第180回国会 厚生労働委員会 第15号(平成24年7月25日(水曜日)) 抜粋

案件:

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働契約法の一部を改正する法律案(内閣提出第七一号)

 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)

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〔前略〕

池田委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 私も、今の高橋委員の御指摘と同じで、今回の労働契約法の改正が、大変インスタントに、わずか二時間半そこそこで、審議も不十分なまま行われようとしていること、まず冒頭、とても残念に思います。労働者派遣法の折もそうでしたが、逆にそのときは、有期労働こそ本丸である、これを何とかしていくことが今の働き方全体を何とか改善するんだというふうに言われながら、しかし、また今回もこういう審議のあり方で決められていくということに強く抗議をしたいと思います。
 その上で、まず冒頭、御質問をしたいのは、三宅委員もお取り上げになりました、いわゆる東京電力福島第一原発事故での被曝の実態隠しの問題であります。
 事が露見いたしましたのは多分七月二十一日であろうと思いますが、電子線量計の表面に鉛の板をつけて線量をごまかすというか、低く出させようとしたということがきっかけでございます。
 そして、きょうの新聞には、その当時、ビルドアップ社というものがこれを指示したとされておりますが、この雇用形態が、ビルドアップ社は東電から見て孫請、多分、東京エネシス、その下にビルドアップ、さらに、ひ孫請のアクセス青森というところがあって、さらに、そこからまた建設会社が違法派遣する形で労働者が送られていた。
 これまでも原発の作業を請け負う労働者の問題は、この東京電力福島第一原発事故以前にも多々あったと思いますが、今回、さらにこれが凝縮して出ておるんだと思います。
 そこで、小宮山厚生労働大臣に伺いたいと思いますが、小宮山大臣は昨日、こういう線量データのごまかしなどについて一斉調査をするということで、必要によっては労働基準監督署の立入調査ということも指示されましたが、同時に、私は雇用形態の問題もきちんと把握すべきだと思います。十六歳、十七歳の少年が実は働いていたり、あるいは、先ほど申しました違法派遣に相当するようなことがある。
 今回、大臣の調査が線量だけに限定されるものでなく、この労働実態という、雇用関係も含めて調査していただきたい。
 と申しますのは、大臣のお手元にも皆さんのお手元にも配ってございますが、実は今、東京電力福島第一原発事故に限っても、ここで働いておられます約二万二千二百二十四人の作業にかかわります方のうち、東京電力社員は三千四百四十六人、これは二十四年五月現在です。そして、協力会社とくくられている方が一万八千七百七十八。圧倒的に多いわけであります。協力会社と一くくりにいっても、孫請、ひ孫請、さらにそこからどこまでなっているか。きちんと労働上の、いわゆる派遣法にのっとっているか、あるいは労働基準法を満たしているか等々がチェックされていない状態だと思います。
 大臣には、線量だけでなく、雇用労働実態についての調査もあわせ行うことをお願いしたいですが、いかがでしょう。

小宮山国務大臣 今委員が御指摘いただいたように、線量については、今回のビルドアップだけではなくて、全体についてスクリーニングをした上で、スクリーニングを八月末までには終えて、九月以降、必要なところを一斉に調査したいと考えています。
 そして、きょう報道されている違法派遣のことについては、今、福島労働局で事実関係を調査中です。調査の結果、この件について仮に関係法令に違反している事実が認められた場合は、当然のことながら、厳正に対応したいと思っています。
 原発での今言われたような複雑な孫請、ひ孫請のような働き方については、問題意識は持っておりますが、それに対して今後どのように対応するかは検討させていただきたいと思います。

