第177回国会 厚生労働委員会 第17号(平成23年6月1日(水曜日)) 抜粋

案件:

 政府参考人出頭要求に関する件

 予防接種法及び新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(第百七十四回国会内閣提出第五四号、参議院送付)

 厚生労働関係の基本施策に関する件

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〔前略〕

牧委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 本日は一般質疑ですので、私が、昨年の七月に新たに施行されることになりました改正臓器移植法も含めて、日ごろ大変心にかかっておりました臓器移植問題について、まとめて御質疑をさせていただきます。
 いわゆる脳死下の臓器提供事例ということで、お手元にグラフがございます。臓器移植法案、当初、一九九七年に成立いたしまして、本人同意、ドナーカードなどによって、御本人の意思にのっとって提供されるということで進んでまいりましたが、昨年には、御家族の同意ということも可能になりました。ごらんいただくように、家族の承諾による同意は、昨年とことしで約四十四例となっております。
 そもそも、臓器移植の法律が成立いたしましたときに、社会に定着していくためには、ドナーにとって人権侵害がなかったか、あるいはレシピエントにとっても適正な医療かということをきちんと検証いたしましょうということで、検証会議と申しますか、検証作業が行われてまいりました。
 これまで、全例、本人同意が九十一例、家族同意四十四例、百三十五例が臓器移植されたわけで、脳死となって判定されてもされなかった一例も含めれば百三十六例となりますが、実は、検証が済んでいる事例というのは、臓器提供に至った例は六十四、至らなかった一例も含めて、全体で六十五例でございます。右側にグラフがかいてございます。検証済みが六十五例で、検証がまだというのが七十一例。すなわち、これまで臓器移植されたものの半分も検証がされていないということであります。
 特に、厚生労働省では、御家族の同意になりましてからのものは、いろいろなことがあるでしょうから先に検証も進めましょうということでやっていただいておるとは承知しているのですが、いかに何でも、古いものも含めれば、三年前のものも検証されていないということが現実にこのグラフから読み取れるわけです。
 そして、そうした中で、ことし二月には、こういう検証作業もおくれているから、これまで検証には、その提供となった病院に出向いていろいろヒアリングをして、そして情報をまとめていくという作業を、書面によって、簡略化というと変ですが、出していただいて検証しようかということに変わったようです。
 しかし、私は、これは、例えば第三者的な検証というのは、御本人が出してこられた、提供側が出してこられた書面を見てというよりは、やはり、ここにかかわる陣容をふやしてでも、現場にヒアリングをなさるということを続けていただきたいと思いますが、まずこの一点、細川大臣にお願いします。

細川国務大臣 この検証作業につきましては、今委員が御指摘のように、件数的にも大変おくれているという状況にございます。これについては私も反省もいたしておりまして、この検証作業を早くするということは大事なことだというふうに思っております。
 そこで、委員が御指摘の書面審査についてでありますけれども、これにつきましては、まず家族承諾と本人承諾について区別をいたしまして、家族承諾の件につきましては、これまでどおり現場に行きましてやっているということでございます。
 ただ、本人同意の場合にだけ、最初に書面をいただいて、そして、そこで問題があるようだとなれば、当然現場の方に行って検証をしっかりやるということで、そういう区別をさせていただいて、検証の迅速化ということを促進させていただいているということでございます。

