第166回国会 厚生労働委員会 第6号(平成19年3月20日(火曜日)) 抜粋

案件:
 政府参考人出頭要求に関する件

 児童手当法の一部を改正する法律案(内閣提出第二四号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件

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〔前略〕

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本来の審議にかかわります児童手当の第一子、第二子、五千円から一万円への加算につきましては、基本的に賛成いたします。ただし、この児童手当の問題を、一つには少子化問題として論ずるのか、あるいは家族政策として論ずるのか、あるいは社会保障の問題として論ずるのか等々、私は、この短時間の中ではとても審議が尽くせないほどの問題が背景にはあると思います。あわせて、昨今のいわゆる働き方の問題、これは少子化にも直に影響しておりますが、若い人たちの不安定で先の見えない働き方ということも含めて、総合的な政策が必要なものとは思っております。

 法案自身については賛成の意を表し、私に与えられた時間で、実は、三月の十四日の日、中央社会保険医療協議会、略して中医協で審議がなされました、リハビリのいわゆる日数制限打ち切り問題について質疑をさせていただきます。

 これは、先ほど高橋委員と厚生労働大臣の質疑の中でもそうですが、例えば児童扶養手当、特別児童扶養手当等々にもまず削減ありきということを決めておいてからやるということは、現実の場でそのことをもってしてしか生きていけない方たちにいかにも問題が多いやり方だということは、高橋委員の先ほどの御指摘のとおりと私は思います。あわせて、このリハビリの打ち切り問題も全く同じような経過をとってございます。

 思い起こせば、一年前、医療制度改革の中でこのリハビリの日数制限ということが打ち出されて以降、実は、多田富雄先生のさまざまな活動、私も大臣に御紹介申し上げましたが、署名を募り、最終的には四十八万という署名が昨年の十月段階で提出されております。リハビリが受けられない、受けたくても受けられないという声は、洪水のように我が国の中に広まりました。

 特に大臣には御存じと思いますが、社会学者で、大変高名ですから皆さんも御承知と思います、鶴見和子さんという方が、昨年の七月の三十一日、お亡くなりでありますが、それに先立って六月にリハビリが打ち切られたという、これが直接の死因ではございません、大腸がんで亡くなられましたが、しかし、その六月十五日、誌上に発表されたものの中に二つの句がございます。大臣には特によく聞いていただきたいです。

  政人(まつりごとびと)いざ事問わん老人(おいびと)われ生きぬく道のありやなしやと

御高齢で十年余りをリハビリをやりながら過ごしておられたけれども、この改定に伴う中で、リハビリの打ち切りが宣告され、そして、彼女はもう一句詠んでおられます。

  寝たきりの予兆なるかなベッドより起き上がることのできずなりたり

その一カ月弱後にお亡くなりであります。

 この鶴見さんのように句を残され、そして、実はそういうこともままならない多くの声がここにあり、厚生労働省としては今見直しをしている途上であるからということでずっと一年引っ張ってまいりました。しかし、結果的に見れば、実はさまざまな形で、このリハビリを受けられない方たちの存在が明らかになりました。厚生労働省がおやりになった調査でも、二千八百二十二医療施設から八百五十五施設の回答を得た中でも、疾患によっては一割、そして少なく見ても、例えば非常に少ない数しか上がってございませんが、脳血管障害の患者さんでも、リハビリが効果があるのに打ち切られた方すらございます。

 大臣は、一体、こういう政策のやり方、すなわち、先に打ち切っておいて、そして事が生じ、失意の中で亡くなる方も出て、そして、一年間放置してリハビリを見直したといっても、やはり事が逆なんだと思います。生身の人間の命がかかった厚生労働行政でこの手法が続く限り、やはり人間的な社会にはならないと私は思います。

 まず、大臣には二つお願いがあります。やはり政策のこうした非人間性について謝罪をしていただきたい。そして今後、いわゆるこうした犠牲になる方がないような政策をとるという決意を、まず冒頭、お聞かせください。

柳澤国務大臣 今回のリハビリテーションの体系の見直しと申しますのは、これは、もちろん専門家の方々による十分なデータの収集とその分析の結果によって慎重に立てられたものである、こういうように私は承知をいたしておりまして、それをいろいろと、非人間的だとかというようなことでおっしゃられるというのはやや一方的なのではないか、こういうように私は考えるわけでございます。

 現に、今回の調査、検証、これは前倒しで行ったわけでございますけれども、患者の大半は、算定日数上限の前に必要なリハビリを終えているということがうかがえますし、早期のリハビリテーションに重点を置いた医療機関では、患者数が大幅にふえたということが紹介されるなど、発症後早期のリハビリテーションに重点を置いた十八年度の診療報酬改定は、全体としてはまあまあ妥当であった、こういうように先生方もおっしゃっているというふうに私は承知をいたしております。

 そういうことでございますので、今回、このリハビリテーションの見直しを、調査、検証を踏まえ、また先生方のいろいろな御議論も、適用がなかったとは私は思いませんが、そうしたことで個別のいろいろな改善すべき点を改善するということをさせていただいたわけでございまして、これは行政の行き方として大間違いをしているということはない。しかし、できる限り、そういう途中での見直しというようなものが必要でないような運び方をどうすれば今後できるのかということを、さらに勉強していくということは必要なのかな、このように思っている次第でございます。

