2021/03/02

HPVワクチンに関する情報提供リーフレットの内容と「個別送付」の妥当性に関する質問主意書に対する答弁書が届きました。

 

阿部知子が令和3年2月15日に提出した『HPV ワクチンに関する情報提供リーフレットの内容と「個別送付」の妥当性に関する質問主意書』への答弁が閣議決定されました。

質問全文と回答(赤字)は以下の通りです


 新型コロナウイルスワクチンをめぐって、ワクチンに関する正確な情報提供の徹底が求められている。厚生労働省は昨年十月九日付で、各自治体に対し、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの新リーフレットを定期接種の対象者に個別送付することを求めていたが、令和三年一月二十六日付で再依頼書を発出し、更なる徹底を図っているとのことである。
このことに関して以下質問する。

 

一 平成二十五年六月十四日、厚生労働省健康局長発出の「ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種の対応について(勧告)」において、「ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛がヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン接種後に特異的に見られたことから、同副反応の発生頻度等がより明らかになり、国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではないとされたところである」とされた。しかるに今日、再通知を発出してまで「情報提供」としてリーレットを個別送付するということは、この内容が「国民に対して適切」な情報であるとの認識でよいか。さらに言えば、積極的勧奨再開に向けた一歩と捉えてよいのか

 

一について
御指摘の「「国民に対して適切」な情報」及び「積極的勧奨再開に向けた一歩」の意味するところが必ずしも明らかではないが、厚生労働省においては、令和二年九月二十五日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会及び薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議(以下「合同会議」という。)において、ヒトパピローマウイルス感染症に係る予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第五条第一項の規定による定期の予防接種の対象者及びその保護者(以下「定期接種の対象者等」という。)に「公費によって接種できるワクチンの一つとしてヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(以下「HPVワクチン」という。)があることについて知っていただくとともに、HPVワクチン接種について検討・判断するためのワクチンの有効性・安全性に関する情報等や、接種を希望した場合の円滑な接種のために必要な情報を届けることを目的として、ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種に関する情報提供の更なる充実を図ること」とされたことを踏まえ、「ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の対象者等への周知について」(令和二年十月九日付け健発一〇〇九第一号厚生労働省健康局長通知。以下「局長通知」という。)及び「ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の対象者等への周知に関する具体的な対応等について」(令和二年十月九日付け健健発一〇〇九第一号厚生労働省健康局健康課長通知。以下「課長通知」という。)を発出し、ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の対象者等に対する情報提供の方法等について各地方公共団体に周知を行ったものであり、「ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の対象者等への周知について(再依頼)」(令和三年一月二十六日付け厚生労働省健康局健康課予防接種室事務連絡。以下「事務連絡」という。)は、局長通知、課長通知等の内容について再度の周知を行ったものである。

また、御指摘のリーフレットについては、ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の対象者等に対して、子宮頸がんやヒトパピローマウイルスワクチン(以下「HPVワクチン」という。)の有効性、安全性等について適切な情報提供を行うために、課長通知の別紙として作成したものである。なお、課長通知において、「個別送付することで定期接種の積極的な勧奨となるような内容を含まないよう留意する必要がある」と示しているところである。

 

二 HPVワクチンは、定期接種ワクチンでありながら、副反応のために接種の積極的勧奨を中止するという「異例」の行政措置がとられているが、この最も重要な情報が新リーフレットには記載されていない。さらに厚生労働省はホームページの「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」からも積極的勧奨中止に関する情報を削除している。それぞれ理由を示されたい。

二について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、課長通知別紙一(以下「概要版リーフレット」という。)及び課長通知別紙二(以下「詳細版リーフレット」という。)においては、「接種をおすすめするお知らせをお送りするのではなく、希望される方が接種を受けられるよう、みなさまに情報をお届けしています。」と記載しており、当該記載については、合同会議等での議論等を踏まえ、HPVワクチンに係る既存のリーフレットについて、対象者や目的を改めて整理し、構成の変更を行うとともに、読みやすさや分かりやすさを重視するとの方向性に沿って改訂することとし、積極的な接種の勧奨の差し控えに係る記載についても平易な表現を用いたものである。また、御指摘の「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」に掲載している「HPVワクチンQ&A」においては、積極的な接種の勧奨の差し控えに係る質疑応答を掲載している。

 


三 リーフレットでは、HPVワクチンのリスクとして、「まれに重い症状」が起こる旨記載されているが、報告されているHPVワクチンの副反応症状は、多様な症状が一人の人に重層的に表れるという特徴がある。しかし、概要版リーフレットでは、これらの症状のうち「広い範囲の痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動」というごく一部しか紹介されておらず、また重層的に出現することも記載されていないため、実際に被害者に現れる症状とその深刻さが伝わらず、気づきが遅れると考えられるがどうか。

三について
御指摘の「被害者に現れる症状とその深刻さが伝わらず、気づきが遅れる」の意味するところが必ずしも明らかではないが、概要版リーフレットについては、合同会議等における議論等を踏まえて必要な情報を記載しているものである。

 