阿部委員 昨日担当者に伺ったところ、そうはいっても、現実にはまだ書面審査でやっているものはないということでありました。
 実は、この検証にかかわる人員がほとんどふやされていないのですね、厚労省内部で。ですから、命にかかわることは簡略化していいことはやはりないと私は思います。予算が苦しい、いろいろおありなのはわかりますけれども、臓器移植というのは見えない意思と言われていて、グレーゾーンの部分がやはりいつもいつも、御本人がドナーカードを持っていらしても、では脳死をどう理解されてチェックしているか等々もまだまだ課題でありますから、現実には、私のお願いは、もっと検証にかかわる陣容を充実させていただきたい。これはお願い申し上げて、細川大臣には検討していただきたいと思います。
 かく私が申し上げますのも、例えば現場に出向いている検証でも、問題が実は十分拾えているかどうかが懸念を持たれるところであります。
 お手元、資料の二枚目をめくっていただきますと、臓器移植提供の八十八例目、実は、家族承諾の一例目の検証であります。
 この事案は、私も前にちょっとこの委員会で取り上げましたが、バイクの事故で大腿骨の骨折と下腿の開放骨折、骨が飛び出るような骨折をされた二十代の男性が救急病院に運ばれて、そのときは意識もはっきりしていて痛いなりなんなりを表示できましたが、そこから大腿と下腿の手術に入り、その手術が終わって一度は呼吸器を抜いたけれども、意識が混濁していって、脳の出血が確認されて脳死になったと言われる事案であります。
 この検証を見ておりますと、私は、大きく言っても三つくらい問題があるかなと思います。
 実は、この件は、交通事故ですから、警察でも対応しているわけです。過失致死としてこの加害者は扱われておりますが、さっき言ったように、交通事故で起きたものはけがだけかもしれません。その後起きております脂肪塞栓、脂肪が肺や脳に詰まってということは、これは不可避であったかどうかは、ここが難しいですが、医療行為の中でも起こってきた。どこでそれを発見し、どう治療したかということも含めて検証はなされるべきだと思いますし、そうした事案が起こり得るということを手術のときに御家族にはそもそも説明していただろうか。これから手術に入りますから、でも、大腿と下腿をけがしておられて、この手術にはこういう危険が伴いますよというようなことも話されていたかなども、実は医療現場におけるインフォームド・コンセントの一つになろうかと思います。
 あわせて、これは岡本政務官に御答弁いただきたいのですが、実は、この方は救急の入院のところで臓器提供の意思がありや否やのチェックをされたのではないか。これは言われておるところで、検証されていませんのでわかりませんが、私は、救急病院というのは必死で駆け込みますので、それがどんなことであれ、そのときにチェックというのはちょっといかがなものかと思います。なるべくそうした状態でないときに、助けてと言っているときにどうですかと聞かれるのもやはり尋常な判断でもないでしょうし、そのあたり、そうした救急現場がそういう入院に際してチェックしているかどうか。そして、これは脂肪塞栓として正しく治療されたかどうかなどの検証はどうなっていたか。この点をお願いします。

岡本大臣政務官 医学的な話ですから先生も御承知おきのとおり、脂肪塞栓、大きな整形領域の整復術ではリスクとしてあるわけですから、当然インフォームド・コンセントがなされるべき疾患だろうと思います。どういうようなインフォームド・コンセントがなされていたかということはちょっと確認ができておりませんけれども、先生の御懸念は当然理解はできますし、ましてや、救急外来に来た段階で臓器移植のカードを持っているかどうかをまず聞くという話は、現実的にはあり得ない話だろうと思います。特に、こういう、意識が一定程度あるような方に対してそういう話からスタートするということはないと信じておりますが。
 いずれにしましても、今回、私も問題点だと思って事務方にけさ話をしましたけれども、プレスリリース、当初、交通外傷が原疾患だと言われておりましたが、これは交通外傷に起因をする脳塞栓というよりは、その術中の問題があったと。それが不可避かどうかというところは先生御指摘のとおりですけれども。そういう意味で、公表の仕方として、原疾患を交通外傷としたということについての、やはり公表のあり方については少し考える必要があるだろうということは指示をしたところです。

阿部委員 私は、御家族へのインフォームド・コンセントのとり方も問題なのではないかと思って、先ほど、例えば手術に入るときにこういうリスクがありますよということが伝えられたかとか、そういうことを検証するための検証会議なんだと思うのですね。余りに安易に流れて。
 そして、実は、この患者さんは、いわゆる脳幹反射を見るときに、よく私どもは、大半いたしますが、聴性脳幹反応といって、音を聞かせて生理学的な反応をとるのも実施されていません。やれないような、頭部外傷がひどい事案とかではやらないですけれども、大半、やはり確実に判定をしていくために、必須事項ではありませんが、精度を高めるためにやっておると思います。
 この方の御家族に、そもそも臓器提供のお話は、臨床的脳死判断の前になされております。見ていただきますと、八月の五日、これが医学的に言う臨床的脳死判断と私どもが言うもので、臓器移植のお話は八月の三日に先立って行われております。このあたりも、やはり、少なくとも臨床的脳死判断を待って、でないと、どんどん前倒し、先倒しになっていく懸念があると思います。私は、検証会議とはそういうところを検証するためのものだと思いますので、岡本政務官にはあの状況をよく御理解いただいていると思いますので、検証会議のあり方、その質を高めていただければと思います。
 引き続いて、実は子供の事案が、四月の十二日、十歳代の男の子だということで報道がされております。十五歳未満からは初めてということで、ただしプライバシーの問題等々あって公表されている部分はごく少なくて、私どもが社会として子供からの臓器提供をどう考えていくかに足るだけの情報が出ていないんじゃないかと私は懸念いたします。
 一番問題と思いますのは、この男の子が、ホームから飛び込んだ、自殺ではないかと。これは、報道上は出ておりませんのでわかりませんが、ちょうど四月六日のある地方紙に、若い男性がホームから飛び込み、警察等々のその後の調査でこの事案に結びついていくということで、伝えられております。自殺やもしれないということは、これはいまだにやぶの中ですし、また、どこまで出すかということも私は問題があると思いますが、では、今のところ国民にはそれはわかっていないことだとしても、検証のあり方としてはその点も含めて考えていかないと、子供にとっての自死、自殺はいろいろなところで今大変に問題になっており、追い詰められたその先の選択かもしれないということで、私は、これは社会的な問題だと思うわけです。
 これも岡本政務官にお伺いいたしますが、お手元の資料の三枚目を見ていただきますと、子供の事案で脳死が生じた場合に、院内ではマニュアルをつくっていて、虐待防止委員会というのがない病院では臓器提供ができない仕組みだと言われていて、この十五歳以下の男児についても、一応その病院はそうした委員会があったと言われています。しかし、この一番下、「考え方」の最後を見ていただくと、虐待を受けた児童への対応ということで、一応、虐待の存否の確定や、その死への関与の程度について、医療機関が判断することは困難であるから、いろいろなところにお声をかけなさいということが書かれております。
 私は、ここから、二つの問題があると思うんです。
 実は、この自死や自殺、これからも残念ながら、防ぎたいけれども、ゼロにはならないかもしれない。では、子供が死ぬ、みずから死を選ぶということは、虐待という言葉の中に含まれた概念になっているのかどうかです。このマニュアルを見る限り、親が殴ったとか、親が何かしたとか、そういうことは含まれていますが、実は、いじめも虐待の一つでありますし、いじめの結果の死を選ぶことも、私はある意味で虐待なんだと思うんです。ところが、このマニュアル、何度読み返しても、そういうケースは想定外になっております。そして、もし子供がいじめ等々の結果の自殺であれば、学校機関にも聞かなきゃいけないでしょうし、相談すべきところ、検証すべきところが広がってまいります。
 岡本政務官には、ここで言う虐待概念はいじめ自殺なども含んでいるのかどうか、含んでいないとしたら充実させていくべきではないか、この点についてお願いします。