阿部委員 私がお願いしたのは、事が何か事件になって露見する以前の実態調査ということができる、そして、しなければいけない。
 なぜなら、このような事故というのは我が国は経験したことがなく、そして、毎日三千人にわたる現場の労働者が、ある意味で命を削りながらこの事故の収束のためにやっていただいているわけです。せめて、その労働条件なりあるいは健康管理なりということは、これは国の責務でありますから、きちんとそこを自覚してやっていただきたい。
 あわせて、きょうは経済産業省から柳澤副大臣にお越しいただきました。お忙しいところ、ありがとうございます。
 副大臣には、先般、私が原発ゼロの会のメンバーと東京電力の電気料金の値上げの問題でじかにお部屋に伺ってお話しいたしました折に、副大臣としては、先ほどの三千人の現場の労働者の問題に非常にお心を寄せて、御心配をされておられるという御発言でありました。私も、そういう視点を政治がきちんと持つということは極めて重要で、それなくしては、先ほど申しましたように、収束すらおぼつかないわけであります。
 そして、働く皆さんの実態を見ますと、これも一枚目をごらんいただきたいと思いますが、ここには、その方の年間線量、一番上、二百五十ミリシーベルトを超える方から十ミリシーベルト以下の方まで、何人くらいの分布があるかが示されております。百ミリシーベルト超えは、合計いたしますと、二十四年五月段階で百六十七に集計いたしますとなります。
 私がここで問題にしたいのは、五十ミリシーベルトから百ミリシーベルトというところに当てはまる八百八名の方。このうち、東電関係社員は四百六十人、協力会社は三百四十八人となっておりますが、増減を見てまいりますと、右側に増減表がありますが、毎月毎月、実は協力会社社員の方の増加が多い実態になっております。
 大臣もよく御存じのように、東電であれば、例えばこの線量に達した方を他の業務に、屋内の業務や事務業務に転換することも社の中で可能かもしれませんが、協力会社と言われるところで働く方の実態は、先ほど指摘したように、ほとんど把握されておらない。そして、この鉛で隠す事件の裏側にあるものは、もう百ミリを超えたら働けなくなるよ、あるいは五十ミリ、あなた、ぎりぎりなんだから、一年で五十ミリを超えちゃったらもう働けなくなるよ、これもある意味では事実なわけであります。
 私どもは、先ほど言った、この方たちを使い捨てにしないで、ここでお願いしたいのは、例えば炭鉱離職者が、当時、昭和三十四年のことであります、閉山に伴って、その職を失うことに対して、政府はもろもろの職業訓練をそこに準備いたしました。雇用促進住宅もその一環であります。私はここで、五十から百、ここにたまり込む方々、この方々は、次に、例えば雇う側も、この人たちは高い線量のところに送れないと思う分だけ、雇用の機会も失いがち。しかし、生活もあると思います。そして、これから何十年も続くことであります。
 政府として、この方たちの積極的な職業訓練なり職業転換なりを図ることをお考えいただきたいが、その支援をしていただきたいということであります。もちろん、御本人が望まず、また、例えば出稼ぎだったので戻るというケースもあるでしょう。しかし、本当にみんなやむにやまれずここに来て身を削ってやっていると考えれば、政府による積極的な職業転換支援が必要と思いますが、いかがでしょう。

柳澤副大臣 御質問ありがとうございます。阿部委員には日ごろからいつもアドバイスをいただいておりまして、ありがとうございます。
 私は、昨年の九月から福島の原子力災害現地対策本部長を兼務させていただいて、福島第一原発だけではなくて、第二原発にもずっと入らせていただいてきました。
 その中で、委員御指摘のように、私が一番感動したのは、本当に、今でも三千名以上の方が、放射線が飛び交う、戦場とも言えるところで命がけに頑張っていただいた。そのことがあって、昨年十二月に冷温停止の第一ステップ。しかし、これは本当に一里塚でございまして、廃炉までは三十年、四十年かかる。それにはやはり、人、物、金でいうと、人の部分が一番大事だ。
 その中で、放射線量の問題も私たちは非常に重く捉えていまして、特に、私たち経産省が指導できるのは東京電力でございます。東京電力を通じて、協力会社の面倒もきちんと見なさいと。ただ、今回の不正使用はもう言語道断で、これは本当に、厚生労働省とも連携をして、もう一回きちんと徹底的な調査をしたいというふうに思っています。
 先生が出していただいた資料にあるように、東京電力の方では、本当に、高線量の仕事はできるだけ東京電力の社員が行って、協力会社には回さないようにしようという努力を続けてきました。ですから、東京電力は百を超えているのが百四十六人で、協力会社は二十一人になっているというのも御理解いただけると思います。
 そんな中で、私たちが今一番指導していますのは作業の継続性で、廃炉に向けては現場作業の経験の蓄積と、円滑化を図るには人をいかに大事に長期にわたって働いていただくか。ですから、線量を常にチェックして、高いところへ行ったら低いところに配置転換をするということも、それで、超えてしまったのは、東京電力の場合には、後方部隊で雇用する、これができます。
 ただ、先生御指摘のように、協力会社に関しましては、ぜひ厚生労働省の皆様とも連携をして、本当に職業訓練も含めて雇用をきちんとする、これには経産省も精いっぱい協力をさせていただいて頑張りたいというふうに思っております。

