2018/04/25

あべともこのカルテ開示に関する質問主意書が毎日新聞(大阪版)一面トップに!

カルテなどの診療情報は患者本人や遺族に開示請求権が認められています。その際の手数料について個人情報保護法では「実費を勘案して合理的な範囲内」と定めています。ところが医療機関によっては1万円を超える手数料や一枚数十円ものコピー代を請求するところが少なくありません。あまりに高額な結果、請求権行使の「抑止力」になっている実態について、あべともこは昨年6月の厚生労働委員会でまず実態調査をせよと質しました。その結果とりあえず全国に87か所(現在は85か所)ある特定機能病院について、非公開を前提にようやく調査結果を出してきたのですが、約3割に当たる26施設で手数料を取り、そのうちの13施設が5000円以上の高額でした。

この調査結果について質問主意書を出したことから内容が明らかになり、毎日新聞が大きく報道しました。https://mainichi.jp/articles/20180423/ddm/041/040/176000c

◆質問主意書

平成三十年三月三十日提出
質問第一九一号

医療機関における診療記録等個人情報の開示に関する質問主意書

提出者  阿部知子


 患者本人が自らのカルテやレセプト等、自らの診療に関わる全ての記録の開示を求めることは、個人情報の本人開示請求権として個人情報保護法に規定されている。しかし、このほど厚生労働省が実施した特定機能病院(八十七施設)を対象とした実態調査結果によれば、多くの医療機関でいまだに高額の開示手数料を徴収しているなど看過できない実態が明らかになった。医師と患者の信頼関係の構築や情報共有の必要性が指摘される中、個人の診療情報開示のあり方について以下質問する。

一 この調査結果によれば、開示手数料として徴収した金額が一件当たり三〇〇〇円台が十二件、五〇〇〇円台が十三件と依然として高額を徴収する病院が多い。かつて一万円の開示手数料を徴収していた複数の私大病院は五〇〇〇円、五四〇〇円などに「値下げ」を行っているが、これでもまだ患者家族にとっては負担が大きい。ことに順天堂大学病院や慶応大学病院などは「一診療あたり〇〇円」としており、複数の疾患の場合は一万円にも二万円にもなってしまう。また、謄写費用は一枚当たり一〇円を超えると利益が発生するが、実費が前提のコピー代についても白黒で五一円、カラーで一〇八円が最高額であった。中には閲覧のみでも三十分まで一万円、一時間まで二万円としたうえ、謄写する場合は別途手数料として五〇〇〇円徴収するなど、法外な請求が目につく。
 こうした実態が事実であるなら、患者・家族の開示請求権を事実上抑制する恐れがあり、個人情報保護法違反に当たることは明らかである。この調査結果をどのように認識しているのか。政府の見解を示されたい。
二 個人情報を保有する事業者側(病院側)には、その保有する個人情報の管理・保管義務と、開示の検討が個人情報保護法に義務付けられており、義務に伴う人件費、事務費等の経費は事業者が賄うのが当然である。あくまでその前提の上で、個人情報保護法第三十三条で「手数料を徴収することができる」と規定し、同条第二項で「実費を勘案して合理的であると認められる範囲内において、その手数料の額を定めなければならない」とされているのである。
 したがって開示請求者本人に対し、実費を甚だしく超えた額を転嫁し請求することは、法の趣旨を逸脱していると言わざるを得ない。このことについて政府の見解を示されたい。
三 日本小児科学会専門医であり、京都民医連中央病院長の松原為人医師は、「患者に負担をかけずに開示するのは当然。今後はカルテの内容や説明を充実させるため、その労力に見合う診療報酬上の考慮が必要」(毎日新聞二〇一七年十二月十三日)と述べている。
 そもそも現在の医療制度において、診療情報開示に伴う諸経費の手当てはもちろんのこと、医療安全管理やカルテ管理などに人員を配置しても診療報酬上の評価はない。しかし、日常からの診療情報管理やカルテ開示に際しての説明等は、今後病院全体の診療の質をも左右しかねない重要な部門であり、そのためのスタッフは今後ますます必要不可欠である。こうした人的配置の充実に対して、診療報酬上の手当てを政策的に検討していただきたいがどうか。
四 個人情報保護法は平成十七年四月から運用され、既に十四年目を迎えようとしている。にもかかわらず一部の医療機関において、厚労省が平成十五年九月に通達した「診療情報の提供等に関する指針」に依拠する診療情報の提供手続きをいまだに踏襲している例が見られる。しかしながらこの「指針」は任意であり、開示の対象が「保有しているすべての個人情報」ではなく、カルテ等の「診療記録」に限定されるうえ、医師法などで保存期間を定めている期間を過ぎたもの(診療録は五年)は開示対象外にできるなど、この指針自体が医療機関にとっては事実上の抜け道となりかねない。改めて問うが、厚労省の「指針」は個人情報保護法に優越するのか。見解を示されたい。
五 「指針」では開示請求様式が「保有個人情報開示請求書」ではなく「診療情報提供申出書」あるいは「診療情報提供請求書」等となっている。医療機関はあえて個人情報保護法に基づく開示請求ではなく、『指針』に基づく提供請求とすることにより、開示の対象を『診療情報』に限定していると考えられる。さらに「保管期間を過ぎたものは開示できない」、あるいは「請求内容によっては開示対象外」として、任意の提供という前提での運用を可能としているのである。開示請求様式を個人情報保護法に基づく「保有個人情報開示請求書」に統一させるべきである。どうか。
六 こうした観点から、特定機能病院における診療情報開示手続きと開示の実態を改めて検証し、「診療情報の提供等に関する指針」を個人情報保護法の運用に即して改訂すべきではないか。政府の見解を問う。