岡本大臣政務官 当初御指摘になられました、十五歳未満からの臓器提供の事例につきましては、その事案は交通事故による頭部外傷というふうに承知をしておりまして、警察からの情報を含めて、自殺であるという情報は一切承知をしておりませんが、一般論としまして、今委員から御指摘がありました、自殺に至るさまざまな要因がある中で、それが親からの虐待なのか、同級生等、友人等からのいじめなのか、さまざまな要因があるとは思いますが、今回のこの中で示しておりますように、虐待の存否という意味でいいますと、こういった、いじめがイコール虐待と必ずしも言えないものだろうというふうには考えております。

阿部委員 そう考えますと、虐待の概念が非常に狭くなってくると私は思うんですね。もちろん、いじめだけではなくて、精神的にいろいろ、その子供が疎外を感じた場合も含めて、やはり子供の心のありようということをもう少し社会がきちんと守ってあげられないと、私は、この社会というのはとんでもない、世で言う子供のいじめ自殺がこんなに多い国はないわけであります。また、十五歳以下でドナーとなられる子供の今後のケースも、それはあり得ると私は思うのです。
 今の岡本政務官のお答えは私からそうお返ししまして、最後に小宮山副大臣に伺います。
 実は、そうした子供トータルをどう社会が支えていくかというときに、お手元にお示ししました、子どもの人権オンブズパーソンという取り組みがあります。これは、学校でいじめが起きたり、あるいは家庭でもとても息苦しい、生きづらいと感じている子供が、学校や家庭以外のところに相談をして、チャイルドラインのようなもののもっと組織として受け皿のしっかりしたもので、ここには兵庫県の川西市でつくっているものを事案として挙げました。
 私は、これからの取り組みとして、子供に生きてほしい、本当にあなたは大事ということを伝えるためにも、こうした試みをエンパワー、厚労省にしていただきたい。今、予算が足りなくて大変です。非常勤でみんな頑張っています。小宮山副大臣の決意のほどを伺います。

小宮山副大臣 子供のいじめや自殺の問題は本当に、議員の中でも超党派でいろいろ検討してもなかなか出口が見つからない。その中で、子供のオンブズパーソンというのは一つの解決方法として有効なものであると思っておりますし、そのエンパワーという意味がどういう意味かあれなんですけれども、支援もできるところはしっかりしていきたいと思っています。
 厚生労働省としてもさまざまな取り組みをしていますけれども、役所の側からの取り組み以外に、先ほどチャイルドラインのお話もありましたが、子供が、やはり居場所、きちんと訴えていける場所ということを国としてちゃんと整備をする、その応援をするということは必要なことだと考えております。

阿部委員 地方自治法にのっとってやっているものですが、ぜひ財政的な支援、国としてもこうしたことを本当に進めていく、随所にあるというような状態をつくって初めて子供には出口が見えてくると思います。よろしくお願いいたします。
 終わります。


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