2020/03/23

原発事故で生じた「汚染水」と「汚染土壌」について質問主意書と「再」質問主意書を提出しました。

 阿部とも子は3月19日に「東京電力福島第一原発の汚染水処理に関する質問主意書」を、3月23日に「放射性物質に汚染された土壌を環境大臣が鉢植えに利用したことに関する再質問主意書」を提出しました。

 後者は「放射性物質に汚染された土壌を環境大臣が鉢植えに利用したことに関する質問主意書」に対する政府答弁を受けて、再度尋ねたもので、以下の通りです。

放射性物質に汚染された土壌を環境大臣が鉢植えに利用したことに関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。
令和二年三月二十三日
提出者  阿 部 知 子 
衆議院議長 大 島 理 森 殿
 
放射性物質に汚染された土壌を環境大臣が鉢植えに利用したことに関する質問主意書

 小泉進次郎環境大臣が、いわゆる原子炉等規制法の再利用基準の五十一倍にあたる約五千百ベクレル/キログラムの放射能汚染土壌を鉢植えに利用したことについて、「放射性物質に汚染された土壌を環境大臣が鉢植えに利用したことに関する質問主意書」を提出したが、環境行政と原子力行政の双方を揺るがしかねない答弁が散見されたので、再質問する。

一 環境省の「福島県内における除染等の措置に伴い生じた土壌の再生利用の手引き(案)」(以後、手引き案)では、除去土壌の用途先には「植木鉢」は想定していない。そこで手引き案違反ではないかを問うたところ、「『手引き案』で想定している用途ではなく、この対象とならない」との答弁があった。
1 手引き案の「対象とならない」使い方を、環境大臣は推進するのか。
2 手引き案の「対象とならない」使い方を許容すれば、想定外の用途拡大が起きる危険性があるが、誰がどう判断して、野放図な用途拡大にどのように歯止めをかけるのか。

二 手引き案によれば、五千ベクレル/キログラム以上の除去土壌を使う場合は、盛土なら五十センチ以上または百センチ以上の覆土が必要である。しかし、環境大臣が大臣室などにおいた植木鉢には、五センチしか覆土をしていない。このことを問うと、「環境省が五センチメートルとすることを決めたものである」との答弁だった。
1 「環境省が五センチメートルとすることを決めた」根拠はどこにあるのか。
2 「環境省が決めた」と宣言すれば、覆土は一センチでもいいのか。

三 幼児が当該植木鉢を倒し、こぼれた土を素手でいじり、口にした場合を想定しているか。

四 環境省内での放射能汚染土壌の植木鉢への再生利用を許容するのであれば、一般家庭での再生利用も許容するのか。許容するのであればする根拠、許容しないのであればしない根拠を明確にされたい。

五 環境省は、いわゆる放射性物質汚染対処特措法(以後、特措法)第四十一条第一項に基づく環境省令として、特措法の施行規則の一部改正省令(案)と環境大臣が定める者の告示(案)(以後、環境省令案)を公表し、行政手続法に基づく意見募集を行い、環境省令案を四月一日から施行しようとしている。しかし、この環境省令案でさえも、放射能汚染土壌を再生利用するにあたっての用途先の縛りが見当たらない。
1 用途を縛る拘束力がない環境省令は、法令と言えるのか。
2 なぜ用途を限定しないのか。

六 二月五日に提出した「除去土壌の再生利用の基準に関する質問主意書」で、「再生利用にあたっての用途先」「の記載がないままで、人々の健康を守る拘束力をどう持たせられるのか」と尋ねると、「御指摘の環境省令案については、現在、環境省において検討中である」との答弁だった。環境省は環境省令案を四月一日から施行しようとしているが、これに対する検討を行ったか。

七 二月五日提出の同質問主意書で、「再生利用にあたっての」「必要な覆土の厚さなど、数値基準がまったく書かれていない。これらの記載がないままで、人々の健康を守る拘束力をどう持たせられるのか」と尋ねると、その答弁も「御指摘の環境省令案については、現在、環境省において検討中である」というものだった。環境省は環境省令案を四月一日から施行しようとしているが、これに対する検討を行ったか。

