので、今の産科の中で、産科をつかさどる医療者側も大変に苦労をしておるということもある程度理解しているものであります。しかしながら、緊急度ということが、大臣がおっしゃるように、他の、先ほど私が取り上げました母体の死亡や、あるいは亡くなられた子供の問題、あるいは他の、特に産科に次いで医療被害の多い外科等々、医療事故と申しましょうか、等々に普及していける仕組みになっているかどうかという点と、何度も申しますが、実際にさまざまに、これまで産科医療で問題とされていたことに解決を与えるものであるのかという二点が私は重要になってくると思います。
そこで、皆さんのお手元にお示ししてございます二枚目。一枚目には、各科別の医事関係訴訟事件の件数が書いてございますが、確かにこう見れば、産科が一番多く、次が外科になってございます。
二枚目をあけていただきますと、そこには無過失補償制度、補償という字が間違っております、申しわけありません。無過失補償制度の流れということで、過失の有無を判断するところの運営組織として日本医療機能評価機構というところが想定されております。しかしながら、武見副大臣もおられますが、日本医療機能評価機構は、主に医師会を初めとする医師側の、医療側の出資による財団法人でありまして、先ほど来私が申し上げているように、医療というのは両方、医療提供サイドと受ける双方の営みでございますから、ここの運営組織で医療の無過失あるいは過失が判断されるということは、やはり私はちょっと問題があろうかと思いますのと、もう一つ問題がございます。
無過失か過失かを判断すると同時に、実は患者さんたちの一番求めておりますのは、再発防止のシステムでございます。安心してお産をしたいのです。もちろん、脳性麻痺となった子供に二千万、三千万補償されるということは、親はうれしくないといえばやはり言葉が違うと思います。ただ、本当に求めているものは安心、安全なお産であり、金額だけ申しませば訴訟になれば八千万、一億といくようなところでの無過失か過失かの判断も、極めてグレーゾーンが多いと思います。
大臣は、この仕組みの中で一体、再発防止あるいは医療現場への指導、いわゆる労働災害であれば、労災事故が起きたら現場を調査して指導勧告、是正勧告ができるわけです、一体この中に是正勧告の仕組みはどこに組み込まれておりましょうや。大臣にお願いします。
○松谷政府参考人 今回の与党によって示されました無過失補償の枠組みでは、無過失補償ということから、過失のないことを前提に審査をした上で補償をしよう、そういう仕組みになっているというふうに承知をしております。
分娩時の医療事故というのは先生御指摘のとおりいろいろな場合が、過失によるものもありますし、無過失の場合もあるということでございます。先生御指摘の点は、まず過失、無過失をやはりきちんとはっきり審査すべきではないか、過失がある場合には、それが次のときに防げるような、再発防止に向けたことができるように、無過失の場合は、これはもうやむを得ない場合でございまして、先生もドクターでございますので御承知のとおり、医療は絶対安全というわけにはいきませんので、どうしても無過失で事故が起こる場合はございますので、今回の仕組みはそういう場合についての補償をしよう、そういう仕組みだというふうに理解しております。
したがいまして、審査のところが一番大事ということでございまして、その仕組みについてはきちんとやっていきたいと思っております。その結果によって、もし過失がある場合はもちろん過失の方の補償になりますけれども、補償もそうですが、むしろそれの再発防止というところに結びつけるということは先生の御指摘のとおりだと思っております。
○阿部(知)委員 今、もごもごもごもごおっしゃっていましたが、無過失補償制度を理念どおり運用するためには、補償と切り離した独立の機構で事故の勧告、処罰の適用をきちんと点検しなさいということが、これは厚生労働省の研究、補助金を用いた研究の中でも指摘されているわけです。補償の問題と、こっちで実際に原因の調査、是正という両輪が回らなければこんなものは機能しないんです。
それと、言わせていただければ、私は無過失でも是正されるべき状況はあると思います。それが過失か無過失かというのは本当に難しいところです。でも、体制としてさらに高めておけば安全性が高まる、患者さんはそのことを望みます。安全で安心なお産ということがいかに厚生労働省に届いていないかということですし、もう一点、大きな問題があります。
実は、この運用に際しまして、いわゆる出産一時金、国保、国民健康保険ですと三十五万円、組合健保の場合は六十万円ぐらいある組合もあるかもしれません。そこからのお金の一部を医療機関がいただきまして、それを原資にして民間損保会社が運営するという形態をとっています。ある種の、国民健康保険や組合健保という、いわば公的保険からのお金を原資に民間保険が運営いたします。私は、この構図というのは、例えば労働災害保険であれば労災保険特別会計があって、保険料をいただいて、そして給付もきちんとした公的な組織が行います。これは非常に中途半端な、お金は公金で集め、運営は損保会社に丸投げという形をとっております。
柳澤さんは金融大臣でありましたから、私が言わんとしていることは大変よく御理解と思いますが、大臣、もしもこの制度を他の医療事故等々に普及せしめていくためには、もっと本格的な事故調査や是正やそして支払いの方式、公的な支払いの方式、お金をプールし支払っていく、労働災害保険のように、そうした仕組みが必要とは思われませんか。
そして、ちなみに、今医療者が、病院とか医師が自分で入っている医賠責という保険があります。これは現在、二〇〇三年末で百三十九億の赤字であります。民間保険会社、損保会社がやっているものでありますが、どんどんどんどん毎年のように、武見副大臣も御存じでしょう、保険料は、私たちが払うのは上がっていきます。それでも百三十九億の赤字、このたびまた上げましたからどうなっているかわかりません。私は、こういう保険が安定的にそして本質的により広く普及するために、やはりここは大臣の御英断で公的な支払いの仕組みを導入するべきと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○柳澤国務大臣 まず、民間の保険会社が保険事故と申しますか、補償金の支払いを行うきっかけになる判定というか、査定というものを行う際に、この場合は無過失の補償をうたっているわけでございますので、とにかくまず日本医療機能評価機構という運営組織、これは実際の組織運営に当たっては、この機構の運営とは別の機関をまた設けるようでございますが、いずれにせよ、そこで審査をするという方式にしておるということには、私は一定の合理性は当然あると思います。民間の保険会社がまたいろいろみずからのものを持つよりも、そういうところで公的な審査機関がしつらえられるということには、私は一定の合理性がある、こういうように思います。
その場合に、一体、民間の保険会社に保険料として支払われるもの、資金というものはどういうものであるべきかということでございますけれども、これについては、今この図で申しますと、健保組合あるいは国保といったような、出産一時金の支払いというもの、支払いをする機関がその一部でもって保険料としてこれを納付するということも、健保組合、国保に妊産婦さんが加盟している限り、そういう前提で事が運ぶということ、そのことについては別段私は違和感を感じるものではございません。
ただ、阿部委員がおっしゃるように、公的なものが、資金がある程度支援されるべきかどうかということが問題提起としてあったかと思いますけれども、これについてはまた別途のいろいろな側面の検討が必要なのではないか、私はそのように考える次第です。
○阿部(知)委員 いずれにしろ、この制度設計はこれから一億何がしかのお金をかけて準備されるということで、ぜひそこに患者さんサイドの声をもっとオープンに取り入れて、本当に安心と安全の体制にしていただきたいと思います。
以上で終わります。
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