四 例えば学習障害、記憶障害は、概要版リーフレットには全く触れられておらず、詳細版リーフレットには「痛みやしびれ、動かしにくさ、不随意運動について」という囲みの中に「機能性身体症状」として一括りにされ、わかりにくくなっている。しかし、学習障害・記憶障害には、二〇一八年二月現在、全国百二十四名の原告のうち百二名が経験をし、このうち七十名は現在も苦しんでいるという、日常生活に重大な支障をもたらす症状の一つである。PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の医薬品副作用被害救済制度でも「接種との因果関係が否定できない」として医療費や医療手当を給付された二百四十六件中、五十四%の百三十四件で認知機能低下が認定されている。
学習障害・記憶障害について、本人や保護者向けのリーフレットに正しく記載しない理由は何か。

四について
御指摘の「正しく記載」の意味するところが必ずしも明らかではないが、詳細版リーフレットにおいては、合同会議等における議論等を踏まえ、「認知機能に関する症状(記憶障害、学習意欲の低下、計算障害、集中力の低下など)」が報告されていることについて記載している。

 


五 リーフレットではHPVワクチンの副反応疑い報告数や救済制度での認定数について触れられているが、他のワクチンとの比較について記載がない。HPVワクチンの発売開始(二〇〇九年十二月)から現在までにPMDAの医薬品副作用被害救済制度における障害・死亡の認定頻度は、被接種者百万人当たり何人か。

五について
お尋ねの「認定頻度」の具体的に意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難である。なお、平成二十一年十二月以降に行われたHPVワクチンの接種による健康被害については、独立行政法人医薬品医療機器総合機構において、令和元年度までに三百七十四件の医薬品副作用被害救済制度による副作用救済給付の支給が決定されたものと承知している。


六 主な定期接種ワクチン(ポリオ、DT・DPT(二種混合ワクチン・三種混合ワクチン)、DPT・IPV(四種混合ワクチン)、日本脳炎、麻しん、風しん、結核、小児肺炎球菌感染症、Hib感染症、水痘)の障害・死亡認定頻度は、二〇〇九年十二月以降現在まで、百万人当たり何人か。

 

六について
お尋ねの「障害・死亡認定頻度」の具体的に意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難である。なお、平成二十二年度から令和元年度までの期間における予防接種法第十五条第一項の規定に基づく健康被害の救済措置の認定件数については、障害児養育年金が四十二件、障害年金が四十八件、死亡一時金が二十五件、遺族年金が三件、遺族一時金が二件及び葬祭料が二十九件となっている。

 

七 医療従事者向けのリーフレットには、接種から一か月以上経過してから発症した症状は因果関係を疑う根拠に乏しいと記載されている。しかし、接種から一か月以上たってから重篤な副反応を発症する場合があり、このことは多くの研究論文においても指摘されているところである。「根拠に乏しい」とする根拠を示されたい。

 


八 前項のような不適切な記載がなされることによって、本来HPVワクチンの副反応が疑われる症例について適切な診断や副反応疑い報告がなされなかったり、従来もみられた副反応症状を訴える者を詐病扱いする医師が増えたりする可能性が懸念されることについてどのように認識しているのか。

 

七及び八について
お尋ねについては、平成二十六年一月二十日に開催された合同会議の議論において、「接種後一か月以上経過してから発症している症例は、接種との因果関係を疑う根拠に乏しい」との合意が得られたことを踏まえ、課長通知別紙四に記載したものである。


九 概要版リーフレットには、HPVワクチンの効果として、「がんになる手前の状態(前がん病変)が実際に減ることが分かっていて、がんそのものを予防する効果を実証する研究も進められています。」とあるが、現在まで、がんそのものを予防する効果は確認されていない。まず説明されるべきはこの科学的事実である。確認されているのは、粘膜の異形成を阻止する効果のみであるから、この表現は不適切であり誤認を誘導するものである。この場合は「がんそのものを予防する効果は確認されていないので、実証する研究が進められている」とするべきではないか。

 

九について
御指摘の概要版リーフレットにおける「がんそのものを予防する効果を実証する研究も進められています。」との記載については、HPVワクチンが子宮頸がんの予防に効果があることを示唆する研究結果が報告されていること等を踏まえて記載したものであり、「この表現は不適切であり誤認を誘導するもの」との御指摘は当たらないと考えている。

 

十 臨床試験で前がん病変を予防する効果が確認されている期間が最長九年とされているが、有効性の限界 ついて明記すべきではないか。

十について
御指摘の「有効性の限界」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難である。なお、
詳細版リーフレットに記載しているとおり、「HPVワクチン(サーバリックス)の接種により、自然に感染したときの数倍の量の抗体を少なくとも九・四年維持できることがこれまでの研究でわかって」おり、「期待される効果について研究が続けられて」いるものと承知している。

 


十一 予防接種の実施主体は市町村である。わざわざ国が、「個別送付による情報提供の実施状況に係る調査を実施予定であることを申し添えます」とまで述べ、再依頼をすることは地方自治への過度の介入ではないか。いわば情報提供を装った実質的な積極的勧奨通知であり、躊躇する自治体があることは当然である。
新リーフレットを見直し、その個別送付の依頼を撤回すべきと考えるがどうか。
右質問する。

十一について
政府としては、局長通知等の内容を各地方公共団体に対して再度周知するとともに、今後、「個別送付による情報提供の実施状況に係る調査を実施」する旨を示すために、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十五条の四第一項の規定に基づく技術的助言として事務連絡を発出したものであり、「地方自治への過度の介入」との御指摘は当たらないと考えており、御指摘の「新リーフレットを見直し、その個別送付の依頼を撤回」することは考えていない。