八 原子炉等規制法第六十一条の二では、「放射能濃度についての確認等」に関する手続を定めている。「原子力事業者等は、工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質についての放射能濃度が放射線による障害の防止のための措置を必要としないものとして原子力規制委員会規則で定める基準を超えないことについて、原子力規制委員会規則で定めるところにより、原子力規制委員会の確認を受けることができる」など、放射能濃度限度を規則で定め、第三者による確認手続を定めている。

 1 放射能汚染土壌の再生利用の用途先、覆土の厚さ、管理年限に縛りがないのであれば、放射能汚染土壌の再生利用についても、原子炉等規制法第六十一条の二に相当する第三者による確認手続および同等の放射能濃度の基準を明確に定める必要があるのではないか。
 2 放射能汚染土壌を管理下で再生利用する担保は環境省令案のどこにあるのか。

九 放射能汚染土壌の植木鉢での再生利用については「直ちに止めるべきではないか」と尋ねたところ、観葉植物を植えて環境大臣室等に設置する取組は、福島の復興に向けた理解醸成を図る取組の一つだと回答している。本気でそう考えている閣僚がいるのか。確認の上、名前を明らかにされたい。

十 「植木鉢はいつまで、どのように誰が責任を持って何年間、管理をするつもりか」を尋ねたところ、「現時点で」「終了時期を決めているものではない」との答弁だった。

1 いつ決めるのか。
2 環境省が「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」で明らかにした資料によれば、五千ベクレル/キログラム(セシウム一三四と一三七の総計)のものが原子炉等規制法のクリアランスレベルである百ベクレル/キログラムにまで減衰するためには約百六十九年が必要であるが、それを理解した上で、放射能汚染土壌を植木鉢に再生利用したのか。

十一 答弁によれば、植木鉢に利用した放射能汚染土壌は、特措法第四十一条第一項の規定で定められた除去土壌収集運搬基準に基づいて運搬されたとのことである。除去土壌収集運搬基準は特措法施行規則第五十七条第二項にあり、「運搬車を用いて除去土壌の収集又は運搬を行う場合には、当該運搬車に次のイ及びロに掲げる者の区分に応じ、当該イ及びロに定める書面を備え付けておくこと」と定められている。

1 イで定められた次の(1)~(6)を書面でどのように定めたのか明らかにされたい。定めていないのであればその理由を明らかにされたい。
(1) 収集又は運搬を行う者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
(2) 収集又は運搬する除去土壌の数量
(3) 収集又は運搬を開始した年月日
(4) 収集又は運搬する除去土壌を積載した場所及び運搬先の場所の名称、所在地及び連絡先
(5) 除去土壌を取り扱う際に注意すべき事項
(6) 事故時における応急の措置に関する事項

2 ロで備え付けておくことが求められた「国等と一次収集運搬受託者との間の委託契約に係る契約書に一次収集運搬受託者の受託業務に係る委託を受ける者としてその氏名又は名称が記載されている者 その旨を証する書面、当該者が一次収集運搬受託者又は当該契約書にその氏名若しくは名称が記載されている他の者から委託を受けていることを証する書面及び必要事項書面」ではどのような記述を行ったのか、明らかにされたい。明らかにできないのであればその理由を明らかにされたい。

十二 環境省が定めた「除去土壌の収集・運搬に係るガイドライン」によれば、運搬車を用いて除去土壌等の収集又は運搬を行う場合には、運搬車の車体の外側に「除去土壌の収集又は運搬の用に供する運搬車である旨」「収集又は運搬を行う者の氏名又は名称」を掲げなければならない。福島県の中間貯蔵施設から東京都千代田区の環境省庁舎まで、そのようにして運搬を行ったのか。行わなかったのであればガイドライン違反となるのではないか。
 
右質問する。