阿部(知)委員 今の大臣の御答弁で、専門家が十分慎重に事を計画し、政策に起こしたとおっしゃいます。しかし、一番抜けているのは、現場を見ていなかった、患者さんたちの実態が把握されていなかった。

 例えば、医療保険から介護保険のリハビリに行きなさいと言いましたが、介護保険の受け皿は現実には半数の人がなかった、これを机上の空論というのです。そして、生身の人間が苦しむのです。大臣には、ぜひ厚生労働行政というものを、本当にやはりこれまでの大臣の長い経歴の中のものとは異質な分野がそこにあるという認識に立っていただかないと、生身の人間が本当に、命も含めて危機にさらされます。もし、今大臣がおっしゃったようであれば、実は、今回のこのような見直し結果は出なかったのではないですか。

 そもそも、疾患別に上限日数を定めて、その上限内に何割の人が終わったか、ここを基準にしております。でも、医学的に見れば、大事なのはそこまでで終わらなかった人なのです。たとえその数が二割を欠くもの、しかし、二〇%から三〇%、もし、終わることがない、そこで症状が残り、リハビリが必要だという人があれば、そこから話は始まるのです。そこに回復の見込みがないという言葉をもって、実は多くの人を切り捨てました。

 大臣、医療とは回復の見込みがなければ切り捨てていいものですか。私は、この発想が非常にこの後も医療保険制度に影を落とすと思います。回復の見込みがないという言葉をお使いになったことによって、実は回復の見込みのある人ももちろん切り捨てられました。その状態を維持するということに本当に苦労している患者さんも医療者も非常に苦しみました。大臣は、今もって医療保険の打ち切りが回復の見込みのないということにのっとってやられることはいいとお思いなのですか。それが日数制限ということです。お聞かせください。

柳澤国務大臣 介護保険というものが他方で整備をされまして、そして、医療保険のもとでのリハビリの対象になる人と介護保険のもとでリハビリの対象になる人が、両方可能になった制度を私どもは持ったということでございます。

 その考え方で、リハビリテーションというものをしている方の中で、医療保険の対象としてリハビリをするべき人なのか、あるいはそういうことよりもむしろ介護保険のもとでリハビリテーションをするのがいいのかということが、両方可能になっているものですから、そこでそういう、ひとつどういう人だったらこちらに行っていただくのがいいかということを考えて今回のようなことが行われたというふうに言わせていただいてよろしいかと思うんですが、そういうことなんです。

 それで、今この医療側のリハビリテーションの終わった人が行き場がなくなったなどというようなことはないようにしようということを私どもも考えておりまして、もう医療保険のもとでのリハビリをやっているその間に、次の介護のリハビリをやる人たちとの間でよく打ち合わせをして、シームレスな形でそこのトランスファーというか引き継ぎができるようにしようというようなことも考えているわけでございます。

 そして、何よりも今度は、医療のもとでのリハビリというものをしていれば改善の見通しがあるというような方々については、これは個別判断の問題として、できるだけそうしたことも考えていこうというふうにしておるわけだし、またさらに、リハビリなんだけれども、やはり医療のもとでのリハビリと介護のもとでのリハビリとが少し流儀が違うということで、医療のもとでのリハビリの方がいいと思うような方についてもそういったことについて配慮をしていこう、こういうようなことまで考えております。

 ですから、今委員が御指摘になられたことは十分今度は参酌して、そういうことにおいて遺漏のないような制度にしていこうという改善が行われているわけでございますので、ぜひ御理解を賜りたい、このように思います。

阿部(知)委員 もともとリハビリというのは個別性があるのです、オーダーメードでその人に合わせて。それを無理無理、疾患別に日数制限したところの骨格を変えず、ちょうど障害者自立支援法の応能負担ではなく応益負担にしたのと一緒です。その結果がこれを生んでいます。

 大臣は御存じでしょうか。例えば、全国保険医団体連合会が五百六十二医療機関を調べて、脳血管疾患で中断された方、一万七千人です。今回の厚労省の調査では氷山の一角も出ていません。

 そして大臣、恐縮ですが、実はこの政策の最大の誤りは、既に皆さんがお好きな、例えばリハビリ人生とか訓練人生とかいろいろ言っておられるところの、第二回高齢者リハビリテーション研究会で指摘された大川委員の指摘、しかし、これを厚労省は、自分たちの理論に合うところだけ取り上げて、この委員の真摯な提言を取り上げなかったのです。

 ここでは、維持期のリハビリテーションについて、時々、間欠的にぎゅっとやれ、あるいは医療と連携してやるべきだ、そして、もっともっとOT、PTを活用して、そして今の訪問リハも医療の中でも充実していくべきだ等々、何ら今回の改正とはかかわりのない、違う方向の指摘がなされています。

 ついでに、今度の中医協で最後の結論が、これから維持期のリハについて見直していくということでした。だったら、こうした政策をやってから、被害者が出て悲しい思いをしてからではなく、厚生労働行政をきっちりとやる、このことを大臣にはお願い申し上げて、終わらせていただきます。


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