2022/04/08

福島の子どもの甲状腺がんについて原子力問題調査特別委員会で質問しました。

 4月7日、阿部とも子は、原子力問題調査特別委員会で、福島の子どもの甲状腺がんと、原発事故時の甲状腺被ばくを防ぐための安定ヨウ素剤などについて質問しました。

 

1.福島県の子どもの甲状腺がん発生は全国平均と比較して高い

 環境省の拠出金で行ってきた甲状腺検査で、福島県の子どもの甲状腺がんは、疑いも含めればこの10年で266人(うち手術済みは222人)となりました。

 国立がん研究センターの発症数をグラフにすると、事故前は1、2名程度だったのが、事故後2012年13人、2013年43人、2014年15人、2015年30人、2016年12人、2017年17人、2018年11人と増えています【資料①】。

資料①.jpg

 同様に、福島県の0~19歳の甲状腺がん発症率を入手し、グラフ化してみても、全国平均と比較しても著しく高いことが分かりました【資料②】。

資料②.jpg

 厚労省はこれらデータをどう読むのか。

 尋ねると、宮崎敦文厚生労働省大臣官房審審議官は、「(福島県の子どもの甲状腺がん発生は)全国平均と比較して高い傾向を示している」と、「高い傾向」(多発)の事実を認める答弁を行いました。

 しかし、その理由について、審議官は「感度が高い検査機器」で「長い時間をかけて大きくなるがんを見つけている」(いわゆるスクリーニング効果)として、被ばくとの因果関係は否定。

 そこで、「1回目の検査だけでない、2回も3回も4回も検査して、まだがんは見つかっており、すでにスクリーニング効果は否定されている」旨、阿部とも子は反論しました。

阿部知子.jpg

2.多発する甲状腺がんの診断や治療は適切

 次に、甲状腺がん多発の理由と指摘されてきた「過剰診断」論について質問しました。

 治療にあたってきた福島県立医大の鈴木眞一教授たちは、過剰診断をなくすために、日本甲状腺学会の診療ガイドラインに従って診療を行い、手術の結果は、リンパ節転移陽性が77.6%、甲状腺の被膜外に浸潤していた割合が39.1%だったということを報告していることから、過剰診断とは言えないのではないかと問いました。

 務台俊介環境副大臣(兼 原子力防災担当大臣)は、「過剰診断の定義がない」と述べる一方、「学会のガイドラインに沿った診断や治療が適切に行われている」と答弁。

 事実を知れば、誰も過剰診断だとは言えないのです。

務台副大臣.jpg務台環境副大臣

 

3 甲状腺被ばくを避ける安定ヨウ素剤の配布率は今でも5キロ圏内でたった59%

 チョルノービリ原発事故後、放射性ヨウ素は甲状腺に選択的に集積し、内部被ばくによる甲状腺がん等を発生させる可能性があるので、効果のあるタイミングで服用することになりました。

 ところが、福島第一原発事故では、原子力安全委員会(当時)が送ったFAXが行方不明になったり県知事から自治体に通知がいかなかったりして、安定ヨウ素剤が効果のあるタイミングで配布されず、約1万人しか服用できませんでした。

 本当はどれぐらいの人が服用すべきだったのか。また、原子力規制委員会発足後に新たに作成した「原子力災害対策指針」では、安定ヨウ素剤は、5キロ圏内(PAZ)の住民へは事前配布されることになりましたが、実際の配布率はどうか現状を尋ねました。

 更田豊志原子力規制委員会委員長は、当時、放射線ヨウ素による小児甲状腺等価線量の予測線量が100mSvを超える放出、またはそのおそれがある場合に服用すべきだったが、適切に配布・服用されなかったと答弁。

 現状については、務台原子力防災担当副大臣が、PAZでの配布率は59%だと答弁。

 阿部とも子は、たとえば女川原発の場合、配布対象者765人のうち配布済みが200人程度でしかない時点で、原子力防災会議は避難計画を「了承」したが、そんなことで避難計画は機能するのかと疑問を呈しました。

 この「原子力災害対策指針」では、他にも防災業務関係者への安定ヨウ素剤の配布については何も具体的に定められていないなど、改善を求めなければならない問題が山積しています。

 

更田原子力規制委員長.jpg更田原子力規制委員長

4.「甲状腺被ばく線量モニタリング」の目的は何か

 最後に、その原子力災害対策指針を、原子力規制委員会は4月6日に改正したばかり。その中の「甲状腺被ばく線量モニタリング」の目的は何かを質すと、更田委員長は実用可能な計測器が開発されたので、その運用について定めたが、個人がどれだけ被ばくをしていたのかを知ることが目的だと答弁。

 それならば「被ばくデータは個人に返っていかなければリスクコミュニケーションは完結しない」が、原子力規制委員会の議論では「検討する」にとどまっていると阿部とも子は指摘しました。

 さらに、現在の原子力災害対策指針は、福島原発事故の100分の1の放射性物質の想定しかしていないが、住民は知らない。知らせていくべきだと務台原子力防災担当副大臣に指摘し、質問を終わりました。

使用した資料はこちら→(横)220407原子力特資料①②⑤.pdf(縦)220407原子力特資料③④.pdf

動画は→こちら