 右質問する。

◆答弁書

内閣衆質一九六第一九一号
  平成三十年四月十日

内閣総理大臣 安倍晋三      


衆議院議員阿部知子君提出医療機関における診療記録等個人情報の開示に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号。以下「法」という。)第三十三条第一項は、個人情報取扱事業者(法第二条第五項に規定する個人情報取扱事業者をいう。以下同じ。)は、法第二十八条第一項の規定による開示の請求を受けたときは、「当該措置の実施に関し、手数料を徴収することができる」と規定し、法第三十三条第二項は、個人情報取扱事業者は、同条第一項の規定により手数料を徴収する場合は、「実費を勘案して合理的であると認められる範囲内において、その手数料の額を定めなければならない」と規定している。各医療機関が個人情報取扱事業者に該当する場合、法第二十八条第一項の規定による開示の請求を受けたときは、当該措置の実施に関し、法第三十三条第二項の規定を遵守する必要がある。いずれにせよ、政府としては、各医療機関において診療情報の提供が適切になされるよう、「医療機関における診療録の開示に係る実態調査について(協力依頼)」(平成二十九年九月二十五日付け厚生労働省医政局医事課長事務連絡)による調査の結果(以下「調査結果」という。)を踏まえ、必要な対応を行ってまいりたい。

三について

 保険医療機関における診療記録管理や医療安全対策を行う体制のうち一定の要件を満たすものについては、診療報酬においては診療録管理体制加算や医療安全対策加算により評価しており、今後とも、物価、賃金等の動向、保険医療機関の経営状況、医療保険財政の状況等を踏まえつつ、適切に評価してまいりたい。

四について

 御指摘の「開示の対象が「保有しているすべての個人情報」ではなく、カルテ等の「診療記録」に限定される」、「医師法などで保存期間を定めている期間を過ぎたもの(診療録は五年)は開示対象外にできる」、「この指針自体が医療機関にとっては事実上の抜け道となりかねない」及び「厚労省の「指針」は個人情報保護法に優越する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「診療情報の提供等に関する指針」(平成十五年九月十二日付け医政発第〇九一二〇〇一号厚生労働省医政局長通知別添。以下「指針」という。)は、医療機関が保有する診療録等の診療情報を提供するに当たって、どのような事項に留意すれば医療従事者等が診療情報の提供等に関する職責を全うできると考えられるかを厚生労働省として示したものであり、法の規定に優先して適用されるものではない。

五及び六について

 調査結果を踏まえ、指針の内容を精査してまいりたい。なお、指針においては、御指摘の「開示請求様式」は定めていない。