阿部委員 前向きな御答弁、ありがとうございます。国策として進めた原発のその結末ですから、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 では、副大臣、ありがとうございます。
 そして、本来のきょうの質問に移らせていただきますが、先ほど、高橋委員と小宮山大臣の質疑応答を聞きながら、本来、大臣はこの有期雇用については理念を持って臨みたいであろうお立場なのに、このような中途半端な形になられたことにじくじたる思いがあるということを私は推察いたしておりますので、ここについては伺いません。
 ただ、一つ伺いたいのは、今回、有期契約の期限を五年といたしましたが、これは先ほど大臣がもろもろ挙げられた諸外国に比しても長い、明らかに長いわけであります。このことについてと、あわせて、クーリング期間というものも、例えば三年なら三年の半分とかいう形で、やはりその背景には、この有期雇用が本当にごく限られたケースしかそうでないようにという、EUはEU指令、韓国ですらそういう理念があると思うわけです。なぜ五年なんでしょう。もう一度お願いします。

西村副大臣 無期転換ルールの要件を五年を超える場合とした理由ですけれども、一つは、有期労働契約の反復更新による濫用を防止する必要がある一方で、有期労働契約が雇用機会の確保や需給変動への対応に一定の役割を果たしていることなどのバランスを慎重に考慮した上で、労政審でも公労使一致の建議として合意されたことによります。
 有期労働契約の利用期間の上限について、諸外国の例ですけれども、ドイツや韓国が二年、イギリスで四年などとなっていますが、これらの国では法令や労働協約によって無期転換の適用除外や利用期間の延長が認められております。
 一方で、今回の法案は適用除外などを設けない、そういう意味では諸外国とは異なる案となっておりまして、五年が長いというふうには一概には言えないと考えております。
 また、クーリング期間ですが、これを認めないということにいたしますと、五年で離職した労働者が再度同じ企業で働くことが事実上困難となりますので、同一の企業での再雇用を希望する労働者の職業選択の幅が狭められてしまうというおそれ、問題があるため、これを認める必要があると考えております。
 また、クーリング期間が短過ぎる場合には無期転換ルールの導入の効果が薄まって、逆に長過ぎますと労働者の雇用機会の確保などが問題となってまいります。このため、労政審の建議を踏まえて、原則六カ月のクーリング期間というふうにさせていただいております。
 厚生労働省としては、クーリング期間を挟んで同一の労働者を有期労働契約で使い続けるような雇用管理を抑制するためには、何よりも、通算契約期間が五年を超えるその前に、雇いどめをするのではなくて、より安定的な雇用形態としての無期労働契約に転換させていくことが望ましいと考えております。  このため、制度面での対応として、今回の法律案では、判例法理であります雇いどめ法理の法制化を盛り込み、これによって、五年の時点でも雇いどめが無条件に認められるわけではないということが法文上も明らかになりました。
 また、五年到達時に雇いどめされないように、さまざまな周知、広報など、必要な政策対応をとってまいりたいと考えております。

阿部委員 たくさんの御答弁、ありがとうございます。
 しかし、このクーリング期間があることによって、この法律の肝である無期転換申し出権が阻害というか阻止されてしまう。これはもともと無期転換の申し出権を労働者に付与したいための法律なのですが、四年十一カ月で、その後クーリングして、でも、そのときはもう申し出権がなくなっちゃうんですよね。逆さに返せばそういうことだということをおわかりの上での今の答弁じゃないかなと思います。
 それから、諸外国と比べて長いか短いかも、私がわざわざ韓国の例まで挙げましたが、これらは、ヨーロッパのみならずアジアでも、あの非正規雇用があんなに多い韓国でも二年、そこでいろいろな制約はつけますけれども、五年という年限の長さは特記すべきものでありますので、ぜひお考えをいただきたい。
 そして、今、西村副大臣がお答えになりましたが、しかし、現実の労働契約、例えば、お手元の二枚目を見ていただきますと、これははとバスの労働契約書ですが、この方は五年を前に、実は、八番、「本契約期間中に正社員登用に至らない場合は、次年度の契約更新は行わず今回が最終更新となる」、いわゆる不更新条項を結ばされるという事例であります。これは労働契約書の本体であります。
 そうすると、今、西村副大臣がおっしゃったことも、この不更新条項がたった一枚結ばれたら、これはもう何の効力もないことになってしまう。すなわち、有期から無期への転換もと思いますが、それはそもそも有期雇用の濫用抑制ということとは相矛盾するのではないか。不更新条項があると有期雇用は次々と可能になるわけですが、この不更新条項について、これは大臣に伺います。でなければ、西村さんでも。

