2021/02/04

「福島県沖の洋上風力発電が不採算に終わったことに関する質問主意書」への答弁書 が届きました。

令和3年1月19日に阿部知子が提出した「福島県沖の洋上風力発電が不採算に終わったことに関する質問主意書」への答弁書が閣議決定されました。

 

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浮体式洋上風力の「経済性を明らかにすること等を目的」とした実証事業と謳いながら、一方で、「収益を上げることを目的とした事業ではない」と答弁しています。

質問全文と回答の概要(赤字)は以下の通りです。

福島県沖の洋上風力発電が不採算に終わったことに関する質問主意書

提出者  阿部知子


 経済産業省は、約六百億円を投じて福島県沖に設置した浮体式洋上風力発電施設を、不採算を理由に、二〇二一年度に約五十億円を費やして全て撤去することを明らかにした。非常に残念であるが、その背景は洋上風力発電を拡大するための知見として広く共有されるべきである。そこで以下、質問する。

一 この「福島浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」は、経済産業省の委託事業である。
 1 何を実証研究させることが目的の事業だったのか。
 2 採算を取ることは洋上風力発電の拡大に重要なことであるが、採算を取ることは事業目的に含まれていたのか。

 

■答弁【一の1及び2について】

 お尋ねの「採算を取ること」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「福島沖での浮体式洋上風力発電システムの実証研究事業」(以下、「本実証事業」という。)は、浮体式洋上風力発電所の安全性、信頼性及び経済性を明らかにすること等を目的とした事業であり、収益を上げることを目的とした事業ではない。


 3 約六百億円で三基の浮体式洋上風力発電施設が設置されていたが、三基を設置することは委託者が決めたことか、受託者が決めたことか。

 

■答弁【一の3について】

 お尋ねの「三基を設置することは委託者が決めたことか、受託者が決めたことか」の意味するところが、必ずしも明らかではないが、本実証事業において設置する設備の規模等については、本実証事業を受託している事業者からの提案を受け、外部有識者による審査委員会において適当と評価されたことを受け、経済産業省において決定したものである。


 4 実証研究事業の委託期間は何年の予定で、期間の終了後の施設の扱いについて、事業開始前にはどのような取決めがあったのか。

 

■答弁【一の4について】

 本実証事業の委託契約は単年度契約を基本としており事業の終了時期に関する定めはないが、令和2年度末で終了することを予定していた。また、本実証事業において設置した設備の事業終了後の取扱いについては、委託契約等において、具体的に決定しているわけではない。


二 「福島浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」を受託したのは、丸紅株式会社、東京大学、三菱商事株式会社、三菱重工業株式会社、ジャパンマリンユナイテッド株式会社、三井造船株式会社、新日鐵住金株式会社、株式会社日立製作所、古河電気工業株式会社、清水建設株式会社及びみずほ情報総研株式会社からなる「福島洋上風力コンソーシアム」である。
 1 構成各社は、それぞれどのような役割分担を行ってきたのか、経産省の承知しているところを明らかにされたい。

 

■答弁【二の1について】

 本実証事業の開始時においては、主に、丸紅株式会社が浮体式洋上風力発電所の維持管理手法の開発、三菱商事株式会社が環境影響調査等の実施、三菱重工業株式会社、株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド、三井造船株式会社、新日本製鐵株式会社及び株式会社日立製作所が係留等の浮体式洋上風力発電設備の施工技術等の開発、みずほ情報総研株式会社が国内外の浮体式洋上風力発電に関する基礎情報の収集や本実証事業に関する報告書の取りまとめ等を担当していたと認識している。

 

 2 委託者である経産省は、コンソーシアムおよびコンソーシアム構成各社に、採算が取れなかった理由を個々に尋ねたか。
 

■答弁【二の2について】

 お尋ねの「採算が取れなかった理由」の意味するところが必ずしも明らかではないが、本実証事業に関係する事業者等とは、事業の進捗管理の一環として、本実証事業の安全性、信頼性、経済性等について必要に応じ議論を行っている。

 

 

 3 経産省は、結果的に採算が取れない事業となった理由をどのように分析しているのか。
 

■答弁【二の3について】

 お尋ねの「採算が取れない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、浮体式洋上風力の経済性には、発電設備の稼働率、維持管理費用等が影響するものと考えられる。ただし、現在、本実証事業は継続中であり、今後、最終的な成果の検証等を行うこととしている。

 

三 受託者はウェブサイトで「世界初となる浮体式洋上風力発電所を実現するため福島県沖で浮体式洋上風力発電システムの実証研究を行い、安全性・信頼性・経済性を明らかにします」と経済性も謳っていたが、結果として、国民の血税約六百五十億円がコンソーシアムの収益事業になっただけで終わったと言わざるを得ない。
 1 受託者の創意工夫を呼び起こし、有効なビジネスモデルを構築させるためには、このような実証研究事業で採算が取れなかった場合に、受託者に責任を負わせることを委託前に考えるべきではないか。
 2 成否を問わない実証研究事業に血税を浪費しないようにするために、政府は委託事業の在り方を見直していくべきではないか。

 

■答弁【三について】

 一般的に、委託事業においては、効果的かつ効率的に事業を実施するため、その状況等について政府が確認を行っている。また、その事業の目的や性質に応じて、受託者が実施する業務の範囲を明確化することとしている。なお、本実証事業は、浮体式洋上風力発電所の安全性、信頼性および経済性を明らかにすること等を目的とした事業であり、収益を上げることを目的とした事業ではない。