西村副大臣 今回の法案についてでございますが、一旦労働者が雇用継続への合理的な期待を持っていた場合に、使用者が更新年数あるいは更新回数の上限などを一方的に宣言したことによって労働者の雇用継続への合理的な期待が失われることにはならないというのが裁判例の一般的な傾向であると理解をしております。
 また、あらかじめ設定された更新上限に達した場合でも、他の労働者の更新の状況など、さまざまな事情を総合判断して雇いどめの可否が決せられるのが裁判例の傾向でもあります。
 このため、法案が成立した際には、不更新条項を入れさえすれば雇いどめ法理の適用が排除されるといった誤解を招くことがないように、従来の判例法理が変更されるものではないということを、解釈通達やパンフレットを使って周知に努めてまいりたいと考えております。
 なお、不更新条項そのものでありますけれども、これを設けることにつきましては、労働契約が合意により成立するという原則に立ちますれば、労働者と使用者がお互いに真に合意して更新の上限を設定することを禁止したり、その効力を直ちに無効とすることは難しいというふうに考えております。

阿部委員 今の御答弁、前向きでいいと思います。実態から見て、この不更新条項が有期の反復につながるようなものは厳しく制限していくというふうに受けとめました。
 終わります。ありがとうございます。

――――――――――――― 中略 ―――――――――――――

池田委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、労働契約法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論をいたします。
 一九九〇年代半ば以降、急速に増加した非正規労働者は、今や全雇用労働者の三分の一に達しており、希望を持って働くはずの若者や日本経済を支える中堅層も非正規化が進んでいます。こうした非正規労働者が抱える最大の問題が期限を区切って働かされる有期雇用であることは、本委員会の議論の中でも明らかになったとおりであります。中には六カ月や一年更新で十年、二十年も働いている人も少なくないのが実態です。
 このような不安定雇用となっている有期雇用にメスを入れることが問われているにもかかわらず、政府提出の労働契約法改正案は、有期雇用の濫用抑制をうたいながら、抜け穴だらけで、逆に細切れ雇用を拡大させかねず、改正の名に値するものではありません。
 改正案では、五年を超えて労働契約が反復更新された場合には、労働者の申し出により、期間の定めのない労働契約に転換させるとしていますが、一方で、六カ月のクーリング期間があれば五年を超えて再雇用できるとされています。四年十一カ月で雇いどめして、六カ月経過したらまた再雇用などということが横行する可能性がありますが、こうしたことへの歯どめは全くありません。
 また、四年目に、これ以上契約は更新しませんよという不更新条項を設けて労働契約を交わすという抜け道が多発しかねない事態にも厳正な指導が不可欠ですが、このままでは、有期雇用の濫用抑制どころか、むしろ、現状より不安定な有期雇用が固定化しかねません。
 本来であれば、無期契約が原則であることを明記し、有期雇用はイベントなどに限定した例外とすべきです。これが難しいのであれば、少なくとも無期契約への転換をどんなに長くても三年とし、三年を超えた雇用は全て無期契約にするという原則を打ち立てるべきです。今回の改正が、五年という長い期間を置き、見直しが八年後以降であることも悠長に過ぎます。
 この一年、有効求人倍率は少しずつ上昇しつつありますが、求人の大半は非正規雇用で、正社員でも低賃金というのが実態です。景気低迷など、一旦何かがあれば真っ先に解雇されるのが非正規労働者なのです。こうした状況だからこそ、期間を限定して働かせる有期雇用を抑制し、雇用の安定と生活保障を図るべきなのです。
 東日本大震災からの復興と日本社会の再生に向けた歩みの中に、働き方を変えるというメッセージを打ち出すことが国会の責務であることを最後に申し述べ、私の反対討論といたします。


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